MacroBEANS

2012年12月20日 (木)

MRS Fall Meeting 2012 参加報告


参加した学会の概要

 MRS 2012 Fall Meetingは、アメリカ材料学会MRS (Materials Research Society) の主催する国際会議で、毎年ボストンのHynes Convention Centerおいて開催されており、幅広い材料をカバーした国際学会である。具体的には,材料に関する網羅する内容でセッションの数が52 あり,以下のような大分類として5分類に分けられていた. 

 Materials for Energy Technologies11

    Soft Materials and Biomaterials 10

    Functional materials and Nanomaterials 11

    Structural and Advanced Materials 9

    General 2

 近年のエネルギー分野への注目が集まっており,太陽電池や蓄電池系の新規材料について多くの研究がおこなわれ発表が行われた.

 Macro BEANSセンターにおいて取り組んでいる大面積タッチセンサに用いている有機材料やその加工技術について,functional materials and nanomaterials 内のroll to roll processing of electronic and advanced functionalitiesにおいて発表を行った.

 

学会における調査

 プロジェクトに関係するroll to roll processing of electronic and advanced functionalitiesというセッションについて4日間91件の発表について調査を行った.3点ほど注目すべき研究について以下に紹介する.

1. PEDOT:PSSによる印刷による電子ペーパーの開発(Acreo, Sweden)

銀ペースト電極と色変化の特性を持つPEDOT:PSSの印刷し,電解液についても印刷を行うことでプラスチック上に連続的に低コストで電子ペーパーを製作できる.

2. 薄膜ガラス基板上へのTFTの連続製造(Corning, America)

  耐熱温度が高いガラスを使うことで,プラスチックでは難しい通常の熱処理(1000℃)以上を行ってディスプレイを作る.薄いガラスを使うことでロールtoロールで作ることができる.

3. Electronic skin (UC Berkley America)

 印刷により,電極,カーボンナノチューブによるTFTをプラスチック上に製作,センサ等をスイッチングすることで人工皮膚にする.


プロジェクト研究成果の学会発表とその反応

 Meter-scale Large Area Touch Sensor  with Conductive Polymer based Fabric for Human Motion Monitoringという題名で,MacroBEANSセンターで開発してきた大面積タッチセンサについてポスター発表を行った.発表に対して,使っている材料(PEDOT)の導電性,アプリケーション,どのような回路を使って計測しているかなどの質問があった.他のroll to rollによる製造方法で作られたものとしてはデバイス面積が最も大きいという部分が他の発表との大きな差であり,優位性であることが分かった.

P1010874

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2012年11月22日 (木)

IEEE SENSORS2012参加報告

Fig1

概要

IEEE SENSORSは、センサーならびに関連分野(材料、システム、応用)に関する世界最大規模の国際会議であり、欧州/アフリカ、アジア/太平洋地域, アメリカの3地域の持ち回りで毎年開催されています。今年は、その11回目の開催として1028日から31日の3日間、台湾の台北にてIEEE SENSORS 2012(http://ieee-sensors2012.org/)が開催されました。世界のセンサー・MEMS専門家が多く集まる本学会にて、Macro BEANSセンターにて行っているマイクロ・ナノ構造大面積・連続製造プロセス技術開発の成果報告と、最新の技術動向の調査を行うため、今回参加を行いました。

発表

本会議は2012102831日の3日間で行われ、キーノートプレゼンテーション3件と通常セッション51件(うちポスターセッション3件)が開催されました。運営委員発表によると投稿件数は1082件で、うち580件の採択が行われたとのことです(採択率54%)。発表の内訳としては、オーラル286件、ポスター314件でした。採択された発表を国別でみると(図1)、台湾が101(奇しくも台北のランドマークである台北101と同じ数)で最も多く、次いでアメリカ99件、日本78件、中国50件という順番でした。学会で行われたセッションの一覧を図2に示します。3日間という短い会期でしたが、連日センサーに関する盛沢山の発表が行われ、センサー分野における本学会の重要性を再認識しました。

Fig2

1 国別発表件数

Fig3_2

2 セッション一覧


成果発表

本出張の目的の一つである発表として、BEANSプロジェクトからは、ポスターセッションにて以下の2件の発表を行いました。

Development of an Implantable Micro Temperature Sensor Fabricated on the Capillary for Biomedical and Microfluidic Monitoring

Zhuoqing Yang, Yi Zhang, Toshihiro Itoh

Low Temperature Deposition of Doped Polycrystalline Silicon at Atmospheric Pressure and its Application to a Strain Gauge

Teruki Naito, Nobuaki Konno, Takashi Tokunaga, Toshihiro Itoh

Fig4_2

3 ポスター発表発表者の様子

技術動向調査

学会では、MacroBEANSセンターのテーマ(非真空プロセス、繊維状デバイス)に関連する報告を中心に聴講を行いました。そのうちのいくつかの報告ついて、以下に紹介します。

Micro-Plasma Field-Effect Transistors (M. Cai, et. al, University of Utah, USA)

大気圧RFヘリウムプラズマを用いて、マイクロプラズマFET(MOPFET)を作製した結果についての報告。通常の半導体ベースのFETとは異なり、プラズマ中の電子とイオンをキャリアとして利用する。利点としては、通常のFETの適用が難しい高温下や電離放射線照射環境下でも動作できる。さらに理論上は極少数のイオンを用いたナノメートル級の電子デバイスを作製できる可能性を秘めている。MOPFET中のプラズマはRF電力源によって励起される。今回、初めて5-10 Vで動作するプラズマスイッチや増幅器が実現できたとのこと。

Low power textile-based wearable sensor platform for pH and temperature monitoring with wireless battery recharge (M.Caldara, et. al, University of Bergamo, Italy)

ウェアラブルセンサー適用にむけた機能性繊維の開発の一つとして、pHメーターの機能を有する繊維を作製した結果についての報告。無毒で有機の酸塩基指示染料をゾルゲル法により布の上に塗布する。読み出しは、低電力の色・温度センサーを用いたセンサー回路と、無線によるデータ送受信・充電装置を用いて行われていた。応用としては、スポーツ工学、医療、環境への用途などが考えられるとのこと。

Transverse Force Sensitivity of photonic crystal fibres (M. Karimi, et. al, City University London, UK)

複屈折特性を有するフォトニック結晶繊維を用いたせん断応力センサーについての報告。4種類の異なるフォトニック結晶について、せん断慮に対する繊維の方位と外力の影響を評価。その結果、少ない複屈折特性を持つフォトニック結晶繊維のほうが、繊維長が長くなるものの、より高い感度を示すことが判明した。PandaBow-tie型の高複屈折率繊維に比べて、フォトニック結晶繊維は低い温度依存性を有し、温度変化が激しい環境下での測定に向いているとのこと。

Setup and Properties of a fully Inkjet Printed Humidity Sensor on PET Substrate (Eric Starke et. al, Technische Universität Dresden, Germany)

PET基板上にインクジェット塗布によって作製した湿度センサーについての報告。導電性の銀電極を、湿度感知層を続けて形成した後、ポリマー粒子を最上層に塗布する。電極塗布条件を最適化することで、センサー領域を削減し、検知部の作製条件を最適化することで、作業性、感度、ヒステリシスともによいセンサーを作製することができたとのこと。

Piezoelectric PDMS Films with Micro Plasma Discharge for Electromechanical Sensors (J-J Wang, et. al, ,National Tsing Hua University, Taiwan)

キャスト法、積層、表面塗布、マイクロ放電の工程を組み合わせることで、圧電性PDMSフィルムの作製を行った結果についての報告。PDMSフィルムの内部に存在しているμmサイズの空孔をPTFE薄膜により表面被覆し、続いてPDMSフィルムの両面にスパッタでAu電極を形成する。その後、電極間に電圧を印加し、空孔内にマイクロプラズマを生成する。マイクロプラズマは、周波数0.5HzAC電界を15min印加することで生成する。放電後、PDMSフィルム内の多孔内に放電による人工誘電分極が形成され、結果として圧電定数d33=1000pC/Nもの強い圧電特性を有するPDMSフィルムを得ることができた。さらに、多孔質構造を調整することでPDMSフィルムの圧電特性を制御することが可能とのこと。

次回開催

 

次回開催となるIEEE SENSORS2013(http://ieee-sensors2012.org/)は、2013114日(日)から6日(木)の3日間の日程で、アメリカのメリーランド州ボルティモアで開催されます。アブストラクトの締め切りは2013417日となっています。 

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2012年11月 9日 (金)

BEANS成果発信:NNT2012国際会議

BEANSプロジェクトの研究開発成果の一つとして、様々な形状のマイクロハイブリッドパターンを有するシームレス円筒モールドを用いて、繊維状基材に20m/minの送り速度で高速、且つ連続に熱インプリントする技術を開発しました。この成果を、10月24日から10月26日まで米国カリフォルニア州のナパで開催されたThe 11th International Conference on Nanoimprint and Nanoprint Technology (NNT 2012)にて発表しました。NNTはナノインプリントに関する最新の科学技術の成果が紹介される場で、次世代の半導体製造技術として現時点での到達技術水準や、幅広い応用展開について議論されます。参加者数の平均は100~200名で、今回ナパで開催されるNNT2012は、2002年にサンフランシスコで開催されて以来、11回目になります。来年(2013年)はスペインのバルセロナで開催される予定です。

Silverado_resort_and_spa_2
NNT2012開催会場のSilverado Resort and Spa

 さて、今回のNNT2012での発表件数は口頭発表で36件、ポスター発表で66件、計102件でした。発表者を地域別で分類すると、開催地である米国からは18件と少なく、欧州が40件と最も件数が多かったのが特徴です。日本からは8件の口頭発表と18件のポスター発表があり、日本を含まないアジア地域の総数が18件であったことからも、日本でのナノインプリント関連の研究開発が活発であることが窺えます。また、カテゴリー別にみると、今回の会議では実用寄りの応用研究が細分化されており、Roll-to-Roll Imprint Lithography(計9件)、Large Area Imprint Lithography(計6件)、Applications(14件)、Bio Applications(計8件)となっており、基礎研究はProcess, Materials and Characterization(計50件)に集約されていました。ナノインプリント関連の研究開発における全体的な傾向としては、円筒モールドを用いたディスプレイ等の大面積デバイスへの製造展開か、多層構造モールドによるアライメント不要の一括成形プロセスによるCMOS等の製造技術に二極化している印象を持ちました。その中で、ガラス基板等、従来のプラスチックやUV硬化性樹脂とは格段に成形が難しい材料へのチャレンジも増えており、その応用範囲の拡がりも見られました。

なお、BEANSプロジェクトからは以下の1件の口頭発表を行いました。

2.2 Manufacturing of smart fibers by high-speed reel-to-reel imprint using cylinder mold

機械加工と三次元フォトリソグラフィーを組み合わせて、モールドパターンが多段構造となっている直径100mmのシームレス円筒モールドを作製した。さらに、この円筒モールドをリールツーリールインプリント装置に組み込み、直径250µmのプラスチック製光ファイバーの表面に、製織工程で縦糸と横糸を位置決めするガイド構造と、摸擬MEMS構造を20m/minの送り速度で高速熱インプリントすることに成功した。(H. Mekaru, et al.)

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NNT2012にて口頭発表する筆者

Hybridlayered_patterns_on_mold_and_
(a)円筒モールド表面の多段構造モールドパターンと、(b)リールツーリールインプリントによって加工された直径250µmのプラスチック製光ファイバー表面の成形パターン

 BEANSプロジェクトと関連のあるロールツーロールインプリントでは、モリキュラーインプリント社(アメリカ)、カタランナノテクノロジー研究所(スペイン)、南洋理工大学(シンガポール)、ミシガン大学(アメリカ)、国立台湾大学(台湾)、ヨアンノイム・リサーチ(オーストリア)、ポールシェーレ研究所(スイス)、日立研究所(日本)による8件の口頭発表がありました。3件は熱ナノインプリント関連で、残り5件はUVナノインプリントを対象とした研究開発であり、その内4件はLEDやディスプレイ等の光学部品をターゲットにしており、残り1件は濡れ性を制御した基板表面の改質が目的でした。また、シームレス円筒モールドについては、旭化成(日本)が回転駆動系を組み込んだ電子ビーム描画装置を開発し、直径100mm、幅50mmのシームレス円筒モールドを作製し、その円筒表面上に最小線幅140nm、ピッチ500nmのラインパターンを形成したことを報告していました。ロールツーロールインプリントの成形対象は全てフィルム基材であり、我々のような繊維状基材を加工対象とした報告例はありませんでした。BEANSプロジェクトの発表はキーノートスピーチ後の「Roll-to-Roll Imprint Lithography」セッションに含まれ、招待講演後の最初の一般公演として組まれており、我々の研究成果をPRするには最良の順番でした。我々の発表は異色だったためか多くの参加者を引き付けたようで、特に成形パターンの具体的な用途や繊維状基材ならでは技術的問題点、そしてシームレス円筒モールドの作製方法の詳細について多くの質問を受けました。中には、我々のリールツーリールインプリント装置を購入したいとの相談も受け、本会議における広報は大成功だったと思います。

(銘苅春隆)

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2012年2月16日 (木)

MEMS2012 参加報告 (MACRO BEANSセンター)

MEMS2012はMEMS関連の最も重要な国際学会の1つであり,2012年1月29日~2月2日を会期としてフランス・パリで開催された。今回で25回目となり,約1,000件の発表申し込みに対し,発表件数は口頭45件,ポスター298件であり,採択率は3割弱という非常に厳しい数字の中,BEANSプロジェクトからは4件採択されたことから,本プロジェクトに対する国内外からの高い注目が感じられた。
選ばれる論文は従来からの研究よりも新規な内容を重視しているため,今後のMEMS分野の動向を映す鏡である.採択される論文数はアメリカが最も多く,アジア,ヨーロッパの順で多い.論文内容としては,バイオ分野へのMEMS技術を応用する研究が増えている.細胞やたんぱく質などをシリコンニードルやマイクロチップにより計測するものが多いまた,研究内容がシリコンを用いたものだけでなくポリマーを基板に用いたフレキシブルデバイスに関するものも増えている.ポリマーを基板に用いたデバイスは,MACRO BEANSセンターの繊維状基材を用いたデバイスに近い研究テーマである.そのため,さまざまなフレキシブルデバイスを繊維状基材上に展開することが可能である.

 テクニカルプログラム
以下のようなオーラルセッションがあった.
Optical MEMS
RF MEMS
POWER MEMS
FABRICATION
ACTUATORS
BIO&CHEMICAL MICROSYSTEMS
MEDICAL MICROSYSTEMS
SENSORS
MIROFLUIDIC COMPONENTS AND SYSTEMS
GYROSCOPES
NANO & MATERIALS
であり,MEMSの設計や製作,センサやアプリケーションまでをカバーするプログラムである.
近年の傾向としては,マイクロビーズやマイクロタス技術によるバイオ関連のセッションが多いことが特徴である.研究者は大学関係者が多くバイオ応用を目指したデバイス開発が多い.具体的な技術としては,細胞などをゲルビーズで包む技術や磁性体で配列させる方法などがあげられる.また,細胞に刺激を与えたり,力を計測するためにシリコンの静電アクチュエータや磁気アクチュエータ,光ピンセットを用いた方法などについて発表があった.
従来からのシリコンMEMSに関しては,RFレゾネーターやジャイロスコープに関する研究が応用を目指して研究がおこなわれていた.さらに,カンチレバーを用いた圧力だけでなく滑り力も計測できるデバイスの研究も多く発表される内容となってきている.
学会全体としては,バイオ関連のデバイスを大学の研究者が行っており,サイエンティフィックな内容が多い.現在産業となっている振動子やジャイロなどの研究もおこなわれている.MEMSにおける加工技術,システム化技術に関しては,年々大幅な進化が見られており発表されているデバイスの完成度が上がっているため産業応用可能な学術分野となってきていることは確実である.センサ等を小型,高機能,高集積するデバイス化技術を何に応用するのかについてのアイデアが最も求められており,次に産業になるようなキーデバイスについての模索が続いている.

 発表内容とその反応
MBCからは2本の論文を発表した.一つは,この学会のポスターセッションにおいて「Conductive polymer coated elastomer contact structure for woven electronic textile」のタイトルで,繊維状基材の製織デバイスで発生する基材間空隙の防止を目的としたシリコーンエラストマーと導電性ポリマーであるPEDOT:PSSから成るフレキシブル接点に関する発表を行い,プロジェクトにより得られた筆者の研究成果を広く発信することができた。また,重要な国際学会ということもあり聴講者の数も非常に多く,筆者のポスターに関しても時間帯によっては多くの人だかりができるほどであった。本成果の目標アプリケーションとしているウェアラブルデバイスが,洗濯機による強い負荷や濡れ環境での洗浄にも耐えうるものかという質問が多く寄せられたため,プロジェクトの実用化に対する高い関心が窺えた。本学会で見られた,筆者の研究に関係のある他の研究機関による発表としては,主として生体用デバイス開発に向けたフレキシブルMEMSに関する総括的な内容の基調講演「J. A. Rogers, Semiconductor devices inspired by and integrated with biology」や,圧電体のPVDFと導電体のPEDOT:PSSによるポリマー材料のみで作製された重量測定センサに関する報告である「J. R. Busch, et al. Inkjet printed all-polymer flexural plate wave sensors」,導電性液体による流路チャンネルとシリコーンゴムによる,透明でフレキシブルなタッチパネルに関する報告である「K. Asano, Flexible transparent touch panel mounted on round surface」などが挙げられ、これらの研究内容について情報を収集し、筆者の研究に対する知見を得ることができた。
 また,もう一つはナノインプリントによるプラスチック基板上の選択的親水化技術とセカンドドーピング技術を用いた導電性ポリマーPEDOT:PSSのパターニング技術についてポスター発表を行った.発表は初日であったこともあり,多くの参加者がポスターに集まり質問を受けた.具体的には,
1. 他の技術でできない機能は何なのか.
2. どこまでプロジェクトの完成予想図のような複雑なシステムができるのか?
3. 他の方法と違うからオリジナルはあるけど,社会でこれでないといけない必然性はあるのか?
4. マスクのナノスケールのパターンはオーバースペックな装置で作ってるのでは?EBでダメな理由は何か?コストなのか時間なのか何なのか?何がリソと違うのか?
5. ピラーをもう少し小さくすると今度は,疎水になってそういうものになるのでは?
6. 疎水の材料でナノインプリントをすればもっと親水と疎水の差が大きくなるのでは.
7. ナノピラーの部分に,レジストとかつけると入った後でとれなくなったり,レジストがつかないのではないのか.
8. ナノピラーなので何かセンサにしたときに機能を持ったりしないのか?面積が広いので感度が上がることや曲げの影響が変わるなど.
などの質問が出た.ナノピラーに関する加工,特性に関する質問が多く,今後加工を簡易化することや親水や疎水などの機能をうまく用いることに関して改良していくことが必要であることが分かった.

Photo


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2011年5月26日 (木)

ICEP2011報告

ICEP 2011報告

The International Conference on Electronics Packaging (ICEP 2011)が、2011年4月13日(水)~15日(金)に、奈良県新公会堂で開催されました。この国際会議は、エレクトロニクス実装学会とIEEE CPMT Society Japan Chapterとの共催で日本だけで開催されており、前身であるIMCの第1回目1980年開催から数えて24回目となります。2001年にICEPと改称されてからは11回目となります。


本会議では、5件の基調講演と163件の口頭発表、32件のポスター発表が予定されていました。日本以外の参加国は、Taiwan 27件、USA 16件、Malaysia 11件、China 11件、Korea 9件、Germany 7件、UK 2件を含め14カ国です。ところが、東日本大震災の影響を受け、残念ながら2割程度のキャンセルが発生しました。最終的には参加者は300名程度とのことでした。


基調講演では、IBMのDr. Claudius Feger氏が、ブラジルでのマイクロエレクトロニクスの市場に関して、さらに、台湾のIndustrial Technology Research Institute のFellow Dr. John H. Lau 氏が3D-IC/Si などのパッケージに関する歴史及び将来展望を含めた動向について講演されました。また、Samsung Electronics のDr. Taejoo Hwang氏によるモバイル用の3D 実装の動向に関しての講演などが行われました。口頭発表は、基調講演も行われたメイン会場の能楽ホールをはじめ、4パラレルセッションで行われました。


発表論文数を分野別に分類した結果は、以下のとおりです。

1.    Design,Modeling,Reliability  26件

2.    Interconnection                     24件

3.    MEMS                                   21件

4.    Manufacturing                      18件

5.    Thermal Management          17件

6.    Printed                                   16件

7.    Optoelectronics                      8件

8.    Substrate                               8件

9.    3D/TSV                                  7件

10.  Advanced PKG                      6件

11.  その他                                    12件


MEMSは発表分野別では第3位の発表件数であり、BEANS関連は招待講演の1件を含め10件の発表でした。BEANSセッションは、武田前副所長の招待講演で開始され、Macro BEANS センター 2件、Life BEANS センター九州 4件、3D BEANS センター 3件の順で行われました。以下、タイトルと筆頭者を示します。

(1)BEANS Project based on Multi-Disciplinary Fusion - Process Integration for Hetero-Functional Integrated Devices(Session Invited), M.Takeda et al.

(2)Silicon Microparticle Ejection Using Mist-jet Technology, Y.Yokoyama et al.

(3)Continuous high speed thin film coating process on fiver-type substrates with die coater, N.Shibayama et al.

(4)Formation of Organic Crystalline Nanopillar Arrays and Their Application to Organic Photovoltaic Cells, M.Hirade et al.

(5)Formation of organic semiconducting nano-dots by using vacuum deposition process and application for organic solar cells, M.Nakata et al.

(6)Preparation of porous film at micro-scale and nano-scale by modified breath figure method, Y.Zheng et al.

(7)Minimizing Etching Damages of Organic Semiconductor Layers by Neutral Beams, J.Adachi et al.

(8)Site-Slective Binding of Nanoparticles onto a Silicon Chip by Peptides with an Affinity for Inorganic Materials, Y.Shimada et al.

(9)Damage-free silicon etching using large diameter neutral beam source, T.Kubota et al.

(10)Embedded Nano-channel Fabricated in Fused Silica by Femtosecond Laser Irradiation and Wet Etching for Nano-scale Fluid Devices, O.Nukaga et al.


また、ミストジェット技術とも関連するプリンティングのセッションでは、AIST鎌田氏のTFT用のインクジェット技術に関する最新の動向に関しての報告があった。メタルパターンを印刷後、圧力17MPaをかけると低温焼成が可能になるそうです。また、大阪市立工業研究所中許氏からは、銀と銅の混合ナノ粒子を用いた低温接合プロセスの報告がありました。さらに、奥野製薬工業株式会社からは、スクリーン印刷が可能なITOやATO(Antimony-Tin Oxide)のナノ粒子の報告がありました。高価なITOの代替としてATOを説明していましたが、ヘイズ値(全反射光に対する拡散光の割合)と抵抗率が若干高いとのことでした。現在250℃以下での焼成が可能かどうかの検討をおこなっているとのことです。


本国際会議は、日本にいながら、海外の実装動向を知ることができるよい機会だと思われます。来年は、2012年5月9日から11日まで、東京の芝浦工業大学豊洲キャンパスで、開催されます。


以上

(MBC 横山 吉典)

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2011年1月26日 (水)

産学官連携「BEANSプロジェクト」の論文、国際学会MEMS2011で一挙に大量(7件)採択される

 MEMS技術分野で最も権威ある国際学会の一つ「IEEE MEMS2011@メキシコ・カンクーン(2011年1月23-27日)」において、BEANSプロジェクトの成果が一挙に7件採択された。ちなみに、昨年の発表件数は口頭75件、ポスター223件。全採択率は34%でした。


技術研究組合BEANS研究所(理事長:作田 久男)が実施しているBEANSプロジェクト((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構より委託業務、平成20年度より5年間) は平成20年7月の開始以来、約60件の国内外特許出願や数百件に及ぶ成果の外部発表を行なってきました。3年目にあたる平成22年度はすでに150件の外部発表(論文発表、学会発表など)を行なっております。


 1月23-27日にメキシコ・カンクーンにて開催されますMEMS2011 (IEEE The 24th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems, http://www.ieee-mems2011.org/) にBEANSプロジェクトより成果発表の論文を応募し、その結果として口頭発表2件、ポスター発表5件の合計7件の採択を実現しました。これだけ多くの論文が採択されたことは、BEANSプロジェクトの研究テーマが先端技術分野で注目されており、成果内容が高水準である事を示すものです。なお、採択された発表論文の内容は参考資料 #1~#7に記載しました。タイトルは正式論文表題ではなく、キャッチフレーズを書いております。


参考資料

【発表論文 7件】


#1 「3D構造への位置選択的自己組織化微粒子の配列」(口頭発表)

【筆者】阿波嵜実 他 : 3D BEANSセンター

【技術説明】トレンチ構造の側壁に選択的にポリスチレン微粒子を配列。また、トレンチ加工時に導入されるスキャロップ構造を利用して、ポリスチレン微粒子の配列状態を制御した。

【研究の背景と今後の展開】マイクロチャネル等を利用したデバイスでは大表面積の反応場が必要とされる。本研究では自己組織化現象を利用し、トレンチ構造にポリスチレン微粒子を配列し、大表面積の構造体を作製した。今回、トレンチ構造内部(側壁部)で位置選択的に微粒子を配列し、トレンチ加工時に形成されるスキャロップ構造を利用して配列状態の制御を行った。スキャロップ構造を積極的に利用する事で微粒子がランダムな配列からライン状配列になる事を確認した。また、ライン状に配列した微粒子のラインピッチ制御の可能性を示した。

【専門用語解説】自己組織化:自然と秩序が生じて、自分自身でパターンのある構造を作り出して、組織化していく現象 スキャロップ:Siトレンチ加工時に導入される周期構造

【問合せ先】

阿波嵜 実 BEANS研究所3D BEANSセンター(東京大学生産技術研究所 As405)

TEL:03-5452-6545    FAX:03-5452-6544     E-mail: mabasaki@beanspj.org


#2 「どんな隙間も均一製膜」  (口頭発表)

【筆者】山田英雄 他  :3D BEANS センター

【技術説明】耐熱温度の低いポリマー材料(PDMS)上へ超臨界製膜法を適用し、 PDMS流路内部へSiO2製膜に成功した。

【研究の背景と今後の展開】ポリマー材料は加工のし易さやコスト面からさまざまな分野で注目されているが、 耐熱温度が低いという問題があった。そこで、酸化剤にO3を用いることによりSiO2超臨界製膜の低温化、及びPDMS流路の親水化に成功した。 今後は、SiO2製膜のPDMS流路のガス透過防止膜としての有効性を検証していく。 

【問合せ先】

山田 英雄 BEANS研究所3D BEANSセンター(東京大学 生産技術研究所 As405)

TEL:03-5452-6545    FAX:03-5452-6544       E-mail:hyamada@beanspj.org

#3  「立体構造を使った高容量キャパシタ形成に成功」

【筆者】百瀬 健 他  :3D BEANSセンター

【技術説明】超臨界流体と呼ばれる特殊な流体中において,立体キャパシタを作製し,平面キャパシタの70倍の高容量化に成功。


【研究の背景と今後の展開】当グループでは,固体でも液体でも気体でもない超臨界流体と呼ばれる流体中において,金属錯体を還元あるいは酸化すると,複雑な立体構造内部に均一な金属/金属酸化物薄膜を形成することを明らかにしてきた。本発表ではこれらの技術を応用し,抵抗の低いシリコントレンチ上に誘電膜/金属膜を形成し,金属電極/誘電膜/シリコン電極の3層構造からなるキャパシタの形成に成功した。このキャパシタは同一サイズの平面的(非立体的)キャパシタに比べると70倍もの高い蓄電性能を有することを確認した。

【専門用語解説】高容量キャパシタ:より多くの電荷を蓄積することのできるキャパシタのこと ・超臨界流体:物質固有の臨界点を超えた高密度流体のこと。気相,液相,固相に続く第四相。

【問合せ先】

百瀬 健  BEANS研究所3D BEANSセンター(東京大学 生産技術研究所 As405)  

TEL:03-5452-6545    FAX:03-5452-6544       E-mail:tmomose@beanspj.org


#4  「摩耗しにくく、摩耗されても、特性が変わらないプローブ」

【筆者】李 永芳 他  :3D BEANSセンター

【技術説明】新規耐摩耗プローブの構造、設計、試作を行い、耐摩耗プローブの耐久性と描画安定性を確認した。

【研究の背景と今後の展開】 従来のリソグラフィは、用いる波長から、光の回折限界等で加工出来る最小サイズが限界に近づいてきている。その中、SPMリソグラフィはポスト光リソグラフィの有力な代替技術と言われている。しかし、プローブの先端の摩耗により、描画特性が不安定になり、描画できなくなる問題があり、スループットが低いため、SPMリソグラフィが工業的に実用していなかった。今後は耐摩耗プローブをアレイ状にすることで、SPMリソグラフィのスループットを向上させる。

【問合せ先】

李 永芳 Yongfang li BEANS研究所3D BEANSセンター(東京大学生産技術研究所 As405)

TEL:03-5452-6545    FAX:03-5452-6544       E-mail:yli@beanspj.org


#5  「誰でも作れる!ナノサイズのデコボコゲル 」

【筆者】柴田 秀彬 他  :Life BEANS センター

【技術説明】微細な溝を有するパターン上でゲルを作製することで、微細な凹凸構造を表面に有するゲルを作製した。

【研究の背景と今後の展開】ハイドロゲルはその組成により、生体適合性やセンサー機能などを持たせることができる。このハイドロゲル表面に微細な凹凸構造を作製することで、細胞接着形態の制御、センサーとしての高感度化などが期待される。本研究では、微細な溝を有するパターン上にゲルを作製するシンプルな方法を用いて、微細凹凸構造(最小140nmのライン形状)を有するゲルの作製に成功した。ここに細胞を撒くと、その微細表面形状に沿った形で、細胞が接着することが確認できた。今後は細胞接着の制御などにより、生体適合性機能の付与について検討していく

【問合せ先】

柴田 秀彬  BEANS研究所Life BEANSセンター(東京大学 生産技術研究所 As405)

TEL:03-5452-6545    FAX:03-5452-6544       E-mail:hshibata@beanspj.org


#6 「大面積電子織物の電導接点」

【筆者】クンプアン  ソマワン 他  :Macro BEANSセンター 

【技術説明】本発表は、繊維状基材連続微細加工としてシートデバイスの応用を広げるために縦横ファイバーの電気的な接触技術開発です。

【研究の背景と今後の展開】衣服にセンサや電気回路を埋め込む技術であるエレクトロニクス・テキスタイルの実現には機能性ファイバーの成形技術が必要です。成果内容は次のとおり① 横縦ファイバー表面の相互に電気接続するためのマイクロ/ナノ構造を考案した。② ダイコーティング及びリール・ツー・リールインプリント装置を用いて、繊維状基材上に、マイクロ構造の製作技術を開発した。③ 製作したスプリングカンチレバー構造は、繊維状デバイス応用として縦横ファイバーのギャップが良好な電気接続が480Ωの低接触抵抗で繰返し500回数を確認した。今後は開発したリール・ツー・リール連続プロセスを用いた高速度接点構造を製作する。

【専門用語解説】ファイバー上に熱インプリントされたPEDOT:PSS(有機導電性ポリマー材料)カンチレバーアレイはエレクトロニクステキスタイルに対して、可動接点構造です。

【問合せ先】

クンプアン ソマワン、 三宅 晃司、 伊藤 寿浩       

BEANS研究所Macro BEANSセンター(産業技術総合研究所)

TEL:029-868-3883   FAX:029-868-3884  E-mail: ksommawan@beanspj.org


#7 「特殊材料ガスを用いないプラズマ化学輸送法による多結晶Si成膜」

【筆者】横山 吉典 他 : Macro BEANSセンター 

【技術説明】プラズマ化学輸送法により大気圧で多結晶Si成膜を実現し、この膜を用いて歪ゲージ型の圧力センサを世界で初めて製作した。

【研究の背景と今後の展開】環境・エネルギーの分野ではSi膜に代表される機能膜の大面積プロセス化が進みつつある。特殊材料ガスを用いない開放スキャン型装置が実現されれば、真空チャンバーの大型化に歯止めをかけ、装置コストの低減に繋がると考えられる。今回、 300℃、700torrという低温・大気圧下で多結晶Si成膜を実現した。さらに、このSi膜を用いて歪ゲージ型の圧力センサを製作し、その機能を検証した。今後は、チャンバーを用いない大気圧での噴出し型成膜装置の実現を目指す。

【専門用語解説】プラズマ化学輸送法:水素プラズマを用いて固体Si原料を気相中に取りこみ成膜する手法のこと。


【問合せ先】  

横山吉典、村上隆昭、徳永隆志    

BEANS研究所Macro BEANSセンター(産業技術総合研究所)

TEL:029-868-3883   FAX:029-868-3884   yyokoyama@beanspj.org


【その他用語解説】

MEMS2011:マイクロ・ナノテクノロジー分野での主要な国際学会。アメリカ、欧州・アフリカ、アジア・オセアニアの各地域で順次開催されている。今年はメキシコのカンクーンにて開催される。

BEANS(Bio Electromechanical Autonomous Nano Systems)プロジェクト: 「異分野融合型次世代デバイス製造技術」を開発する国(経済産業省)プロジェクト。事業委託者は独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)。2008年から5年間のプロジェクト。


マイクロナノ、バイオの異分野融合領域研究開発を実施。産官学の異分野の専門家を結集して集中研方式で行っている。開発マネジメントはコスト、スピード、効率、計画性を重視した企業型マネジメント手法を取り入れている。知的財産権の取得を最も重視している。



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2010年10月29日 (金)

第27回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム報告

  電気学会センサ・マイクロマシン部門主催,第27回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウムが2010年10月14日(木),15日(金)の2日間の日程で島根県松江市のくにびきメッセ(島根県立産業交流会館)にて(株)デンソーの川原氏を実行委員長として開催されました.本シンポジウムは日本機械学会マイクロ・ナノ工学専門会議主催(10/13-15),第2回「マイクロ・ナノ工学シンポジウム」,応用物理学会集積化MEMS技術研究会主催,第2回「集積化MEMSシンポジウム」(10/14-15)と同所同時開催されました.昨年より電気系、機械系と物理系の研究者が集い討議を行う場として,3つのシンポジウムが同じ会場にて同時に開催されています.1つのシンポジウムに参加すると他の2つのシンポジウムの参加が可能になっています.


  講演はPlenary 2件,Invited 2件,Oralが76 件,Poster 81件であり,実際のOral講演について自動車用MEMS,ナノバイオ材料とMEMS/NEMS,バイオセンシング,マイクロメディカルコンポーネント,フィジカルセンサ,プロセス・評価,プロセス技術,移動ロボットとケミカルセンサ,マイクロシステムと流体,マイクロアクチュエータ,ケミカルセンサ,表面・触覚センシング,最先端MMES実装技術1,2,センシングシステム,および企画セッションである集積化MEMSの応用と実用化1,2について,同時開催のシンポジウムと合わせて4つのパラレル・セッション形式で行われました.  

 BEANSプロジェクトからも以下のOral 4件,Poster 6件,同時開催シンポジウムに3件の発表がありました.

 

B1-2:Sommawan Khumpuang他,“Reel-to-Reel Compatible Patterning Technique for Conductive Polymer Microstructures”

B1-3:高松誠一他,“繊維状基板上への有機電子膜形成と製織技術を用いた大面積タッチセンサ”

B2-3:横山吉典他,“Siノズルを用いたSi微粒子のミスト吐出”

A3-4:Jung HeoYun他,“In Vivo Glucose Monitoring with Hydrogel Fibers”

P-1-8:張 毅他,“Spray Coating Technology of Thin and Uniform Photoresist Layer on Fiber Substrate”

P-1-11:大友明宏他,“スライドプレス型リールツーリール熱インプリントシステムの開発”

P-1-13:村上隆昭他,“プラズマ化学輸送法を用いた700Torrでのシリコン成膜”

P-1-15:柴山学久他,“ダイコーティング法による繊維状基材への連続的高速ナノ薄膜形成技術”

P-2-5:水頭英一他,“微生物を用いたマイクロ発電デバイスの開発”

P-6-1:加野智慎他,“マイクロゲルビーズを用いた微生物固定化利用に関する研究”

MNM-1B-7:冨澤泰他,“二物質同時接触型耐摩耗プローブのトライポロジー特性評価”

MNM-P11-1:西森勇貴他,“自己回帰モデルによるMEMS振動子パラメータ抽出法の提案”

MNM-P11-2:植木真治他,“ゲート・チャネル間電気機械相互作用を考慮したVibrating-Body Field Effect Transistorのモデリング”


 最終日の講演後には恒例の五十嵐賞等の表彰式が行われ,BEANSプロジェクトからはLife BEANSセンターの許允禎研究員が“In Vivo Glucose Monitoring with Hydrogel Fibers”の発表で4名の五十嵐賞の受賞候補に選ばれましたが,おしくも五十嵐賞の受賞は逃し,若手研究者優秀論文発表賞を受賞しました.

 


Img_0269

         許允禎研究員表彰風景


 五十嵐賞は若手研究者(発表時点で35歳以下)による優秀な研究論文発表に対し授与されるものです.その他の受賞者は以下のとおりです.

■五十嵐賞

≫野田聡人@東京大学,

“表面センサネットワークのための低漏出ワイヤレス電力伝送”

■若手研究者優秀論文発表賞

≫榎本哲也@デンソー,

“赤外線吸収式マルチガスセンサ~超広帯域なファブリペロー分光器の開発~”

≫藤本祐士@立命館大学,

“圧力駆動バルーンアクチュエータの内視鏡的粘膜下層剥離手術用レトラクタシステムへの応用”

■最優秀ポスター賞

≫伊藤正敏@立命館大学,

“導電性液体を介した低拘束力配線手法のポテンショメータへの応用”

■最優秀論文賞

≫諫本圭史@サンテック,

“高速MEMSスキャナを用いたSS-OCT用高速波長走査型光源”

■優秀論文賞

≫Tetsuo Ohashi@島津製作所,

“Droplet-based PCR with Sample Preparation Using Magnetic Beads under the Control of Sol-gel Transition of Silicon Oil”

≫Kyungduck Park@東京大学,

“Novel Fabrication of Nanofluidic Channel and Behavior of Single DNA Molecules Induced by Nanoconfining Environment”

≫松崎 栄@東北大学,

“電気的接続をともなうLTCC基板とSi基板との陽極接合”

■技術展示賞≫ソニー(株)


 また,シンポジウムに併設して,技術展示が行われ,BEANSプロジェクトも技術展示,技術展示講演を行いました.

 

Beans          BEANS研究所技術展示


 尚,来年度は昨年度と同様に東京都江東区のタワーホール船堀において立命館大学の木股教授が実行委員長として開催されます.


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2010年7月 5日 (月)

BEANS成果発信:ASNIL2010アジアンシンポジウム

 BEANSプロジェクトの研究開発成果の一つとして、ホットプレス、もしくはスライディングローラーインプリントによって、平板モールドのパターンを繊維状基材の表面に転写する手法や装置を開発しました。これらの成果を、6月30日から7月2日まで茨城県つくば市のつくば国際会議場で開催されたThe 3rd Asian Symposium on Nano Imprint Lithography (ASNIL 2010)にて発表しました。ASNILはナノインプリント技術に対する学術的なフェーズから商品化に近いものまで様々な情報が集まる、アジア圏の代表的な国際シンポジウムです。プロセス、装置、デバイスに関わるアジア圏を中心とした研究者及び技術者が一同に会し、広く関連する分野の研究情報を交換し、総合的見地から融合の試みを推し進めることを目的として2008年に第1回会議が韓国にて、第2回会議が台湾にて開催されています。今年(2010年)は日本の茨城県つくば市にて開催されました。来年(2011年)はシンガポールで開催される予定です。


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ASNIL2010会場(つくば国際会議場)のパネル前での大友研究員(右)と筆者(左)


 さて、今回のASNIL2010での発表総数は52件であり、その内、大学や公的研究機関からの発表は45件、民間企業からは7件でありました。民間企業の研究開発内容が公になることは少ないですが、それでもASNIL2010における民間企業の発表件数が少ないと感じました。この事は、比較的ナノインプリントの実用化が進んでいるとされるアジア地域でも、ナノインプリントが未だ研究開発の領域を出ていないことを示しています。それでも、過去2回のASNILではプロセス技術そのものの研究開発が主要なテーマでしたが、今回のASNIL2010ではLED、ナノフォトニックス、バイオセンサー、反射防止膜への応用例が数多く紹介されていました。またナノインプリントはその成形方法と成形材料の違いからUVナノインプリントと熱ナノインプリントに大別できますが、ASNIL2010ではUVナノインプリントに関する発表が25件、熱ナノインプリントに関するものは14件、いずれの手法にも含まれないナノインプリントが13件ありました。なお、BEANSプロジェクトからは以下の2件の発表がありました。

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ASNIL2010にて口頭発表する大友研究員

1. 1A-11 A Reel-to-Reel Thermal Imprint System for Fiber Substrate

 繊維状デバイス向けに高速・安価にパターンを転写する装置として、リールツーリールインプリントシステムを設計した。本システムは、一方のリールに巻き取られている繊維状基材を連続又は間欠的に繰り出す機構と、他方のリールに繊維状基材を巻き取る機構、及び繊維状基材を平板モールドで上下両方向から挟み込み、加熱とプレスができる転写部から構成されている。設計上の繊維状基材の最高送り速度は40m/minである。(A. Ohtomo, et al.)

2. 1P-4 Hot Press on Plastic Optical Fiber Using Plane Mold

 円筒モールドを利用したリールツーリールインプリントでは、円筒モールドの対面に配置するバックアップローラーの存在が重要である。何故なら、バックアップローラー表面の緩衝材による弾性変形量と円筒モールドによる繊維状基材への押込み量との間には、高速転写に適したバランスが存在するためである。本発表では、平板Niモールドを用いてプラスチックファイバーにホットプレスを行い、両者の関係を調査した結果を報告した。(H. Mekaru, et al.)

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リールツーリールインプリントによって成形加工された直径250mmのプラスチック製光ファイバー


BEANSプロジェクトと関連のあるロールツーロールインプリントでは、東芝機械(株)、VTT(フィンランド)、三菱レイヨン(株)、工業技術研究院(台湾)による4件の発表がありました。いずれもUVナノインプリントをターゲットとしており、その内3件はLEDに、残り1件は反射防止膜の製造に利用することが目的でした。また、シームレス円筒モールドに関しては、国立成功大学(台湾)のグループが平板フォトマスクから円筒表面への等倍投影露光によるパターンの転写方法を紹介していました。ロールツーロールインプリントによる熱ナノインプリントの応用事例は我々の発表以外に報告例がなく、成形材料の形状もシート状基材のみでファイバーのような繊維状基材を成形ターゲットとした事例は皆無でした。BEANSプロジェクト関連の発表は多くの参加者を引き付け、特にリールツーリールプロセスによる繊維状基材表面への成膜、パターニング、表面処理の連続加工と、ウィービングプロセスによる大面積デバイス化の手法に興味を持ったようです。筆者の質疑応答時間には、最近、日本では変わった(良く言えば「夢がある」、悪く言えば「すぐには役に立たない」)研究開発プロジェクトが少ない。そのような状況下でBEANSプロジェクトは非常に面白いとのコメントを頂きました。

(銘苅春隆)

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2009年7月22日 (水)

BEANS成果発信:HARMST2009国際ワークショップ

BEANSプロジェクトの研究開発成果の一つとして、デフォーカス位置での紫外線投影露光によってレジストパターンの側壁を任意に傾斜させ、これを抜き勾配付きのナノインプリント用電鋳モールドの作製に利用する手法を開発しました。この成果を、6月25日から28日までカナダのサスカトゥーン市で開催された8th International Workshop on High-Aspect Ratio Micro Structure Technology (HARMST2009)にて発表しました。サスカトゥーン市は公園に囲まれた緑化都市であり、6月26日から7月5日の期間、夕方から深夜にかけて開催されていたサスカチュワンJAZZフェスティバルと相まって、人々は活気溢れ、美しい初夏を謳歌していました。

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HARMST2009開催会場のDelta Bessborough HotelとJAZZフェスティバル会場

 さて、HARMSTは高アスペクト比のマイクロ構造体に関するテクノロジーに関する国際ワークショップです。このワークショップの目的は、設計、モデルリング、組立、試験、及び応用などを含む高アスペクト比構造体の全ての情報を共有化することにあります。特にLIGAプロセス(リソグラフィー、電鋳、成形)は、1980年代初期からHARMSTで中心的な話題であり、今回のワークショップでもLIGAプロセスに関する数多くの発表がありました。本ワークショップは2年に1回の割合で開催され、今回で8回目を数えます。発表では、通常、紫外線のフォーカス位置がずれると垂直なレジスト側壁が得られない紫外線投影露光法において、焦点位置を調整することでレジスト側壁を積極的に傾斜させて、この傾斜したレジスト構造体を基にした電鋳によって抜き勾配を有したナノインプリント用の精密Niモールドを作製した事例を紹介しました。さらに、試作したモールドを用いて熱ナノインプリント実験を行い、傾斜角度と離型抵抗力の関係を調査し、モールドへの抜き勾配付与が高精細なナノインプリントに有効であることも報告しました。

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デフォーカス紫外線投露光法によって作成した電鋳Niモールドの抜き勾配付きφ5μm丸ドットアレイ

 本ワークショップでの他の発表では、LIGAプロセスとMEMS製造技術の融合が顕著に進んでおり、特にセンサーや化学検査チップなどのバイオデバイスの開発や、X線天文学やX線干渉計などのX線光学系、マイクロレンズアレイやブルーレイディスク用トランスミッタンスなどの開発事例が興味深く、印象に残りました。また立体表面への三次元リソグラフィー技術に関する発表もあり、BEANSプロジェクトでのウィービングMEMSの実現に向けた製造技術の開発に役立つ情報も収集できました。

(銘苅春隆)

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