BEANS本部

2013年3月 1日 (金)

平成24年度第2回BEANS総合研究会@東大駒場リサーチキャンパス


 BEANSプロジェクトが誕生して5年近くたちました。プロジェクトの締めくくりとしての成果発表会と研究員相互の交流など諸々の思いを込めた総合研究会が開催されました。遊佐・藤田校長率いる「BEANS学校」の卒業式でもあります。2月20日(水)午後一番から交流会も含めますと夜まで、5年前のプロジェクト発足会を行ったと同じ東大駒場リサーチキャンパスにて繰り広げられました。2009年から毎年一回ペースでこれまで初夏の時期に4回やってきましたが今回はいわば特別臨時最終版でもありました。

 METIから須藤治課長と大谷公伸係長、NEDOからは大平英二主任研究員、渡辺秀明主査、奥谷英司主査が参加されました。

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 来賓からのご挨拶や遊佐PLからの「プロジェクトの総括」に続き、各センター長などからこれまでの研究の集大成のプリゼンテーションがありました。この総合研究会は内部だけの技術発表会ですので非公開でした。そのため研究の真の狙いや成果の真のインパクトといったことが聞けまして、内部にいる人間から見てもプロジェクト成果の大きさにあらためて驚かされました。竹内昌治Life BEANS、安達千波矢Life BEANS九州、杉山正和3D BEANS、伊藤寿浩Macro BEANS 各センター長、本部からは新田仁部長と福本宏副所長がプリゼンをしました。みんなNHKでやっているスーパープリゼンテーションさながらでした。

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 総合研究会では定番化しましたポスター展示のまえの「インデキシング」は各自持ち時間が1分ながら研究員の個性が満開状態で大いに聞きごたえがありました。約40人のプリゼンののち、ホワイエに張り出したポスターを前にして2部構成でポスター発表がありました。過去4回のポスター発表から生まれた研究員の交流を通じての異分野融合期待を今回も感じました。こんなに企業、大学、国研の研究員らが仲良く、深く、真面目に、真剣に交わる姿はこれを最後に恐らくもう見られないのではないかという思いに駆られました。

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 最後にプロジェクト全体を振り返っての講評がSPLの藤田博之教授からありまして改めてBEANSプロジェクトの存在した意味の重大さが研究員の中に沁みわたっていきました。プロジェクトが開始された2008年7月以前に2年間もかけて多くの関係者の多大な協力のもと、入念な準備作業がなされていたことなど、本プロジェクトの生みの親の青柳桂一研究調整監から明かされた余韻の中に総合研究会が終了しました。 (y.takei)


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2013年2月 7日 (木)

MEMS2013参加報告(BEANS本部)

■第26回IEEE/MEMS2012国際会議(26th IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems)が、2013年1月20日(日)~1月24日(木)の日程で、台湾・台北の台北国際コンベンションセンターにて開催されました。マイクロ・ナノテクノロジー分野では、MEMS国際会議は、隔年開催のTransducers(The International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems)と並び、最も重要な国際会議と位置付けられ、アメリカ、ヨーロッパ/アフリカ、及びアジア/オセアニアの3つの地域が持ち回りで毎年開催されています。第26回目にあたる今回の投稿論文数は776件(前回978件)であり、その中から66件のオーラル、240件のポスターが採択され、採択率は合わせて39%と厳選された論文が発表されました。地域別ではアメリカ98件(前回126件)、ヨーロッパ/アフリカ46件(前回54件)、アジア/オセアニアが162件(前回160件)であった。全体の論文数が減る中、アジア/オセアニアは開催地に近いこともあり、前年度と同様を件数を保っていました。


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■BEAMSプロジェクトからは、5件のポスター発表が採択されました。3D BEANSセンターの阿波嵜研究員は、分野11(Chemical Sensors and Systems)の中で、MEMSホットプレート上に形成されたナノフラクタル構造を持つ高感度ガスセンサの作製方法と評価について報告を行行いました。近本研究員(3D BEANSセンター)は、分野1(Fabrication Technologies)の中で、原子間力顕微鏡のプローブに用いるカンチレバーの先端への誘電泳動法を用いて単層CNTのバンドルの形成、及びそのように形成されたCNTカンチレバーの性能評価結果に関して報告を行いました。脇岡研究員(3D BEANSセンター)は、分野13(Micro-Fluidic Components and Systems)の中で、フェムト秒レーザによる改質とエッチングにより形成したナノ流路デバイスを用いたナノ液滴の形成、及び液滴中の酵素反応の蛍光観測結果に関する報告を行いました。Life BEANSセンターの高橋研究員は、分野12(Medical Microsystems)の中で、体内埋め込み蛍光ハイドロゲルを用いた携帯型血糖値(グルコース)モニタリングシステムに関する性能評価結果について報告しました。Macro BEANSセンターの張研究員は、分野10(Bio MEMS)の中で、医療・バイオ分野への応用を念頭にした、中空線維状基材内への体内埋め込み可能な温度センサの作製、及びその評価結果に関する報告を行いました。各ポスターとも多くの聴講者が訪れ、熱心な議論がなされていた。このように各分野の専門研究者との生の議論を通して、各研究員は、貴重な情報が収集でき、また、BEANS成果の広報もできたものと思われます。以下に、各研究員の発表の様子を写真で示します。

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■以下に、招待講演の概要、及びオーラルセッションとポスターセッションの件数を示します。


【招待講演】
(1) PHOTOSYNTHETIC AND NON-PHOTOSYNTHETIC PRODUCTION OF FUEL AND CHEMICALS
James Liao, University of California, Los Angeles, USA
 地球上での化石燃料を初めとするエネルギー資源の枯渇やCO2排出量の増加といった環境問題への解決することを念頭に、CO2を原料として炭素系燃料を生成し、太陽光のエネルギーを化学的エネルギーとして蓄積する技術に関する研究開発についての報告が行われました。まず、光合成バクテリアを用いて太陽光エネルギーから生物の各種活動のエネルギー現として用いられるATP(Adenosine TriPhosphate)やCO2固定のための等価当量の人工的な生成の可能性の検討結果が報告されました。具体的には、シアノバクテリアをモデルバクテリアとして用い、適当な生物化学的な駆動力が導入されたと仮定すると、このバクテリアがATPの原料となる各種化学物質の生成に利用できる可能性があることが示されました。また、従来の太陽光発電の課題として、電気的エネルギーを高密度に蓄積できないという問題が示され、それを解決する方策として、CO2を炭素のソース、太陽光発電等から生成された電力を入力エネルギーとして、電気化学的反応炉で各種化学物質ご合成することが提案され、その具体的検討結果、及び可能性が示されました。


(2) NANOPHOTONICS ENABLED BY PLASMONIC METAMATERIALS, NANOTENNAS, AND NANOLASERS
Shangjr (Felix) Gwo, National Tsing-Hua University, TAIWAN
 光学イメージングやリソグラフィ分解能を回折限界より高精細化するための技術として注目されているナノプラズモニクスに関して、3次元プラズモニック結晶やナノアンテナ、ナノレーザーといったデバイスの作製等、最新研究の状況が紹介されました。3次元プラズモニック結晶では、積層過程で各層の表面をプラズマによって酸化処理したAuNP/AgNP超格子フィルムを作製し、この超格子フィルムが近接場光の横波成分と縦波成分と強く結合する3次元プラズモニック結晶として働くことが示されました。また、反射率の減衰がみられる光の波長が超格子の層数に依存してシフトすることが確かめられ、広いスペクトル領域で3次元プラズモン結合の変調が可能であることが示されました。また、直線状に金のキューブを鎖状に配列することで形成したナノアンテナに対して、ある入射光の条件下で、近接場とプラズモン結合が起こり、空間中に光放射が行い(伝播損失がない)プラズモンの伝播モードが鎖中に形成されることが確認されています。ナノレーザーとしては、InGaN/GaNのナノロッドのバンドルやInGaNを核とした単一のInGan/GaNのナノロッドを用いたレーザ発振デバイスが紹介されました。これらのデバイスの特長として、構造的な安定性、熱的安定性、n型/p型双方のドーピングが可能なこと、レーザ発振のためのパンプ光がち小さくて済むこと(パンプ光が小さくても強度が得られること)、単色性に優れること等が強調されました。


(3) LAB ON A CHIP FOR BIOMEDICAL APPLICATION
Albert van den Berg, University of Twente, THE NETHERLANDS
  MEMS技術を用いて、これまで実験室で行われてきた生化学検査での酵素や基質の混合,反応,分離,検出の操作を比較的小さなチップ上に集積化し,これまで実験室で行われてきた一連の操作を自動するデバイス・システム(Lab on a Chip)の応用事例―リチウム濃度測定チップ、受精力検査チップ、血液脳関門(血管と脳との間での物質交換を行う機構)チップ―が行われました。リチウムチップは、双極性障害(躁状態と鬱状態を繰り返す疾病)の患者への唯一の症状緩和のために行うリチウム投与のために、日常的な血液中のリチウム濃度を測定することを目的としたものであり、既に市販製品として実用化されているとのことでした。ガラス毛細管によって作製された誘電泳動チップにより伝導度を計測し、リチウム濃度を計測するシステムの動作原理や性能評価等の紹介が行われました。また、受精力検査チップは、男性の精液中の精子の濃度や運動力を検査するものとして紹介されました。このチップについても高分子有機化合物によって作製され、非常に安価に販売されているとのことでした。また、血液脳関門チップは、様々な神経変性疾患に伴って起こる血液脳関門での機能阻害のメカニズム理解のため、実際の生体内に近い状況をチップ上で実現することを目的としたものとの紹介がありました。現状の血液脳関門チップは、マイクロ流路を用いて不死化した人間の脳内皮細胞が直線的に配置されたもので、血液脳関門モデルの機能が機械的、生化学的に変調できるようになっていました。


【オーラルセッション】 66件(20件);()内は日本からの発表件数
 セッション1(Bio MEMS): 3件(1件)
 セッション2(Bio Inspired MEMS): 4件(3件)
 セッション3A(Mechanical Sensors): 6件(1件)
 セッション3B1(Bio Sensors): 3件(2件)
 セッション3B2(Bio-Mimetic Actuators): 3件(2件)
 セッション4(Fabrication): 3件(0件)
 セッション5(Cell&Diagnosis): 3件(1件)
 セッション6A1(Power MEMS):  3件(0件)
 セッション6A2(High-Q Resonators): 3件(0件)
 セッション6B1(Bio-Inspired Structures): 3件(1件)
 セッション6B2(Cell Tissue Analysis): 3件(2件)
 セッション7(MicrofluidicsⅠ): 3件(1件)
 セッション8(Resonators): 4件(0件)
 セッション9A(Physical MEMS & Others): 6件(1件)
 セッション9B1(Microjets): 3件(2件)
 セッション9B2(Bio Probes): 3件(2件)
 セッション10A(Switches & Probes): 5件(0件)
 セッション10B(MicrofluidicsⅡ): 5件(1件)


【ポスターセッション】 240件(71件);()内は日本からの発表件数
 分野1(Fabrication Technologies); 27件(12件)
 分野2(Packaging Technologies): 3件(2件)
 分野3(Materials and Device Characterization) 27件(8件)
 分野4(Nano-Electro-Mechanical Devices and Systems): 8件(1件)
 分野5(Micro-Actuators): 16件(6件)
 分野6(Mechanical Sensors and Systems); 26件(4件)
 分野7(Physical MEMS (Optical, Thermal, Magneto)): 10件(3件)
 分野8(RF MEMS): 16件(2件)
 分野9(Energy Harvesting and Power MEMS): 23件(3件)
 分野10(Bio MEMS): 21件(8件)
 分野11(Chemical Sensors and Systems): 14件(8件)
 分野12(Medical Microsystems): 22件(7件)
 分野13(Micro-Fluidic Components and Systems): 27件(7件)


■MEMS2013における技術動向の一つの指標として、オーラルとポスターの発表件数の分析を行った結果を以下に示します。


【分野別動向】
 下図は、分野1~分野13で分類した発表件数の割合をグラフで示したものです。(但し、MEMS2013での分野10「Bio MEMS」と分野11「Chemical Sensors and Systems」は、前年度までは「Bio and Chemical Micro Sensors and Systems」(バイオ・化学センサシステム)」と一つの分野であったため、前年度までのデータと比較できるようにグラフではこれらの分野に関しては一つにまとめています。) 全体的な発表件数の傾向は昨年度までと同様です。発表件数が多い分野は、上位から順に、発表⑩バイオ・化学センサシステム、⑫マイクロ流体要素システム、⑥メカニカルセンサシステム、①製造技術、③材料・デバイス特性となっており、多少の順位の入れ替えはあるものの上位5位までは昨年度と同じ分野となっています。また、⑩バイオ・化学センサシステム、⑪医療用マイクロシステム、⑫マイクロ流体要素システムといった、バイオ・化学系の発表が占める割合が増加する傾向にあり、これらの分野の要素技術やデバイス開発がMEMS分野の大きな流れになっている近年の状況は、益々、強まっているものと思われます。また、将来の革新デバイス実現に向けた、新たな製造技術や材料の研究においても、新たな研究成果が継続して発表されており、これは、BEANSの目指すところと一致しています。

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【日本の研究機関の発表動向】
 また、各分野における日本からの発表件数の割合の推移を下図に示します。日本からの発表件数の割合が特に多い分野は、⑩バイオ・化学センサシステム、⑥メカニカルセンサシステム、①製造技術、⑪医療用マイクロシステム等となっています。また、全体の発表件数に占める日本の研究機関の発表件数の割合(全分野に対する日本の発表割合の平均値)である29.7%よりも低いが、⑫マイクロ流体要素システム、③材料・デバイス特性といったところも、比較的、発表件数の割合が高くなっています。(なお、②の実装技術は、今年の発表割合が高くなっているが、全体の発表件数が3件と少ないため、評価対象外としました。)逆に、発表が少ない分野としては、⑧RF-MEMS、⑨エネルギー・パワーMEMS、④ナノデバイスシステムとなっています。全体的な傾向としては、昨年度と同様であり、日本が苦戦している既存のセンサ・デバイス分野から将来の伸びが期待できるバイオ・化学センサや医療デバイス分野への研究の比重がシフトが固定化した模様です。一方、ナノデバイス分野は、デバイス機能の高度化等のため、今後も開発が必要であり、かつ、将来期待されるところですが、日本の出遅れが懸念されます。また、こエネルギー・パワーMEMS分野は、日本が強みとする省エネルギー技術を用いたナノ・マイクロ技術が展開により世界をリードする分野になると期待されますが、現状では、日本の存在感は比較的低いものとなっています。

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■次回は、2014年1月26日(日)~1月30日(木)の日程で、米国・サンフランシスコのハイアット・リージェンシーにて開催されます。アブストラクト締切りが2013年9月10日、採択通知が2013年10月25日となっています。

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2012年11月13日 (火)

MicroTAS2012参加報告

概要

 MEMS関連の最新研究動向の情報収集を行うことを目的に、2012年10月28日(日)から11月1日(木)の5日間の日程で、沖縄コンベンションセンター(沖縄県・宜野湾市)で開催されたμTAS2012(The 16th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences、チェアマン 東京大学生産技術研究所藤井 輝夫教授)に参加しました。

 本会議は、細胞やDNAをはじめとする様々な生化学分析に必要な機能を、微細加工技術を用いて微小なチップ上に集約したデバイスであるμTAS(Micro-Total Analysis Systems)に関連する技術を中心として、材料・プロセス制御、分析等といった要素技術からデバイス・システム設計といった応用までの幅広いフェーズに渡り、最新の研究状況の報告が行われ、議論が行われる場となっています。
 講演は、Plenaryセッション6件、Oralセッション89件、Posterセッション575件(筆者がプログラムのタイトルからカウントしたものです。μTAS2012事務局からは600件のポスターの採択がされたとの発表がされています。)なお、開催前の事務局の発表によると、本会議には昨年と同程度900名以上の研究者の参加が見込まれていた模様です。(900名以上という数字は、恐らく、事前登録の人数の状況から割り出したものと思われます。)なお、今年の会議では、2日目(11月30日(火))の午後には、”Microfluidics for Ocean Application”と題するSpecial Sessionが開催され、サンゴ礁の生態調査や独立行政法人海洋研究開発機構の科学掘削船「ちきゅう」による海底掘削調査への生化学分析の最新状況が報告されました。海洋国家としての独自性を出した企画で、μTAS会議に新たな風が吹きこまれたように思います。
 なお、沖縄コンベンションセンターは、沖縄県宜野湾市の海岸近くに位置し、周辺にはマリーナ、海浜公園、野球場、リゾートホテル等が並ぶ、非常に落ち着いた環境の中の施設でした。宿泊施設が多い那覇市内の中心地からもバスで30分~40分程度と比較的アクセスも良く、この辺りからバスで通った参加者も大勢いらしたように思われます。なお、本会議は、沖縄コンベンションセンターの施設(会議棟、展示棟、劇場棟)を全て利用して行われていました。3つの会場に挟まれた場所には比較的広い屋外スペースがあり、各セッションの合間にそこで休憩し、次のセッションに向けて気分をリフレッシュすることもできました。

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セッションの様子

 Oral Sessionは、3つのセッションがパラレルに開催される形式で、会期を通して多くの研究者が会場に詰めかけ、発表者の報告内容に対して、応用を見据えた技術性能等の技術の有用性に関する質疑応答等、熱い議論が交わされていました。筆者が選択・聴講したSessionのためか、今年の口頭発表の報告内容は、昨年度と比較して、要素技術的な課題解決に取り組むものが多く、デバイス化やシステム化に取り組むものが少なかった印象を受けました。
 また、報告中で実際に作製したデバイスのデモンストレーション・ビデオを紹介する発表も少なくなったように感じました。この分野の流れがより個々のデバイス実現に向けた基盤技術の開発に向かっているのか、日本での開催(日本人の発表が多くなっていること)が影響しているのかは不明ですが、来年以降の動向をみていく必要がありそうです。 また、ポスター発表でも、発表者と訪問者との間で熱心な議論が交わされていました。ここでも、全体的な方向として、生化学分析を用いた診断デバイスの集積化という大きな流れの中で、分析方法や分析対象である微粒子などの操作方法、流路の制御等、基盤的な要素技術の研究に関する発表が目立っていました。各要素技術については、昨年同様、まだまだ最適なものを探索しているという段階であるという印象を受けました。このことから、BEANSプロジェクトで行っている異分野融合というキーワードでのプロセス技術開発も、本会議で議論されている応用分野に十分に展開できるものであると考えられます。


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採択論文の動向

<採択論文の分野>
 本会議の分野全体の動向をみるため、ポスターに採択された論文のカテゴリ別の件数を下図にまとめます。ここで、論文のカテゴリ分けは、μTAS2012のプログラムに掲載されている情報に従っております。論文数が最も多いカテゴリは、細胞や組織の培養、分析といった応用に関する研究である”Cell & Tissue Application”が最も多く、医療・ヘルスケア分野の検査・診断といった応用に関する”Life Science Application”、マイクロ・ナノ流路技術による粒子の操作やデバイスの作製に関する”Microfluidics and Nanofluidics”が続いています。昨年の会議とは、カテゴリが異なっているため、一概には比較できませんが、マイクロ流路技術や医療・ヘルスケアへの応用という切り分けでの研究が多い傾向は変わっていないように思います。



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<国別の採択論文数>
 以下に、OralとPoster Session(Plenary/Special Sessionは除く)の採択論文について、第一筆者の所属機関の国籍別に整理したグラフを示します。第一位は、開催国である日本で194件、米国(155件)、韓国(64件)、台湾(43件)、カナダ(26件)となっており、5位までをアジア勢と北米が占めています。昨年と比較して、全体的な傾向は大きく変わりませんが、昨年の開催国の米国が大きく数を減らし、代わりに今年の開催国である日本が件数を伸ばし順位が入れ替わった他、台湾からの論文数の増加も目立っています。  なお、グラフは示していませんが、Oral Sessionの採択論文だけに注目すると、1位は米国で全体の約4割を占める34件となっており、日本(22件)、韓国(5件)、カナダ(5件)、フランス(5件)と続いています。


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<採択論文数上位の研究機関>
 以下に、Oral SessionとPoster Sessionの採択論文について、第一筆者の所属機関の上位10位までを示します。

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BEANSプロジェクト・テーマの報告
 BEANSプロジェクトからは、以下の3件の論文がPoster Sessionに採択されました。

M.2.37 CONTINUOUS EXCHANGE OF BUFFERS OVER A LIPID BILAYER MEMBRANE FORMED IN A GLASS MICROFLUIDIC DEVICE Y. Watanabe1,3, and S. Takeuchi1,2, 1 BEANS Project, JAPAN, 2The University of Tokyo, JAPAN, and 3Olympus Co, JAPAN

W.2.57 A TRANSDERMAL CONTINUOUS GLUCOSE MONITORING SYSTEM WITH AN IMPLANTABLE FLUORESCENT HYDROGEL FIBER AND A WEARABLE PHOTO-DETECTORM. Takahashi1,3, Y. J. Heo2, T. Kawanishi1,3, T. Okitsu2, and S. Takeuchi1,2, 1 BEANS Project, JAPAN, 2The University of Tokyo, JAPAN, and 3TERUMO Co., JAPAN

W.3.95 FABRICATION OF MICROCHANNEL NETWORK IN LIVER TISSUE SPHEROIDS,N. Kojima1,2, S. Takeuchi1,2, and Y. Sakai1,2, 1 University of Tokyo, JAPAN, and 2BEANS Project, JAPAN

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各賞受賞者

Art in Science Award
 Stretching the Rainbow, Yi Zhang, Johns Hopkins University

Lab on a Chip Widmer Award

 T.2.43 Single Cell ELISA, Klaus Eyer, Swiss Federal Institute of Technolog(ETH) Zurich

■Young Researcher Poster Award

MONDAY
 M.8.182 Microfluidic Sample Preparation of Pleural Effusions for Cytodiagnostics, Albert J. MachUniversity of California, Los Angeles

TUESDAY
 T.7.159 Rapid Quantitation of C-Reactive Protein Agglutination with Acoustic-Enabled Microvortices. Arlene Doria, University of California, Irvine

WEDNESDAY
 W.4.120 Microfluidic Fabrication of Polymerized Ionic Liquid Microgels, Zahra Barikbin, National University of Singapore

Lab on a Chip / Corning Inc. Pioneers of Miniaturization Prize
 Prof. Andrew deMello, Swiss Federal Institute of Technolog(ETH) Zurich

Analyrical Chemical Young Innovator Award
 Prof. Amy Elizabeth Herr, University of California, Berkeley

次回開催
 次回のμTAS2013は、University of FreiburgのRoland Zengerle教授をチェアマンとして、2013年10月27日(日)から31日(木)の5日間の日程で、Messe Freiburg(Freiburg, Germany)で開催されます。
 なお、本会議の最後に、今年のチェアマンの藤井輝夫教授(東京大学生産技術研究所)から、来年の会議が無事に成功するよう沖縄の守り神(魔除け)であるシーサーがRoland Zengerle教授に贈られましたので、来年の会議も今年同様、盛況となることは間違いないかと思います。

その他
 本会議では、4日目の31日(水)の夕方には、会場から離れた首里城公園(沖縄県那覇市)内にある首里社館で、Social Event(懇親会)が行われました。筆者は、参加しませんでしたが、開催前の会場の様子を写真におさめましたので、掲載します。当日は、あいにくの雨でしたが、沖縄の美味しい食事とお酒、民族舞踊等を満喫されたことかと思います。

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2012年11月 6日 (火)

電気学会センサ・マイクロマシン部門大会 第29回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム参加報告

参加概要

 マイクロマシン・ナノ分野の研究動向に関する情報収集を目的として、2012年10月22日(月)から10月24日(水)の3日間の日程で、北九州国際会議場および西日本総合展示場(福岡県北九州市)にて開催された電気学会センサ・マイクロマシン部門主催 第29回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウムに参加しました。
 本シンポジウムは、第4回「マイクロ・ナノ工学シンポジウム」(日本機械学会マイクロ・ナノ工学部門主催)、第4回「集積化MEMSシンポジウム」(応用物理学会集積化MEMS技術研究会主催)、第2回マイクロ・ナノ産業化シンポジウム(電気学会・日本機械学会・応用物理学会共催、日本学術会議講演)と同時開催され、学・協会を超えたグループ間の情報の交換、アイデアの討議の場としてセンサ・マイクロマシン技術のさらなる発展を目標に開催される日本最大のシンポジウムで、国内におけるマイクロマシン・ナノ分野の研究の最新動向が幅広く収集できる絶好と機会となっています。今回は参加者約600名(事務局発表)の参加者の間で連日活発な議論が交わされました、
 筆者は、シンポジウムの4つの招待講演の他、「ケミカルセンサ」(22日 15:40-16:40),
「フィジカルセンサⅡ」(22日 17:00-18:00、17:00-18:00)、「企画セッション ヘルスケアとバイタルサインモニタリング1・2」(23日 10:20-12:00、13:00-15:00)、「Bio MEMSⅠ」(24日 10:20-12:00)、「企画セッション グリーンセンサ」(24日 13:00-15:00)の4つのセッション、およびポスターセッション(23日 15:20-17:00)を聴講し、センシングに関する要素技術の他、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアといった社会的要請が高い分野へのセンサの応用展開に関する最新動向の収集を行いました。また、本シンポジウムでは、新たな試みとして「センサ・マイクロ・ナノ領域への貢献」と題したランプセッション(23日 17:30-19:00)が催され、電気学会、日本機会学会、日本材料学会、電子情報通信学会、エレクトロニクス実装学会といった学会を代表するパネリストによって、各学会の活動の紹介や学会を超えた取り組みに関する現状、課題についての熱い議論が交わされました。夕方の開催で、軽食と軽いアルコールが供されたことも手伝い、学会活動の在り方、研究・ビジネスの枠組み等について、アカデミックと産業界の枠を超えた意見交換がざっくばらんに行われたかと思います。

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各セッションの模様
 以下に、筆者が聴講した各セッションの模様を報告します。

■招待講演
 以下の4件の招待講演が行われました。

Printed Intelligence – Embedding in and Showing on Future Electronics Product
(Harri Kopola氏、VTT Technical Research Center for Finland)

プリンテッドインテリジェンス(印刷技術を利用したとしたコンポーネントの集積化)に関するVTTの取り組みについての講演が行われました。 医療分野、エレクトロニクス分野、エネルギー・ハーベスティング分野における未来のアプリケーションを想定し、材料からプロセス、デバイスまでをシームレスに取り組んでいる様子が紹介されました。

次世代燃料電池における現象解明と理論材料設計(小山通久 教授 九州大学)

 固体酸化物燃料電池(SOFC)の電極における三相界面反応機構の解明に対する理論的なアプローチに関する取り組みに関する講演が行われました。講演の中では、原子・分子スケールでの化学反応とμメートルスケールでの輸送現象の連携の必要性が強調され、第一原理計算を活用した反応シミュレーション、大規模分子動力学計算による分子モデリング、格子ボルツマンシミュレーションによる電流-電圧特性の導出等、ミクロからマクロスケールにわたるシミュレーションの取り組みについての紹介が行われました。

わが国の医療機器産業の現状と将来展望(三澤裕 氏、テルモ株式会社)

 医療機器分野の市場や製品開発における現状が述べられた上で、今後の医療機器産業の展望について講演が行われました。講演においては、様々な情報を提供して頂きましたが、その中でも特に、世界的に拡大傾向にある医療機器の現状や日本の高効率・高品質な医療という強みを好機として捉え、海外進出を含めた積極的な展開が重要であること、そのために医療現場のニーズを新しい技術を商品にする力、市場を創る力という視点が重要であるといったメッセージが強く印象に残りました。

生き物としての細菌のすがた(吉田真一 教授、九州大学)

 細菌学の視点から、生物浄化、発酵食品への利用、感染症といった微生物と人間の関わり、環境センシングの仕組み、走行性・環境に対するストレス応答といった生き物として細菌のすがた、細菌の培養・検知に関する講演を頂きました。一見、マイクロマシンと無関係に見える細菌の世界からも、「予測のできない環境の変化を認識し、それに応じて自らを適切に行動させる操作情報を自己創出する」といった点で共通点が見いだされ、今後のセンサの研究開発にも何らかのヒントが与えられたかと思います。また、細菌学の研究から、微生物を構造や機能だけでなく、生き物としての相(すがた、対象全体を感覚的に把握する)と捉えるというニーズが提供され、センシングに関する大きな課題が与えられたのではないかと思います。

■ケミカルセンサⅠ(22日 15:40-16:40)
 細孔形成逆オパール構造を用いた高比表面積化による高感度ガスセンサの開発(BEANS研究所他)、分子ふるい吸着・分離により選択的に匂いを検知するセンサの開発(九州大学)、蛍光消光を用いて匂いを可視化するフィルムの開発(九州大学)といった化学物質(エタノール等のガスやにおい分子)の検出に関する研究テーマについて、報告が行われました。なお、匂いセンサの講演では、食品の安全や環境といった視点から匂い検知へのニーズについて言及されていましたが、数多くの匂い分子の種類への対応等の乗り越えるべき多くの技術的な課題があるとの所感を持ちました。

■フィジカルセンサⅡ(22日 17:00-18:00)
 曲率を変えることで焦点距離を合わせる距離センサの開発(東京大学)、MEMS共振器を用いたリングレーザの開発(兵庫県立大学他)、振動型MEMSジャイロスコープで動作レンジの限界をもたらす非線形現象の原因究明(立命館大学)に関する報告が行われました。距離センサでは、内視鏡等の検査機器への応用を想定していましたが、聴講者から最終デバイスに適用するためのコンポーネントの要求性能(サイズや精度、信頼性、駆動電圧等)に関する質問が寄せられており、いくつかの性能は今後も検討が必要であるとの印象を持ちました。また、振動型MEMSジャイロスコープでは、効率的にレーザー光の強度を得るため、エッチング加工を最適化し、ミラー反射面の平滑化を行ったという内容の報告でした。また、振動型MEMSジャイロスコープでは、非線形現象をもたらす原因の候補として、内部構造とばね構造等について調査が行われており、漸硬ばね硬化によって非線形現象が引き起こされている可能性が示唆する結果が報告されていました。

■ヘルスケアとバイタルサインモニタリング1/ 2(23日 10:20-12:00 / 13:00-15:00)
 本セッションは、今後、ますます社会的なニーズが大きくなると考えられる医療・ヘルスケア分野に対するセンシング技術の展開についての企画セッションとなっていました。セッションの構成は、センサのユーザであるアプリケーション企業からの講演が3件、バイタルサインモニタリングの技術開発に関する報告が5件となっていました。アプリ側からは、心不全患者の見守り、住宅内でのヘルスケアモニタリング、がんの早期発見といった事例を挙げて、バイタルサインモニタリングの活用の現状が議論されました。主な課題としては、どのようなバイタルサインを取得し、ユーザに生活改善や健康促進等のメリットを提供していくのか、医療現場のニーズとのギャップをどのように埋めていくのかといったことが挙げられていました。

■Bio MEMS(24日 10:20-12:00)
 人工系脂質二重膜を用いたタンパク質機能解析デバイスの開発(神奈川県科学技術アカデミー他)、MEMS技術を利用した高速DNAファイバ解析デバイスの開発(香川大学他)、MEMSファブリペロー干渉計を用いた非標識タンパク質センサの開発(豊橋技術科学大学)、水晶振動子微小天秤センサを用いた細胞由来のリボソームの膜たんぱく質―リガンド相互作用の測定(九州工業大学)、細胞を用いた多チャンネル化学量センサのための電極一体型細胞アレイ化流路の作製(豊橋技術科学大学)といった生体材料や生体反応の検出、生体材料を用いたセンサ開発に関する報告が行われました。

■グリーンセンサ(24日 13:00-15:00)
 本セッションは、NEDO「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」(2011年~2014年、http://nmems.or.jp/gsnpj/)に関連した企画セッションであり、MEMSセンサを利用した省エネルギー・CO2削減のための取り組み事例、プロジェクトの概要の紹介、センサ用低消費電力回路の開発状況の報告が行われた。MEMSセンサの活用としては、クリーンルームの省エネソリューション、業務用車両の低燃費化に向けたセンシング、コンビニエンスストアによるグリーンセンサネットワークの実証、空調機器の省エネ運転へのソリューション提供といった事例が紹介され、低消費電力化、高速動作、集積回路とのマッチングといったセンサ性能に対する課題の他、処理負荷の低減や費用対効果のアピールといった省エネソリューションを提供するシステムの課題についても触れられていました。なお、セッションには、シンポジウムの最終日最後にもかかわらず、100名近くの聴衆者が集まっており、関心の高さが伺えました。

BEANSプロジェクト・テーマの報告及び展示
 BEANSプロジェクトからも以下の口頭発表9件、ポスター発表6件の発表がありました。また展示会場には、今回も恒例の展示ブースが設営され、BEANSプロジェクトも参加して来場者にアピールしました。

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■口頭発表
 1C4-1 ディップコーティング法により作製した細孔形成逆オパール構造ガスセンサ(阿波嵜 実1、相馬伸一2、諸貫信行3、杉山正和4、1BEANSプロジェクト 3D BEANSセンター、2富士電機(株)、3首都大学東京、4東京大学)

 2B2-2 プラズマダメージを抑制した中性粒子ビームエッチングのMEMSにおける効果検証と各種シリコン表面との比較(西森勇貴、植木真治、三輪和弘、杉山正和、寒川誠二、橋口 原、BEANS研究所)

 2B2-4 ペプチドアプタマーを利用したカーボンナノチューブデバイス構築プロセスの検討(嶋田友一郎1,2、梅津光央2,3、近本拓馬2、杉山正和1,2、藤田博之1,2、1東京大学、2BEANS プロジェクト 3D BEANS センター、3東北大学)

 2D2-3 ガラスマイクロ流路による脂質膜の形成(渡辺吉彦1,3、竹内昌治1,2、1BEANSプロジェクト Life BEANSセンター、2東京大学、3オリンパス(株))

 2D3-5 完全埋め込み型血糖センサの血糖測定精度評価(高橋正幸1,3、許 允禎2、川西徹朗1,3、興津 輝2、竹内昌治1,2、1BEANSプロジェクト Life BEANSセンター、2東京大学、3テルモ(株))

 3E3-1 大面積デバイスのための繊維状基材への連続微細パターン高速成形(高木秀樹1,2、大友明宏1,3、銘苅春隆1,2、小久保光典1,3、後藤博史1,3。1BEANSプロジェクト Macro BEANSセンター、2(独)産業技術総合研究所、3東芝機械(株))

 3E3-6 環境発電アプリケーションのための低共振周波数圧電ポリマーシートの開発(山下崇博1、高松誠一1,2、小林 健1,2、伊藤寿浩1,2、1BEANS研究所 Macro BEANS センター、2(独)産業技術総合研究所)

 3F3-5 マルチ耐摩耗プローブによるナノパターンの並列描画(李 永芳1、冨澤 泰1、古賀章浩2、杉山正和3、藤田博之3、1BEANS研究所、2(株)東芝、3東京大学)

 3F3-6 ナノスケール摺動電気接点における接触抵抗安定性と耐摩耗性の二律背反(冨澤 泰1,2,3、李 永芳1,2、古賀章浩1,2、年吉 洋3、安藤泰久1,4、藤田博之1,3、1BEANS研究所 3D-BEANS センター、2(株)東芝、3東京大学、4東京農工大学)

■ポスター発表

 SP1-5  中性粒子ビームエッチングモデルと加工形状解析(大塚晋吾1、渡辺尚貴1、岩崎拓也1、小野耕平1、入江康郎1、望月俊輔2、杉山正和3、久保田智広4、寒川誠二4、1みずほ情報総研(株)、2(株)数理システム BEANS 研究所、3東京大学、4東北大学)

 SP1-6  形状シミュレーションによる塩素中性粒子ビームエッチングの加工形状の検討(望月俊輔1、大塚晋吾2、渡辺尚貴2、岩崎拓也2、小野耕平2、入江康郎2、三輪和弘3、久保田智弘3,4、杉山正和5、寒川誠二4、1(株)数理システム、2みずほ情報総研(株)、3BEANS研究所 3D BEANS センター、4東北大学、5東京大学)

 SP1-7  開放系でのプラズマプロセス実現に向けた雰囲気制御技術開発(内藤皓貴1、紺野伸顕1、徳永隆志1、伊藤寿浩1,2、1技術研究組合BEANS研究所 Macro BEANS センター、2(独)産業技術総合研究所)

 SP1-14 シミュレーションによる熱電薄膜へのハーマン法適用の検討(谷村直樹1,2、入江康郎1、宮崎康次2,3、1みずほ情報総研(株)、2BEANS研究所 Life BEANS センター九州、3九州工業大学)

 SPB2-14 高い電流利得を有するVibrating-Body Field-Effect Transistorの提案(植木真治1,2、西森勇貴1,3、三輪和弘1、今本浩史2、久保田智広1,4、杉山正和1,5、寒川誠二1,4、橋口 原1,3、1BEANSプロジェクト3D BEANSセンター、2オムロン(株)、3静岡大学、4東北大学、5東京大学)

 SPB6-6 ガス透過性膜と3次元パターンコラーゲンゲルを利用した薬物代謝分析細胞チップ(松井 等1、竹内昌治2、長田智治2、藤井輝夫2、酒井康行2、1BEANS研究所、2東京大学)

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各賞受賞者
 なお今回、BEANSプロジェクトからは残念ながら受賞を逃しましたが、各賞受賞者は以下のとおりです.

■五十嵐賞:
魚の鮮度測定のためのプラグ型マイクロデバイス(小谷内絵梨1、伊藤大輔1、村田裕子2、村田昌一2、鈴木博章1、1筑波大学、2水産総合研究センター)

■奨励賞:
細胞由来リポソームを用いた膜タンパク質-リガンド相互作用のQCM計測(鈴木孝明1、寺尾京平1、鈴木博之1、新田祐幹1、高尾英邦1、下川房男1、大平文和1、平丸大介2、小寺秀俊2、1香川大学、2京都大学)

■最優秀技術論文賞:
MEMS技術を利用した高速DNAファイバ解析デバイスの開発(鈴木孝明1、寺尾京平1、鈴木博之1、新田祐幹1、高尾英邦1、下川房男1、大平文和1、平丸大介2、小寺秀俊2
1香川大学、2京都大学)

■優秀技術論文賞:
細胞を用いた多チャンネル化学量センサのための電極一体型細胞アレイ化流路の作製(三澤宣雄1、李 賢宰1、澤田和明1,2、1豊橋技術科学大学、2科学技術振興機構)

■最優秀ポスター賞:
 Dynamic Measurement of Surface Texture of Paper Using the Multi-Axial Tactile Sensors with Micro-Cantilever(K. Watanabe, M. Sohgawa, T. Kanashima, M. Okuyama, H. Noma、Osaka Univ., Advanced Telecommunication Research Institute International)

■最優秀技術展示賞:
NTTアドバンストテクノロジー株式会社

次回開催
 第30回の開催となる来年度の「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウムは、仙台国際センター(宮城県仙台市)にて、2013年11月5日~7日の3日間の日程で開催される予定となっています。

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2012年10月18日 (木)

BEANSプロジェクト成果(特許)のワンストップ・ライセンスのガイドラインを策定!

産官学連携研究コンソーシアムである技術研究組合BEANS研究所の知的財産権委員会は、BEANSプロジェクトの研究成果である特許権(出願中のものを含む)の実施を希望する事業者(サブライセンシー)にライセンスする仕組みを構築し、実施料の設定方法などライセンスの基本的な考え方を示したガイドラインを策定しました。

 

ライセンスの仕組みは「図」に示すように、BEANSプロジェクトに参加した個々の企業・大学・研究機関から、ライセンスを許諾する権利(再実施許諾権)の授与をBEANS研究所が受けることにより、プロジェクト成果である特許権をBEANS研究所に集積し、さらに、サブライセンシーの利用目的に応じた複数の特許権を選択するパッケージ・ライセンスの方式を採用することによって、ワンストップ・ライセンスができるようにしました。この仕組みにより、サブライセンシーは、個々の特許権者と複数のライセンス契約をしなくてはならない手間を省くことができます。


BEANS研究所では、BEANSプロジェクトが終了する来年3月までに「成果管理・ライセンス機関」を組織し、このライセンス業務を承継する予定です。

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図1.BEANSプロジェクト成果(特許権)利用の仕組み

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 図2.ライセンス契約の流れ

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2012年8月 8日 (水)

第6回BEANSプロジェクトセミナー開催報告

◆第6回BEANSプロジェクトセミナー(主催:(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/技術研究組合BEANS研究所)が、総合イベントマイクロナノ2012の最終日7月13日(金)午後、東京ビッグサイト東2ホール内特設会場にて開催されました。

◆異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト(BEANSプロジェクト)は、2008年度にスタートし4年が経過しました。今年度は、いよいよ本プロジェクトの最終年度を迎え、研究開発成果の収穫・展開に向けた取り組みが加速しております。本セミナーは、最新成果についての発表の場として回数を重ねてきましたが、今回は最終回ということもあって、これまでのプロジェクト活動の総括を含めて発表が行われ、200席の会場がほぼ満席になるほどの盛況のうちにプログラムが進行しました。

◆セミナーのオープニングでは、主催者を代表して(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構の倉田理事から挨拶がありました。その中で、BEANSプロジェクトは、当初、革新的製造技術の開発を目的としてスタートし、後半は革新的デバイスへの適用を想定した技術開発に重点を移してきたが、最終年度を迎え、狙い通り注目される成果も多々創出され、今後は、それらの実用化に向けた取り組みが重要であるとの指摘がありました。

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◆続いて、プロジェクトリーダーの挨拶では、技術研究組合BEANS研究所の遊佐所長から、BEANSプロジェクト全体の概要と全期間を通した研究開発活動の総括、及びプロジェクト横断的な取り組みであるシミュレーション技術開発、知識データベース構築、さらにプロジェクト終了後の知財成果の展開について説明がありました。

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◆セッション1「BEANSプロジェクト成果報告」では、開発テーマ毎に設けられた4つのBEANSセンターの各センター長から、最新成果、及びこれまでのプロジェクト活動の総括について報告がありました。最終年度を迎え、プロセス、材料等の開発が進み、デバイスを試作・実証できるようになってきたことから、報告内容も裏付けのある、インパクトのあるものとなっていました。また、各テーマとも当初は試行錯誤であったが、最近は最終目標の達成も視野に入ってきた旨、また、技術成果以外にも人材育成や人的ネットワーク構築も大きな成果であったなど、プロジェクトを通しての感想が述べられました。

 ◇各センターからの報告タイトルと発表者(センター長)は以下の通り

  ①Life BEANSセンター 
   「Life BEANSの拓く健康社会」 
    東京大学 生産技術研究所 准教授
     (Life BEANSセンター長) 竹内 昌治

  ②Life BEANS九州センター
    「有機分子のナノ構造・配向制御が創り出す次世代有機・熱電デバイス」
     九州大学 未来化学創造センター 教授
      (Life BEANS九州センター長) 安達 千波矢

  ③3D BEANSセンター
    「ナノの合わせ技がもたらすMEMSプロセスの新地平」
     東京大学 大学院工学系研究科 准教授 
      (3D BEANSセンター長) 杉山 正和

  ④Macro BEANSセンター
    「メーター級大面積マイクロシステムを実現する集積化技術」
     (独)産業技術総合研究所集積マイクロシステム研究センター 副センター長 
      (Macro BEANSセンター長) 伊藤 寿浩

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◆セッション2「特別講演」では、BEANSプロジェクトのサブプロジェクトリーダーである東京大学生産技術研究所の藤田教授から、「BEANS:加工寸法や材料を超えた異機能集積プロセス技術」と題して講演がありました。その中で、BEANSにおける異分野融合とは、スケールの融合、材料の融合、及びプロセスの融合であることを具体的に示され、BEANSプロジェクトは、この三つの融合の系統的な研究を通じて、各個の具体的な研究成果を基に異分野融合プロセスの体系を確立するものであるとの纏めがありました。

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◆最後に、技術研究組合BEANS研究所の青柳 開発調整監から、閉会の挨拶として、これまでのプロジェクト活動に対するご支援への感謝の念と、知財成果についてはプロジェクト終了後に有償開放することをお約束するとの言葉で、3時間に及ぶセミナーが終了しました。


◆本プロジェクトセミナーの発表資料は、以下のBEANSプロジェクトHPにてご覧いただけます。
BEANSセミナーURL:   http://www.beanspj.org/seminar/index.html

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日本を元気にする産業技術会議シンポジウム「日本の競争力を創造する化学産業の将来展開」@日経CR  【BEANSパネル展示報告】

 7月25日、独立行政法人産業技術総合研究所主催の表題のシンポジウムが開催されました。出席者は約300人。その場で現在、産総研が絡んでいる技術研究組合のポスター展示会があり、「技術研究組合BEANS研究所」としてパネル展示およびパンフレット等の配布を行ないました。パンフレットは約100部配布しました。

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「日本の産業界に再び活力を取り戻し、我が国が世界のイノベーションのハブとして機能し、ひいては国内の雇用創出に繋げるためには、今こそ産学官連携の在り方を見直し、互いの機関がが有する確かな技術、優れた人材、最先端の設備を結集する必要があります」ではじまる本シンポジウムでは産総研が一組合員として技術研究組合に参画している事例報告がありました。

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 太陽光発電技術研究組合(PVTEC)、技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)、技術研究組合FC-Cubic、次世代化学材料評価技術研究組合 CEREBA、技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)などに交じって我ら「技術研究組合BEANS研究所」も来場者に紹介しました。

 はやく日本を元気にするには我々は何をすべきか真剣に考えさせられた午後でした。 (yt)

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第23回マイクロマシン/MEMS展@東京ビッグサイト【BEANS展示ブース報告】

  7/11-13/2012に東京ビッグサイトにて開催されました。5年間のBEANSプロジェクトも今年は最終年度となりました。フィナーレを盛り上げるかのように会場に過去最大規模のブースを出展し、ブース全体にゆったりした見学動線を実現し、最新の研究成果を具体的に「見える化」することに注力しました。BEANSのシンボルマークとなりました「豆の木モニュメント」は地球上から健やかに伸び、ついに雲を突き破って成果の実を結びさらに発展していくさまを表現しました。

 

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Dcm_6052_6◆来場者数:展示会全体では3日間で10,985人の入場者がありました。(昨年はSURTECHも併設されており、12,861人でした)  ブース内で配布しましたパンフレットなどから推定しますとBEANSブースへの来場者は約2,000人でした。

 
◆MacroBEANSでは「メートル級タッチセンサ」を実演しました。ナノ加工をした繊維状基材で作製したタッチセンサーシートを用いて人の動きを検知し、ゲーム分野やリハビリ・フィットネス分野、介護分野への応用が期待できることを紹介しました。さらに各種センサや太陽電池、LED照明を組込み実際に動作する「究極のエコハウス」も登場させ人気を博しました。

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  ◆LifeBEANS九州からは有機半導体薄膜を駆使した太陽電池や熱電デバイス、そして有機EL照明など出品しました。有機ELでは光取り出し効率の最高記録レベルの達成などナノ構造により飛躍的に性能向上がはかられた成果も紹介しました。

 

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◆3D BEANSでは「3D構造に微粒子を側壁のみに配列に成功」「トレンチ構造の粒子配列をガスセンサに応用し感度向上」「中性粒子ビームによる超低損傷・平滑エッチングの実証」「耐摩耗特性に優れたマイクロプローブ」「フェムト秒アシストエッチングによる3次元ナノ構造形成」などナノ加工技術の最前線を紹介しました。

 


◆LifeBEANSからは「3次元肝細胞組織構築」とそれを用いた薬物代謝解析を本邦初の3D実写映像で紹介しました。これは動物実験を減らした創薬加速を狙っています。またこれまでテレビや新聞で報じられてきました「完全埋め込み型血糖値センサー」の実用化に向けた最新の進捗状況も紹介しました。

 
◆これまで研究開発において裏方に徹してきた「シミュレーション技術」についてはBEANSにおけるその貢献度から特集を組み「革新的未来技術の創造に貢献するBEANSシミュレーション」と題してその実施体制も含めて成果の実例を紹介しました。

 
◆最後に、BEANSが各方面から注目される所以のひとつであります国のプロジェクトとしてはユニークな「知財成果展開への取り組み」を紹介、BEANSで生まれた特許群はBEANSプロジェクトが来春終了したのちも広く使われていき、我が国の産業活性化につながることを目指した活動を紹介しました。

 

  BEANSプロジェクトとしましては、これまでマイクロマシン/MEMS展には2009年度から4回にわたり出展してきました。企業や大学のBEANS研究員みずからが説明員となり、自身が作成したパネルの前で来場者からの期待や反響をじかに肌で感じ、研究内容を研ぎ澄まし、研究を加速させていくことを狙いました。そのような意味でも、BEANSプロジェクトの当事者である研究員のみならず、日頃からさまざまにご支援をいただいている多くの関係各位とりわけ今回ブース展示にお越しいただき質問やコメントを説明員らに投げかけていただきました多くの皆様には心より深く感謝いたします。

                                                                                                       (Takei)

 

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2012年2月16日 (木)

MEMS2012 報告(BEANS本部)

★第25回IEEE/MEMS2012国際会議(25th IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems)が、2012年1月29日(日)~2月2日(木)の日程で、フランス・パリのMarriott Rive Gauche Hotel & Conference Centerにて開催されました。マイクロ・ナノテクノロジー分野では、MEMS国際会議は、隔年開催のTransducers(The International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems)と並び、最も重要な国際会議と位置付けられ、アメリカ、ヨーロッパ/アフリカ、及びアジア/オセアニアの3つの地域が持ち回りで毎年開催されています。第25回目にあたる今回はヨーロッパ/アフリカ地域が担当で、フランスでは初めての開催となりました。投稿論文数は、過去最多の978件(前回886件)、その中から45件のオーラル、298件のポスターが採択され、採択率は合わせて35%と厳選された論文が発表されました。地域別ではアメリカ126件(前回146件)、ヨーロッパ/アフリカ54件(前回61件)、アジア/オセアニアが160件(前回136件)で、ヨーロッパ開催にもかかわらずアジアの躍進が目立ちました。国別ではUSAが1位で119件、日本が2位で84件、以下、台湾29件、韓国21件、中国14件、フランス12件、シンガポール10件の順で、日本は健闘しています。また,事前登録参加者は、アメリカ地域206名(前回228名)、ヨーロッパ/アフリカ地域237名(前回128名)、アジア/オセアニア地域281名(前回204名)で、ここでもアジアの勢いを感じました。次回は、2013年1月20日(日)~1月24日(木)の日程で、台湾・台北のTaipei International Convention Center (TICC)にて開催されます。アブストラクト締切りが9/10、採択通知が10/19、最終原稿締切りが11/23となっています。

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★BEAMSプロジェクトからは、4件のポスター発表が採択されました。Life BEANSセンターの高橋研究員は、分野8(Medical Microsystems)の中で、蛍光血糖値センサなどの埋め込みデバイスに不可欠な要素となる皮下組織の炎症を抑制するナノパターン付きハイドロゲルについて発表しました。3D BEANSセンターの西森研究員は、分野1(Fabrication Technologies)の中で、プラズマ起因のSi表層に生じる機械的損傷を中性粒子ビームエッチングにより低減できる可能性について、カンチレバーアレイを形成したウエハを用いて評価した結果を発表しました。Macro BEANSセンターの高松研究員は、分野1(Fabrication Technologies)の中で、テキスタイルデバイスの製造に要求される高い導電性を有するポリマーのパターニング技術について、UVナノインプリントによる表面改質(親/疎水化)とエチレングリコールによる2次ドーピング処理の有効性について発表しました。また、Macro BEANSセンターの山下研究員は、分野3(Materials and Device Characterization)の中で、テキスタイルデバイスに要求される耐久性の高い柔軟な接点として開発中の、シリコーンエラストマーに導電性ポリマーをコーティングした新規接点構造について発表しました。各ポスターとも多くの聴講者が訪れ、熱心な議論がなされていました。このように各分野の専門研究者との生の議論を通して、各研究員は、貴重な情報が収集でき、また、BEANS成果の広報もできたものと思います。以下に、各研究員の発表の様子を写真で示します。(各研究員からもブログを発信しておりますので、参照ください)

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★以下に、招待講演、及びオーラルセッションとポスターセッションの構成、件数を示します。概要、トピックスにつきましては、追って報告したいと思います。

【招待講演】
(1)CHALLENGES AND EMERGING DIRECTIONS IN SPINTRONICS
  Albert Fert
  UMP CNRS/Thales, Palaiseau and Université Paris-Sud,
  Orsay, France

(2)SEMICONDUCTOR DEVICES INSPIRED BY AND INTEGRATED WITH BIOLOGY
  J.A. Rogers
  Department of Materials Science and Engineering, University of Illinois,
  Urbana/Champaign, USA

(3)MICROROBOTS IN SPOTLIGHT FOR EVOLUTION OF BIOMEDICINE
  F. Arai
  Department of Micro-Nano Systems Engineering, Nagoya University,
  Nagoya, Japan

【オーラルセッション】 45件(11件) ()内は日本からの発表件数
  ●セッションⅠ (OPTICAL MEMS): 3件(0件)
  ●セッションⅡ (RF MEMS) : 4件(0件)
  ●セッションⅢ (POWER MEMS) : 5件(0件)
  ●セッションⅣ (FABRICATION) : 4件(1件)
  ●セッションⅤ (ACTUATORS) : 4件(2件)
  ●セッションⅥ (BIO & CHEMICAL MICROSYSTEMS) : 6件(2件)
  ●セッションⅦ (MEDICAL MICROSYSTEMS) : 4件(2件)
  ●セッションⅧ (SENSORS) : 4件(2件)
  ●セッションⅨ (MICROFLUDIC COMPONENTS & SYSTEMS) : 4件(1件)
  ●セッションⅩ (GYROSCOPES) : 3件(0件)
  ●セッションⅪ (NANO & MATERIALS) : 4件(1件)

【ポスターセッション】 298件(73件) ()内は日本からの発表件数
  ■分野1(Fabrication Technologies):39件 (11件)
  ■分野2(Packaging Technologies):8件(1件)
  ■分野3(Materials and Device Characterization):26件(7件)
  ■分野4(Mechanical Sensors and Systems):35件(6件)
  ■分野5(Physical MEMS (Optical, Magneto)):11件(2件)
  ■分野6(RF MEMS):19件(0件)
  ■分野7(Bio and Chemical Micro Sensors and Systems):43件(11件)
  ■分野8(Medical Microsystems):20件(6件)
  ■分野9(Micro-fluidic Components and Systems):32件(14件)
  ■分野10(Micro-Actuators):20件(8件)
  ■分野11(Energy and Power MEMS):25件(6件)
  ■分野12(Nano-Electro-Mechanical Devices and Systems):20件(1件)


★MEMS2012における技術動向の一つの指標として、オーラルとポスターの発表件数から分析してみました。下の図は、分野1~分野12で分類した発表件数の割合を%で示したグラフです。昨年度MEMS2011のデータも併せて示しました。多少の増減はありますが、発表件数が多い分野は、昨年度と同様、⑦バイオ・化学センサシステム、①製造技術、④メカニカルセンサ・システム、⑨マイクロ流体要素・システム、③材料・デバイス特性となっており、バイオ・化学系のデバイス開発がMEMS研究の大きな流れになっている状況が定着してきたようです。また、将来の革新デバイス実現に向けた、新たな製造技術や材料の研究においても、新たな研究成果が継続して発表されており、これは、BEANSの目的と一致しています。また、従来からのメカニカルセンサにおいても、継続的に新たな研究成果が発表されています。今回の特徴は、エネルギー・パワーMEMSの分野の発表件数が倍増していることです。この分野では、昨今のエネルギー事情から、特に、エネルギーハーベスティングに対する期待の高まりとともに、今後研究が増加していくものと思われます。

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★また、各分野における日本からの発表の割合を分析してみました(下図)。他国に比べて日本で研究が盛んな分野は、⑨マイクロ流体要素・システム、⑩マイクロアクチュエータ、⑧医療用マイクロシステムなどです。逆に、研究が少ない分野は、⑥RF-MEMS、⑫ナノデバイス・システム、④メカニカルセンサ・システムとなっています。特に、RF-MEMSでは、遂に日本からの発表がゼロとなってしまいました。これは、日本が苦戦している既存のセンサ・デバイス分野よりも、研究段階では将来の伸びが期待できるバイオ・化学センサや医療デバイス分野にシフトしている状況が伺えます。一方、ナノデバイス分野は将来期待されるところですが、日本の出遅れが懸念されます。また、これまで、エネルギー・パワーMEMS分野では、日本の存在感は低いものでしたが、日本が強みとする省エネルギー技術において、今後、ナノ・マイクロ技術が展開され世界をリードする分野になると期待されます。

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★BEANSプロジェクトは、エネルギー、医療、ナノ分野の革新的デバイスの実現に向けて、バイオ、有機、ナノ、及び大面積フレキシブル化などを融合させた製造技術を開発するプロジェクトであり、上記、世界の技術動向とその中での日本の方向性とマッチしたものであることを改めて認識することができました。

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2011年11月 2日 (水)

MicroTAS2011参加報告

「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト(BEANSプロジェクト)」における知識データベースの整備に関して、最新MEMS関連製造技術関連の情報収集を行うことを目的とし、2011年10月2日(日)から6日(木)の5日間の期間に、米国シアトル市にあるワシントン州コンベンションセンターで開催されたμTAS2011(The 15 th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences、チェアマン バージニア大学James P. Landers教授)に参加しました。本μTAS会議は、血液分析やDNA分析をはじめとする様々な生化学分析に必要な反応,混合,培養,観測といった機能を,MEMS技術により微小なチップ上に集約したデバイスであるμTAS(Micro-Total Analysis Systems)関連技術を中心として,材料・プロセス制御,観測等の要素技術から応用までの研究フェーズに渡り最新の研究状況が報告、及び議論が行われる国際会議です。

 講演は、Plenaryセッション6件、Oralセッション102件、Posterセッションは588件の合計696件行われました。Oralセッションは、3つのセッションから構成されるパラレル・セッションが11回実施されました。また、Posterセッションは、各2時間程度のセッションが3日に分かれて実施されました。参加機関数・参加者数は、事前に登録した参加者だけでも344機関、967名で、その内日本国内の機関所属者は180名でした。全参加者のうち、15%以上を日本国内の機関からの参加者が占めていました。

 ワシントン州コンベンションセンターは、シアトル市の街中(ダウンタウン)にあり、近くには宿泊先となるホテルが多く存在していたので、会議が朝8時から始めるにも関わらず、朝はゆっくりと過ごせたような気がします。また、各のッション中のみならず、ブレイク時間にも、用意されていたコーヒーや軽食を摂りながら盛んに議論が交わされていました。

 下の写真は、コンベンションセンターの外観(上)と会場の入り口(下)です。会議の受付とホールは、下の写真の先に見えるエスカレータを昇ったフロアにありました。

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 下の写真は、2日目(但し、初日は受付とウェルカムセッションだけなので実質上はこれが初日)最初のセッションであるスタンフォード大学のQuake教授の講演の模様(上)、ポスター会場での様子(下)を写したものです。会場はパラレルのOralセッションが3会場、ポスターセッション1会場でしたが、会期を通して全ての会場に多くの研究者が詰めかけ、発表者と聴衆者との間で技術内容から今後の展望まで、熱心な議論が行われていました。

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 会議の内容自体は、”MicroTAS”というキーワードを冠したものなので当然ですが、全体としてMicrofluidics技術を用いた診断デバイスの集積化という一つのテーマに沿った研究内容が基礎から応用まで幅広く報告がなされ、それに基づいて議論が行われていました。中でも、遺伝子解析、たんぱく質分析というテーマに即したものが大きな流れでしたが、個々の病気の診断といった臨床応用に向けたテーマも少なくなく、各々の疾患に対する適切な手法、デバイスが検討されているようでした。

 PlenaryセッションやOralセッションでのプレゼンテーションは技術内容だけでなく、実際に作製したデバイスを用いたデモンストレーションを行っているが多く、各報告ともかなり実用化を意識したものとなっていました。一方で、デバイス作製の際の要素技術である材料・プロセスについては、まだまだ最適なものを探索しているという段階であるという印象を受けました。このことから、BEANSプロジェクトで行っている異分野融合というキーワードでのプロセス技術開発も、本会議で議論されている応用分野に十分に展開できるものであると考えられます。

 なお,μTAS2011では,BEANSプロジェクトからは以下の2件のPoster発表が採択されました。

■  W10G:Y. J. Heo、 M. Takahashi、 H. Shibata、 T. Okitsu、 T. Kawanishi、 and S. Takeuchi、 ”PEG BONDED FLUORESCENT-HYDROGEN FIBERS WITH LESS INFLAMMATION  FOR LONG-TERM SUBCUTANEOUS GLUCOSE MONITORING”

■  W29A:H. Matsui、 M. Sekijima、 T. Fujii、 Stakeuchi、 and Y. Sakai、 “POLARIZED HEPATOCYTE CULTURE USING 3D PATTERNED COLLAGEN GEL FOR ANALYSIS OF BILIARY METABOLITES”

 上のポスター発表のうち、Y. J. Heo研究員の反響についてはフォローできていないが、松井研究員のポスターには国内外の研究者が多数訪れ、同分野の研究者から「すごい」、「良い研究だ」とうコメントを直接聞くことができた一方で、議論の中で新たな研究課題の認識も行えたという報告を聞いています。

 また、日本国内機関研究者についても、Plenaryセッション全6講演中の1講演(全6件),Oralセッション12講演(全120講演)で一定の存在感があったように思います。

 なお次回のMicroTAS2012は,東京大学生産技術研究所・藤井 輝夫教授をチェアマンとして,2012年10月28日(日)~11月1日(木)に,沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)で開催されます。

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