« MEMS2013参加報告(BEANS本部) | トップページ | 平成24年度第2回BEANS総合研究会@東大駒場リサーチキャンパス »

2013年3月 1日 (金)

MEMS2013参加報告

概要

 MEMS2013MEMS(微小電子機械システム:Micro Electro Mechanical Systems)をキーワードに、様々な分野の研究者が1年に一度集う世界的な会議である。本学会は2013121日から24日の4日間にわたり台湾/台北でおこなわれた。今回は776件のアブストラクトの投稿があり、66件のオーラルセッションと240件のポスターセッションの合わせて306件が採択された。ちなみに去年のパリ開催では採択論文は343件である。776件あった投稿のうち、日本からは181件あり国別では1位であった。2位は175件のアメリカ、3位には97件の中国であり、採択数では日本は92件とアメリカの94件に次いで2位である。分野別で見るとFabricationやμFluidicSystemが多く、バイオ・医療分野に関する発表が多かった。

所感および内容
 本会議においてBEANSプロジェクトの成果であるカーボンナノチューブ(CNT)の修飾技術の結果について、「INTEGRATION OF SINGLE-WALLED CARBON NANOTUBE BUNDLE ON CANTILEVER BY DIELECTROPHORESISという題目でポスター発表をおこなった。ポスターセッションは、2日目の午後13時から2時間かけておこなわれた。参加者も多く私の発表に対して数多くの質問が寄せられ、フランクな雰囲気で議論をおこなうことができた。ポスター発表の際に聞かれた質問としては主に、カンチレバー先端に形成されたCNTのバンドルの直径は100nmよりもっと細くすることができないのか?、架橋したCNTバンドルを引き剥がす際には、CNTよりも電極表面で剥がれることはないのか?ということに集中していた。CNTに興味をもつ研究者が多く、特にCNTの機械的性質を利用した歪みセンサーの研究をおこなっている方が、3次元の構造をもつ電極上にCNTを修飾させる方法について関心をもっており、上手く研究内容を説明することができて良かった。また本学会でカーボンナノチューブやグラフェンを対象とする研究があり、実際デバイスとしての性能、動作を評価した発表など最先端の研究成果に触れることができた。
 私は主にCNTやグラフェンなどの新規材料を用いたセンサーデバイスの情報収集をおこなった。ここではCNTやグラフェンを用いたガスセンシングの発表について以下の2点を報告する。これら2つの研究は、私が現在おこなっているCNTを用いたセンサー開発にとても参考になる内容であり、デバイスの性能を比較する上でも有益な情報であった。

①「A NOVEL GAS SENSOR USING POLYMER DSPERSED LIQUID CRYSTAL DOPED  WITH CARBON NANOTUBES
Yu Tse Lai et al, National Taiwan Univ, Taiwan

 本発表は、液晶にMW-CNTを混合させたものを電極上にパターニングすることで、アセトンを例にVOCガスのセンサー感度が向上したことを紹介していた。一般的に液晶分子はある方向に配向しており、その配向がガス吸着などにより転移することが知られている。そこで筆者らは液晶分子を電極間に配列させ、さらに単位体積当たりの表面積が大きいMW-CNTを液晶分子に混合させることで、センサー感度の向上を試みていた。初期の段階では液晶分子やMW-CNTは基板に対して平行に配向しており、アセトンのガスがこれらの表面に吸着することで配向が転移し、電極間の抵抗値が上昇するというものである。実験はアセトンの濃度(6008600ppm)に対する電極間の抵抗値の変化を液晶のみの場合、あるいはMW-CNTを混合させた場合のセンサー感度の比較をおこなっていた。実験結果から液晶にMW-CNTを混ぜることでセンサー感度が35%向上しかつセンサーの応答時間が短くなることが明らかになった。

②「TRANSPARENT AND FLEXIBLE TOLUENE SENSOR WITH ENHANCED SENSITIVITY ADSORPTION CATALYST-FUNCTIONALIZED GRAPHENE
Jungwook Choi et al, Yonsei Univ, Korea

 
本発表は、電極間に形成したグラフェンにコバルトの金属ポルフィリンを蒸着することでトルエンに対するセンサー感度が向上したことを紹介していた。グラフェンはCNTと同様炭素の六員環構造が2次元に規則正しく配列しており、電気特性や光学特性など様々な点で従来の材料に比べて優れており、今後デバイス応用に期待されている材料の1つである。筆者らは、CVDを用いてシリコン酸化膜の基板上に形成したグラフェン上に電極をパターニングし、さらにコバルト金属ポルフィリンを蒸着した。トルエン10ppmに対するセンサ感度について、グラフェンのみの場合とコバルト金属ポルフィリンを蒸着した場合の比較をおこなった結果、コバルト金属ポルフィリンを導入することで、センサー感度が3.8%から8.3%に上昇することがわかった

Mems2013

|

« MEMS2013参加報告(BEANS本部) | トップページ | 平成24年度第2回BEANS総合研究会@東大駒場リサーチキャンパス »

3D BEANS」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: MEMS2013参加報告:

« MEMS2013参加報告(BEANS本部) | トップページ | 平成24年度第2回BEANS総合研究会@東大駒場リサーチキャンパス »