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2013年3月

2013年3月 1日 (金)

平成24年度第2回BEANS総合研究会@東大駒場リサーチキャンパス


 BEANSプロジェクトが誕生して5年近くたちました。プロジェクトの締めくくりとしての成果発表会と研究員相互の交流など諸々の思いを込めた総合研究会が開催されました。遊佐・藤田校長率いる「BEANS学校」の卒業式でもあります。2月20日(水)午後一番から交流会も含めますと夜まで、5年前のプロジェクト発足会を行ったと同じ東大駒場リサーチキャンパスにて繰り広げられました。2009年から毎年一回ペースでこれまで初夏の時期に4回やってきましたが今回はいわば特別臨時最終版でもありました。

 METIから須藤治課長と大谷公伸係長、NEDOからは大平英二主任研究員、渡辺秀明主査、奥谷英司主査が参加されました。

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 来賓からのご挨拶や遊佐PLからの「プロジェクトの総括」に続き、各センター長などからこれまでの研究の集大成のプリゼンテーションがありました。この総合研究会は内部だけの技術発表会ですので非公開でした。そのため研究の真の狙いや成果の真のインパクトといったことが聞けまして、内部にいる人間から見てもプロジェクト成果の大きさにあらためて驚かされました。竹内昌治Life BEANS、安達千波矢Life BEANS九州、杉山正和3D BEANS、伊藤寿浩Macro BEANS 各センター長、本部からは新田仁部長と福本宏副所長がプリゼンをしました。みんなNHKでやっているスーパープリゼンテーションさながらでした。

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 総合研究会では定番化しましたポスター展示のまえの「インデキシング」は各自持ち時間が1分ながら研究員の個性が満開状態で大いに聞きごたえがありました。約40人のプリゼンののち、ホワイエに張り出したポスターを前にして2部構成でポスター発表がありました。過去4回のポスター発表から生まれた研究員の交流を通じての異分野融合期待を今回も感じました。こんなに企業、大学、国研の研究員らが仲良く、深く、真面目に、真剣に交わる姿はこれを最後に恐らくもう見られないのではないかという思いに駆られました。

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 最後にプロジェクト全体を振り返っての講評がSPLの藤田博之教授からありまして改めてBEANSプロジェクトの存在した意味の重大さが研究員の中に沁みわたっていきました。プロジェクトが開始された2008年7月以前に2年間もかけて多くの関係者の多大な協力のもと、入念な準備作業がなされていたことなど、本プロジェクトの生みの親の青柳桂一研究調整監から明かされた余韻の中に総合研究会が終了しました。 (y.takei)


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MEMS2013参加報告

概要

 MEMS2013MEMS(微小電子機械システム:Micro Electro Mechanical Systems)をキーワードに、様々な分野の研究者が1年に一度集う世界的な会議である。本学会は2013121日から24日の4日間にわたり台湾/台北でおこなわれた。今回は776件のアブストラクトの投稿があり、66件のオーラルセッションと240件のポスターセッションの合わせて306件が採択された。ちなみに去年のパリ開催では採択論文は343件である。776件あった投稿のうち、日本からは181件あり国別では1位であった。2位は175件のアメリカ、3位には97件の中国であり、採択数では日本は92件とアメリカの94件に次いで2位である。分野別で見るとFabricationやμFluidicSystemが多く、バイオ・医療分野に関する発表が多かった。

所感および内容
 本会議においてBEANSプロジェクトの成果であるカーボンナノチューブ(CNT)の修飾技術の結果について、「INTEGRATION OF SINGLE-WALLED CARBON NANOTUBE BUNDLE ON CANTILEVER BY DIELECTROPHORESISという題目でポスター発表をおこなった。ポスターセッションは、2日目の午後13時から2時間かけておこなわれた。参加者も多く私の発表に対して数多くの質問が寄せられ、フランクな雰囲気で議論をおこなうことができた。ポスター発表の際に聞かれた質問としては主に、カンチレバー先端に形成されたCNTのバンドルの直径は100nmよりもっと細くすることができないのか?、架橋したCNTバンドルを引き剥がす際には、CNTよりも電極表面で剥がれることはないのか?ということに集中していた。CNTに興味をもつ研究者が多く、特にCNTの機械的性質を利用した歪みセンサーの研究をおこなっている方が、3次元の構造をもつ電極上にCNTを修飾させる方法について関心をもっており、上手く研究内容を説明することができて良かった。また本学会でカーボンナノチューブやグラフェンを対象とする研究があり、実際デバイスとしての性能、動作を評価した発表など最先端の研究成果に触れることができた。
 私は主にCNTやグラフェンなどの新規材料を用いたセンサーデバイスの情報収集をおこなった。ここではCNTやグラフェンを用いたガスセンシングの発表について以下の2点を報告する。これら2つの研究は、私が現在おこなっているCNTを用いたセンサー開発にとても参考になる内容であり、デバイスの性能を比較する上でも有益な情報であった。

①「A NOVEL GAS SENSOR USING POLYMER DSPERSED LIQUID CRYSTAL DOPED  WITH CARBON NANOTUBES
Yu Tse Lai et al, National Taiwan Univ, Taiwan

 本発表は、液晶にMW-CNTを混合させたものを電極上にパターニングすることで、アセトンを例にVOCガスのセンサー感度が向上したことを紹介していた。一般的に液晶分子はある方向に配向しており、その配向がガス吸着などにより転移することが知られている。そこで筆者らは液晶分子を電極間に配列させ、さらに単位体積当たりの表面積が大きいMW-CNTを液晶分子に混合させることで、センサー感度の向上を試みていた。初期の段階では液晶分子やMW-CNTは基板に対して平行に配向しており、アセトンのガスがこれらの表面に吸着することで配向が転移し、電極間の抵抗値が上昇するというものである。実験はアセトンの濃度(6008600ppm)に対する電極間の抵抗値の変化を液晶のみの場合、あるいはMW-CNTを混合させた場合のセンサー感度の比較をおこなっていた。実験結果から液晶にMW-CNTを混ぜることでセンサー感度が35%向上しかつセンサーの応答時間が短くなることが明らかになった。

②「TRANSPARENT AND FLEXIBLE TOLUENE SENSOR WITH ENHANCED SENSITIVITY ADSORPTION CATALYST-FUNCTIONALIZED GRAPHENE
Jungwook Choi et al, Yonsei Univ, Korea

 
本発表は、電極間に形成したグラフェンにコバルトの金属ポルフィリンを蒸着することでトルエンに対するセンサー感度が向上したことを紹介していた。グラフェンはCNTと同様炭素の六員環構造が2次元に規則正しく配列しており、電気特性や光学特性など様々な点で従来の材料に比べて優れており、今後デバイス応用に期待されている材料の1つである。筆者らは、CVDを用いてシリコン酸化膜の基板上に形成したグラフェン上に電極をパターニングし、さらにコバルト金属ポルフィリンを蒸着した。トルエン10ppmに対するセンサ感度について、グラフェンのみの場合とコバルト金属ポルフィリンを蒸着した場合の比較をおこなった結果、コバルト金属ポルフィリンを導入することで、センサー感度が3.8%から8.3%に上昇することがわかった

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