2012 MRS Fall Meeting & Exhibit報告
November 25-30, 2012 @ Boston, MA
米国のMaterials Research Society 主催の国際会議および展示会に参加しました。材料物性科学の国際会議としては世界最大規模とされています。今回は約6,400人の参加者があり、過去最大規模でした。毎回ほぼ同じ時期にBostonの中心部にあるHynes Convention Centerで開催されます。今回はMRS OnDemandを初導入し、一部のセッションや会議風景、そして展示会の様子などのストリーミング映像がネットで公開されていました。
Hynes
Convention Center 内吹き抜け回廊
会場となったHynes Convention Center/各フロアを結ぶエスカレータ群
Registrationが始まった11月25日(日)から早くも特別セッションたとえばRare Metals Workshopやエネルギー問題と地球温暖化対策についての招待講演などがありました。特に米国ではシェールガス産業の成功が、米国の石油や石炭への依存度を急速に減じていて、さまざまな良いインパクトを社会に与えていくことを述べていました。”Sustainability”をキーワードにしてさまざまな議論に発展していました。
大会場での技術発表風景/極めてゆったりとした会場
11月27日(火)からは技術展示会も始まりました。北米を中心にあらゆる物性計測器や分析装置、薄膜形成装置、ナノ材料関係などのキーの技術をもつ大小さまざまな250社以上が出展していました。極低温分野で極めて重要な技術を有する超オタクの或る会社、J社も出展していて、その展示会の充実ぶりには思わずため息が漏れそうになります。単なる商品の展示ではなく見学者が求めているソリューションを提供しえる技術を垣間見ることができるよろず技術相談所のようなというと褒めすぎでしょうか。やたら規模だけが大きい展示会ではなく内容が伴った密度の濃い展示会でした。薄膜技術屋の小生にとっては居心地が良く、この展示会を巡るだけでも元が十分に取れたような気がしました。
展示会場の風景(1)Boston周辺の企業、MITでの研究と密接に関係
展示会場の風景(2)/広大な会場を埋め尽くした250社の展示ブース
技術セッションは技術分野ごとに細分化されています。たとえば流行のGraphaneを例にとっても用途別に細かに分かれていたりして、それがパラレルセッションだったりするとどれが本当に自分にとって重要なプリゼンなのか瞬時に判断しなければならず、規模の大きな学会はどうも苦手です。技術内容ごとに分かれているだけで内容のレベルは玉石混交のように感じました。著名な研究者の発表の次に大学院生のがあったりします。また大きい会場のほうに重要な発表が多いと思いきや、むしろ狭い会場のほうで注目の発表があったりします。このへんの矛盾が生じてしまうのは、事務局の会場振り分け決定にあたって、各セッションへの投稿数が注目度の判断基準になっているようでした。
技術発表の半分以上がアカデミック分野からのものです。大学と国の研究所の関係者が6割以上を占めるようです。そのせいでしょうか、重箱の隅をつついているだけで何のために何をやって何が得られたがはっきり響いてこない発表が多くみられました。厳しく言えば学生さんの発表機会を提供する教育的効果重視型の国際会議ともいえます。
変わったセッションでは政府系機関ばかりが集まったセッションがありました。どうやったらNSFから研究資金がつくのかについてその秘訣などを教えてくれるのもあり、それによれば提案を複数出すより一つに絞って、それにいろいろ詰め込むほうが有利であることや期限ぎりぎりではなく十分余裕をもって提出することなど披瀝されていました。国家防衛局DTRAから資金を得る場合には大量破壊兵器からの脅威を減らすエアフィルターやバイオセンサなどの関連ですが、あくまでも資金提供の決定権をもつプログラムマネジャーが望む具体的な要望に合わせていかなければならないことなどが披露されていました。
会議場のロビー風景/窓際ではパソコンを充電しながら仕事する人々
技術発表では以下のようなセッションがありました。先入観も手伝ってか、ほとんどすべての内容がエネルギー・環境問題に絡めているようで、相変わらずCarbon Nanomaterials関係の話題が目立ちました。
Symposium
E: Photovoltaic Technologies – Materials,
Devices and Systems
Symposium
F: Oxide Thin Films for Renewable Energy Application
Symposium
O: Next-Generation Polymer-based Organic Photovoltaics
Symposium P: Single-Crystalline Organic and Polymer Semiconductors–
Fundamentals and Devices
Symposium
SS: Quantitative In Situ Electron Microscopy
Symposium WW: Roll-to-Roll Processing of Electronics and Advanced
Functionalities
Symposium ZZ: Communicating Social Relevancy in Materials Science
and EngineeringEducation
Symposium
X: MRS Medal Award Presentation
Symposium
G: Materials as Tools for Sustainability
Symposium
I: Functional Materials for Solid Oxide Fuel Cells
Symposium K: Hierarchically Structured Materials for Energy Conversion
and Storage
Symposium
CC: Optically Active Nanostructures
Symposium VV: Advanced Materials Exploration with Neutrons
and Synchrotron X-rays
Symposium
UU: Scanning Probe Microscopy–Frontiers
in Nanotechnology
Symposium
D: Energy-Critical Materials
Symposium
W: Carbon Nanomaterials
Symposium
GG: Mechanical Behavior of Metallic Nanostructured Materials
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