MicroTAS2012参加報告
概要
MEMS関連の最新研究動向の情報収集を行うことを目的に、2012年10月28日(日)から11月1日(木)の5日間の日程で、沖縄コンベンションセンター(沖縄県・宜野湾市)で開催されたμTAS2012(The 16th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences、チェアマン 東京大学生産技術研究所藤井 輝夫教授)に参加しました。
セッションの様子
Oral Sessionは、3つのセッションがパラレルに開催される形式で、会期を通して多くの研究者が会場に詰めかけ、発表者の報告内容に対して、応用を見据えた技術性能等の技術の有用性に関する質疑応答等、熱い議論が交わされていました。筆者が選択・聴講したSessionのためか、今年の口頭発表の報告内容は、昨年度と比較して、要素技術的な課題解決に取り組むものが多く、デバイス化やシステム化に取り組むものが少なかった印象を受けました。
また、報告中で実際に作製したデバイスのデモンストレーション・ビデオを紹介する発表も少なくなったように感じました。この分野の流れがより個々のデバイス実現に向けた基盤技術の開発に向かっているのか、日本での開催(日本人の発表が多くなっていること)が影響しているのかは不明ですが、来年以降の動向をみていく必要がありそうです。
また、ポスター発表でも、発表者と訪問者との間で熱心な議論が交わされていました。ここでも、全体的な方向として、生化学分析を用いた診断デバイスの集積化という大きな流れの中で、分析方法や分析対象である微粒子などの操作方法、流路の制御等、基盤的な要素技術の研究に関する発表が目立っていました。各要素技術については、昨年同様、まだまだ最適なものを探索しているという段階であるという印象を受けました。このことから、BEANSプロジェクトで行っている異分野融合というキーワードでのプロセス技術開発も、本会議で議論されている応用分野に十分に展開できるものであると考えられます。
採択論文の動向
<採択論文の分野>
本会議の分野全体の動向をみるため、ポスターに採択された論文のカテゴリ別の件数を下図にまとめます。ここで、論文のカテゴリ分けは、μTAS2012のプログラムに掲載されている情報に従っております。論文数が最も多いカテゴリは、細胞や組織の培養、分析といった応用に関する研究である”Cell & Tissue Application”が最も多く、医療・ヘルスケア分野の検査・診断といった応用に関する”Life Science Application”、マイクロ・ナノ流路技術による粒子の操作やデバイスの作製に関する”Microfluidics and Nanofluidics”が続いています。昨年の会議とは、カテゴリが異なっているため、一概には比較できませんが、マイクロ流路技術や医療・ヘルスケアへの応用という切り分けでの研究が多い傾向は変わっていないように思います。
<国別の採択論文数>
以下に、OralとPoster Session(Plenary/Special Sessionは除く)の採択論文について、第一筆者の所属機関の国籍別に整理したグラフを示します。第一位は、開催国である日本で194件、米国(155件)、韓国(64件)、台湾(43件)、カナダ(26件)となっており、5位までをアジア勢と北米が占めています。昨年と比較して、全体的な傾向は大きく変わりませんが、昨年の開催国の米国が大きく数を減らし、代わりに今年の開催国である日本が件数を伸ばし順位が入れ替わった他、台湾からの論文数の増加も目立っています。
なお、グラフは示していませんが、Oral Sessionの採択論文だけに注目すると、1位は米国で全体の約4割を占める34件となっており、日本(22件)、韓国(5件)、カナダ(5件)、フランス(5件)と続いています。
<採択論文数上位の研究機関>
以下に、Oral SessionとPoster Sessionの採択論文について、第一筆者の所属機関の上位10位までを示します。
BEANSプロジェクト・テーマの報告
BEANSプロジェクトからは、以下の3件の論文がPoster Sessionに採択されました。
■M.2.37 CONTINUOUS EXCHANGE OF BUFFERS OVER A
LIPID BILAYER MEMBRANE FORMED IN A GLASS MICROFLUIDIC DEVICE Y. Watanabe1,3, and S. Takeuchi1,2, 1 BEANS Project, JAPAN, 2The
University of Tokyo, JAPAN, and 3Olympus Co, JAPAN
■W.2.57 A TRANSDERMAL CONTINUOUS GLUCOSE
MONITORING SYSTEM WITH AN IMPLANTABLE FLUORESCENT HYDROGEL FIBER AND A WEARABLE
PHOTO-DETECTORM.
Takahashi1,3, Y. J. Heo2, T. Kawanishi1,3, T. Okitsu2, and S. Takeuchi1,2, 1
BEANS Project, JAPAN, 2The University of Tokyo, JAPAN, and 3TERUMO Co., JAPAN
■W.3.95 FABRICATION OF MICROCHANNEL NETWORK IN
LIVER TISSUE SPHEROIDS,N.
Kojima1,2, S. Takeuchi1,2, and Y. Sakai1,2, 1 University of Tokyo, JAPAN, and
2BEANS Project, JAPAN
■Art in Science Award
Stretching the Rainbow, Yi Zhang, Johns
Hopkins University
■Lab on a Chip Widmer Award
■Young Researcher Poster Award
MONDAY
M.8.182 Microfluidic Sample Preparation of Pleural Effusions for
Cytodiagnostics, Albert
J. MachUniversity of California, Los Angeles
TUESDAY
T.7.159 Rapid
Quantitation of C-Reactive Protein Agglutination with Acoustic-Enabled
Microvortices. Arlene Doria, University of California, Irvine
WEDNESDAY
W.4.120 Microfluidic
Fabrication of Polymerized Ionic Liquid Microgels, Zahra
Barikbin, National University of Singapore
■Lab on a Chip / Corning Inc. Pioneers of Miniaturization Prize
Prof. Andrew deMello, Swiss Federal Institute
of Technolog(ETH) Zurich
■Analyrical Chemical Young Innovator Award
Prof. Amy Elizabeth Herr, University of
California, Berkeley
次回開催
次回のμTAS2013は、University of FreiburgのRoland Zengerle教授をチェアマンとして、2013年10月27日(日)から31日(木)の5日間の日程で、Messe
Freiburg(Freiburg, Germany)で開催されます。
なお、本会議の最後に、今年のチェアマンの藤井輝夫教授(東京大学生産技術研究所)から、来年の会議が無事に成功するよう沖縄の守り神(魔除け)であるシーサーがRoland
Zengerle教授に贈られましたので、来年の会議も今年同様、盛況となることは間違いないかと思います。
その他
本会議では、4日目の31日(水)の夕方には、会場から離れた首里城公園(沖縄県那覇市)内にある首里社館で、Social Event(懇親会)が行われました。筆者は、参加しませんでしたが、開催前の会場の様子を写真におさめましたので、掲載します。当日は、あいにくの雨でしたが、沖縄の美味しい食事とお酒、民族舞踊等を満喫されたことかと思います。
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