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2012年11月 9日 (金)

BEANS成果発信:NNT2012国際会議

BEANSプロジェクトの研究開発成果の一つとして、様々な形状のマイクロハイブリッドパターンを有するシームレス円筒モールドを用いて、繊維状基材に20m/minの送り速度で高速、且つ連続に熱インプリントする技術を開発しました。この成果を、10月24日から10月26日まで米国カリフォルニア州のナパで開催されたThe 11th International Conference on Nanoimprint and Nanoprint Technology (NNT 2012)にて発表しました。NNTはナノインプリントに関する最新の科学技術の成果が紹介される場で、次世代の半導体製造技術として現時点での到達技術水準や、幅広い応用展開について議論されます。参加者数の平均は100~200名で、今回ナパで開催されるNNT2012は、2002年にサンフランシスコで開催されて以来、11回目になります。来年(2013年)はスペインのバルセロナで開催される予定です。

Silverado_resort_and_spa_2
NNT2012開催会場のSilverado Resort and Spa

 さて、今回のNNT2012での発表件数は口頭発表で36件、ポスター発表で66件、計102件でした。発表者を地域別で分類すると、開催地である米国からは18件と少なく、欧州が40件と最も件数が多かったのが特徴です。日本からは8件の口頭発表と18件のポスター発表があり、日本を含まないアジア地域の総数が18件であったことからも、日本でのナノインプリント関連の研究開発が活発であることが窺えます。また、カテゴリー別にみると、今回の会議では実用寄りの応用研究が細分化されており、Roll-to-Roll Imprint Lithography(計9件)、Large Area Imprint Lithography(計6件)、Applications(14件)、Bio Applications(計8件)となっており、基礎研究はProcess, Materials and Characterization(計50件)に集約されていました。ナノインプリント関連の研究開発における全体的な傾向としては、円筒モールドを用いたディスプレイ等の大面積デバイスへの製造展開か、多層構造モールドによるアライメント不要の一括成形プロセスによるCMOS等の製造技術に二極化している印象を持ちました。その中で、ガラス基板等、従来のプラスチックやUV硬化性樹脂とは格段に成形が難しい材料へのチャレンジも増えており、その応用範囲の拡がりも見られました。

なお、BEANSプロジェクトからは以下の1件の口頭発表を行いました。

2.2 Manufacturing of smart fibers by high-speed reel-to-reel imprint using cylinder mold

機械加工と三次元フォトリソグラフィーを組み合わせて、モールドパターンが多段構造となっている直径100mmのシームレス円筒モールドを作製した。さらに、この円筒モールドをリールツーリールインプリント装置に組み込み、直径250µmのプラスチック製光ファイバーの表面に、製織工程で縦糸と横糸を位置決めするガイド構造と、摸擬MEMS構造を20m/minの送り速度で高速熱インプリントすることに成功した。(H. Mekaru, et al.)

Oral_presentation_by_dr_mekaru
NNT2012にて口頭発表する筆者

Hybridlayered_patterns_on_mold_and_
(a)円筒モールド表面の多段構造モールドパターンと、(b)リールツーリールインプリントによって加工された直径250µmのプラスチック製光ファイバー表面の成形パターン

 BEANSプロジェクトと関連のあるロールツーロールインプリントでは、モリキュラーインプリント社(アメリカ)、カタランナノテクノロジー研究所(スペイン)、南洋理工大学(シンガポール)、ミシガン大学(アメリカ)、国立台湾大学(台湾)、ヨアンノイム・リサーチ(オーストリア)、ポールシェーレ研究所(スイス)、日立研究所(日本)による8件の口頭発表がありました。3件は熱ナノインプリント関連で、残り5件はUVナノインプリントを対象とした研究開発であり、その内4件はLEDやディスプレイ等の光学部品をターゲットにしており、残り1件は濡れ性を制御した基板表面の改質が目的でした。また、シームレス円筒モールドについては、旭化成(日本)が回転駆動系を組み込んだ電子ビーム描画装置を開発し、直径100mm、幅50mmのシームレス円筒モールドを作製し、その円筒表面上に最小線幅140nm、ピッチ500nmのラインパターンを形成したことを報告していました。ロールツーロールインプリントの成形対象は全てフィルム基材であり、我々のような繊維状基材を加工対象とした報告例はありませんでした。BEANSプロジェクトの発表はキーノートスピーチ後の「Roll-to-Roll Imprint Lithography」セッションに含まれ、招待講演後の最初の一般公演として組まれており、我々の研究成果をPRするには最良の順番でした。我々の発表は異色だったためか多くの参加者を引き付けたようで、特に成形パターンの具体的な用途や繊維状基材ならでは技術的問題点、そしてシームレス円筒モールドの作製方法の詳細について多くの質問を受けました。中には、我々のリールツーリールインプリント装置を購入したいとの相談も受け、本会議における広報は大成功だったと思います。

(銘苅春隆)

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