NANO2012参加報告(その3)
1.概要
国際学会NANO2012は、International Committee on Nanostructured Materials (ICNM)により1992年から隔年に開催されているナノ材料およびその構造化に関する国際会議である。参加者はほとんどがユーロ圏又はトルコからの参加者であったため、今までの国際会議では出会えなかった研究者にBEANS成果をアピールする事ができたと思われる。また、ノベール賞を受賞した著名な研究者(Dr. Daniel Shechtman)のkeynote発表が聞ける等、充実したinvitedスピーチが多数存在した。
2.内容・所感
研究成果発表:
同学会のポスタープレゼンテーションにて “Quantitatively comparison in several silicon surface conditions” というタイトルで、中性粒子ビームエッチング効果検証研究成果に関するポスター発表を実施。具体的には、プラズマエッチング後や、表面処理後またはその前の表面と、中性粒子ビームエッチング後の表面について、カンチレバーの振動特性とAFM計測での荒さ測定結果から中性粒子ビームエッチングの低損傷効果を定義づけた。
発表は朝一番であったが、多くの参加者が訪れ、ポスター会場は人で溢れていた。従って、国外の関連研究者に対するアピールが行えたと思う。会場の雰囲気として、理論に基づいた発表や質問が多かったように思うため、理論的に突っ込んだ話にした方がより面白い議論が出来たかもしれない。これは各学会によって異なるのだろう。
研究動向調査:
同学会において、“Nano materials for electronics, magnetics and photonics”、“Nano materials for energy application”等のセッションを中心に、主にナノの電気電子物性、エネルギー関係を中心とした、最新研究動向の情報収集を行った。注目した研究発表とその概要を以下に列挙する。
“Schottky contacts on the nanoscale: charge transport in “All-Inorganic” Metal-semiconductor nanorod networks” (T. Lavieville, Y. Zhang, A. Genovese, A. Casu, L. Manna, E. D. Fabrizio and R. Krahne, Italy)
ナノスケールの半導体において、その電気的な接合状況はマクロスケールの現象と大きな乖離が見られる。これらの解析は大変興味深い研究課題として多く研究者が知恵を絞っている。発表者らはCdSeと金粒子を接合したダンベルのような構像(dumbbell structure, 自己組織的に作製可能)がある一つの理想的なモデルとしてこの問題を検討できると考え研究を行っているようである。
本報告では、CdSeと金粒子のナノネットワーク構造の電流−バイアス特性がV^2/3に比例する事について理論的な議論がなされた。(通常バルク材料の場合はV^1/2に比例)この不可解な現象はどうやらある一部のネットワークで、Au—CdSe接続を電荷がトンネルしたと考えると良く理論式に一致するようだ。
“Periodical nano structuregrown on trace of CW laser scanning at high speed of 300 m/min” (S. Kaneko et.al., Kanagawa Ind. Tech. Center, Japan):
日本からの発表もあった。高速レーザアニーリング技術の開発途中に見つかったと思われる周期的なナノストラクチャー作製手法に関する発表。P-ionがインプラント (dose量1x10^13 個/cm^2, 200 keV) されたアモルファスシリコンに波長532 nmのCW laserと近赤外レーザを同時に照射し速度300 m/minのスピードでレーザアニールを行うとそのスキャン方向から垂直にナノストラクチャー(高さ数十 nm ピッチ500 nm[ピッチは波長に依存?]) が一様に作成可能なようだ。
“Conversion of concentrated sunlight by nanostructured photovoltaics” (E. A. Katz, Israel) :
2012/5/31シャープが集光型化合物3接合太陽電池で世界最高効率43.5%が達成された事をプレス発表した。Katzらはこの集光型の太陽電池(CPV)の方式を実現する為に、様々な現実の課題について検討している。まず発表者らは、アメリカPETALでの実地試験による結果等からCPVが十分実現可能である事を主張した。大面積を安価・抵抗率な太陽電池でカバーするよりも大面積の集光レンズ+高価だが高効率で小面積な太陽電池でまかなった方がコスト的に有利であるし、太陽光1000個分(1sun = 1mW/mm2換算)以上の集光でも効率的に電力を発生させることが可能なようだ。 気になるのは太陽電池の特性劣化だが、これは[通常の太陽電池の経過年数×集めた太陽の数]の経年変化特性と似た特性を示すようである。従ってまた、CPVを使えば、長い年月のかかる太陽電池の経年劣化実験を短縮する事も可能だと言っていた。更なる実用化に向けた調査が期待される。
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