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2012年8月

2012年8月22日 (水)

APCOT2012参加報告

学会概要

 国際会議IEEE APCOT2012 (The Sixth Asia-Pacific Conference on Transducers and Micro/Nano Technologies)が中国、南京のJinlingホテルで2012年07月8日(日)から7月11日(水)の期間で開催されました。IEEE APCOTは隔年で開催される、アジア、太平洋地域での最大規模の国際会議であり、今回6回目になります。

 IEEE APCOTでは、MEMS加工技術、各種類トランスデューサ及びセンサーをはじめ、それらを応用したデバイス関連の研究が幅広く紹介され、BEANSの研究活動を世界にアピールする場としても最適であることから、3D-BEANSセンターでのテーマの一つである耐摩耗プローブの研究成果について口頭発表を行いました。

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研究件数と分類

 IEEE APCOT2012は351件の投稿中、241件が採択されており、採択率は約68.7%となっています。会議では、採択された241件(口頭発表107件、ポスター発表134件)の他、6件の基調講演、9件の招待講演が予定されていました。16カ国からの参加があり、開催国である中国の88件の採択数を筆頭に、日本(44件)、シンガポール(33件)、台湾(30件)、韓国(18件)と続いていました。国別採択数及び採択分野(トピック)別採択数の詳細は下図をご参考ください。

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研究成果発表

 IEEE APCOT2012のNano Devices and Nano Sensingのセッションにおいて、“A SIMPLE MASS-PRODUCTION-READY ANTI-WEAR PROBE FOR NANO-LITHOGRAPHY”というタイトルで、耐摩耗プローブの研究成果に関する口頭発表をしました。

 口頭発表では、大面積加工可能、またプローブ先端の耐久性と加工分解能を両立できる耐摩耗プローブを提案しました。提案した耐摩耗プローブは、その先端がマイクロスケールの機械的な接触部とそれの側壁に形成しているナノスケールの電極接触部、及び接触部から突出している庇部から構成され、プローブ先端に優れた耐久性とナノパターンの加工能力を持たせています。なお、プローブの先端に庇構造を設けることにより、回り込みを抑え、側壁のみへの金属性膜がウェハレベルでの加工を可能としています。更に、プローブ先端は均一な断面形状を有するため、仮に摩耗が生じても安定して特性を維持することができます。

  MEMS技術を用いて作製した耐摩耗プローブの耐久性と描画安定性の評価結果について報告しました。評価方法としては、具体的には、まず作製したプローブを用いて、大気中で、400nNの押しつけ力、-10Vのバイアス電圧、 1um/sの走査レートという条件で描画を行いました。その後、プローブ先端に400nNの押しつけ力及び-10Vのバイアス電圧を印加した上で、シリコン基板の表面で2mを走査しました。2m走査前後で、プローブ先端の形状変化を観察し、プローブ先端の機械的な接触でわずかに摩耗されていることが分かりました。更に、 2m走査した後、上記と同様な条件で、耐摩耗プローブによる描画を実施しました。2m走査後の耐摩耗プローブによって描画した線パターンが、走査前のパターンと一致していることを確認し、作製した耐摩耗プローブが2mの耐久性及び描画安定性を持つことを示しました。これは同じ先端電極サイズを有する市販プローブの耐久性の1000倍程度に相当します。

 発表の後、耐摩耗プローブリソについてどの程度の分解能まで出せるのか、描画基板のダメージ対策といった性能や課題、今後の展開に関する質問が多く寄せられ、関心が高いことが伺えました。私が発表した耐摩耗プローブに関連性がある研究が複数見受けられ、AFMプローブの信頼性向上に対する研究開発が注目されるようになりつつあるという感触を持ちました。

研究動向調査

 プロセス及び材料デバイスの評価等の分野を中心に、MEMS関連分野の最新研究動向の情報収集を行いました。多くのオーラルセッションで、新規プロセス、新規材料の特性評価方法及び新規デバイスの構造及び試作案の報告が目立っており、実用化より、新規性を重視している印象を受けました。

 以下に、特に注目した発表とその概要を記します。

1) INVESTIGATION OF HYDROGEN-ANNEALING EFFECT ON TORSIONAL STRENGTH OF SI BEAM OF SCANNING MICROMIRROR DEVICE

 水素アニール処理は単結晶シリコンビームのねじり強度に及ぼす影響を調べたものであり、水素アニーリングした後、シリコンビームのねじり強度が低下したという報告でした。本研究結果は中性粒子エッチングの効果のアピールに活用する等、BEANSでの今後の展開に参考なると思われます。

2) SILICON PN JUNCTION INTEGRATED CARBON NANOTUBE FIELD EMITTER ARRAY

 電子ビームリソグラフィ(EB)のスループットを向上するため、マルチ尖ったカーボンナノチューブ(CNT)フィールドエミッタアレイが開発されました。また、配線数の低減及びエミッタの高密度化ため、光スイッチングを導入しています。本研究はCNTの形成方法及び耐摩耗プローブリソグラフィの展開方針に大変参考になると思います。今後、プローブリソのアプリがより具体的に絞ることができました。

3) YOUNG’S MODULUS MEASUREMENT OF SUBMICRON-THICK ALUMINUM FILM BY MEMS RESONANCE TEST

 MEMS共振子の共振周波数の変化により、ヤング率を算出する方法を提案しています。具体的には、まず、Si製共振子を作製し、その初期共振周波数を測定しています。その次に、MEMS振動子の上に100nmのAl膜を成膜し、成膜後の振動子の共振周波数を再度測定を行っていました。成膜前後、MEMS共振子の共振周波数の変化により、100nmのAl薄膜のヤング率を算出しています。上記のMEMS振動子を用いて、理想値から-8%程度の測定精度で基材のヤング率を測定することができています。また、FEA解析結果の±10%の精度で、100nmアルミ薄膜のヤング率を測定することに成功しています。得られた100nmアルミ薄膜のヤング率は35GPaであり、約バルクアルミのほぼ半分でした。上記振動子はその他の薄膜の測定へ展開することも可能であり、再利用することもできます。

その他

 近年、IEEE APCOT会議は、300~500人各分野の研究者を引きつけています。そして、ポスター/オーラルセッションで100以上の選ばれた書類を発表するフォーラムがありました。その一つのセッション構成は、十分な機会を出席者、プレゼンターと出展者との交流に提供することができるので、MEMS分野の最新研究動向の把握及び情報収集の良い機会である。


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2012年8月 8日 (水)

第6回BEANSプロジェクトセミナー開催報告

◆第6回BEANSプロジェクトセミナー(主催:(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/技術研究組合BEANS研究所)が、総合イベントマイクロナノ2012の最終日7月13日(金)午後、東京ビッグサイト東2ホール内特設会場にて開催されました。

◆異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト(BEANSプロジェクト)は、2008年度にスタートし4年が経過しました。今年度は、いよいよ本プロジェクトの最終年度を迎え、研究開発成果の収穫・展開に向けた取り組みが加速しております。本セミナーは、最新成果についての発表の場として回数を重ねてきましたが、今回は最終回ということもあって、これまでのプロジェクト活動の総括を含めて発表が行われ、200席の会場がほぼ満席になるほどの盛況のうちにプログラムが進行しました。

◆セミナーのオープニングでは、主催者を代表して(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構の倉田理事から挨拶がありました。その中で、BEANSプロジェクトは、当初、革新的製造技術の開発を目的としてスタートし、後半は革新的デバイスへの適用を想定した技術開発に重点を移してきたが、最終年度を迎え、狙い通り注目される成果も多々創出され、今後は、それらの実用化に向けた取り組みが重要であるとの指摘がありました。

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◆続いて、プロジェクトリーダーの挨拶では、技術研究組合BEANS研究所の遊佐所長から、BEANSプロジェクト全体の概要と全期間を通した研究開発活動の総括、及びプロジェクト横断的な取り組みであるシミュレーション技術開発、知識データベース構築、さらにプロジェクト終了後の知財成果の展開について説明がありました。

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◆セッション1「BEANSプロジェクト成果報告」では、開発テーマ毎に設けられた4つのBEANSセンターの各センター長から、最新成果、及びこれまでのプロジェクト活動の総括について報告がありました。最終年度を迎え、プロセス、材料等の開発が進み、デバイスを試作・実証できるようになってきたことから、報告内容も裏付けのある、インパクトのあるものとなっていました。また、各テーマとも当初は試行錯誤であったが、最近は最終目標の達成も視野に入ってきた旨、また、技術成果以外にも人材育成や人的ネットワーク構築も大きな成果であったなど、プロジェクトを通しての感想が述べられました。

 ◇各センターからの報告タイトルと発表者(センター長)は以下の通り

  ①Life BEANSセンター 
   「Life BEANSの拓く健康社会」 
    東京大学 生産技術研究所 准教授
     (Life BEANSセンター長) 竹内 昌治

  ②Life BEANS九州センター
    「有機分子のナノ構造・配向制御が創り出す次世代有機・熱電デバイス」
     九州大学 未来化学創造センター 教授
      (Life BEANS九州センター長) 安達 千波矢

  ③3D BEANSセンター
    「ナノの合わせ技がもたらすMEMSプロセスの新地平」
     東京大学 大学院工学系研究科 准教授 
      (3D BEANSセンター長) 杉山 正和

  ④Macro BEANSセンター
    「メーター級大面積マイクロシステムを実現する集積化技術」
     (独)産業技術総合研究所集積マイクロシステム研究センター 副センター長 
      (Macro BEANSセンター長) 伊藤 寿浩

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◆セッション2「特別講演」では、BEANSプロジェクトのサブプロジェクトリーダーである東京大学生産技術研究所の藤田教授から、「BEANS:加工寸法や材料を超えた異機能集積プロセス技術」と題して講演がありました。その中で、BEANSにおける異分野融合とは、スケールの融合、材料の融合、及びプロセスの融合であることを具体的に示され、BEANSプロジェクトは、この三つの融合の系統的な研究を通じて、各個の具体的な研究成果を基に異分野融合プロセスの体系を確立するものであるとの纏めがありました。

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◆最後に、技術研究組合BEANS研究所の青柳 開発調整監から、閉会の挨拶として、これまでのプロジェクト活動に対するご支援への感謝の念と、知財成果についてはプロジェクト終了後に有償開放することをお約束するとの言葉で、3時間に及ぶセミナーが終了しました。


◆本プロジェクトセミナーの発表資料は、以下のBEANSプロジェクトHPにてご覧いただけます。
BEANSセミナーURL:   http://www.beanspj.org/seminar/index.html

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日本を元気にする産業技術会議シンポジウム「日本の競争力を創造する化学産業の将来展開」@日経CR  【BEANSパネル展示報告】

 7月25日、独立行政法人産業技術総合研究所主催の表題のシンポジウムが開催されました。出席者は約300人。その場で現在、産総研が絡んでいる技術研究組合のポスター展示会があり、「技術研究組合BEANS研究所」としてパネル展示およびパンフレット等の配布を行ないました。パンフレットは約100部配布しました。

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「日本の産業界に再び活力を取り戻し、我が国が世界のイノベーションのハブとして機能し、ひいては国内の雇用創出に繋げるためには、今こそ産学官連携の在り方を見直し、互いの機関がが有する確かな技術、優れた人材、最先端の設備を結集する必要があります」ではじまる本シンポジウムでは産総研が一組合員として技術研究組合に参画している事例報告がありました。

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 太陽光発電技術研究組合(PVTEC)、技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)、技術研究組合FC-Cubic、次世代化学材料評価技術研究組合 CEREBA、技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)などに交じって我ら「技術研究組合BEANS研究所」も来場者に紹介しました。

 はやく日本を元気にするには我々は何をすべきか真剣に考えさせられた午後でした。 (yt)

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第23回マイクロマシン/MEMS展@東京ビッグサイト【BEANS展示ブース報告】

  7/11-13/2012に東京ビッグサイトにて開催されました。5年間のBEANSプロジェクトも今年は最終年度となりました。フィナーレを盛り上げるかのように会場に過去最大規模のブースを出展し、ブース全体にゆったりした見学動線を実現し、最新の研究成果を具体的に「見える化」することに注力しました。BEANSのシンボルマークとなりました「豆の木モニュメント」は地球上から健やかに伸び、ついに雲を突き破って成果の実を結びさらに発展していくさまを表現しました。

 

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Dcm_6052_6◆来場者数:展示会全体では3日間で10,985人の入場者がありました。(昨年はSURTECHも併設されており、12,861人でした)  ブース内で配布しましたパンフレットなどから推定しますとBEANSブースへの来場者は約2,000人でした。

 
◆MacroBEANSでは「メートル級タッチセンサ」を実演しました。ナノ加工をした繊維状基材で作製したタッチセンサーシートを用いて人の動きを検知し、ゲーム分野やリハビリ・フィットネス分野、介護分野への応用が期待できることを紹介しました。さらに各種センサや太陽電池、LED照明を組込み実際に動作する「究極のエコハウス」も登場させ人気を博しました。

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  ◆LifeBEANS九州からは有機半導体薄膜を駆使した太陽電池や熱電デバイス、そして有機EL照明など出品しました。有機ELでは光取り出し効率の最高記録レベルの達成などナノ構造により飛躍的に性能向上がはかられた成果も紹介しました。

 

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◆3D BEANSでは「3D構造に微粒子を側壁のみに配列に成功」「トレンチ構造の粒子配列をガスセンサに応用し感度向上」「中性粒子ビームによる超低損傷・平滑エッチングの実証」「耐摩耗特性に優れたマイクロプローブ」「フェムト秒アシストエッチングによる3次元ナノ構造形成」などナノ加工技術の最前線を紹介しました。

 


◆LifeBEANSからは「3次元肝細胞組織構築」とそれを用いた薬物代謝解析を本邦初の3D実写映像で紹介しました。これは動物実験を減らした創薬加速を狙っています。またこれまでテレビや新聞で報じられてきました「完全埋め込み型血糖値センサー」の実用化に向けた最新の進捗状況も紹介しました。

 
◆これまで研究開発において裏方に徹してきた「シミュレーション技術」についてはBEANSにおけるその貢献度から特集を組み「革新的未来技術の創造に貢献するBEANSシミュレーション」と題してその実施体制も含めて成果の実例を紹介しました。

 
◆最後に、BEANSが各方面から注目される所以のひとつであります国のプロジェクトとしてはユニークな「知財成果展開への取り組み」を紹介、BEANSで生まれた特許群はBEANSプロジェクトが来春終了したのちも広く使われていき、我が国の産業活性化につながることを目指した活動を紹介しました。

 

  BEANSプロジェクトとしましては、これまでマイクロマシン/MEMS展には2009年度から4回にわたり出展してきました。企業や大学のBEANS研究員みずからが説明員となり、自身が作成したパネルの前で来場者からの期待や反響をじかに肌で感じ、研究内容を研ぎ澄まし、研究を加速させていくことを狙いました。そのような意味でも、BEANSプロジェクトの当事者である研究員のみならず、日頃からさまざまにご支援をいただいている多くの関係各位とりわけ今回ブース展示にお越しいただき質問やコメントを説明員らに投げかけていただきました多くの皆様には心より深く感謝いたします。

                                                                                                       (Takei)

 

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2012年8月 2日 (木)

国際会議「EIGHTEENTH SYMPOSIUM ON THERMOPHYSICAL PROPERTES」への参加報告

 平成24年6月24日-29日にアメリカコロラド州ボウルダーにて行われた「EIGHTEENTH SYMPOSIUM ON THERMOPHYSICAL PROPERTES」にてポスターセッションを行なってきました.学会の会場のボウルダーは海抜1マイル(1600m)にある都市で,会場であったUniversity of Colorado はロッキー山脈の中にありました.

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 この学会は熱物性に関する研究者が3年毎に集う世界的な会議であり,本プロジェクトの成果である面内方向の熱電特性評価の中の“微細構造中の熱・電子輸送特性の評価”についての報告を行ないました.ポスターセッションは盛況で,学会の参加者にはナノテクを用いた物性制御の研究を行なっている人も多く,非常に多くの人と深い議論をすることができました.やはり世界各国の研究者との討論は日本人との議論では気がつかないような問題点,着眼点があり,はっとさせられることが多かったです.また,学会ではここでしか見ることのできない各国の先端研究を拝聴することができましたし,現在取り組んでいるプロジェクトを進めるにおいて非常にためになる話を聞くことができました.また,微細構造における熱輸送についての話も多く,皆さんそこで苦労をなさっていると思うと同時に自身の研究の重要度と位置づけについても再確認しました.


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