MIPE2012参加報告(その4)
国際学会MIPE2012は、日米の機械学会の共催にて3年に一度のみ開催される、情報・知能・精密機器関連では世界最高峰の学会である。
本学会はHDD(Hard Disk Drive)の研究分野を中心にMEMS、ロボット、センサ等の最新研究が発表される学会として知られている。同学会に参加し、最先端のMEMS及び中性粒子ビームエッチング装置の応用分野について情報収集を行った。
また、3D-BEANS成果である中性粒子ビームエッチングの低損傷効果を明確に示すデータを発表し、我々の技術をアピールした。
研究成果発表
Micro/Nanomechatronics-1セッションにおいて、“A New experimental approach to evaluate plasma-induced damage in micro-cantilever”というタイトルで、中性粒子ビームエッチング研究における成果の口頭発表を行った。
具体的にはプラズマダメージにおける問題点(荷電粒子、真空紫外光)を提示し、それを取り除く中性粒子ビームエッチングという新しいエッチング手法の可能性を背景にMEMSデバイスでもエッチング界面の状態を気にする必要が出てきた事を主張した。そして、本発表では特にMEMSデバイスのプラズマダメージによる機械特性劣化を定量的に評価する手法を提示するとともに、中性粒子ビームエッチングの低損傷効果を示す実験データを示した。
本プロジェクトの成果について国内外の関連研究者に対するアピールを行うことができた。質問者からは、プラズマダメージの問題点のうち、荷電粒子と真空紫外光のどちらが支配的なダメージかと言う質問があり、寒川らの研究成果を元に真空紫外光が支配的であること、荷電粒子はどちらかというと、直接的な形状の変化として影響が出る事を説明した。
中性粒子のエッチング手法を適用する事でデバイス特性の向上がみこめることをアピールできた。
研究動向調査:
本学会において、“Micro/Nanomechatronics”、“Micro/Nano system Science&Technology”等のセッションを中心に、研究動向調査を行ったので、以下に列挙する。
“Electromagnetic micro energy harvester for human locomotion” (Pratik Patel, Mir Behrad Khamesee, Canada):
本発表では、マグネットとコイルを使用した小型(単三電池サイズ)のエナジーハーベスティングデバイスの検証を行っている。15 Hz、振幅14.375 mmで最大5.8 mWの出力を得られる。MEMSデバイスと比較してかなりの発電力であり、周波数も低い。単位体積当たりの発電力で比較する必要がある。また、電池のカタチで規格化するのは賢いやり方だと感じた。筆者は人の移動時に発生する振動を電力に変換する事を想定しているようだ。
“2D Tranjetory estimation during free walk using tiptoe mounted senosor” (Koichi Sagawa, Kensuke Ohkubo, Hirosaki University, Japan):
足の先に付けた加速度、ジャイロの複合センサ信号を処理し、人の移動情報、場所を把握する技術は介護や、ナビゲーション技術に寄与するとして研究が行われている。
従来の信号処理手法では信号にあるしきい値を決めて、一歩毎の間隔を把握している。本研究では、足の着地時のピークを中心に、足が進んでいる時の時間(gait time)と着地時のポイントを正確に求め、積分区間の決定を行う。その結果自由歩行時の誤差が従来方と比較し約50%改善された。
“Modeling, Fabrication and Characterization of a micromachined ZnO Unimorph for high-frequency nano-positioning” (Yanhui Yuan, Hejun Du, Kun Shyong Chow, Mingsheng Zhang, Shingapore):
ZnOベースの圧電素子を用いてカンチレバーを振動させ、シミュレーションと実験結果に良い一致が得られた。感度は、12.09 nm/Vであり、発生力は6Vの起電力で90uNに達する。
カンチレバーはSOIウェハを用いずに作製したにも関わらず、非常に成功に出来ている。
“Development of Acoustic Resonator with non-uniformthickness and mechanical property for wide frequency range” (Takayuki Kobayasi, Kazuki Zusho, Hirofumi Shintaku, and Satoyuki Kawano, Osaka Univ., Japan):
耳の特殊なオルガン構造をまねる為に、筆者たちはネガレジストとシャドーマスクを使用した一括プロセスで両端支持梁の作製を行った。シャドーマスクにより透過する光の強度を調整する事で任意厚みのカンチレバー構造が作成可能であるが、紫外光の強度と、レジストの硬化深さの関係はリニアではない。この手法を用いて、3.02-139umの厚さの梁を一括で作製した。
このようなSU-8レジストを使用した構造体は、電気的な検出部の作り込みが課題であると思う。
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