« EcoDesign2011@京都 報告 | トップページ | MEMS2012 参加報告 (Life BEANSセンター) »

2012年2月16日 (木)

MEMS2012 参加報告 (MACRO BEANSセンター)

MEMS2012はMEMS関連の最も重要な国際学会の1つであり,2012年1月29日~2月2日を会期としてフランス・パリで開催された。今回で25回目となり,約1,000件の発表申し込みに対し,発表件数は口頭45件,ポスター298件であり,採択率は3割弱という非常に厳しい数字の中,BEANSプロジェクトからは4件採択されたことから,本プロジェクトに対する国内外からの高い注目が感じられた。
選ばれる論文は従来からの研究よりも新規な内容を重視しているため,今後のMEMS分野の動向を映す鏡である.採択される論文数はアメリカが最も多く,アジア,ヨーロッパの順で多い.論文内容としては,バイオ分野へのMEMS技術を応用する研究が増えている.細胞やたんぱく質などをシリコンニードルやマイクロチップにより計測するものが多いまた,研究内容がシリコンを用いたものだけでなくポリマーを基板に用いたフレキシブルデバイスに関するものも増えている.ポリマーを基板に用いたデバイスは,MACRO BEANSセンターの繊維状基材を用いたデバイスに近い研究テーマである.そのため,さまざまなフレキシブルデバイスを繊維状基材上に展開することが可能である.

 テクニカルプログラム
以下のようなオーラルセッションがあった.
Optical MEMS
RF MEMS
POWER MEMS
FABRICATION
ACTUATORS
BIO&CHEMICAL MICROSYSTEMS
MEDICAL MICROSYSTEMS
SENSORS
MIROFLUIDIC COMPONENTS AND SYSTEMS
GYROSCOPES
NANO & MATERIALS
であり,MEMSの設計や製作,センサやアプリケーションまでをカバーするプログラムである.
近年の傾向としては,マイクロビーズやマイクロタス技術によるバイオ関連のセッションが多いことが特徴である.研究者は大学関係者が多くバイオ応用を目指したデバイス開発が多い.具体的な技術としては,細胞などをゲルビーズで包む技術や磁性体で配列させる方法などがあげられる.また,細胞に刺激を与えたり,力を計測するためにシリコンの静電アクチュエータや磁気アクチュエータ,光ピンセットを用いた方法などについて発表があった.
従来からのシリコンMEMSに関しては,RFレゾネーターやジャイロスコープに関する研究が応用を目指して研究がおこなわれていた.さらに,カンチレバーを用いた圧力だけでなく滑り力も計測できるデバイスの研究も多く発表される内容となってきている.
学会全体としては,バイオ関連のデバイスを大学の研究者が行っており,サイエンティフィックな内容が多い.現在産業となっている振動子やジャイロなどの研究もおこなわれている.MEMSにおける加工技術,システム化技術に関しては,年々大幅な進化が見られており発表されているデバイスの完成度が上がっているため産業応用可能な学術分野となってきていることは確実である.センサ等を小型,高機能,高集積するデバイス化技術を何に応用するのかについてのアイデアが最も求められており,次に産業になるようなキーデバイスについての模索が続いている.

 発表内容とその反応
MBCからは2本の論文を発表した.一つは,この学会のポスターセッションにおいて「Conductive polymer coated elastomer contact structure for woven electronic textile」のタイトルで,繊維状基材の製織デバイスで発生する基材間空隙の防止を目的としたシリコーンエラストマーと導電性ポリマーであるPEDOT:PSSから成るフレキシブル接点に関する発表を行い,プロジェクトにより得られた筆者の研究成果を広く発信することができた。また,重要な国際学会ということもあり聴講者の数も非常に多く,筆者のポスターに関しても時間帯によっては多くの人だかりができるほどであった。本成果の目標アプリケーションとしているウェアラブルデバイスが,洗濯機による強い負荷や濡れ環境での洗浄にも耐えうるものかという質問が多く寄せられたため,プロジェクトの実用化に対する高い関心が窺えた。本学会で見られた,筆者の研究に関係のある他の研究機関による発表としては,主として生体用デバイス開発に向けたフレキシブルMEMSに関する総括的な内容の基調講演「J. A. Rogers, Semiconductor devices inspired by and integrated with biology」や,圧電体のPVDFと導電体のPEDOT:PSSによるポリマー材料のみで作製された重量測定センサに関する報告である「J. R. Busch, et al. Inkjet printed all-polymer flexural plate wave sensors」,導電性液体による流路チャンネルとシリコーンゴムによる,透明でフレキシブルなタッチパネルに関する報告である「K. Asano, Flexible transparent touch panel mounted on round surface」などが挙げられ、これらの研究内容について情報を収集し、筆者の研究に対する知見を得ることができた。
 また,もう一つはナノインプリントによるプラスチック基板上の選択的親水化技術とセカンドドーピング技術を用いた導電性ポリマーPEDOT:PSSのパターニング技術についてポスター発表を行った.発表は初日であったこともあり,多くの参加者がポスターに集まり質問を受けた.具体的には,
1. 他の技術でできない機能は何なのか.
2. どこまでプロジェクトの完成予想図のような複雑なシステムができるのか?
3. 他の方法と違うからオリジナルはあるけど,社会でこれでないといけない必然性はあるのか?
4. マスクのナノスケールのパターンはオーバースペックな装置で作ってるのでは?EBでダメな理由は何か?コストなのか時間なのか何なのか?何がリソと違うのか?
5. ピラーをもう少し小さくすると今度は,疎水になってそういうものになるのでは?
6. 疎水の材料でナノインプリントをすればもっと親水と疎水の差が大きくなるのでは.
7. ナノピラーの部分に,レジストとかつけると入った後でとれなくなったり,レジストがつかないのではないのか.
8. ナノピラーなので何かセンサにしたときに機能を持ったりしないのか?面積が広いので感度が上がることや曲げの影響が変わるなど.
などの質問が出た.ナノピラーに関する加工,特性に関する質問が多く,今後加工を簡易化することや親水や疎水などの機能をうまく用いることに関して改良していくことが必要であることが分かった.

Photo


Photo_2


|

« EcoDesign2011@京都 報告 | トップページ | MEMS2012 参加報告 (Life BEANSセンター) »

MacroBEANS」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« EcoDesign2011@京都 報告 | トップページ | MEMS2012 参加報告 (Life BEANSセンター) »