★第25回IEEE/MEMS2012国際会議(25th IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems)が、2012年1月29日(日)~2月2日(木)の日程で、フランス・パリのMarriott Rive Gauche Hotel & Conference Centerにて開催されました。マイクロ・ナノテクノロジー分野では、MEMS国際会議は、隔年開催のTransducers(The International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems)と並び、最も重要な国際会議と位置付けられ、アメリカ、ヨーロッパ/アフリカ、及びアジア/オセアニアの3つの地域が持ち回りで毎年開催されています。第25回目にあたる今回はヨーロッパ/アフリカ地域が担当で、フランスでは初めての開催となりました。投稿論文数は、過去最多の978件(前回886件)、その中から45件のオーラル、298件のポスターが採択され、採択率は合わせて35%と厳選された論文が発表されました。地域別ではアメリカ126件(前回146件)、ヨーロッパ/アフリカ54件(前回61件)、アジア/オセアニアが160件(前回136件)で、ヨーロッパ開催にもかかわらずアジアの躍進が目立ちました。国別ではUSAが1位で119件、日本が2位で84件、以下、台湾29件、韓国21件、中国14件、フランス12件、シンガポール10件の順で、日本は健闘しています。また,事前登録参加者は、アメリカ地域206名(前回228名)、ヨーロッパ/アフリカ地域237名(前回128名)、アジア/オセアニア地域281名(前回204名)で、ここでもアジアの勢いを感じました。次回は、2013年1月20日(日)~1月24日(木)の日程で、台湾・台北のTaipei International Convention Center (TICC)にて開催されます。アブストラクト締切りが9/10、採択通知が10/19、最終原稿締切りが11/23となっています。
★BEAMSプロジェクトからは、4件のポスター発表が採択されました。Life BEANSセンターの高橋研究員は、分野8(Medical Microsystems)の中で、蛍光血糖値センサなどの埋め込みデバイスに不可欠な要素となる皮下組織の炎症を抑制するナノパターン付きハイドロゲルについて発表しました。3D BEANSセンターの西森研究員は、分野1(Fabrication Technologies)の中で、プラズマ起因のSi表層に生じる機械的損傷を中性粒子ビームエッチングにより低減できる可能性について、カンチレバーアレイを形成したウエハを用いて評価した結果を発表しました。Macro BEANSセンターの高松研究員は、分野1(Fabrication Technologies)の中で、テキスタイルデバイスの製造に要求される高い導電性を有するポリマーのパターニング技術について、UVナノインプリントによる表面改質(親/疎水化)とエチレングリコールによる2次ドーピング処理の有効性について発表しました。また、Macro BEANSセンターの山下研究員は、分野3(Materials and Device Characterization)の中で、テキスタイルデバイスに要求される耐久性の高い柔軟な接点として開発中の、シリコーンエラストマーに導電性ポリマーをコーティングした新規接点構造について発表しました。各ポスターとも多くの聴講者が訪れ、熱心な議論がなされていました。このように各分野の専門研究者との生の議論を通して、各研究員は、貴重な情報が収集でき、また、BEANS成果の広報もできたものと思います。以下に、各研究員の発表の様子を写真で示します。(各研究員からもブログを発信しておりますので、参照ください)
★以下に、招待講演、及びオーラルセッションとポスターセッションの構成、件数を示します。概要、トピックスにつきましては、追って報告したいと思います。
【招待講演】
(1)CHALLENGES AND EMERGING DIRECTIONS IN SPINTRONICS
Albert Fert
UMP CNRS/Thales, Palaiseau and Université Paris-Sud,
Orsay, France
(2)SEMICONDUCTOR DEVICES INSPIRED BY AND INTEGRATED WITH BIOLOGY
J.A. Rogers
Department of Materials Science and Engineering, University of Illinois,
Urbana/Champaign, USA
(3)MICROROBOTS IN SPOTLIGHT FOR EVOLUTION OF BIOMEDICINE
F. Arai
Department of Micro-Nano Systems Engineering, Nagoya University,
Nagoya, Japan
【オーラルセッション】 45件(11件) ()内は日本からの発表件数
●セッションⅠ (OPTICAL MEMS): 3件(0件)
●セッションⅡ (RF MEMS) : 4件(0件)
●セッションⅢ (POWER MEMS) : 5件(0件)
●セッションⅣ (FABRICATION) : 4件(1件)
●セッションⅤ (ACTUATORS) : 4件(2件)
●セッションⅥ (BIO & CHEMICAL MICROSYSTEMS) : 6件(2件)
●セッションⅦ (MEDICAL MICROSYSTEMS) : 4件(2件)
●セッションⅧ (SENSORS) : 4件(2件)
●セッションⅨ (MICROFLUDIC COMPONENTS & SYSTEMS) : 4件(1件)
●セッションⅩ (GYROSCOPES) : 3件(0件)
●セッションⅪ (NANO & MATERIALS) : 4件(1件)
【ポスターセッション】 298件(73件) ()内は日本からの発表件数
■分野1(Fabrication Technologies):39件 (11件)
■分野2(Packaging Technologies):8件(1件)
■分野3(Materials and Device Characterization):26件(7件)
■分野4(Mechanical Sensors and Systems):35件(6件)
■分野5(Physical MEMS (Optical, Magneto)):11件(2件)
■分野6(RF MEMS):19件(0件)
■分野7(Bio and Chemical Micro Sensors and Systems):43件(11件)
■分野8(Medical Microsystems):20件(6件)
■分野9(Micro-fluidic Components and Systems):32件(14件)
■分野10(Micro-Actuators):20件(8件)
■分野11(Energy and Power MEMS):25件(6件)
■分野12(Nano-Electro-Mechanical Devices and Systems):20件(1件)
★MEMS2012における技術動向の一つの指標として、オーラルとポスターの発表件数から分析してみました。下の図は、分野1~分野12で分類した発表件数の割合を%で示したグラフです。昨年度MEMS2011のデータも併せて示しました。多少の増減はありますが、発表件数が多い分野は、昨年度と同様、⑦バイオ・化学センサシステム、①製造技術、④メカニカルセンサ・システム、⑨マイクロ流体要素・システム、③材料・デバイス特性となっており、バイオ・化学系のデバイス開発がMEMS研究の大きな流れになっている状況が定着してきたようです。また、将来の革新デバイス実現に向けた、新たな製造技術や材料の研究においても、新たな研究成果が継続して発表されており、これは、BEANSの目的と一致しています。また、従来からのメカニカルセンサにおいても、継続的に新たな研究成果が発表されています。今回の特徴は、エネルギー・パワーMEMSの分野の発表件数が倍増していることです。この分野では、昨今のエネルギー事情から、特に、エネルギーハーベスティングに対する期待の高まりとともに、今後研究が増加していくものと思われます。
★また、各分野における日本からの発表の割合を分析してみました(下図)。他国に比べて日本で研究が盛んな分野は、⑨マイクロ流体要素・システム、⑩マイクロアクチュエータ、⑧医療用マイクロシステムなどです。逆に、研究が少ない分野は、⑥RF-MEMS、⑫ナノデバイス・システム、④メカニカルセンサ・システムとなっています。特に、RF-MEMSでは、遂に日本からの発表がゼロとなってしまいました。これは、日本が苦戦している既存のセンサ・デバイス分野よりも、研究段階では将来の伸びが期待できるバイオ・化学センサや医療デバイス分野にシフトしている状況が伺えます。一方、ナノデバイス分野は将来期待されるところですが、日本の出遅れが懸念されます。また、これまで、エネルギー・パワーMEMS分野では、日本の存在感は低いものでしたが、日本が強みとする省エネルギー技術において、今後、ナノ・マイクロ技術が展開され世界をリードする分野になると期待されます。
★BEANSプロジェクトは、エネルギー、医療、ナノ分野の革新的デバイスの実現に向けて、バイオ、有機、ナノ、及び大面積フレキシブル化などを融合させた製造技術を開発するプロジェクトであり、上記、世界の技術動向とその中での日本の方向性とマッチしたものであることを改めて認識することができました。