Pj 社会センサ先導

2015年11月16日 (月)

「道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発」の成果をハイウェイテクノフェア2015にて展示

 「道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発(RIMS)」プロジェクトは2014年度より活動を開始し順調に研究開発を進めています。このたび、以下の展示会に出展し成果の一部展示を行います。皆様のご来場をお待ちしております。

 名称 ハイウェイテクノフェア2015
 会期 2015年11月25日(水)~26日(木) 10時~17時
 会場 東京ビッグサイト西3・4ホール
 展示内容
 (1)道路インフラモニタリングシステム
 【特徴】
 ・従来の点検技術を補完し、道路インフラの状態を常時・継続的・網羅的にモニタリング
 ・道路インフラのトータルな維持管理が可能
 ・高速道路の橋梁、道路付帯物、法面等を対象
 ・センサ端末は自立電源駆動
 ・新規の小型、安価、高性能、高耐久性無線センサ
 ・多種多様なセンサからのデータを収集する無線通信センサネットワーク
 ・セラミックスによる高耐久のオールインワンパッケージ
 【仕様】
 ①橋梁振動センシング
 ・広帯域(数Hz~1MHz)振動センサ(スーパーアコースティックセンサ)によるモニタリング
 ・高感度(0.1µε)フレキシブルひずみセンサアレイシートによるモニタリング
 ②高精度(傾斜出力安定性:0.05deg、振動分解能:0.1gal)傾斜マルチセンサによる道路附帯物のモニタリング
 ③電波位相差変位センサによる法面の高頻度・全天候・3次元法面モニタリング(1時間に4mm以下の変位検出)

 (2)高耐久性セラミックスパッケージ
 ・自立電源、無線モジュール、環境センサをオールインワンパッケージ
 ・アンテナ内蔵LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)回路基板
 ・透光性セラミック基板を使い太陽電池もパッケージに内蔵
 ・パッケージを構造物に強固接着/接合する簡易施工シート実装
 ・常時モニタリングを長期(10年)保証する端末パッケージング技術
 【仕様】
 ・サイズ:試作品6.3cm×9.1cm×2.5cm(厚み2mm)【最終目標:7cm×10cm×5cm】
 ・耐久性:【最終目標:実環境下で10年】
 ・透光性セラミック:透過率96%、熱伝導率34W/(m・K)
 ・180°の指向性を持つLTCC内蔵アンテナ

<NMEMS技術研究組合 武田宗久>

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2014年5月22日 (木)

ナノ・マイクロビジネス展併催プログラム「先導研究成果報告会」開催

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から技術研究組合NMEMS技術研究機構が受託しました「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト(研究開発成果等の他分野での先導研究)社会課題対応常時・継続モニタリングシステムの開発」(期間2013年7月11日~2014年3月20日)は2014年3月に研究活動を完了致しました。実質約8ヶ月の短い研究期間でしたが、①社会・産業インフラ、②農業、③健康医療の3分野における「社会課題対応常時・継続モニタリングシステム」を提案し、「研究開発の課題の明確化と解決策の提示、ならびに期待できる効果を明らかにするとともにキーとなるセンサの原理検証を行う」とした研究目標を達成しました。

 2014年4月23日(水)~25日(金)にパシフィコ横浜で開催されましたナノ・マイクロビジネス展の併催プログラムとして、このプロジェクトの成果報告会を4月24日(木)14:00~16:30にパネルディスカッション形式で開催しました(図1:プログラム、写真1:先導成果報告会会場の様子参照)。 当日は写真1に示すように、会場ほぼ満席になる来場者を得て、活発な議論がなされました。以下、その内容に関しまして、簡単に紹介致します。

 

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        図1 先導研究プロジェクト成果報告会プログラム

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          写真1 先導成果報告会会場の様子

 研究リーダーの東京大学IRT機構長の下山勲教授からの開会挨拶(写真2)の後、委託元のNEDOロボット・機械システム部の渡辺主任研究員から来賓の挨拶として、この報告会への期待と、社会・産業インフラ分野に関してはこの先導研究を受けた本格研究の公募を開始したことの紹介がありました。次に、コーディネーターである東京大学生産技術研究所マイクロナノメカトロニクス国際研究センター長の藤田博之教授からこのパネルディスカッションの趣旨説明がなされた後、藤田コーディネーターの司会のもと、パネルディスカッションが実施されました。

 先ずは、パネリストの一人の下山リーダーより、プロジェクトの概要紹介があり、その後、①社会・産業インフラ分野の今仲行一サブリーダー(技術研究組合NMEMS技術研究機構 理事長)、②農業分野の前田龍太郎サブリーダー(独立行政法人産業技術総合研究所集積マイクロシステム研究センター長)と③健康医療分野の唐木幸一サブリーダー(オリンパス株式会社 執行役員 医療技術開発第1本部長)から各分野の成果報告がなされました(写真3:パネリスト)。

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           写真2 下山研究リーダーの開会挨拶

 

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         写真3 パネリスト(各分野サブリーダー)


 引き続くパネル討論では、藤田コーディネーターから次の2点の質問が出され、各パネリストからそれぞれ以下のような回答がなされました。

(1)無線センサネットだからできることは何か?

  • 従来の精度はあるが消費電力が大きく高価なセンサに比較して、取り付け、取り外しが簡単なのが無線センサのメリットである(今仲サブリーダー)。 

  • 動物は移動するので、ワイヤレス装着することが必須となる。但し、装着方法は難しく研究課題となる(前田サブリーダー)。

  • 人間では着けっぱなしにして、着けていることを意識させないことが継続計測には必要であり、そのためには無線は必須になる(唐木サブリーダー)。

  • インストレーションにコストがかかるので、設置した後に無線で条件を書き換えできることも必要になる(下山リーダー)。


(2)長期運用には、耐久性の問題、エネルギーの問題、キャリブレーションの問題等が発生するが、どのように対処すべきと考えるか?

  • 現状のパーキングメータやガスメータ等屋外で使用しているセンサは厚手の筐体をパッキンで封止しているが、このような大型のものは使えないので、新たな規格や構造を開発する必要がある(今仲サブリーダー)。

  • 農業畜産では、社会インフラと比較すると寿命は短く、環境もそれほど過酷ではない。難易度の低いところからどんどん導入していき、普及を図っていくことが大事である(前田サブリーダー)。

  • 人間も耐久性要求や環境はそれほど過酷ではないが、老廃物等汚い環境であること及び個人差が大きいことが信頼性の課題になる。これを解決することが必要である(唐木サブリーダー)。

  • 信頼性がキモになる。自己診断をして信頼性を維持したり、健全性を調べたりすることも必要になる(下山リーダー)。


 また、フロアからも次の2点の質問・コメントが出され、活発な議論がなされました。

(1)常時・継続モニタリングはビジネスとして成り立つか?ビジネスの観点から投資回収が可能かについてお伺いしたい。

  • 社会課題解決としてやらないといけない使命感がある。道路は市町村レベルまで含めると数は多くなるので、ペイできると考えている。また、プラットフォームとして知財を押さえて標準化し、世界に出ることでさらに市場は広がると考える(今仲サブリーダー)。

  •  →海外では古くなった橋が崩落して種々の試みがなされているが、競争や協調関係はどうなっているか?(藤田コーディネーター)

  •  ⇒海外は調査したレベルであり、コンタクトは未だ取っていない(今仲サブリーダー)。

  •  →標準化のためにはアライアンスも必要になる(藤田コーディネーター)。

  •  →メーカ側の話ではなく、利益を享受する側として、リスクが減る等の投資効果はあるか?

  •  ⇒高速道路を通行止めにした時の経済損失は計算されており、物資輸送の観点で投資効果はある(今仲サブリーダー)。

  •  →社会インフラのメンテナンスに30兆円必要等の調査結果も出されており、これを抑えるために改修の終わったインフラの次のメンテナンス時期を把握する等にも使えると考える。詳細は土木系で検討がなされているので、そちらを調べて欲しい(藤田コーディネーター)


  • 農業畜産では損失が少なくなるという言い方ではユーザの受けは良くない。例えば養鶏でも鶏インフルエンザによる損失が減るということよりは、卵の生産性があがるという主張の方が受け入れられる(前田サブリーダー)。

  • 医療経済は他のものと違って難しい。例えばインシュリン投与では数万円/月の支出だが、病気が悪化して重篤になり、人工透析が必要になると百万円/月かかるので、センサシステムにより1次予防できれば月数十万の効果があるということはできるが、誰がそれに対して対価を支払うかが問題になる。キャッシュフローは減る方向なので、通常の経済論理では考えることはできない(唐木サブリーダー)。

  • JR等の話を聞くと、人口が減ってきているが、インフラの老朽化は進むので、効率的に如何にメンテナンスするかが大事であり、それにセンサは役立つ(下山リーダー)。


(2)話のあった血糖値センサはすぐにでも実用化して欲しい。生体認証との組み合わせや、食の問題を血糖値で見るというのは非常に有望と思う。実用化の目処はどのような状況か?

  • 商品化に関しては企業のビジネスモデルに係るので、答えられないが、原理的には可能なレベルには来ている。但し、製品を作った時に誰が使うかにかかっていると考える(唐木サブリーダー)。

    →血糖値だけでもいろいろなことができそうなので、制度と絡めて是非普及させて欲しい。

 最後に、藤田コーディネーターから、以下のまとめがあり、パネルディスカッションを終了しました。

  • 今回は先導研究なので結論は出た訳ではないが、無線センサネット技術は注目されており、本当の意味で社会に使われそうな気配がいろいろなところで出てきている。世界に先駆けて日本で研究開発を実施することが必要なことを報告できた。

  • この分野は今注目を集めており、いろいろな公募も出ているので、興味ある方は積極的に参加して、みんなでこの分野を盛り上げて頂ければありがたい。


 さらに、主催のマイクロマシンセンターの青柳専務理事が閉会の挨拶を述べ、報告会を終了しました。

  なお、当日の発表資料に関しましては、下記URLから閲覧及びダウンロード出来ます。  http://www.nmems.or.jp/sensor/seika/

(マイクロマシンセンター 武田 宗久)

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2014年4月14日 (月)

ナノ・マイクロビジネス展への社会課題対応センサーシステム技術開発プロジェクトの出展

 現在、NEDOが実施している「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト」について、2014年4月23日(水)~ 4月25日(金)に開催される「ナノ・マイクロビジネス展」に出展し、開発したセンサを用いた省エネの実証デモ展示等、プロジェクトの取り組み状況や成果を発表します。
 また、以下のとおり、「グリーンセンサ・ネットワークプロジェクトプロジェクトセミナー」及び「社会課題対応常時・継続モニタリングシステムの開発(先導研究)」の成果報告会を開催します。これらは、プロジェクトの最新の研究開発状況や結果、将来像について広く紹介するものです。

1.ブースのみどころ
 基本計画の目標寸法(2x5cm以下)、長低消費電力(~100μW)を実現した自立型無線センサ端末が計画通りにできあがってきました。 また、センサネットワークを構成する高効率室内照明用のエネルギーハーベスティングデバイス、低消費電力無線、そしてグリーンコンセントレータ等の要素技術開発がほぼ完了しました。 今回のブースでは、これらの要素技術の紹介を行い、併せて、これらのセンサモジュール、センサネットワークシステムを用いた空間の温度ムラの見える化、そして最適空調制御による省エネを示す展示を行います。革新的MEMSセンサを用いたネットワークによるセンサ取り付けが容易な“簡単省エネ”を是非実感ください。

図1 グリーンセンサプロジェクトブースイメージ


図2 実証のデモ画像。床の温度分布、人の位置情報の見える化と同時に、この結果をを元に最適な空調制御を行う。

2.関連プログラム
<社会課題対応常時・継続モニタリングシステムの開発(先導研究)の成果>
「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト」の中で、2013年度に実施した先導研究事業の成果や将来像を紹介します。
日時 2014年4月24日(木)14時00分~16時30分
会場 パシフィコ横浜 ホールD アネックスホール(F203)
参加費 無料

<グリーンセンサ・ネットワーク(GSN)プロジェクトセミナー>
 2011年からスタートし、最終年度に突入した「グリーンセンサ・ネットワークプロジェクト」の最新の研究開発状況や成果を紹介します。
日時 2014年4月25日(金)14時00分~16時35分
会場 パシフィコ横浜 ホールD アネックスホール(F203)
参加費 無料

関連URL
http://www.nedo.go.jp/events/CD_100002.html

<NMEMS技術研究組合 今本浩史>

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2014年3月18日 (火)

NEDO委託事業「社会課題対応センサーシステム先導研究」クロージング会議開催

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託しました「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト(研究開発成果等の他分野での先導研究)社会課題対応常時・継続モニタリングシステムの開発」(期間2013年7月11日~2014年3月20日、リーダ:下山先導研究センター長)の第2回全体会議(クロージング会議)が2014年3月17日(月)にNMEMS技術研究機構会議室において開催されました。本会議にはプロジェクト委託元のNEDO技術開発推進部やプロジェクトに参画する①社会・産業インフラ分野、②農業分野、③健康医療分野の3分野の研究者、再委託先の研究者及び事務局を含め総勢59名が参加しました(写真1クロージング会議会場の様子)。

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           写真1 クロージング会議会場の様子

NEDOからの挨拶の後、各分野サブリーダ(①社会・産業インフラ分野:今仲サブリーダ、②農業分野:前田サブリーダ、③健康医療分野:唐木サブリーダ)から最終成果を報告して頂くとともに全参画機関代表者からプロジェクト参画に対する感想を述べてもらいました。本プロジェクトに参画することでユーザ機関との連携が強化されるとともに目指しているセンサーシステムへのユーザ御機関の熱い期待が確認でき非常に有意義であったとの意見が多数だされました。最後に本プロジェクトのリーダである下山先導研究センター長からのリーダ総括がなされました(写真2下山センター長の発表)。

 

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             写真2 下山センター長の発表 

延べ126人の登録研究者が参加し、各分野とも真の社会課題を抽出するとともに社会課題を解決する革新的技術に基づいたセンサーシステムの開発目標、仕様ならびに期待できる効果を明らかにして、当初の目標を達成するとともに、8カ月という短期間に特許6件、論文投稿1件、研究発表10件、新聞・雑誌等への掲載7件、展示会での発表1件の外部発表成果が出されたことが報告されました。今後はこの先導研究の成果を基に、さらに本格研究等を実施して、真に役に立つセンサーシステムの実用化を目指すことを誓って、クロージング会議を終了しました。クロージング会議終了後、引き続き交流会が開催されました。一般財団法人マイクロマシンセンター青柳専務理事からのねぎらいの挨拶と乾杯の発声の後、研究者間でこれまでのプロジェクトにおける苦労話や成果の実用化に向けた活発な意見交換がなされました(写真3交流会の様子)。

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              写真3 交流会の様子

 最後に、東京大学藤田教授(健康医療分野コ・サブリーダ)から、「なんとしてもビジネスに繫いで欲しい」との締めのご挨拶を頂きました。

 

→ 社会課題対応センサーシステム先導研究HP

(NMEMS技術研究機構 武田 宗久)

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2014年3月14日 (金)

欧米におけるAE診断に関する動向調査

欧州においてAEセンサシステムを用いた構造検査サービスを実施しているTUV Austria、および、AEセンサユニット・検査HW・SWを提供している欧州最大のベンダVallen Systems GmbHを訪問。また、AEセンサーによるモニタリングの第一人者であるUCLA小野教授にお話をお伺いし、欧米におけるAE適用事例、センサの要求仕様、検査の対象および実施内容について調査した。

[AEセンサの適用市場について]

石油タンクの腐食検査が大きな適用市場であり、欧州で数百タンクを検査している。1タンク当り50~60個のセンサを用いるのが一般的とのことである。また、一事例で数多くセンサを用いているのはオイルのパイプラインである。デンマークの例で、最大50kmのパイプラインに50mおきにセンサを設置しているという(約1000個のセンサ)。

ガスタンクへの適用事例では、球形タンクに数m間隔で30個のほどのセンサを配置し、欠陥の位置標定も行なっている。また、ガイシの製造工程検査にAEセンサを用いている事例もある。FRPとメタルの嵌合強度検査に適用している。

米国ではサンフランシスコ-オークランドベイブリッジでAEによる常時モニタリングが行われ約600個のセンサーが使用された(約4百万ドルの事業)。カナダではT社が鉄道橋のAEモニタリングを継続的に実施しており、鉄道事業者は結果を基に修繕計画を立てているという。これは商業ベースで採算が取れているケースである。ポーランド、チェコでは大型トラックを通過させたときのAEを測定し健全性を判別。AE診断結果で通行止めと判断した例もある。

一方で、航空機への適用、変圧器の絶縁不良の検知診断の要求もあるという。船(オイルタンカーなど)の検査では、腐食と疲労亀裂の両面での検査が必要となり、今後適用市場として期待されている。また、航空機等の燃料配管の漏れ検知にもAEの適用は考えられるが、この用途ではセンサの小型化・低コスト化が必要となるとのことである。

[AEセンサへの要求仕様について]

感度や周波数範囲といった基本仕様は勿論であるが、使用可能な環境温度範囲に対する要望がいずれのヒアリングにおいても議題となった。情報を総合すると、環境温度範囲は、基本的にー50℃から80℃をカバーすることが望まれている。低温側は‐50℃でほぼ全ての対象に適用できる見通しであった。高温側は80度超を要求する特殊なアプリケーション(エンジン・格納容器など)も存在する。この場合、ウェーブガイドを用いてセンサ接触面の温度を室温に近づける手法も選択されるようであった。また、耐久性も実用上の大きなポイントであり、構造物に製造工程で埋め込まれるケースでは基本的に構造物そのものの寿命と同等の寿命が要求される。

周波数帯域としては150kHzがセンサのボリュームゾーンである。但し、MHzオーダーのセンサが実現できれば、新たなアプリケーションへの適用も可能となる。一方で、10kHz、20kHz程度で感度のよいセンサーができればコンクリート構造物への適用が可能となる。

センサのコストについては、現状のセンサはインストレーションコストが高く、低コスト化により置きっぱなしに出来れば大きなメリットとなる見通しである。

[AE検査の標準化について]

欧州では、ベルギー・ブリュッセルに本拠を置く、CEN(欧州標準化委員会)によりEN(欧州規格)化が実施されており、AEに関する検査規格のEN化実績があるという。ENは規格原案のISOとの並行投票が可能とのことである。

以上、本調査では、欧州におけるAE診断の適用市場や動向、センサの要求仕様、標準化手法等において非常に有益な情報が得られた。

(NMEMS技術研究機構 笠原章裕、渡部一雄)

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2013年12月10日 (火)

μTAS2013参加報告

2013年10月28日から30日まで、ドイツ・フライブルクで開催されたThe 17th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences, µTAS 2013 Conference (µTAS 2013)に参加しました。フライブルクはドイツ南西部バーデン=ヴュルテンベルク州にある都市です。フランクフルトからドイツ新幹線で2時間の位置にあり、スイス国境近くに位置します。環境都市とも知られ、アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクを中心とする大学都市でもあります。µTAS 2013はマイクロ流体デバイスに関する研究者が1000名以上参加する本分野において最大級の学会です。4日間で基調講演8件、オーラル発表約100件、ポスター発表約570件もの発表がなされ、そのテーマはマイクロ・ナノ工学全般に渡り、一分子検出、核酸やタンパクなど生体分子の検出デバイス、細胞の制御など幅広いものでした。

Photo_3          会場;メッセフライブルクの外観

Photo_5          基調講演開始前の会議場

DNA検出の発表は、学術的なものの方がいくぶん多い印象でした。それらは、ナノポアなどのデバイスを用いて一分子DNAハンドリングしているものが中心でした。商業化を目指していると思しき検査系の発表では、ボッシュやキアゲン、アボットといった企業が関与したものが多かったです。遠心力を駆動力に用いたデバイスについてはフライブルグ大学より報告がありました。血液中のウィルスを標的としており、核酸抽出からPCRを行うものです。血液からプラズマ細胞を分離するカートリッジが別にあり、遠心力を駆動力に選択した利点を活用しておりました。バイオ系の有力企業であるQiagen社との共同開発とのことで動向を注目すべきものと考えられました。同様に遠心力を用いるものの、チップ形状ではなく、研究用マイクロチューブ内で核酸抽出とLAMP法によるDNA増幅を実現するLabTubeという新たなプラットホームをMITが報告していました。Bosh社との共同研究であり、食の安全分野への応用を想定しているとのことでした。Labtube_2

テキサス大学からはPDMSとPaperをハイブリッドさせたマイクロ流体デバイスの報告がありました。両者の優位性を組み合わせようという試みで、コストの削減まで加味した研究であり、実用化への意識が感じられました。我々のテーマにおいても、コストダウンは一つの重要なファクターなので、参考になりました。発表内容は最先端のものであり、研究向けだけでなく、ポータブル型に設計されていたり、スマートフォンとの連動可能なものであったり、コストの低減化を試みていたりなどと、実用化を見据えたものがありました。

ヴァージニア大のLanders教授へのインタビューも行いました。本分野での第一人者であるとともに、企業との連携で実践的な研究を行っていらっしゃいます。市場、プロトタイプのスペックに関する課題、競合についての情報が得られました。

本プロジェクトの推進において、市場や技術、競合などの有益な情報が得られました。当初の目的が達成できたものと考えています。

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2013年12月 9日 (月)

SPIE Remote Sensing/ Security + Defence 2013@ドイツ、ドレスデン参加報告

SPIE Remote Sensing/ Security + Defenceはリモートセンシング技術に関する世界最大規模の学会である。Remote Sensingは衛星リモートセンシング、Security + Defenceは検出器や光学系に関する内容が主であるが、重なる分野も多いため共催されるようになった。

一般的な学術会議と比較して、実際の運用または製品そのものに近い内容の発表が大多数である点が大きな特徴となっている。

本年はドイツの古都ドレスデンで9/23-36の四日間開催された。会場はエルベ川沿いの美しい街並みが望まれ、ツヴィンガー宮殿などの有名な観光地の只中に位置している。ヨーロッパを中心とした最新の衛星技術を学ぶとともに、ドイツの重厚な雰囲気が同時に楽しめるようになっている。

○SPIE Remote Sensingに関して主に調査したセッションは以下である。

 ・ Remote Sensing for Agriculture, Ecosystems, and Hydrology;農業、生態系、水分学
 ・ Remote Sensing of the Ocean, Sea Ice, Coastal Waters, and Large Water Regions:海洋、海氷、広水域観測
・ Sensors, Systems, and Next-Generation Satellites:最新衛星のミッション(日本、ヨーロッパ、アメリカ)
・ Earth Resources and Environmental Remote Sensing/GIS Applications:地球、環境観測
 ・ Remote Sensing of Clouds and the Atmosphere : 雲、大気
 衛星リモートセンシングの適用先である生態系、水分学、海洋、大気観測など幅広い分野における発表があり、最新動向を探ることができた。衛星リモートセンシングの運用においては、環境保全を目的とした運用が主流となっている。可視域を中心とする波長分析から熱赤外域における要求が大きくなってきていることを実感した。実際の衛星に搭載されている光学系は、宇宙での使用を前提としているため、非常に複雑である。可動部や校正系の少ないシンプルなシステムの構築が重要であると思われる。

特に印象的であったのは欧米日の衛星ミッションについて独立したセッションが設けられて発表がされていたことである。世界的な衛星リモートセンシングの動向を把握するには最適であった。

○SPIE Security + Defenceの広域(衛星リモート)センシングシステムの開発に関係の深い以下のセッションを中心に調査を実施した。

・ Military Applications in Hyperspectral Imaging and High Spatial Resolution Sensing

  :ハイパースペクトル、高分解能

・ Electro-Optical and Infrared Systems: Technology and Applications:赤外線、EO

・ Millimetre Wave and Terahertz Sensors and Technology:ミリ波、THz技術

・ Electro-Optical Remote Sensing:リモートセンシング

・ Emerging Technologies:将来技術

 衛星リモートセンシングに関連するセンシング技術に関して、光学系、検出器、データ処理、キャリブレーション方法、イメージングシステムなど幅広い分野における発表があり、最新の開発動向を探ることができた。イメージングシステムに関しては、衛星リモートセンシングや軍用途を含めた様々な応用分野で、より多くの波長帯を検知できるシステムの開発が進められている。例えば、環境監視(森林、海洋)や大気汚染監視などにおいては、可視~赤外領域の波長情報が用いられ、検知対象によって異なる波長情報が求められている。

併設の展示会で多数の企業・機関から多岐にわたる高度な技術・製品が出展されていた。その中でもハイパースペクトルイメージングに関する、製品が多く出展されており、これら製品の注目の高さが伺えた。

 

(NMEMS技術研究機構 小川 新平、 藤澤 大介)

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2013年12月 1日 (日)

欧州における農業のICT化に関する技術動向調査

 2013年9月24日から26日までドイツ・フェヒタで開催された11th International Conference on “Construction, Technology and Environment in Farm Animal Husbandry”(BTU2013)に参加しました。フェヒタはドイツ北部に位置し、ブレーメンから電車で1時間ほど南西に行ったところにある小さな町です。BTU2013は農業機械、ICT牧場に関する数少ない学会です。参加者は畜産業のICT化に力をいれているヨーロッパからの参加者がほとんどでした。特にドイツからの参加者が多く、英語とドイツ語が公用語となっているような学会でした。開催地、主催者によっても学会の趣向が変わるそうで、まだ不安定な学会の用にも感じました。本学会では鶏、豚、牛に関する発表が満遍なくされており、畜舎内の環境管理や、排ガスなどの空調に関する発表も多かったです。

家畜の個体管理に関しては、基本的に畜舎内での管理を前提とした研究が多かったです。そのため、カメラによる行動観察や、RFIDを用いた位置情報、個体情報の管理に関する研究が主でした。畜舎外での個体情報の管理に関する研究では、アルプスにおける放牧牛の位置情報の管理を試みた研究が発表されていました。アルプスでは1日1回放牧牛を目視することが義務付けられており、広い放牧地で牛を見つけるのが大変だそうです。また、アルプスの高原には無線アンテナの基地局を設置することが法律で許可されていないそうです。そこでGPSによる放牧牛の測位を試みていました。しかし、GPSは消費電力が大きく、2週間程度しか電池が持たないということで問題を抱えておりました。地域によって法律などの規制が変わってくるので、その地域にあった方法でシステムを作り上げる必要があると実感しました。

また、本学会では豚の研究に一番力を入れているように感じました。ヨーロッパ各地の研究機関が協力した、「PigWise」というプロジェクトが行われていました。PigWiseでは給餌器と豚につけられたRFIDタグの通信とカメラでのモニタリングによってどの豚がどの程度食事をしているのかを把握し、その後の肥育や体調管理に応用しようという試みを行っていました。食事の間隔に異常のある豚は何か体調の異常が疑われるというものです。学会で発表された研究では、食事間隔が異様に長くなった豚は実際に骨折していたそうです。狭い畜舎の中で大量に肥育されている豚はお互いにぶつかり合うことで骨折してしまうこともあり、どの豚が骨折したかを早く確認することも大事だそうです。

家畜の健康管理では体温変化を測定することが大事だと言われています。大動物になると体表で測定される体温は外気温の影響を大きく受けるため、深部体温とは大きな差があります。そこで、家畜の体温測定は膣内の温度が測定されており、家畜にストレスの無い形で体温をモニタリングする方法が確立されておりません。そのため正確な体温のモニタリング方法に関する研究が進められていいと思いますが、本学会ではPigWiseも含めて体温測定に関する発表はほとんどありませんでした。体温は測定しないのかと質問すると、「体温測定はもちろん重要だが、それは難しいからやらない」との答えが返ってきました。このことから、技術的な問題解決よりも、今使える技術でどれだけ実用化できるかということに力を入れているように感じました。確かにそのような視点を持つことは大事ですが、体温の常時モニタリングは避けてはならないならない課題であると感じています。まずはこれを解決することで、畜産業界に衝撃を与えることができるだろうと思います。

本学会のテクニカルツアーではBig Dutchmanという豚と鶏用の農業機械メーカーを訪問しました。日本を含め世界各地に販売しており、世界シェアは50%もあるそうです。そのBig Dutchmanが販売している豚の個体管理システムでは、畜舎内に豚一頭が入れるような自動給餌システムが配置されており、そこで豚が餌を食べているときに、体温測定を行い、その給餌システムの出口は次のゲートにつながっており、そこでは妊娠診断を行ったり、体重測定によって出荷判定を行ったりするような人手のかからないシステムとなっていました。もちろんそれらの個体情報は畜舎内の環境管理と合わせてすべてICTで管理できるようになっています。妊娠診断は装置内に入った豚に機械式のアームが胴体に巻き付くように固定され、アームに内蔵された超音波診断装置により妊娠の診断をするシステムでした。Big Dutchmanの製品は人手のかからない生産システムで大量の豚を機械的に飼育管理することを実現できるものとなっており、その規模に感銘を受けました。技術的にはそれほど難しいことをしているわけではありませんが、そのような大規模な養豚の生産システムは日本では実現できないのではないかと思います。

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図1 Big Dutchman

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図2 自動給餌器、豚が一頭ずつ給餌器内に入り、出口は妊娠診断装置や体重測定装置につなげることができる。

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図3 自動妊娠診断装置、豚が中に入ると黒いアームが豚の腹に巻き付き超音波で妊娠診断を行う。

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2013年8月21日 (水)

NEDO委託事業「社会課題対応センサーシステム先導研究」合同研究会(キックオフ会議)開催

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託しました「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト(④研究開発成果等の他分野での先導研究)社会課題対応常時・継続モニタリングシステムの開発」の第1回合同研究会(キックオフ会議)が8月5日(月)にNMEMS技術研究機構会議室において開催されました。本合同研究会には、経済産業省研究開発課桑山調整官、産業機械課横山課長補佐、NEDO技術開発推進部久木田部長をはじめとする御来賓の臨席を賜り、プロジェクトに参画する①社会・産業インフラ分野、②農業分野、③健康医療分野の3分野の研究者、再委託先の研究者及び事務局を含め総勢93名が参加しました(図1合同研究会会場の様子)。

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図1 合同研究会会場の様子


 技術研究組合NMEMS技術研究機構の今仲理事長の開会挨拶、経済産業省殿及びNEDO殿からの御来賓の挨拶の後、本プロジェクトの研究責任者である下山先導研究センター長からのリーダ方針説明、業務管理者の武田技術開発推進室長からのプロジェクトの進め方の説明がなされ、その後参加者全員から自己紹介とプロジェクトへの意気込みの表明がなされました。下山センター長の方針説明では、本プロジェクトの概要および体制の説明の後、ユーザ機関と連携して真の社会課題を抽出するとともに参加機関が連携して真の社会課題を解決する革新的技術に基づいたセンサーシステムの開発目標、仕様ならびに期待できる効果を明らかにして、MEMSの産業化に貢献しようとのリーダ方針が出されました。今後、原則隔月1回開催するリーダ・サブリーダ会議で全体の方向性ならびに分野間の整合を図りながら、月1回開催する分野毎の研究会で目標達成に向けプロジェクトを推進することを確認して、合同研究会を閉会しました。また、合同研究会の終了後、引き続き交流会(図2交流会の様子)を開催して、3分野の研究者間で活発な意見交換がなされました。今後得られました成果に関しましては、適宜発表していきたいと存じますので、御期待下さい。


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図2 交流会の様子


 社会課題対応センサーシステム先導研究HP
          (NMEMS技術研究機構 武田 宗久)

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2013年7月19日 (金)

「社会課題対応センサーシステム先導研究」を受託

技術研究組合NMEMS技術研究機構(以下NMEMS組合と略す)は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト(〔4〕研究開発成果等の他分野での先導研究)」に対して、公募対象の①社会・産業インフラ分野、②農業分野、③健康医療分野の全分野に係る全体提案をしておりましたが、7月11日付けでNEDOから全分野で採択通知を受け、受託が決定しました。

社会・産業インフラの経年劣化に伴う老朽化問題や、震災等による突発的障害、農業・畜産のより安全安心で、TPP等自由貿易に対応してより競争力のある産業への脱皮、到来する少子高齢化社会における医療費高騰問題など課題3分野において社会課題が山積しています。
                  
これら社会課題は、対象が大規模であること及び自然、動植物、人間という複雑系を取り扱うため、その根本現象の把握は容易ではありません。現状の把握には、種々の必要情報の収集が必須ですが、現状は必要情報を取得するのに適したセンサがない、センサが高価、センサの管理に負荷がかかる等から距離的及び時間的に離散的な情報収集しかできていません。
                  
  そこで、NMEMS組合は種々の社会課題を解決するために、『対象を常時・継続的にモニタリングし、現象を把握し、管理者に最適な判断材料を提供することを可能とする』という統一的な視点から課題3分野全ての社会課題対応センサーシステムに係る先導研究として「社会課題対応常時・継続モニタリングシステム」を提案致しました(図1参照)。
                  

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図1 提案する社会課題対応常時・継続モニタリングシステム

 今回のNEDOからの受託を受け、NMEMS組合では図2に示しますセンサデバイス/システムメーカ及びユーザ機関を含んだ16企業、1独立行政法人、1一般財団法人の組合員で構成する先導研究センターを新たに設置して、他のユーザ機関や関係大学との緊密な連携を取りながら、キーとなるセンサの原理検証等を行い、世の中の役に立つ「社会課題対応常時・継続モニタリングシステム」実現を目指して研究開発を推進していきたいと存じます。先導研究期間は来年3月中旬までとなります。今後得られました成果に関しましては、適宜発表していきたいと存じますので、御期待下さい。


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図2 先導研究センター体制図

(青柳桂一@NMEMS技術研究機構)



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