産業・技術動向

2024年9月 4日 (水)

「2023年度 分野別動向調査報告書」発行について (MMC「国内外技術動向調査委員会」)

 マイクロマシンセンターでは、国内外の最新かつ詳細なマイクロマシン・MEMSそしてナノ関連の研究開発の情報を収集・分析し、その技術動向を把握することを目的に、各年度MEMSの分野で代表的な国際会議を定点観測して、分野別動向調査報告書にまとめています。

 2023年度は“Transducers2023(The 22nd International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems)”と“MEMS2024(The 37th IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems)”を調査しました。

 “Transducers”は、マイクロセンサ、マイクロアクチュエータに関する最先端の研究開発事例が発表される国際会議で、1981年の米ボストンでの第1回会合以来、隔年で開催されています。今回のTransducers2023は22回目で、2023年6月25日~29日の日程で、京都で開催されました。参加者数1037名、論文投稿数は863件で、前回の550件より57%増加しました。採択件数は483件(口頭196件、ポスター287件)で、採択率は56.0%でした。加えて、Late Newsへの投稿139件からも71件が、ポスターとして採択されました。国別では、日本が最多の49件で(前回29件)、続いて中国48件(前回40件)、台湾20件(前回12件)、米国17件(前回29件)という各国からの発表件数でした。発表内容の大分類別では、Fundamentals(基礎分野)が、前回34件から今回44件となり、発表件数が増加しました。Applied Devices/Systems(応用分野)では、Mechanical Sensor(20件)、Chemical Sensor(21件)、Bio Science(25件)、Bio Medical Applications(22件)などが、多くの件数を占めていました。前回から件数の増加が目立つものとして、Bio Scienceが前回10件から25件と2.5倍の発表件数でした。

 次に、“MEMS2024”は、IEEEのMEMS技術に関する国際会議で、毎年開催されています。37回目にあたる今回は、2024年1月21日~25日の日程で、米 オースティンで開催されました。論文投稿数は659件(前回636件)で、昨年より約4%程度増加しました。採択件数は324件(前回314件)、採択率は約49%(前回49%)でした。プレナリーを含む地域別発表論文数は、米州81件(前回43件)、欧州29件(前回57件)、アジア太平洋214件(前回212件)となり、開催地である米州の発表論文数が前回から大幅に増加しました。地域別では、アジアが最も多く、国別では、昨年に続き中国が99件(前回83件)でトップ、米国81件(前回40件)、日本40件(前回54件)と続きました。発表内容の大分類別では、Fundamentals(基礎分野)が221件(全体の37.8%、前回は36.0%)、Applied Devices/Systems(応用分野)が360件(全体の61.5%、前回は63.5%)と、発表の比率は前回と同程度でした。小分類別に見ると、件数が多いのは、Fabrication Technologies (Non-Silicon)(66件)、Tissue/Organ & Medical Applications(58件)、Radiation/Material Substance Sensor(57件)、Others (Applied Devices/Systems)(54件)、Mechanical Sensor(51件)、Actuators(50件)でした。


 報告内容の詳細は、2023年度分野別調査報告書冊子のほか、マイクロマシンセンターのホームページ内の賛助会員のページにてご覧になることができます。(※ログインには、ユーザーID及びパスワードの入力が必要です。

 

(調査研究・標準部長 藤澤 大介)

 

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2024年3月 7日 (木)

「2023年度 海外調査報告会」を盛況に開催

 2023年度MEMS協議会海外調査報告会を3月4日(月)にハイブリッドで開催し、オンライン109名を含む137名の方にご参加頂きました(写真1)。
 このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の最新状況について国際交流事業の一環として報告するもので、2018年まで毎年開催をしておりましたが、新型コロナの影響で5年ぶりの開催となりました。

 今回は以下のプログラムで行いました。

15:00~15:05  主催者挨拶
   (財)マイクロマシンセンター専務理事 長谷川 英一
15:05~16:05 「2023年度国際会議報告」
  ① 国内外技術動向調査委員会報告(Transducers2023等)
      立命館大学 小西聡教授(オンライン)
  ② MEF2023  MMC 武田 宗久(報告)、
           東北大学 田中 秀治教授(補足:オンライン)
  ③ JCK MEMS/NEMS 2023   MMC 武田 宗久
16:05~16:35 
  「マイクロマシンサミット2023(ルーマニア、ブカレスト)報告」
      東京大学 伊藤 寿浩教授(チーフデリゲイト)
16:35~17:05 「標準化国際会議報告」  MMC 藤澤 大介
  ① IEC/TC47/WG7 国際標準化WG会議(ベトナム・ハノイ)
  ② IEC/TC47/SC47F、SC47Eの国際標準化WG会議(日本・熊本)
  ③ IEC/TC47の国際標準化全体会議(ドイツ・フランクフルト)
17:05~17:15 「その他:海外機関との交流活動」  MMC 武田 宗久
  ① Fraunhofer ENAS-AIST-MMCジョイントセミナー
  ② IOT SOLUTIONS WORLD CONGRESS 2024
    (IOTSWC24)アンバサダー就任
  ③ OKMETIC Oy意見交換会        
17:30~18:30 参加者交流会(簡単な立食交流会)

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写真1 会場の様子

 はじめにMEMS協議会事務局長で専務理事の長谷川英一からの主催者挨拶(写真2)を行い、そのあと、最初の報告は2023年度国際会議報告として、MMCの国際外動向調査委員長をお願いしております立命館大学の小西聡教授から2023年1月15日~19日にドイツのベルリンで開催されましたIEEE MEMS2023と2023年6月25日~29日に京都で開催されましたTransducers2023の分析結果及び2024年1月21日~25日にアメリカのオースティンで開催されましたIEEE MEMS2024の速報についてもオンラインでご紹介いただきました(写真3)。

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写真2 長谷川専務理事の挨拶
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写真3 立命館大学小西教授のオンラインプレゼンの様子

 続いて、MMCの国際交流担当部長の武田宗久から2023年4月19日~20日に東京・両国で開催されましたMEF(MEMS Engineer Forum)2023と2023年9月17日~20日に韓国の済州島で開催されましたJCK(Japan-Chine-Korwea) MEMS/NEMS2023の報告を行いました(写真4)。なお、MEFのチェアをされている東北大学の田中教授にもオンラインでご参加いただき、MEF2023の補足説明と4月に開催されるMEF2024のご紹介もいただきました。

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写真4 武田からの報告の様子

 次は「マイクロマシンサミット2023(ルーマニア、ブカレスト)報告」」と題して日本のチーフデリゲイトである東京大学の伊藤寿浩教授から報告いただきました(写真5)。
 マイクロマシンサミットも新型コロナの影響で3年中止となり、4年ぶりに2023年5月22日~24日にルーマニアのブカレストで開催されました。日本からはチーフデリゲイトの伊藤寿浩教授とマイクロマシンセンターの国際交流担当の武田の2名が出席しました。久しぶりの対面開催ではありましたが、ヨーロッパ以外は南北アメリカ、アジア、オセアニアからはそれぞれ1カ国しか参加しておらず全体でも36名の参加と少し寂しい状況でした。
 今回のテーマは「Chip Act Initiatives: Sensor, MEMS, system integration, Green, sustainable ECS technologies, AI for data analysis and prediction」でした。各国からのカントリレビューと15件の一般講演が行われました。
 2024年のサミットはオーストラリアのゴールドコーストで2024年5月26日~29日に「Quantum semiconductor microtechnologies: novelty and re-emergence」というテーマで開催されます。

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写真5 伊藤教授からの報告の様子

 続いて「標準化国際会議報告」としてMMCの調査研究・標準部長の藤澤大介氏からMEMSの標準化活動内容と以下の3つの標準化国際会議の報告が行われました。
① IEC/TC47/WG7 国際標準化WG会議
   (ベトナム・ハノイ、2023年6月8日~9日)
② IEC/TC47/SC47F、SC47Eの国際標準化WG会議
   (日本・熊本、2023年6月22日~23日)
③ IEC/TC47の国際標準化全体会議
   (ドイツ・フランクフルト、2023年11月14日~17日)

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写真6 藤澤からの報告の様子

 最後にMMCの国際交流担当部長の武田宗久から海外機関との交流活動として、以下の3件の報告が行われました。
MMCは➁に示すように、IOTSWV24のアンバサダーなっておりますので、MEMS協議会の会員様には参加費の半額特典がございます。
① Fraunhofer ENAS-AIST-MMCジョイントセミナー
   (つくば、2023年11月22日)
② IOT SOLUTIONS WORLD CONGRESS 2024 (IOTSWC24)
   アンバサダー就任(スペイン・バルセロナ、2024年5月21日~23日)
③ OKMETIC Oy意見交換会(秋葉原、2023年4月18日)
 
 報告会の終了後には会場参加者で意見交換会も実施し、活発な意見交換が行われました(写真7)。

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写真7 意見交換会の様子

 今回5年ぶりの開催ということで、立命館大学の小西教授、東京大学の伊藤教授、東北大学の田中教授にご発表及びコメントをいただいたこともあり、オンラインを含め137名という多数の参加を得て、盛況のうちに終了いたしました。
 来年以降も、海外報告会でMEMS分野における海外の最新動向をご報告いたしますので、ご期待ください。
 最後のこの場を借りまして、今後のMEMS協議会への積極的なご参加を引き続きお願いしたいと存じます。

(MEMS協議会 国際交流担当部長 武田 宗久)

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2024年1月 9日 (火)

新年のご挨拶(MMC/NMEMS 2023年10大ニュース)

 新年あけましておめでとうございます。

 OECDの世界経済見通しによれば、昨年は世界経済の成長率が2.9%であったところ、本年はなお地政学的リスクやインフレの影響で、2.7%と若干の低下となるものの、後半からは緩やかに回復するとされています。ただ、昨年の日本の国民一人当たりのGDPは為替レートの影響でG7の最下位になるなど、あまり気持ちが浮き立つようなところではありませんでした。

 そのような中においても日本の経済の浮揚を図るべく、経済産業省は半導体・デジタル産業を「国家事業」と位置づけ、2021年6月に策定した「半導体・デジタル産業戦略」を2023年6月に改定を行い、その戦略の中に「MEMS」を加えていくという方向を示されています。これを受けてマイクロマシンセンターとしましても、我が国MEMS産業界の実態を、IDMのみならず、ファウンドリや装置・材料なども含めて、もう一度把握し直した上で、その課題や政策要望などの検討を行なう場とする「MEMS事業者連携委員会」を昨年11月に発足いたしました。今年からは、MEMS事業者の抱える課題等の分析や競争力を高めていくための方策の検討を本格化してまいります。委員会では多くのMEMS関連事業者や大学・研究機関の皆様のご意見・ご要望を集約致したく、広く皆様の参加を募集しております。
 また当センターは今年もDX、GXの推進に不可欠な各種MEMSセンサの開発の一環として、非侵襲で血中成分を計測するBaMBIプロジェクトや、小型原子時計の基礎研究であるHS-ULPACプロジェクト、昨年7月に開始したSi半導体プロセスと親和性が高く高機能なSi製ハイパースペクトル赤外光センシングデバイスを実現するためのMESHプロジェクトを推進するとともに、MEMS戦略にも通じるような新たなプロジェクトの獲得を目指してまいります。

 さて、当センターでは通算34回目にあたるマイクロナノ分野の展示会である「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2024」を1月31日から2月2日にかけて東京ビッグサイトで開催いたします。今回もセンターの活動紹介、MNOICの紹介、研究開発報告とともに、各種セミナーを開催し、興味深い様々な技術報告を行います。セミナーの冒頭には経済産業省の情報産業課デバイス・半導体戦略室長に半導体・デジタル戦略関連のご講演をお願いしております。是非、多くの皆様にご来場いただき、今後のMEMSの発展のために当センターに対するご指導・ご支援を賜れれば幸いです。
 皆様方には以下のマイクロマシンセンターの2023年の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。

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マイクロマシンセンター/NMEMS技術研究機構
2023年10大ニュース
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1.「MEMS事業者連携委員会」発⾜、活動開始
 経済産業省では、半導体・デジタル産業戦略の中にMEMS戦略も加えていく方向性を打ち出されました。当センターとしてもこれに呼応して我が国MEMS産業界の実態を、IDMのみならず、ファウンドリや装置・材料なども含めて、今⼀度把握し直した上で、MEMS事業者の抱える課題等を分析し、競争力を高めていくための方策や政策提⾔等を検討する「MEMS事業者連携委員会」を発⾜しました。
 第1回委員会を11月28日に開催し、60名以上の方々にご参加いただき、有意義な議論や情報交換が行われ、経産省からもご評価いただきました。
 また、「産業動向調査委員会」と連携してアンケートを実施、現在分析結果を基に活動の基盤作りを行っています。
 委員会では多くのMEMS関連事業者の皆様のご意見・ご要望を集約致したく、広くMEMS関連事業者の皆様の参加を募集しております。

2.「GXを支えるMEMS」報告書の発行、MEMS事業者動向調査など、
   産業動向調査委員会 活発に活動
 3月末には、産業動向調査報告書「グリーントランスフォーメーション(GX)を支えるMEMS」を発行し、GXに貢献するMEMSとは何かという観点から結果を取り纏めて、好評を得ました。
 また、2023年度からは「我が国MEMS事業者の動向に関する調査」に着手し、MEMS事業者連携委員会と連携して、MEMS事業者動向調査を実施しています。
 現在は調査結果を分析し、MEMS産業・政策に関する報告書を取り纏めると伴に、国内MEMS事業者を分野別に網羅したディレクトリ作成に向けて活動しています。

3.日本機械学会マイクロ・ナノ工学部門「技術功績賞」受賞
 マイクロマシン技術研究開発プロジェクトをはじめ、マイクロ・ナノ工学分野の研究開発プロジェクトを数多く推進してきたこと、MEMS展や併催シンポジウム、マイクロマシン国際シンポジウムの開催、マイクロマシンサミット、MEMS関連調査、国際標準化等の事業を通して、当分野の概念を内外に広く普及してきたこと、さらにMEMS協議会やMNOICによりMEMS産業化を支援してきたことなど、マイクロマシンセンターの長年の活動がマイクロ・ナノ工学分野に多大に貢献したとして評価され、日本機械学会マイクロ・ナノ工学部門から『技術功績賞』を11月8日に受賞しました。

4.NEDO先導研究プログラム「MESH」受託
 「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ」に電気通信大学、産業技術総合研究所と連名で提案した「メタサーフェスSiハイパースペクトル赤外光センシングデバイス」(MESH)が採択され、7月1日から事業を開始しました。
 電気通信大学の菅哲朗教授をプロジェクトリーダーとして、10年後の実用化を目指しSi半導体プロセスと親和性の高いSi製ハイパースペクトル赤外光センシングデバイスの実現に取組んでまいります。

5.HS-ULPAC、BaMBI、最終年度迎え、目標に向けて邁進中
(5-1)BaMBI最終年度として研究開発継続中
「血中成分の非侵襲連続超高感度計測デバイス及び行動変容促進システムの研究開発」(BaMBI)は、助成事業の最終年度として、最終目標達成に向けラストスパートに入っています。
(5-2)HS-ULPAC最終目標達成を目指し研究を推進
 防衛装備庁安全保障技術研究推進制度で受託した「量子干渉効果による小型時計用発振器の高安定化の基礎研究(HS-ULPAC)では、移動体に搭載可能な高精度原子時計を実現するため、周波数変動要因を根本から解明するとともにプロトタイプを試作して実証・評価しています。MMCでは2023年度は最終年度になるため、最終目標達成を目指し、MEMSガスセル、実験室モデル量子部、プロトタイプ真空断熱型量子部の3次試作を行っています。

6.4年ぶりに「国際マイクロマシンサミット」参加等、
  国際交流活動を本格再開
 新型コロナウイルス感染症の影響により延期されていましたが、4年ぶりにマイクロマシンサミットが5月22日~24日、ルーマニアのブカレストで対面開催され、参加しました。
 また、4月18日に賛助会員のオクメティック株式会社の親会社のフィンランドOKMETIC OYから、11月22日には海外アフィリエートのドイツのFraunhofer ENASからの研究者の受入れ等を行い、国際交流を本格開始しました。

7.MNOIC事業堅調
 現行製品の継続した製造や次期製品に向けた開発試作などを請負う工程受託コースを中心に依頼が増加し、直近3年間で20%の平均成長率を達成しています。
 産総研と連携した研究受託や企業ユーザの試作支援など、将来のMEMS産業活性化に向けた取組み案件も着実に増加しています。

8.国際標準化WG会議のホスト国となるなど、国際標準化事業を推進
 IEC(国際電気標準会議)/TC47(半導体分野技術委員会) /SC47F(MEMS分野)の国際標準化WG会議を日本のホスト(マイクロマシンセンター主催)で、6月21 日~23日に、熊本県 熊本市国際交流会館にて開催しました。各国主査等と技術交流を図ることができ、各国でのデバイス開発状況やデバイス標準化検討項目など情報の共有ができ、充実した会議となりました。
 また、11月13日~17日には、フランクフルトでIEC/TC47の国際標準化全体会議が開催され、SC47FとTC47/WG7(半導体デバイス エネルギーハーベスタ、エネルギー変換・伝送分野)に関連する会議に参加しました。各国からの参加者と活発な議論を交わし、規格案審議を着実に前進させることができました。

9.MEMS展示会、セミナーが盛況
 例年通り当センターが主催する「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」を2023年2月1日から3日の3日間、東京ビッグサイトで開催し盛況の内に閉幕しました。会場への来場者はコロナ禍が落ち着き、前回の3倍以上の方にご来場いただきました。MMCブースでは、研究開発プロジェクトの紹介を始め、MNOIC事業、標準化事業、SSN研究会の概要などを展示しました。
 また同時開催の次の5つのセミナー「MEMS・半導体次世代テクノロジーフォーラム」「TIA MEMS ウインターセミナー MEMS講習会」「研究開発プロジェクト成果報告会」「SSN研究会公開シンポジウム」「MEMS協議会フォーラム」では、何れのセミナーでも多くの聴衆が熱心に聞き入られていました。
 主な講演として「MEMS・半導体次世代テクノロジーフォーラム」では経済産業省情報産業課長の金指壽様に「半導体・デジタル産業戦略の現状と今後」と題して、半導体産業の現状と我が国半導体産業復活の基本戦略についてご説明いただき、「TIA MEMS ウインターセミナー MEMS講習会」では、筑波大学、東京大学、東北大学の先生から、MEMSに関係する研究の取組みや最新の研究成果についてご報告いただきました。
 今年は1月31日(水)~2月2日(金)に昨年と同様、東京ビッグサイトにおいて、nano tech展等と同時開催を予定しております。また今年もご来場頂けますよう関係者一同お待ちしております。

10.MMC、MEMS協議会の新体制が始動
 3月末に株式会社日立製作所の鈴木教洋様が当センターの理事長をご退任され、4月1日に株式会社日立製作所執行役常務の西澤格様が理事長にご就任されました。
 7月には、MEMS協議会推進委員会を東京虎ノ門グローバルスクエアにおいて4年ぶりに対面により開催しました。協議会副会長に就任された三菱電機株式会社上席執行役員の岡徹様が新委員長として委員会を進行され、西澤理事長にもMEMS協議会会長としてご出席いただきました。また、経済産業省商務情報政策局情報産業課の金指課長様に経済産業省の政策をご紹介いただいたほか、経済産業省、NEDO、産総研の方々と委員との間で意見交換が行われました。

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2023年8月29日 (火)

「2022年度 分野別動向調査報告書」発行について (MMC「国内外技術動向調査委員会事業」)

 マイクロマシンセンターでは、国内外の最新かつ詳細なマイクロマシン・MEMSそして近年活発化しているナノ関連の研究開発の情報を収集・分析し、その技術動向を把握することを目的に、各年度MEMSの分野で代表的な国際会議を定点観測して、分野別動向調査報告書にまとめています。

 2022年度は“APCOT 2022(The 10th ASIA-Pacific Conference of Transducers and Micro-Nano Technology)”と“MEMS 2023(The 36th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems)”を調査しました。

 “APCOT2022”は、アジア、太平洋地域でのMEMS/ナノテク分野の研究開発事例が発表される国際会議で、2002年に中国・アモイ市で第1回が開催されて以来、2004年は札幌、2006年シンガポール、2008年台湾・台南、2010年オーストラリア・パース、2012年中国・南京、2014年韓国・大邱、2016年金沢、2018年香港と、国際会議Transducersの開催されない年に隔年で開催されています。
 第10回が開催予定であった2020年は新型コロナウイルス感染拡大のため中止となり、2022年 5月29日(日)~6月1日(水)の日程で開催地を上海としてハイブリッド形態で開催されました。
 投稿件数は129件で、前回の157件から僅かに減少しました。その中から118件(前回143件)の論文が採択され、採択率は91%(前回91%)でした。
 国別では中国が72件(前回45件)でトップ、2位、日本33件(前回42件)と続きました。次いで、台湾とシンガポールが3件、タイとオーストラリアが2件、韓国が1件となりました。
 発表内容の大分類別では、Fundamentalsが33件(28%), Applied Devices/Systemsが83件(71%)、どれにも該当しないものが1件(1%)で、応用分野に関する発表と基礎分野に関する発表の割合は、前回とほぼ同等でした。発表件数が多い分野は、Fundamentals Othersが16件と一番多く、Chemical Sensorが13件、Design and Modeling、OpticalおよびRF-MEMSで11件となりました。

 次に、“MEMS2023”は、IEEEのMEMS技術に関する国際会議で、毎年開催されています。36回目にあたる今回は、2023年1月15日~19日の日程で、独 ミュンヘンで開催されました。
 投稿件数は636件(前回600件)で、昨年より6%程度増加しました。採択された論文数は全体で314件(前回275件)、採択率は約49%(前回46%)でした。プレナリーを含む地域別発表論文数は米州43件(前回56件)、欧州57件(前回41件)、アジア太平洋212件(前回172件)となり、前回とほぼ同水準でした。
 地域別ではアジアが多く、昨年に続き中国が83件(前回70件)でトップ、日本54件(前回57件)、米国40件(前回54件)と続きました。このほか、アジア諸国では、台湾33件、韓国23件で、欧州では、ドイツ13件(前回5件)、オーストリア11件(前回1件)、オランダ6件(前回10件)となりました。
 発表件数が多い分野は、Mechanical Sensor(65件)、Radiation/Material Substance Sensor(66件)、Fabrication Technologies (non-Silicon)(47件)、Fluidic(42件)、Design and Modeling(38件)、Others (Applied Devices/Systems)(38件)、Actuators(35件)となりました。

 報告内容の詳細は、2022年度分野別調査報告書冊子のほか、マイクロマシンセンターのホームページ内の賛助会員のページにてご覧になることができます。

(調査研究・標準部長 藤澤 大介)

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2022年9月29日 (木)

「2021年度 分野別動向調査報告書」発行について

 マイクロマシンセンターでは、国内外の最新かつ詳細なマイクロマシン・MEMSそして近年活発化しているナノ関連の研究開発の情報を収集・分析し、その技術動向を把握することを目的に、各年度MEMSの分野で代表的な国際会議を定点観測して、分野別動向調査報告書にまとめています。

 2021年度は“Transducers 2021(The 21th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems)”と“MEMS2022(The 35th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems)”を調査しました。

 “Transducers 2021”はマイクロセンサ、マイクロアクチュエータに関する最先端の研究開発事例が発表される国際会議で、1981年にボストン(米)での第1回会合以来、隔年に開催されています。
 今回は21回目となります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2021年6月20日から25日にヴァーチャルで開催されました。
 投稿件数は550件で前回の1528件より64%減少しました。採択件数は395件(口頭136件、ポスター218件、その他41件)で、採択率は71.8%(前回42.9%)でした。
 地域別ではアジアが多く、国別では中国が40件(前回41件)でトップ、前回最多であった米国が29件(前回57件)で2位、日本29件(前回40件)と続きました。アジア諸国では台湾12件(前回10件)、シンガポール8件(前回1件)でした。欧州は、ドイツ6件(前回14件)、ベルギー6件(前回3件)、スイス5件(前回6件)等となりました。
 発表件数が多い分野は、Mechanical Sensor(38件)、Radiation/Material Substrate Sensor(14件)、Medical Power-MEMS(13件)、Fabrication Technologies (non-Silicon)(12件)、Medical Systems(12件)、Actuators(11件)となりました。

 “MEMS2022”はIEEEのMEMS技術に関する国際会議で、毎年開催されています。
今回は35回目となります。コロナウイルス感染拡大の影響で、2022年1月9日から13日にハイブリッドで開催されました(対面開催地は東京)。
 投稿件数は600件(前回518件)で、昨年より16%程度増加しました。採択された論文数は全体で275件(前回250件)、採択率は約46%(前回52%)でした。
 地域別ではアジアが多く、国別では、昨年に続き中国が70件(前回89件)でトップ、日本57件(前回41件)、米国54件(前回56件)、と続きました。アジア諸国は、台湾19件(前回13件)、韓国10件(前回9件)でした。欧州は、オランダ10件(前回2件)、イタリア7件(前回4件)、スイス6件(前回8件)、ドイツ5件(前回6件)等となりました。
 発表件数が多い分野は、Mechanical Sensor(68件)、Fabrication Technologies (non-Silicon)(42件)、Actuators(41件)、Design and Modeling(38件)、Fluidic(38件)、Tissue/Organ & Medical Applications(38件)、Radiation/ Material Substance Sensor(36件)、Material(33件)となりました。

 報告内容の詳細は、2021年度分野別調査報告書冊子のほか、マイクロマシンセンターのホームページ内の賛助会員のページにてご覧になることができます。

(調査研究・標準部長 時岡 秀忠)

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2022年2月 2日 (水)

MMC創立30周年記念講演会(1月28日)開催報告

 「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2022」の最終日に、東京ビッグサイト会議棟にてMEMS協議会フォーラム「MMC創立30周年記念講演会」を開催いたしました。

● 1月28日 10:15-11:45:MMC創立30周年記念講演会 @607+608会議室
第1部 TIA-MEMSウィンターセミナー MEMS講習会
    「MEMS分野の産業動向と注目技術」

 午前中の第1部は主に学生や若手技術者向けに「TIA-MEMSウィンターセミナー MEMS講習会」を開催しました。
 初めに、MMCの長谷川専務理事からMMC産業動向調査委員会によるMEMS技術の進展の歴史と、今後20年のMEMS関連技術の進展予測した調査結果を報告しました。
 次に、静岡大学橋口教授から、近年注目されている環境発電デバイス(エナジーハーベスタ)などの新機能MEMSに使われるエレクトレット技術について、そして立命館大学の小西教授から、長年MEMSの国際会議運営に携わってきた先生によるMEMSの研究開発動向と、つい先日に開催されたMEMS2022の速報を交え、MEMS関連研究開発動向について報告がありました。

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写真1 MEMS講習会

● 1月28日 13:15-16:00:MMC創立30周年記念講演会 @607+608会議室
第2部 「MEMSの過去30年と今後の20年の技術展望」と
     パネルディスカッション

 午後の第2部は、MMC30周年特別企画として、30年の歴史をMEMSなどの微細加工、半導体製造技術の進歩とともに振り返り、未来へ続いていくために必要なことを、産業界、大学、国立研究所を代表する方々による基調講演とパネルディスカッションで展望しました。
 山中MMC理事長による開会挨拶と、経済産業省産業機械課の安田課長からの来賓ご挨拶の後、基調講演の1番目として、「MEMSの発展が世界を変革 ~過去、現在、未来~」というタイトルでSPPテクノロジーズエグゼキュティブシニアアドバイザーの神永 晉氏から、過去数10年にわたって著しい発展を遂げたMEMSの原動力であったシリコン深掘り技術を中心とする微細加工技術の更なる進化と、今後どのような世界を創出するかの展望が語られました。
 次に基調講演の2番目「オタクあがりのモノづくり人生」というタイトルでMEMSコアCTOで、東北大学マイクロシステム融合研究開発センター シニアリサーチフェローの江刺 正喜先生から、半導体微細加工をベースにしてセンサなどの多様な部品をつくるMEMSの研究を自作した装置などを使うことで、費用がかからず自由度の多い形で研究を行っていたという半生が紹介されました。
 そして、最後は「これからのMEMSの技術展望」について、基調講演のお二人に加え、パネリストとして、富山県立大学学長の下山 勲先生と産総研の上級執行役員 金丸 正剛TIA推進センター長の4人でモデレータの長谷川専務の進行でディスカッションしました。 我が国としてMEMSの技術面で、どこをどう伸ばしていくべきかとか、MEMSによって描くことのできる未来の産業や社会の姿などについて、会場で聴講されていた、西安交通大の前田龍太郎先生も交えて、熱く議論がされました。

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写真2 パネル討論会

(MEMS協議会 八嶋 昇)

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2019年7月24日 (水)

JCK MEMS/NEMS 2019 参加報告(7月16日-18日)

7月16日(火)から7月18日(木)に北海道の旭川クリスタルホールで開催されましたJCK MEMS/NEMS 2019に国際交流活動の一環として、参加するとともに、今年の3月に終了したRIMSプロジェクトの成果広報を行って参りましたので、報告致します。JCK MEMS/NEMS 2019は今年記念すべき第10回を迎えた日本―中国-韓国のMEMS/NEMSに関するジョイントの会議です。 2006年に第1回が開催された中国と日本のMEMS/NEMSのジョイントセミナー(第1回:2006年、北京、第2回:2007年、東京、第3回:2009年、無錫)と2008年に釜山で開催された第1回の日本と韓国のMEMS/NEMSのジョイントセミナーを合体させ、2010年に日本―中国―韓国のジョイント会議として第1回JCK MEMS/NEMSが 札幌で開催されました。それ以降以下のように、日本、中国、韓国が持ち回りで開催し、今回第10回を迎えました。


・第1回:2010年、日本、札幌、(投稿数:34)
・第2回:2011年、韓国、済州島、(投稿数:46)
・第3回:2012年、中国、上海、(投稿数:57)
・第4回:2013年、日本、仙台、(投稿数:60)
・第5回:2014年、韓国、ソウル、(投稿数:23)
・第6回:2015年、中国、西安、(投稿数:38)
・第7回:2016年、日本、札幌、(投稿数:41)
・第8回:2017年、韓国、ソウル、(投稿数:40)
・第9回:2018年、中国、大連、(投稿数:65)
・第10回:2019年、日本、旭川、(投稿数:75)


今回は第10回の記念大会ということもあり、投稿数は過去最多になり、99人(中国26人、韓国17人、日本37人、企業14人、US1人、台湾1人、シンガポール1人、ベトナム2人)の参加がありました。今回のジェネラルチェアは鳥取大学の李教授でした。李教授による開会挨拶の様子を写真1に示します。

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写真1 李教授開会の挨拶の様子


第10回の記念大会ということで、メモリアルトークとして、江刺先生(元東北大教授、現(株)メムス・コアCTO)から「MEMS on LSI for Heterogeneous Integration and Hands-On Access Fabrication」と題する講演(写真2:江刺先生の講演の様子、写真3:会場の様子)がありました。

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写真2 江刺先生のメモリアルトークの様子

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写真3 会場の様子


その他に以下の4件のプレナリートークと4件の招待講演がありました。
【プレナリートーク】
① Moving from IoT to 5G Era - Si MEMS and Flexible Sensors (Chengkuo Lee, National University of Singapore)
② Micro/Nano Manufacturing and Its Applications ? Under One Roof Report ? Part VII (Dongfang Wang, Jilin University)
③ Opportunities and Challenges of Vitro Diagnostic Rapid Tests (Yu-Cheng Lin, National Cheng Kung University)
④Advancement of Micro/Nano Electro-Hydro-Dynamic Printing (Sukhan Lee, Sungkyunkwan University)


【招待講演】
① Flexible and Stretchable Energy Storage Devices (Seung-Min Hyun, Korea Institute of Machinery & Materials)
② Directing and Visualizing Mechanical Motion at the Nanoscale (Zenghui Wang, University of Electronic Science and Technology of China)
③ Current status of Korea’s Additive Manufacturing Technology (Nak-Kyu Lee, Korea Institute of Industrial Technology)
④ Large Scale Production of Metal Oxide Nanoribbons Using Scratch Lithography (Jeong-O Lee, Korea Research Institute of Chemical Technology)


プレナリートーク②ではWang先生(写真4:Wang先生講演の様子)が、これまでの10回のJCK MEMS/NEMSを外観するとともに、他の分野での日本―中国―韓国 (JCK)のジョイント会議にも言及し、工学以外でもバイオメディカル、化学、教育、地理学の分野でも日本、中国、韓国の交流が活発に行われている状況の説明があり、MEMS/NEMS分野でもこの10回の記念大会をマイルストーンに、「一つ屋根の下」として、さらに20年、30年を目指して発展させていこうとの呼びかけがありました。

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写真4 Wong先生講演の様子


一般セッションでは、24件の口頭発表と41件のポスター発表(写真5:ポスターセッションの様子)がありました。トップの口頭発表としては、慶応大学の三木教授より「MEMS-Based Human Interface Devices」と題する発表がありました。キャンドルタイプのポリマーベースのマイクロニードルにより、髪の毛のある通常の状態での人間の脳の活動計測が可能なことが示されました。武田もNEDO委託事業として実施したRIMS(Road Infrastructure Monitoring System)プロジェクトの紹介を口頭発表(写真6:武田講演の様子)致しました。非常に興味深い発表だとのコメントを多数頂き、RIMSの研究成果の広報ができたと考えます。

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写真5 ポスターセッションの様子

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写真6 武田講演の様子

今回JCK MEMS/NEMS2019に出席して、隣国の中国、韓国の研究者と活発に議論ができ、MMCの国際交流活動の一環としても成果を上げられたと思っています。また、JCK MEMS/NEMSは、最近では3国の研究者のネットワーキングを使って、シンガポールやベトナム等の東南アジアからの参加者もくるようになっており、より大きなコミュニティに発展してきているとの印象を受けました。次回のJCK MEMS/NEMS 2020は2020年7月1日~3日に韓国、高陽市にあるKINTEX(Korea International Exhibition Center)で開催されますが、引き続きMEMS/NEMS分野の国際交流の場として活用していきたいと思います。

(MEMS協議会 国際交流担当 武田 宗久)

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2018年11月15日 (木)

米国研究開発動向調査

 2018年11月6日(火)~11月14日(水)に米国の研究機関及びベンチャー企業を訪問して、米国におけるMEMS、IoTセンサ及びピコセンサ技術に関する最新の研究開発動向調査を行いましたので、以下にご報告致します。今回調査したのは以下の7機関です。
 1. eXo Imaging
 2. Stanford Uiversity, Roger Howe研究室
                 3. Stanford Nanofabrication Facility (SNF) &
                  Stanford Nano Shared Facilities (SNSF)
                 4. MIT, Biomimetics Robotics Lab
 5. ORIG3N
                 6. Stanford University, Khuri-Yakub研究室
                 7. Graftworx 
以下に各訪問先での調査結果を示します。

1. eXo Imaging
(1)面談者:Janusz Bryzex, Chairman & Chief Visionary Officer
      Sandeep Akkaraju, CEO & President
(2)訪問日:2018年11月6日(火)
(3)調査結果
                ・eXo ImagingはTrillion Sensors Initiativeを提唱した主宰者のJanusz BryzekがTrillion Sensorsの動きから出た初めての新ビジネスとして2016年に設立したベンチャー会社です。超音波(PMUT)による画像診断(エコー)を、ポータブル機器として開発しています。

                ・ピエゾMEMSを使って、既存の医療用の超音波診断装置を現状の超音波プローブの大きさに収めた製品を来年の9月にFDA認許をとって販売しようとしていました。

                ・超音波診断子はFDAの認可が必要ですが、非侵襲機器であるため、FDA取得はそれほど大変ではないとのことでした。

                ・通常MEMSではアイデアから製品まで27年かかっていますが、それを3年で実現できると言っていました。

                ・超音波診断子ではインピーダンスマッチングが必要で、ピコセンシングで考えているインピーダンスマッチング層には大きなニーズがあることが分かりました。

                ・今後はピエゾ MEMSが大きな広がりを持つとの考えで、多くのアプリ例を出して説明してくれました。今製品化を進めている超音波診断子はその第一歩との考えでした。

                ・トリリオンセンサのフェーズ1は2016年に終了しましたが、Januszは現在トリリオンセンサのフェーズ2(安く大量に製造するためにプリンテッドエレクトロニクスの革新が中心技術になるとの考え)をSEMIと画策しているとのことでした。

・写真1にeXo Imagingの入り口でのJanuszとの写真を示します。

                  

写真1  JanuszとeXo Imagingの入り口で
                  
               

2. Stanford Uiversity, Roger Howe研究室
(1)面談者:Charmaine Chai, PhD student
(2)訪問日:2018年11月7日(月)午前
(3)調査結果
                  ・MEMSの大御所のひとりのRoger Howe教授の研究室を訪問しました。生憎Howe教授は出張中で不在でしたが、PhDの学生であるCharmaineに実験室を案内してもらいました。

                  ・Howe教授はMEMSからバイオセンサの方に研究テーマをシフトしているとのことでした。

                  ・タンパク質の分析を行うバイオセンサの開発をしているとのことでしたが、分子識別能を使うのではなく、トンネル電流をローノイズで検出する方式のバイオセンサを開発しているとのことでした。

                  ・また、開発したバイオセンサのベンチャーも立ち上げているとのことでした。

                  ・実験室を案内してくれましたCharmaineはアプリケーションよりはnAレベルの微小信号を検出するためのトンネル電流検出プローブやローノイズ回路等の要素技術を開発しているとのことでした。

                  ・微小信号を検出するということで、ピコセンシングと通じるものがありました。現状はノイズ等により検出できる電流はnAレベルで、pAまでは検出は困難とのことでした。但し、現在考えているバイオセンサではnAで十分とのことでした。

・写真2にSanford大Howe研究室でのCharmaineとの写真を示します。

                  

写真2  CharmaineとHowe研究室の実験室で
                  
               

3. Stanford Nanofabrication Facility (SNF) & Stanford Nano Shared Facilities (SNSF)
(1)面談者:Dr. Mary X. Tang, Managing Director, SNF

             Dr. Shivakumar Bhaskaran, Coordinator, SNSF
                 Clifford F Knollenberg, Cleanroom Science & Engineering Associate, SNSF

(2)訪問日:2018年11月7日(水)午後
(3)調査結果
                  ・MEMSプロセス施設のSNF及びSNSFをManaging Director のMaryとCoordinatorのShivakumarとに案内して頂きました。

【SNF】
                  ・SNFは10,000 sq ftのクリーンルームを有する施設で、建設当初はStanford大学でCMOSを製作するめに建設されましたが、最近は半導体からMEMSを中心とする種々デバイス製作の施設に移行しており、全米に16あるNanofabrication Facilityの一つと位置付けされているとのことでした。

                  ・基本的には4インチのラインで、一部6インチウエハの処理が可能な装置があるとのことでした。年末年始のメンテナンス期間(20日程度週)を除くと1日24時間、週7日フル稼働しているとのことでした。日中は企業等の外部からの使用が多く、学生はむしろ深夜に使用しており、深夜の装置稼働率の方が高いとのことでした。

                  ・メインのCRはクラス100で写真3にレイアウトを示すように、一通りの装置が揃っていました。また、メインが大学の研究用なのでいろんな材料を使ったデバイスを製作できるように、写真4に示しますように、ExFabと呼ばれるグレイな領域も設けているとのことでした。

                  ・外部使用は20~25%で、後は学内の使用とのことでした。

・スタッフはSNSFと合わせて35名程度で、SNFは18.6人とのことでした。学生への装置トレーニングが主な仕事で、実際の装置操作は学生が実施するのが多いとのことでした。
・また、学生が使用するので、写真5に示しますように、主要な場所は一括でモニタできるようにして、監視しているとのことでした。
・写真6にMaryとSNFのファブの前での写真を示します。

                  
 
                  写真3 SNFメインCRのレイアウト
                  
                  
                  写真4 ExFabのレイアウト
                  
                  
                  写真5 CR監視モニタ
                  
                  
写真6 MaryとSNFの前で
                   

 【SNSF】
・SNSFはStanford大学のナノテク関連の高性能なプロセス装置及び評価装置を共同で利用するために作られたサービスセンターで、以下の4つのグループから構成されています。
① Nanofabrication
② Electron & Ion Microscopy
③ X-ray & Surface Analysis
④ Soft & Hybrid Materials
                  ・SNSFでは学内外合わせて年間約850件のサービスを実施しており、そのうち約750件がStanford大学内の25の学科からの使用とのことでした。

                  ・装置は3つのビルに分かれて設置されています。そのうちメインのSpilkerビルの装置レイアウトを写真7に示します。主要な装置を見学させて頂きましたが、さすがスタンフォードで、高価なプロセス装置や分析装置がたくさんありました。

・NaofabricationのマネジャーのClifford F Knollenbergとの写真を写真8に示します。

                  
                  

写真7 SNSF- Spilkerビルの装置レイアウト
                  
                  
写真8 CliffordとSNSF-CRの前で
                  

4. MIT, Biomimetics Robotics Lab
(1)面談者:Dr. Quan Nguyen, Post-Doctoral Fellow
(2)訪問日:2018年11月9日(金)午前
(3)調査結果
                  ・MIT の4足歩行ロボット「Cheetah(チーター)III」を開発しているBiomimetics Robotics Labを見学し、ポスドクのQuanから説明を受けました。

                  ・CheetahIIIは視覚を使わず、接触検出アルゴリズムによりTV等でも話題のボストンダイナミクスのSpotMiniより外力に強くなっているとのことでした。

                  ・但し、触覚センサは搭載しておらず(足に市販の触覚センサをつけたが、ジャンプ等の衝撃に耐えうるものはなかったそうです。)、各モータにつけたエンコーダと慣性ユニットで足の接地場所を計算しているとのことでした。

・各足に3軸のモータとエンコーダを搭載し、胴体部分に慣性ユニットを搭載していました。
                  ・今年10月に開催されましたThe 2018 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent                   Robots and Systems (IROS 2018)でお披露目となり、不整地や階段歩行、その場回転、ジャンプや棒でつついても倒れないデモ等をこなし、話題となっている4足歩行ロボットです。(http://news.mit.edu/2018/blind-cheetah-robot-climb-stairs-
                  obstacles-disaster-zones-0705
)

                  ・写真9にCheeterIIIの外観を写真10に説明してくれているQuanの写真を示します。

                  

写真9 MITの4足ロボットCheeterIII
                  
                  
写真10 説明しているQuan
                  
               

5. ORIG3N
(1)面談者:Kate Blanchard, Founder & COO
(2)訪問日:2018年11月9日(金)午後
(3)調査結果
                  ・ORIG3Nは2014年に設立された遺伝子検査を行うベンチャーで、COOのKate Blanchardに会社概要を紹介頂いた後、会社見学(写真11、写真12:事務所の外観、写真11奥にPCR解析装置が写真12に幹細胞貯蔵用の冷凍タンクが置かれています)をさせて頂きました。

                  ・PCRによる遺伝子解析装置を使った人間のDNA検査(FDAの認可は不要)をサービスとしており、フィットネスDNA検査キット等20種類($24~$149)のDNA検査キットを現在ドラッグストア等で販売する一方で、幹細胞やiPS細胞を培養して、医療応用を目指した研究の2本柱で会社運営をしようとしていました。

                  ・DNA検査キットの方はドラッグストア等で販売するビジネスモデルである程度の成長はするとは感じましたが、現状は人をターゲットにした検査だけを考えているようで、リピータの確保が難しく、検査時間も2,3週間かかるとのことでしたので、成長には限界があるように感じました。

                  ・製品としては、パッケージの中に口内の皮膚細胞を採取する検査綿棒が入っており、それでDNAを採取して、内蔵されているビニール袋と封筒に入れて送付するだけで、結果は専用のアプリをダウンロードすることでスマホから見れるというものでした。

                  ・技術的には同じなので、食品やセキュリティ分野でMEMS技術を使ったリピータの確保が可能なポータブル検査の方向も考えた方が良いように思いました。

・幹細胞やiPS細胞の医療応用ビジネスに関しては、まだまだ製品には遠そうな印象を受けました。
                  ・DNA検査キットに関しては、現在は米国での販売ですが、1,2年後にはアジアを含めた海外展開を考えているとのことでした。

                  ・試しに、フィットネスDNAテスト($149のもので6種類の検査を行う)をして頂いたので、結果楽しみですが、フィットネスDNAテストで$149は少し高いようにも感じました。

                  ・TVを見ているとORIG3N以外の会社から自分のルーツを探るDNA検査キットのコマーシャルが流れていましたので、米国では遺伝子検査ビジネスはかなりポピュラーになっているように見受けられました。

・写真13にORIG3Nの玄関の製品陳列棚の前でのCOOのKateとの写真を示します。

                  

                  写真11 ORIG3Nの事務所外観(1)
                  
                  
                  写真12 ORIG3Nの事務所外観(2)
                  
                  
写真13 ORIG3N玄関の製品陳列棚の前でのCOOのKateと
                    
                  

6. Stanford University, Khuri-Yakub研究室
(1)面談者:Dr. Butrus (Pierre) T. Khuri-Yakub, Professor
       Dr. Kamyar Firouzi, Research Associate
        Dr. Quintin Stedman, Research Associate
              Dr. Minoo Kabir, Post-Doctoral Fellow
              Dr. Bo Ma, Post-Doctoral Fellow
              Farah Memon, PhD Candidate
(2)訪問日:2018年11月12日(月)午前
(3)調査結果
                  ・Khuri-Yakub先生はゼロックスでインクジェットプリンタの開発をされておられた方です。ゼロックスはプリンタの事業からは撤退し、その技術は製薬開発に使う液滴滴下装置に転用されLabcyte(                   https://www.labcyte.com/ )という会社に引き継がれているとのことでした。

                  ・また超音波のCMUT(Capacitive micromachined ultrasonic transducers)の考案者で基本特許を持っておられた方です。1.のeXo ImagingではピエゾMEMSが今後広がるとJanuszさんが言っていましたが、超音波診断子としてはCMUTの方が広帯域、高感度で優れているというのがKhuri-Yakub先生の主張でした。

                  ・また、超音波プローブだけでスマホに接続できるCMUTの製品はButterfly (https://www.butterflynetwork.com/)という会社から1年前に製品化されているとのことでした。ここでもeXo Imagingは出遅れているように感じました。

・また、0.75agの重量を検知できるCMUTを使った化学量センサ(ガスセンサ)の開発をされており、まさにピコ(10-12)どころかアト(10-18)グラムの検出が可能とのことでした。但し、ガス吸着の高分子膜の開発が必要になりますが、それは専門外とのことでした。実際の化学量センサ(写真14)をDr. Quintin Stedmanに説明頂きました。
・そのほかカプセル超音波センサ(カプセル内視鏡のように飲んで超音波診断を行うもの)や脳の活動量モニタリング等の研究をされておられました。
                  ・写真15に教授室でのKhuri-Yakub教授と写真を示します。

                                      

                  写真14 agの検出可能な化学量センサ
                  
                  
写真15 Khuri-Yakub教授と教授室で
                   

7. Graftworx
(1)面談者:David J. Kuraguntla, CEO
      Anthony F. Flannery Jr. Vice President
(2)訪問日:2018年11月12日(月)午後
(3)調査結果
                  ・CEOのDavid J. KuraguntlaとVPのAnthony F. Flannery Jr.に対応頂きました。Davidから会社概要、Anthonyから来年にFDAを取得して発売予定の透析患用のモニタリングシステムの技術的な説明をパワーポイント及び試作品を使って受けました。

                  ・モニタリングシステムは①スマートパッチ(写真16)、②携帯対応データハブ(写真17)、③データ蓄積クラウドと④診断用フロントエンドから構成されていました。

                  ・スマートパッチはマイクロフォン、3軸加速度センサ、高精度温度計と光学の脈波センサ(PPG)を12mm角の基板に実装し、特注のバッテリを搭載したパワーマネージメントユニットとマイコン、メモリー、通信(BLE4.2)ユニットを耐久性のあるフレキシブル基板で接続し、シャワーでも使えるIP64相当を有するコーティングで実装したものでした。

                  ・脈波センサの詳細は分からなかったですが、ピコセンシングで考えている脈波センサのアプリの例として参考になると思いました。

                  ・また、システムとして製品化するためには、MEMSそのものよりは、耐久性、データのセキュリティ、診断技術等周辺の技術が大事とAnthonyは言っておりました。

                  ・本システムではハブにセキュリティ機能を持たせ、スマートパッチからスマートフォンにデータを直接やり取りすることはやめ、ハブを介することでセキュリティを高めたと言っておりました。

                  ・AthonyはInvenSenseの創始者でしたが最近はMEMSそのものよりは医療用デバイスとして役にたつものを開発したいと言っておりました。その他有意義なディスカッションができました。

・写真18に会議室でのDavidとAnthonyとの写真を示します。

                                      

写真16 スマートパッチ
                  
                  
写真17 携帯対応データハブ
                  
                  
写真18 会議室でDavid(左)とAnthony(右)と
                  

以上

                  
(一財)マイクロマシンセター 武田宗久
                  
               

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2018年3月 2日 (金)

米国研究開発動向調査

 2018年2月25(日)~3/2(金)に東京大学情報理工学系研究科の下山教授の「空間移動時のAI融合高精度物体認識システムの研究開発」の動向調査と並行して米国西海岸の研究機関を訪問して、米国の研究開発動向の調査を行いましたので、以下にご報告致します。今回調査したのは以下の5機関です。
 1. University of California, San Diego (UCSD)
 2. University of California, Los Angeles (UCLA)
 3. California Institute of Technology (CALTEC)
 4. NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)
 5. Microsoft Research (MSR) 
以下に各訪問先での調査結果を示します。

1. University of California, San Diego (UCSD)
(1)訪問先:Albert P. Pisano (Dean, Jacobs School of Engineering)
            Miwako Waga (Director, International Outreach)
(2)訪問日:2018年2月26日(月)午前
(3)調査結果
・Pisano学部長は元UC, BerkeleyでMEMS研究を初期から牽引してこられたMEMSの大御所です。現在、UCSDのJacobs School of Engineeringの学部長を務めています。
・UCSDのJacobs School of Engineeringは 6つの学科(①Bioengineering, ②Computer Science & Engineering,③Electrical & Computer Engineering, ④Mechanical & Aerospace Engineering, ⑤Nanoengineering, ⑥Structural Engineering)から構成されDigital Futureを目指して以下のテーマに注力して研究開発を行っています。
 -Context-aware robotics
 -Nano for energy and medicine
 -5G and future of communication
 -Wearable sensing and computing systems
 -Cyber and digital security
 -Data science and machine learning
・アメリカのホットトピックスに関して意見交換を行い、以下のような意見が出ました。
 -AIに関してはIBMとUCSDでAI for Healthy Living Centerを立ち上げているとのことでした。
 -医療に関してはDigital Health, Precision Medicine, Personalized Medicineが挙げられるとのことでした。
 -構造物モニタリングに関してはUCSDではサンディエゴ市とスマートシティの一環としてBuilding Structural Monitoringを行っているとのことでした。
 -医療認証に関しては、米国のFDAは世界一厳しいとのことでした。
・Pisano学部長がおられるUCSD Jacobs Hallの入口の写真を写真1に、Pisano学部長室の前で、Pisano学部長との写真を写真2に、和賀所長、Pisano学部長との写真を写真3に示します。

12_ucsd
   写真1 UCSD Jacobs Hall入口     写真2学部長室の前でPisano学部長と

3_ucsd_pisano_2      写真3 学部長室の前で和賀所長、Pisano学部長と

2. University of California, Los Angeles (UCLA)
(1)訪問先:
① CJ Kim (Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
② Verronica J. Santos (Associate Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
③ Tsu-Chin Tsao (Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
④ Jacob Rosen (Bionics Lab Director, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
(2)訪問日:2018年2月26日(月)午後
(3)調査結果
① CJ Kim 教授
・CJ Kim教授はMEMS分野の権威で、Kim教授のMicro and Nano Manufacturing Labでは、特に表面張力を利用したマイクロナノデバイスの研究を積極的に行っています。
・UCLAはMedical Centerが近いので、医者との連携は容易であり、共同の研究はしていますが、初期はお金がないので、細々と進めざるを得ないとのことでした。但し、試作品が認められれば、病院は寄付によるフレキシブルな予算があるので、大きなプロジェクトにすることは可能とのことでしたが、コンセプトからは5年程度かかるとのことでした。
・CJ Kim教授室の前で、Kim教授との写真を写真4に、下山教授のKim教授への説明の様子を写真5に示します。

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   写真4 教授室の前でKim 教授と     写真5 Kim教授と下山教授

② Santos准教授
・Santos准教授は把持、触覚、義手、人工刺激、機械学習等の専門家でSantos准教授のBiomechatronics Labでは、人工触診(Artificial haptic exploration)、触覚センサ、把持等の研究開発を行っています。
・海軍の予算で義手の研究を行っているとのことでした。その他遠隔操縦や砂の中の触覚による物体認識や把持のための触覚センサ等の研究を行っていました。
・触覚センサは買い物とUniversity of Washingtonで作ってもらったものを使用しているとのことでした。
・Santos准教授室の前で、Santos准教授との写真を写真6に、写真7に遠隔操縦用双腕マニピュレータ、写真8に人工ハンド、写真9に指の触覚センサ、写真10に実験室での説明の様子を示します。

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写真6准教授室の前でSantos准教授と 写真7 遠隔操作用双腕マニュピュレータ

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    写真8 人工ハンド         写真9 指の触覚センサ

10_uccla_santos_2          写真10 実験室での説明の様子


③ Tsao教授
・Tsao教授はダイナミックシステムのモデリングと制御の専門家です。
・アメリカのホットトピックスのキーワードの一つとして、Co-Robotが挙げられるとのことでした。Co-Robotは人間とロボットとの物理的干渉に関する研究です。その場合には触覚センサが重要になるとのことでした。
・もう一つのキーワードとして、 Distributed Sensingが挙げられるとのことでした。Distributed sensingではデータ処理のためAIが必要になるとのことでした。
・アメリカでは義手・義足の研究も負傷した帰還兵のニーズが高く、保障の観点からも盛んとのことでした。
・UCLAではMedical Centerが近いので、医療応用の研究も盛んとのことでした。NIHでは手術用ロボット等治療に係るテーマは良いですが健康に関してはあまり取り上げてもらえないとのことでした。
・Tsao教授室の前で、Tsao教授との写真を写真11に示します。

11_ucla_tsao           写真11 教授室の前Tsao教授と


④ Rosen教授
・Rosen教授は医療用ロボット(手術用+リハビリ用)や遠隔操作の専門家でUCLAのBionics LabのDirectorです。
・Rosen教授に研究室を案内してもらい、アメリカのホットトピックスのキーワードについて討議しました。
・手術用ロボットでは力制御が重要であり、狭いところでも作業できるように、狭いところにマウントできる触覚センサの開発がMEMSに期待するところとのことでした。
・現状はダビンチが市販されている唯一の手術用ロボットですが、最近2社が新たに製品化をしようとしているとのことでした。UCLAではリサーチラボで使うオープンプラットフォームの手術用ロボットの研究開発をしているとのことでした。
・ダビンチはS/Wは公開されていないので、研究開発用としてH/W,S/Wともオープンソースの手術用ロボットの開発は意味があるとのことでした。
・手術用ロボットのFDA認可には、$100million必要ですが、市場は$30billionと言われており、認可にお金がかかっても十分事業として成り立つとのことでした。
・手術用フォースセンサとしては直径5mmに収める必要があるとのことでした。但し、長さ方向に制限はないとのことでした。鉗子の先端に付けるためには幅2mm、長さ2~4mmに収める必要があるとのことでした。
・鉗子は$1200で10回の使用で交換するとのことでした。これは小型のプーリー等が劣化・破損するためとのことでした。これに適用するためにはセンサのコストは安くないと使われないとのことでした。
・この分野のキーワードとしては、Automated Surgeryが挙げられるとのことでした。現状は遠隔操作ですが、場所、縫合数等を与えるだけで自動的に手術をしてくれることが最終目標とのことでした。機械学習等もこの中に含まれるとのことでした。
・現在はサブタスクレベルでのトライアルがなされているレベルであるとのことでした。
・ハンドは2本指で全作業の95%が実現できるとのことでした。3指あれば100%の作業が実現できるとのことでした。人間が5本指なのは冗長性を担保するためとのことでした。
・人間の5指は長さが違うのに、曲げるとそろうのはスライド機構が備わっているためであるとのことで、スライド機構が備わったハンドを作られていました。
・腱機構は先端部を小さくはできますがプーリー部が壊れやすいとのことでした。
・Rosen教授室の前で、Rosen教授との写真を写真12に、写真13に手術用ロボットの全景写真、写真14に手術用ロボットの手先部拡大写真、写真15に鉗子部、写真16に手術ロボット操作コンソール部、写真17に指マスター部を示します。

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  写真12教授室の前でRosen教授と    写真13 手術用ロボット全景写真

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  写真14 ロボット手先部         写真15 鉗子部

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   写真16 操作コンソール部           写真17 指マスター部

3. NASA JPL
(1)訪問先:Dr. Won Soo Kim
(2)訪問日:2018年2月27日(火)午前
(3)調査結果
・NASA JPLのWon Soo Kim博士を訪問し、von Karman Visitor Center、Space Flight Operations Facility、the Spacecraft Assembly Facility、In-situ Instrument Laboratoryを案内して頂き、火星探査車を中心に説明を受けました。
・火星探査車としては、1997年にマーズ・パスファインダーに搭載され着陸に成功したソジャーナ、2004年にマーズ・エクスプローレーション・ローバに搭載され、着陸に成功したスピリットとオポチュニティ、2012年にマーズ・サイエンス・ラボラトリーに搭載され、着陸に成功したキュリオシティがあるとのことでした。
・マーズ・エクスプローレーション・ローバまではバルーンに入れて火星に落下させましたが、マーズ・サイエンス・ラボラトリーでは重量が重いため、キュリオシティをワイヤーで吊って、地表面に到達後すぐにワイヤーを切って逆噴射でマーズ・サイエンス・ラボラトリーを遠ざける方法に変更したとのことでした。
・火星探査車には種々のセンサが搭載されているとのことでした。キュリオシティにはオポチュニティの10倍の化学探査機器が搭載されており、火星が生命を保持する可能性について調査しているとのことでした。
・ミッションを成功させるため、デバイス、コンポーネント、システムレベルでの耐久性評価を行っているとのことでした。
・写真18にオペレーションルーム入口、写真19に衛星組立て工場の入口、写真20にKim博士の居るIn-Situ Instrument Labの入口、写真21にソジャーナ(右)とオポチュニティ(左)の模型、写真22にキュリオシティの模型、写真23にキュリオシティの模型前でのKim博士と下山教授を示します。

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写真18 オペレーションルーム入口  写真19 衛星組立て工場の入口

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写真20 In-Situ Instrument Lab入口   写真21オポチュニティ(左)とソジャーナ(右)

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   写真22  キュリオシティ模型         写真23 下山教授とKim博士

4. CALTEC
(1)訪問先:Yu-Chong Tai (Executive Officer and Professor, Medical Engineering)
(2)訪問日:2018年2月27日(火)午後
(3)調査結果
・Tai教授はMEMSの大御所の一人ですが、15年くらい前からMEMSそのものの研究から医療用MEMSに研究を集中させ、役に立つMEMS の開発を行っているとのことでした。
・アメリカではNIHが医療用で大きな予算を出しており、有望なテーマとしては癌治療や心臓病にかかわるものがあるとのことでした。
・また、DARPAでは1年単位の契約で有望なものは1年単位の更新が基本ですが、NIHでは1年、2年、3年、4年、5年といった種々の枠組みがあり、成果をだせば延長可能で、Tai教授は5年ものを継続させ20年研究開発しているものもあるとのことでした。
・FDAの認可をとるのは大変でコストもかかりますが、認可されれば逆にFDAが守ってくれるので、逆にメリットになっているし、米国では医療用の市場は$400billionあり、他の分野より大きいし、また数はそれほど出さなくても利益率の高い商売ができるとのことでした。
・電気・電子の世界は、数はでますが、コストも下げられ、利益率も悪いし、60年前にトップ60に入っていた企業で今もトップ60に入っているのは3社だけですが、医療は60社がすべてそのまま生き残っているので、医療は非常に安定した業界であるとのことでした。
・VR、ARはこれから伸びるとの意見でした。また、VR、AR絡みでOptical MEMSはまたブームになる可能性はあるとのことでした。
・ビジョンに関してはプライバシーを侵害するものは受入れられないので、注意する必要があるとのことでした。グーグルグラスも当初一般用に考えていたために、撤退を余儀なくされ、最近医療用等の特定分野に限定することで復活したとのことでした。米国では法律でプライバシー保護がなされるので、プライバシーを侵害するものは注意が必要とのことでした。パーソナルユースにするか公共で使うものに関してはホームランドセキュリティにかかわるものしかダメとのことでした。
・IoTに関しては、民生品の分野で有望との見解でした。
・エネルギ分野に関しては、米国では昔はDOEから活発な国の支援が行われましたが、シェールオイルが出てきてからは、米国ではエネルギ関連の予算はほとんどなくなったとのことでした。但し、日本や台湾のようにエネルギを他国に依存しているところは別かもしれないとのことでした。
・MEMSの産業化は、信頼性、再現性等が満足されなければ、無理だとのことで、産業化を考えるにははじめからこれらを考慮する必要があるとの見解でした。
・クリーンルームの前で、Tai教授との写真を写真24に示します

24_caltec_2        写真24 クリーンルームの前で、Tai教授と

5. Microsoft Research
(1)訪問先:
Research Program Managerの公野氏にアレンジして頂き、下記4名の研究者とディスカッションを行いました。
①Yutaka Suzue, Principal Software Development Engineer
②Sing Bing Kang, Principal Researcher Interactive Visual Media
③Gang Hua, Research Manager Machine Perception and Cognition Group
④Sudipta Sinha, Researcher, Aerial Informatics and Robotics (AIR) Group
(2)訪問日:2018年2月28日(火)午後
(3)調査結果
① Dr. Yutaka Suzue
・Dr. Suzueはペッパー、HSR等のロボットを使って、エンタープライズとしてどんなことができるかのシナリオつくりが仕事とのことでした。
・CES (Consumer Electronics Show)ではスマートスピーカを中心とするホームIoTがホットだったとのことでした。
・会議室で、公野氏、鈴江氏への説明の様子を写真25に示します。

25_msr__2       写真25 会議室で公野氏、鈴江氏への説明の様子

② Dr. Sing Bing Kang
・Dr. Kangの研究テーマはエンハンストビジョンやシネマグラフです。360℃カメラの映像をある人が興味のあるものを中心に再構築して、表示させる技術等を開発していました。
・会議室で、Dr. KangとDr. Huaとの写真を写真26に、Dr. Kang、Dr. Hua、公野氏との写真を写真27に示します。

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 写真26 Dr. Kang,Dr. Huaと  写真27 Dr. Kang,Dr. Hua,公野氏と

③ Dr. Gang Hua
・Dr. HuaのグループではVision Analysis, Machine Reading, Machine Learningを研究しているとのことでした。
・Dr. HuaはStyle Transferの研究で、ある絵を別の特徴を持つ絵に変えたり、人の表情を変えたりする研究を行っていました。
・ホットトピックスのキーワードとしては、Co-Robotがあるかもしれないとのことでした。

④ Dr. Sudipta Sinha
・Dr. Sinhaは3Dコンストラクションやステレオマッチング、Mixed Reality、AR、VRの研究を行っていました。
・また、HoloLensの開発を行ったとのことでした。
・キネクトやXBox、Bing検索等がMicrosoft Researchから製品化されたとのことでした。
・会議室で、Dr. Sinhaとの写真を写真28に示します。

28_msr_sinha_2           写真28 会議室でDr. Sinhaと

          (一般財団法人マイクロマシンセンター 武田宗久)

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2016年11月11日 (金)

北米出張報告


 2016年10月30日~11月11日の間、国際交流、および産業・技術動向調査を目的に北米(オーランド、アトランタ、サンフランシスコ、スコッツデール)を訪問したので報告する。

【IEEE Sensors(10月30日~11月2日)】

 今年のIEEE Sensorsは、米国フロリダ州オーランドで10月30日〜11月2日に開催された。本学会には3年ぶりの参加だったが、図1にポスター展示の様子を示すが、以前に比べてますます盛況になっていた。特に驚いたのは日本からの参加者が2倍近く増えていたこと、エネジーハーベスタのセッションが新たに新設されていたことである。IoT社会・トリリオンセンサ社会に向けて、自立型センサネットワークへの関心が高まってきていることのあらわれだろうか?

 一方で、上記IoT社会に向けて企業からの発表が増加していることを期待していたものの、ほとんど大学や研究機関からの発表であり、ビジネス展開については正直なところ期待外れであった。本学会の参加は技術研究組合MEMS技術研究機構として出席したので、発表内容は省略し、以下に大学訪問、およびMEMS & Sensors Executive Congressの参加報告を記載する。


図1 IEEE MEMSのポスターセッションの様子


【研究室訪問】

① フロリダ大学

 IEEE Sensors最終日に東京大学教授の鈴木雄二先生とフロリダ大学に訪問した。MISTセンター(Multi-functional Integrated System Technology)の主にRF-MEMS、および低消費電力MEMSセンサを担当されているProf. Yoon氏、およびProf. Nishida氏にMISTの紹介をいただき、クリーンルームを見学させていただいた。クリーンルームの見学では、専任の方(Dr.)に案内をしていただき(図2)、装置管理や教育体制が行き届いている印象を受け、まるで企業のクリーンルームのように感じた。見学後には、Prof. Yoon氏、鈴木先生と近くのステーキハウスで晩ご飯を食べながら楽しい一時を過ごした。(図3)

図2 MISTのクリーンルーム案内の様子 図3Yoon先生、鈴木先生との会食の                          様子

② ジョージア工科大学

・Prof. Ayazi

 ジョージア工科大学では、BAW(Bulk acoustic wave)を用いたジャイロスコープやMEMS振動発電の研究を行っているProf. Ayazi氏の研究室を訪問した。Ayazi氏とは後述するMEMS & Sensors Executive Congress の会場でもお会いし、振動発電、自立型センサ端末に向けた低消費電力のMEMSセンサ等、自立型スマートセンサに向けて多くの議論ができた(図4)。技術研究組合NMEMS技術研究機構での振動発電の取り組みを紹介したところ、エレクトレットの形成手法であるアルカリ熱酸化+高温電圧印加(BT処理)に強い関心を示された。Prof. Ayazi氏のところでは、X-Yの平面で多軸MEMSアクチュエータによる圧電方式の振動発電を研究されており、発電量は少ないものの静電誘導型でも参考となる構造であると感じた。

・Prof. Tentzeris

 また、環境RFから給電するアンビエント・エナジーハーベスタの研究をされているProf. Tentzeris氏の研究室を訪問した。無線等のRF環境がある領域において、エネルギーを取り込み、LEDを発光させるデモを見せていただいた。この発電方式は、RF環境によるところが大きいが、10μW程度までの発電が可能である。課題としては特に周波数が高い場合、電圧出力がとれないとのことである。電圧出力のとれる太陽電池や振動発電等の別のエナジーハーベスタと融合し、ハイブリッドの発電構造とするのが良いだろうとのことであった。 NMEMS技術研究機構で取り組んでいる静電エレクトレット方式の発電とのコラボレーションの話があったが、NEDOテーマであり、すぐに対応できない状況である。まずは、個別企業への技術紹介までとする。図5に実験室でのメンバと一緒に撮影した写真を示す。


 図4 Prof. Ayazi氏と会議室にて 図5 Prof. Tentzens氏と実験室にて

・見学

 両研究室の訪問の間に、Prof. Ayazi氏の研究室の研究員に約1時間ジョージア工科大学のキャンパス&クリーンルームを案内していただいた。ジョージア工科大学のクリーンルームの一部を図6に示すが、とても広く、また装置も新しい設備が多く、大学保有の研究室とは思えない規模であった。読者のみなさまも機会があれば訪問されることをお勧めする。

  図6 ジョージア工科大のクリーンルーム(一部)

③ BSAC

 スマートダストの生みの親である、カリフォルニア大学バークレー校BSACのProf. Kristofer Pister氏の研究室を訪問した。 Pister氏は短パン姿でフランクに迎えてくれた(図7)。まず、最初に当センターでの活動紹介、現在の開発テーマの紹介を行った。振動発電について、ホワイトボードを前にセンサの消費電力低減、低リークキャパシタ等今後の進展を考慮し、リチウムイオン電池2400mAhであれば、センサ端末の寿命が20年以上もつことを式で示された。振動発電をウェアラブル端末等の市場に使うにはまだまだ時間がかかるだろうが、一方で、センサ等の消費電力の大きいアプリケーション、無線頻度が高いアプリケーション、そして、インフラモニタリング等の長寿命のセンサ端末が必要なアプリケーションには、まだまだ振動発電デバイスの必要性があるだとうということであった。
 また、Pister氏から、今後の取り組みとして、1cm□程度のマイクロロボットのポンチ絵を紹介してくれた。CCDとマイクロフォンを内蔵して動く昆虫形であり、6足の昆虫型やドローン構造のマイクロロボットを紹介していただいた。有害な昆虫の撃退やミツバチの代わり等、様々なアプリケーションが考えられるが、軍事用途を考えると恐ろしさを感じた次第である。

        図7 Prof. Pister氏と研究室にて


【MEMS & Sensors Executive Congress】

 本出張のメインイベントとして、MEMS & Sensors Executive Congressに国際交流およびMEMS産業動向調査の一環として参加した。この会議はMEMS & Sensors Industry Group(MSIG)が主催する会議であり、2016年は11月9日~11日にアリゾナ州スコッツデールで開催された。

 筆者は2年前にも参加したがその時には、日本からはオムロンの関口氏と筆者のみの参加であり、日本のMEMSへの関心の低さを感じていたが、今回はSPPテクノロジーズの神永氏、東北大学の田中秀治先生はじめ10人近くの出席者があった。これは、IoT社会に向けた関心の向上と、昨年度からトリリオンセンササミットをMSIGが巻き込んだことによるものではないかと考える。

 会議自体は、11月10日・11日と2日間の開催であり、講演会はMEMSやセンサ、センサ応用に関する講演が続いた。講演者はMEMS企業のトップが登壇することもあり、技術的な講演から、事業的な内容まで多岐にわたる。今回、約200名の人が参加していたが、企業トップや、投資家、研究機関などが主要な参加者であった。この会議の一番の特徴は、休憩時間や昼食では、懇親の時間がたっぷりととられており、このような場でコミュニケーションを通じて、人的ネットワークの構築を高めて、ビジネスや研究に活かしていくきっかけをつくることであることであろう。図8、9に休憩時間の様子やBanquetの様子を示す。 この会議の期間中に、InvenSense社が日本の企業に買収されるかもしれないという噂が聞こえてきたが、企業間の動きはこのような場が一つのきっかけなのかもしれないと感じた次第である。

 今年の会議の内容について、IoT(Internet of Things)への期待はこれまで同様であるが、さらに、今回は自動車関連の話題が多かった。車載用途での高性能ジャイロスコープについて、先に報告したジョージア工科大学のProf. Ayazi氏(ジョージア工科大発ベンチャーの米Qualtré社)から、バイアス不安定性の原因を取り除く独自の技術を報告されていた。また、IHSからもクリーンカー、コネクテッドカ―等の自動車動向、MEMS&センサーの動向、市場予測の報告があった。

 

図8 休憩時間の様子      図9 Banquetの様子


【所 感】

 今回、大学訪問やMEMS & Sensors Executive Congressに参加して多くの方々と会話をした。 一方で、会話する相手の方々も何らかの価値を期待しており、特に、日本の企業・大学とのコラボレーションの機会を探っていることが多かった。 事前に訪問先を国内企業に紹介して、関心のあるメンバと同行して参加する等の活動も今後必要ではないかと思う。なお、詳細は2017年1月30日に当センターで開催する海外出張報告会にて報告する予定である。


 

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