新年あけましておめでとうございます。
本年もMEMS・スマートセンシング技術の開発や普及に真摯に取り組み、国の目指す Society5.0 の実現に向けて微力ながらも貢献してまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。
昨年は1月にマイクロマシンセンターの創立30周年を迎え、MEMSの過去30年を振り返るとともに、今後20年の展望をいたしました。それに従い、DX、GXの流れも踏まえつつ、新たなプロジェクトの模索などを行ってきましたが、コロナ禍もなかなか終息を見ず、ロシアによるウクライナ侵攻や急速な為替変動など、我々を取り巻く環境は引き続き厳しいものがあり、その道筋は容易なものではありませんでした。
それでも、JEITAが12月に発表した「電子情報産業の世界生産見通し」によれば、2023年の世界生産は3.5兆ドルを超え、過去最高を更新する見通しとなっています。この明るい兆しのもと、当センターは今年もDX、GXの推進に不可欠な各種MEMSセンサの開発の一環として、非侵襲で血中成分を計測するBaMBIプロジェクトや、小型原子時計の基礎研究であるHS-ULPACプロジェクトなどを推進するとともに、「環境調和型MEMS(EfriM)」のインフラ・防災分野等への適用や、ウェルビーイング社会の実現に資する「感情・共感センシングシステム」などの新プロジェクト化を目指してまいります。
一方、昨年秋から当センターはこれまでの経済産業省産業機械課様に代わって情報産業課様の所管法人となりましたので、半導体の一部としてのMEMS(半導体全体の3~4%と規模は小さいものの)という新たな認識にも立って、その振興を図ってまいりたいと思います。当センターの有するMEMSミニファンドリーとしてのMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター)においても、MEMSの研究支援や工程受託などを継続して行いつつも、我が国半導体業界再興の末端を担うべく、最先端の設計・製造技術を磨いていく所存です。
さて、当センターでは通算33回目にあたるマイクロナノ分野の展示会である「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2023」を2月1日から3日にかけて東京ビッグサイトで開催いたします。今回もセンターの活動紹介、MNOICの紹介、研究開発報告とともに、各種セミナーを開催し、興味深い様々な技術報告を行います。セミナーの冒頭には新たに所管いただく経済産業省情報産業課長様に半導体戦略関連のご講演をお願いしております。是非、多くの皆様にご来場いただき、今後のMEMSの発展のために当センターに対するご指導・ご支援を賜れれば幸いです。
皆様方には以下のマイクロマシンセンターの2022年の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。
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マイクロマシンセンター/NMEMS技術研究機構
2022年10大ニュース
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1.2022年1月にMMC創立30周年を迎え、記念誌を発行
(「MEMSの過去30年と今後20年の技術展望」を収載)
2022年1月23日に当センターは創立30周年を迎えました。毎年MEMS産業を取り巻く各種環境などを取り上げて、産業動向調査報告を行っていますが、昨年は当センター30周年ということもあり、これから益々のMEMS技術・産業の発展に資するため、過去30年を振り返り、この先20年を展望するという形の調査報告書を作成し「30周年記念誌」として3月に刊行し、会員法人の皆様と関係各所に配布いたしました。
2.MEMSセンシング&ネットワークシステム展2022
の中で「MMC創立30周年記念講演会」を開催
(パネルディスカッションに神永氏、江刺氏、下山氏、金丸氏がご登壇)
2022年1月28日にMEMSセンシング&ネットワークシステム展2022の中でMEMSの過去30年の歴史と今後20年の技術展望をテーマとした創立30周年の記念講演会を開催しました。午前中の第一部では主に学生や若手技術者向けに「TIA-MEMSウィンターセミナー MEMS講習会」を開催するとともに、午後の第二部では、MMC30周年特別企画として、30年の歴史をMEMSなどの微細加工、製造技術の進歩とともに振り返り、未来へ続いていくために必要なことを、産業界、大学、国立研究所を代表する方々による基調講演とパネルディスカッションで展望しました。
3.MNOICの活動
現行製品の継続した製造や実用化に向けたサンプルの試作などを請負う工程受託の急増に加えて、産総研と連携した研究受託や企業ユーザの研究支援など、将来のMEMS産業活性化に向けた取組み案件も着実に増加しています。2022年MEMS研究開発支援事業は約120件を獲得し堅調に推移しました。
本年の顧客のご利用傾向としましては人の流れの回復基調を反映してかクリーンルーム立入り利用を含む研究支援コースの新規契約10件を獲得し、利用増加しました。
4.コロナ禍の中もMEMS展を継続して開催
1月28日から30日の3日間に亘り「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」を開催しました。今回で通算32回目の展示会となりました。今回の展示会はセンターが設立30周年を迎えるにあたり、例年通りのセンター、MEMS協議会、MNOIC、技術研究PJのブース展示のほかに、特別展示として今後20年のMEMS技術の展望として、MEMSの応用が期待される12分野と、予測されるMEMSデバイス・技術の展示紹介も行いました。
5.HS-ULPAC、BaMBIを順調に継続
HS-ULPAC
移動体に搭載可能な高精度原子時計を実現するため、周波数変動要因を根本から解明するとともにプロトタイプを試作して実証・評価しています。MMCでは2022年度は最終評価に向け、
MEMSガスセル、実験室モデル量子部、プロトタイプ真空断熱型量子部の2次試作を行っています。
BaMBI
2019年に始動した3年間のNEDO委託事業の結果、ステージゲートを通過し、2022年度からは事業化を目的とした株式会社タニタ主導の2年間の助成事業に進んでいます。非侵襲の血糖・脂質のディテクタ開発も順調に推移しています。
6.SNIFを終了
2019年に始動したNEDO委託事業を2021年10月からオムロン主導の研究開発に切り替え、2022年6月に計画通り小型ウェアラブル計測端末の動作モデルの構築を終え、研究開発を終了しました。今後も医科歯科大学が中心となって、この成果の実用化に向けて、連携先などを募ってまいります。
7.活発なSSN研究会活動により次期プロジェクトの立案が進む
新規国プロ獲得を目指して、SSN研究会のWG9において「環境調和型MEMS(EfriM : Environment friendly MEMS)」、WG10において「感情センシングPF」活動を推進し、NEDO先導研究や内閣府次期SIPのRFIへの提案を行うとともに、関連技術のブラッシュアップを行って、新規国プロの公募に応募すべく準備を進めています。
WG9(EfriM-WG)では、2022年度は農業、インフラ、防災に関する3回の応用分野のWGを開催し、2022年度中にNEDO先導研究等への提案を予定しています。
WG10(感情センシングWG)では、センサーフュージョンによる特徴量抽出アルゴリズム、生体信号による感情推定、脳波・脳活動センサ、共感状態の推定等に取組んでいる研究者をメンバーに迎え、感情センシングプラットフォームの価値、社会実装の実現に向けた枠組み等について議論を進めていきます。
8.国際標準化全体会議開催 及び 新規標準化委託事業の開始
IEC(国際電気標準会議)/TC47(半導体分野技術委員会)の国際標準化全体会議が、10月31日から11 月4日まで、サンフランシスコのHilton San Francisco Union Square Hotelで開催され、SC47F(MEMS分野)と、TC47/WG7(半導体デバイス エネルギーハーベスタ、エネルギー変換・伝送分野)に関する会議に参加しました。久しぶりの対面会議であったこともあり、各国主査等と会議前後の時間に交流を図ることができ、充実した会議となりました。
また、経済産業省「令和 4年度省エネルギー 等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費」に、マイクロマシンセンター、兵庫県立大学、神戸大学と東京大学が共同で提案しました「振動発電エネルギーハーベスタの信頼性評価に関する国際標準化」が採択され、国際規格の開発を開始しました。
9.国際交流活動を徐々に再開
新型コロナの影響で制限されていた国際交流活動に関しては、マイクロマシンサミットが3年連続で延期になる等、未だ影響は残っていますが、各国の入国制限が緩和され、国際会議もオンライン開催からハイブリッド開催に移行されだして徐々に再開の兆しが見えてきました。
4月のMEMSエンジニアフォーラムにもMMCとして出展いたしましたし、MMCでも海外アフィリエートであるスペインカタルーニャ州政府貿易投資事務所と連携して、IOT Solution World Congressのアンバサダーになる等国際交流活動を徐々に再開しました。
10.役員改選による新体制始動と経済産業省の所管課が変更
2022年度は当センター役員の改選期にあたり、理事長を2期4年にわたりお務めいただいたデンソー株式会社元取締役副社長の山中康司様がご退任され、7月に開催しました理事会において、株式会社日立製作所執行役常務の鈴木教洋様が理事長にご就任されました。
また、当センターは、設立以来経済産業省製造産業局産業機械課の所管団体でありましたが、同省の組織規定類の改正に伴い、商務情報政策局情報産業課の所管団体に変更となり、半導体・デジタル産業戦略の末端を担っていくこととなります。