Future Technologies from SENDAI合同シンポジウム参加報告 (2024年11月25日~28日)
Future Technologies from SENDAI合同シンポジウムは電気学会センサ・マイクロマシン部門主催の第41回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム、日本機械学会マイクロ・ナノ工学部門主催の第15回 マイクロ・ナノ工学シンポジウム、応用物理学会集積化MEMS技術研究会主催の第16回集積化MEMSシンポジウム、化学とマイクロ・ナノシステム学会(ケムナス)主催の第50回研究会が合同で開催するMEMS関連の国内最大のシンポジウムです。
今回は仙台国際センター展示棟(写真1)においてテクニカルセッションが11月25日(月)~27日(水)にテクニカルツアー(Aコース:仙台村田製作所、CKD東北工場、Bコース:アドバンテスト研究所・アドバンテストコンポーネント、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング白石蔵王TEC)が11月28日(木)に開催されました。
今回、NEDO調査事業「未来社会におけるMEMSセンシングデバイスの市場動向及び技術動向調査」の先端技術動向調査の一環としてMEMSシステム開発センターの武田が、当該分野の技術・業界動向把握やMNOICのPRのためにMNOIC研究企画部の渡辺が参加いたしましたので、ご報告いたします。
写真1 会場の仙台国際センター外観
講演数は第41回「センサ・マイクロマシンと応用シンポジウム」が307件(基調講演1、オーラル83、ポスター223)、第15回 マイクロ・ナノ工学シンポジウムが210件(基調講演1、招待講演4、ポスター204)、第16回集積化MEMSシンポジウムが30件(基調講演1、オーラル18、ポスター11)、ケムナス第50回研究会が195件(基調講演1、招待講演4、ポスター190)、企画セッションが14件(FT合同招待4、若手企画登壇10)の計756件、参加者数1,292名、技術展示・スポンサー機関71機関ともに過去最高を記録し,盛会のうちに無事終了いたしました。
発表件数が多いため、5パラレルセッション+ポスターセッション+技術展示で開催されました。メイン会場(M会場)の様子とポスターセッションの様子を写真2と写真3に示しますが、活発な議論が行われている様子がうかがえると思います。
日本のMEMSは最近低調がちですが、多くの若い研究者が活発に議論をしている様子から日本MEMSの復活が期待されます。
写真2 メイン会場の様子
写真 3 ポスター会場の様子
今回基調講演としましては、以下の4件が行われました。ここでもMEMSの重鎮のご講演に対して、フロアから若手研究者が質問する場面も見受けられ、今後の若手研究者の活躍に期待したいと思います。
(1) 11月25日(月) 10:30-11:10 【ケムナス】
東京大学 総長
藤井輝夫氏:「多様性の海へ:対話が創造する未来」
(2) 11月26日(火) 08:30-09:10 【応用物理学会】
SKグローバルアドバイザーズ 代表取締役
神永 晉氏:「集積化MEMSと40年~次世代へのメッセージ~」
(3) 11月26日(火) 17:35-18:15 【日本機械学会】
国立研究開発法人産業技術総合研究所 理事長
石村 和彦氏:「日本の産業競争力強化に向けて」
(4) 11月27日(水) 08:30-09:10 【電気学会】
株式会社メムス・コア CTO兼東北大学マイクロシステム融合研究開発センター シニアリサーチフェロー
江刺 正喜氏:「MEMSのオープンコラボレーション」
今回ポスター発表が多いため、フラッシュプレゼンテーションのセッションが設けられ、それを聞いてからポスター発表を聞く人が多かったためか、ポスター発表で活発な討論が行われていたような印象を受けました。
また、電気学会では若手賞・優秀技術論文賞のファイナリストセッションが設けられ、審査の結果下記発表が受賞しました。
優秀技術論文賞として、日本が海外に負けている伝統的なMEMSデバイスであるマイクロフォンやジャイロの新しい研究やこれから伸びると考えられるバイオ関連の研究が選定された意義は大きいと思います。
【最優秀技術論文賞】(1件)
・山本貴富喜、林田健、細谷俊太(東京工業大学):「AI駆動ACナノポア法によるフェノタイプ型微生物センシングシステムの開発」
【優秀技術論文賞】(3件)
・池上尚克、白石健太郎、高橋宏、白井孝英、久保田瑶、柏木一郎(日清紡マイクロデバイス):「pd系金属ガラスメンブレンによる高破壊靭性MEMSマイクロフォンの開発」
・宇野真由美[1]、小森真梨子[1]、坂本憲児[2]([1]大阪産業技術研究所、[2]九州工業大学):「微小量生体液の粘度および電気伝導度計測に向けた不織布流路デバイスの開発」
・明石照久[1]、高橋一平[1]、船橋博文[1]、原田翔太[2]([1]豊田中央研究所、[2]ミライズテクノロジーズ):「積み木式実装による3軸化ジャイロ」
【五十嵐賞】(1件)
・島村龍伍(東京大学):「ナノスパイアを用いた絶縁層貫通式接続機構の実現」
【奨励賞】(7件)
・宇梶尚弥(電気通信大学):「電流検出型表面プラズモン共鳴センサのAu/n-Si Schottky界面における拡散の影響」
・伊藤陸(群馬大学):「気導音と骨導音を同時計測する二層流路型ヒト内耳模倣MEMSセンサの開発」
・加藤源基(豊橋技術科学大学):「エラストマーナノシートを用いた二軸ひずみ印加グラフェン共振質量センサの作製と分子質量計測」
・松下優介(豊橋技術科学大学):「植物の光合成産物可視化に向けた刺入型スクロースイメージセンサの機能検証」
・Pham Viet Khoa(豊橋技術科学大学):「電流駆動型グラフェン共振センサによる質量・粒子数マルチモーダル測定」
・Ma Cheng(京都大学):「Evaluation of the capacity of organic anion and cation transporters in a proximal tubule-on-chip model derived from hiPSC-derived kidney organoids」
・後藤慎太郎(東北大学):「Au薄膜転写による中空マイクロバンプアレイの作製」
MNOICについては、会期中を通して技術展示を行いました(写真4)。会場では、自社での「人員不足」、「プロセス設備の不足・老朽化」、「パイロット生産から大規模生産まで小回りの利くファウンドリがない」などの要因から、MNOICにかける期待を多くいただきましたが、当方でもまさしく同様な課題を抱えており、政府のMEMS分野についての重点的な支援などとともに、自助努力で課題解決可能な施策を検討していきたいと思います。
写真4 MMC技術展示での説明の様子
テクニカルツアーに関しては、武田がAコースに参加しました。
仙台村田製作所は2008年7月から金沢村田製作所仙台工場として創業し、2021年7月1日から仙台村田製作所として分社独立し、「SAWフィルタ」を生産し、その生産量・シェアともトップクラスです。テクニカルツアーでは、会社の概要説明の後、SAWフィルタの構造と生産プロセスの主要工程の説明を受け、実際の生産ラインを見学いたしました。Yoleの調査ではMEMSのカテゴリーから外れているSAWデバイスではありますが、MEMSのトップ30企業に日本企業として入っている村田製作所が国内で生産しているものであり、今後MEMSデバイスの国内生産拠点の拡充へも期待したいと思いました。
CKDは1943年設立の自動機械装置、駆動機器、空気圧制御機器、空気圧関連機器、流体制御機器など機能機器を開発・製造・販売・輸出する会社で、東北工場は半導体向けを中心とした流体制御機器及び自動車や電機・電子業界向けの空気圧機器を製造する工場として2019年に竣工されました。自動倉庫を導入し、組立・検査工程の自動化・省人化に取り組んだ「人にやさしい工場」をコンセプトに働く人に配慮した構造を有するスマートファクトリ―となっていました。テクニカルツアーでは、会社の概要説明の後、スマートファクトリ―の主要部分を見学いたしました。現在NEDO調査で実施している「未来社会におけるMEMSセンシングデバイスの市場動向及び技術動向調査」で対象としている製造分野のスマートファクトリの参考となりました。
来年はFuture Technologies from UTSUNOMIYAとして、2025年11月10日(月)~13日(木)(11月10日~12日:テクニカルセッション、11月13日:テクニカルツアー(HONDA COLLECTION HALL))に栃木県のライトキューブ宇都宮で開催されます。
(MEMSシステム開発センター 武田 宗久、MNOIC研究企画部 渡辺 秀明)
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