2024 第27回「国際マイクロマシンサミット」(オーストラリア・ゴールドコースト) 参加報告
マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/ナノテクノロジーに関する課題や展望につき意見交換する場です。日本の提案により1995年3月に京都で開催されたのが始まりで、以後、各国持ち回りで開催されています。第27回マイクロマシンサミット(写真1)が、オーストラリアのゴールドコーストで、2024年5月26日(日)から29日(水)まで開催されましたのでご報告いたします。
今回のトピックスは「Quantum semiconductor microtechnologies: novelty and re-emergence」でした。日本からは東京大学大学院精密工学専攻の伊藤寿浩教授がチーフデリゲイトとなり、マイクロマシンセンターの国際交流担当の武田と2名で参加いたしました。今回のジェネラルチェアは、オーストラリアのGriffth大学のDzung Dao教授で、会場はMantra on View Surfers Paradiseでした。
写真1 第27回マイクロマシンサミット概要
今回は参加国・地域が例年より少なく、欧州から4カ国1地域(ドイツ、ポーランド、ルーマニア、UK、イベリア)、北アメリカから1カ国(カナダ)、アジアから3カ国(シンガポール、中国、日本)、オセアニアから1カ国(オーストラリア)の10国・地域から30名のデリゲイトの参加がありました。事前登録はあったのですが、ビザ等の関係でイタリア、オーストリア、ブラジル、ベトナムの4カ国が欠席となりました。また、新たな参加国はございませんでした。最も参加者の多かったのは開催国のオーストラリアで12名、次いでイベリア地域(スペイン)の3名、カナダの3名でした。会場の様子及び集合写真を写真2、写真3に示します。
写真2 会場の様子
写真3 集合写真
第1日目はオーストラリアのチーフデリゲイトのThe University of Western AustraliaのDr. Mariusz Martyniukの開会の挨拶(写真4)の後、各国の現状を報告するカントリーレビューとオーストラリアクイーンズランド州の取り組みの11件の発表がありました。2日目は一般講演18件がありました。日本からは伊藤チーフデリゲイトから日本の内閣府の量子技術戦略と量子技術関連プロジェクトとしてムーンショットプロジェクト及びMEMS関連プロジェクトの紹介がなされました(写真5:伊藤チーフデリゲイトのプレゼンの様子)。また、武田から防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度で受託している小型原子時計の研究成果について「The development of chip-scale atomic clocks using quantum interference」と題する発表を行いました(写真6:武田のプレゼンの様子)。
今回のトピックスは量子技術でしたが、量子技術の中のPhotonicsやOpto-mechanicsにMEMS技術を活用しているものが多いような印象を受けました。また、中国、ポーランドからも原子時計の発表があり、小型原子時計も量子技術とMEMS技術が必須なデバイスとして取り上げられていました。オーストラリアでは、Griffith大学を中心にシリコン基板上に薄膜のSiCをつけて、SiCの特性を活かした高性能で安価なデバイスの開発も積極的に行われていたのも印象的でした。
写真4 Dr. Mariusz Martyniukの開会の挨拶の様子
写真5 伊藤チーフデリゲイトによる
日本のカントリーレビュー報告の様子
写真6 武田のプレゼンの様子
テクニカルツアーとしては、5月29日にゴールドコーストから1時間半の距離のブリスベン郊外にある企業Silanna Semiconductorを見学しました(写真7~8参照)。Silannaはエピタキシー装置を使って、UV光エミッタと検出器、電源スイッチ、RF集積回路を製造する会社でした。新型コロナの拡大により、細菌やウイルスを殺菌する高出力のUV光の要求は高まっており、SilannaのUV光エミッタはこのような用途に使われているとのことでした。
写真7 Silanna前での集合写真
写真8 製造工場前での説明
次回のMMS2025の開催月は例年通り5月に、開催地はカナダのモントリオールで、オーガナイザーはCMC MicrosystemsのGordon Harling President & CEOが務めることになりました。また、2026年はUK、2027年はシンガポールで開催されることがチーフデリゲイト会議で決まりました。今後もマイクロマシンサミットにおいて、世界各国のMEMS関係機関との国際交流を深め、世界のMEMSの最新動向を入手して、情報発信してまいります。
(MEMS協議会 国際交流担当 武田宗久)
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