SSN研究会WG(EfriM)キックオフミーティング開催報告
2021年6月23日(水)15:00~17:00にオンラインにて「SSN研究会WG(EfriM)キックオフミーティング」を開催致しました。
一般財団法人マイクロマシンセンターでは、昨年度に一般財団法人機械システム振興協会からの委託を受け、今後発展が期待される屋外IoTのキー技術となる「環境調和型MEMS(EfriM : Environment friendly MEMS)技術の研究開発に関する戦略策定」事業を実施致しました。
本ミーティングはこの成果を基に今後プロジェクト化を図っていくために、SSN(Smart Sensing & Network)研究会の新たなWGとして立ち上げましたEfriM-WGのキックオフミーティングで、以下に示すプログラムのように、長谷川専務理事の主催者挨拶の後、EfriM関連の4件の基調講演とEfriM-WGの進め方に関して説明を行いました。
【プログラム】
15:00~15:05 (1)主催者挨拶
長谷川 英一【(一財)マイクロマシンセンター 専務理事】
15:05~16:45 (2)基調講演(講演20分、質疑応答5分)
15:05~15:30 ①「EfriMとは」
藤田 博之氏【キヤノンメディカルシステムズ㈱先端研究
所 名誉所長(EfriMプロジェクトリーダー)】
15:30~15:55 ②「インフラ分野のEfriM」
塩谷 智基氏【京都大学インフラ先端技術産学共同講座
特定教授】
15:55~16:20 ③「災害分野のEfriM」
酒井 直樹氏【防災科学技術研究所先端的研究施設利活用
センター 副センター長】
16:20~16:45 ④「農業・畜産分野のEfriM」
伊藤 寿浩氏【東京大学大学院工学研究科 精密工学専攻
教授】(EfriMサブプロジェクトリーダー)】
16:45~17:00 (3)SSN研究会EfriM-WGの進め方
以下に、本キックオフミーティングの内容に関して、簡単に紹介致します。
先ず、主催者挨拶として、長谷川専務理事から、創立30年を迎えるマイクロマシンセンターがこれまで実施してきた各種プロジェクトに関して簡単に説明を行うとともに、この次のMEMSとして、屋外に広範囲にばら撒いたMEMSを普及させるためには、EfriMが必要であり、プロジェクト化を図るために、今般SSN研究会に新たにEfriM-WGを立ち上げた旨の説明を行いました。この技術は内閣府の第6期総合科学・イノベーション基本計画で謳う「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会」や昨今話題になっているグリーン・デジタル化にも資する技術であり、本日はEfriMの調査研究のプロジェクトリーダーをお務め頂いた藤田先生からEfriM全体の説明を頂き、インフラ、災害、農業分野の各分野で議論のリードを頂いた塩谷先生、酒井先生、伊藤先生からそれぞれの分野のEfriMの説明を頂くことにしていますので、この技術に関心を持って頂いて、是非WGに参加して一緒にプロジェクト化を図って頂くようにお願い致しました。(図1)
図1 長谷川専務理事の主催者挨拶の様子
次に、基調講演として、先ず、藤田先生より、EfriMとはどのようなもので、どのような技術が必要かについてご紹介頂きました。EfriMは自然に還る材料や自然に固定化(有害な材料を環境に流出しないように環境に無害な材料で包んでしまうこと)する材料を使って、低炭素な製造技術で作製し、屋外の広範囲にばら撒いて、環境を見守る用途に用いるものです。また、自然に還るあるいは固定化する材料で構成されているため、寿命がきた後も回収せずに、自然に放置しておくことが可能になるものです。昨年実施致しました調査研究では、EfriMに適したインフラ、災害、農業分野におけるユースケース、自然に還る材料や自然の中に固定化する材料・デバイス及び省エネ型製造技術を抽出するとともに、それらを組み合わせたシナリオを検討して、その絞込みとブラッシュアップにより、インフラ、災害、農業分野での有望な6つのEfriMセンシングシステムを選出したことが報告されました。また、これら6つのEfriMの研究開発のために必要な横断的技術を環境固定化技術、環境に還る技術及び共通基盤技術の3つの項目に整理するとともに、緊急時のみで使うシステムなのか、農作物の収穫など例えば半年間使うものなのか、あるいはコンクリート構造物モニタリングのように数十年にわたって使い続けるシステムなのかというような時間遷移を考慮した開発戦略としてまとめたことが紹介されました。(図2)
図2 藤田先生の講演の様子
次に、塩谷先生からはインフラの点検結果の概要及び保全フェーズ(初期、予防、事後)の説明があり、現状は表面状態だけしか計測できていないため、緊急対策としての事後保全しかできない課題があることが紹介されました。センサをインフラ構造物の内部にEfriMとして組み込むことができれば、調査・測量、設計、材料・施工、検査、維持管理というインフラ構造物建設のあらゆるフェーズで、内部状態を含めたリアルデジタルツインを実現できる。つまり、建設フェーズを一気通貫させるセンシング技術による外部情報と内部情報の統合により、本当の建設DXが実現できることが示され、EfriMへの期待が述べられました。(図3)
図3 塩谷先生の講演の様子
続いて、酒井先生からは2016年の熊本地震災害や土砂災害・地盤災害事例及びそこでのモニタリング事例の紹介があり、現状では定点での観測ができるのみで、広範囲な災害の予兆を検出できるようなセンシングシステムは存在しないとともに、災害が発生した場合に流出したセンサを回収することは困難なことが紹介されました。従って、環境に調和し、回収が不要なEfriMを広範囲に設置することができれば、経験と勘に頼っていた防災のデジタル化が図れ、さらに住民目線の防災が可能になることが示されるなど、EfriMへの期待が述べられました。(図4)
図4 酒井先生の講演の様子
最後に伊藤先生からは、農業の高収益化・完全無人化・高収量化・高品質化の具体的な課題、スマート農業の問題点、MEMSへの期待から、土に還るEfriMにより生物農薬・ロボットトラクタを用いたスマート農業が加速できることが紹介されました。また、畜産に関しては、ムーンショットの「牛ルーメンマイクロバイオーム完全制御によるメタン80%削減に向けた新たな家畜生産システムの実現」、JST-CRESTの「安全・安心のためのアニマルウオッチセンサの開発」及び内閣府SIPの「生体センシング技術を活用した次世代精密家畜個体管理システムの開発」等の紹介から、ピル型EfriMへの期待が述べられました。(図5)
図5 伊藤先生の講演の様子
以上4件の基調講演の後、事務局よりSSN研究会EfriM-WGの進め方についての説明とEfriM-WGへの勧誘(7/7締切)が行われました(図6)。
図6 EfriM-WGの進め方
今回はインフラ、災害、農業分野でのEfriMの開発戦略について紹介しましたが、EfriM自体は環境に調和して、回収を不要にする新たなIoTを実現するものですので、今回の3分野に限らず、他の分野も含めて広くプロジェクト化を模索していきたいと存じますので、ご関心のある方は下記へお問合せお願い申し上げます。
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一般財団法人マイクロマシンセンター MEMS協議会
SSN研究会 EfriM-WG 事務局 武田/藤井
E-mail: seminar1@mmc.or.jp
〒101-0026 東京都千代田区神田佐久間河岸67 MBR99ビル6階
Tel: 03-5835-1870 http://www.mmc.or.jp/
(MEMS協議会SSN研究会EfriM-WG担当 武田 宗久)
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