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2018年11月15日 (木)

米国研究開発動向調査

 2018年11月6日(火)~11月14日(水)に米国の研究機関及びベンチャー企業を訪問して、米国におけるMEMS、IoTセンサ及びピコセンサ技術に関する最新の研究開発動向調査を行いましたので、以下にご報告致します。今回調査したのは以下の7機関です。 

1. eXo Imaging
2. Stanford Uiversity, Roger Howe研究室
3. Stanford Nanofabrication Facility (SNF) &
    Stanford Nano Shared Facilities (SNSF)
4. MIT, Biomimetics Robotics Lab
5. ORIG3N
6. Stanford University, Khuri-Yakub研究室
7. Graftworx 

以下に各訪問先での調査結果を示します。

1. eXo Imaging
(1)面談者:Janusz Bryzex, Chairman & Chief Visionary Officer
       Sandeep Akkaraju, CEO & President
(2)訪問日:2018年11月6日(火)
(3)調査結果

  • eXo ImagingはTrillion Sensors Initiativeを提唱した主宰者のJanusz BryzekがTrillion Sensorsの動きから出た初めての新ビジネスとして2016年に設立したベンチャー会社です。超音波(PMUT)による画像診断(エコー)を、ポータブル機器として開発しています。
  • ピエゾMEMSを使って、既存の医療用の超音波診断装置を現状の超音波プローブの大きさに収めた製品を来年の9月にFDA認許をとって販売しようとしていました。
  • 超音波診断子はFDAの認可が必要ですが、非侵襲機器であるため、FDA取得はそれほど大変ではないとのことでした。
  • 通常MEMSではアイデアから製品まで27年かかっていますが、それを3年で実現できると言っていました。
  • 超音波診断子ではインピーダンスマッチングが必要で、ピコセンシングで考えているインピーダンスマッチング層には大きなニーズがあることが分かりました。
  • 今後はピエゾ MEMSが大きな広がりを持つとの考えで、多くのアプリ例を出して説明してくれました。今製品化を進めている超音波診断子はその第一歩との考えでした。
  • トリリオンセンサのフェーズ1は2016年に終了しましたが、Januszは現在トリリオンセンサのフェーズ2(安く大量に製造するためにプリンテッドエレクトロニクスの革新が中心技術になるとの考え)をSEMIと画策しているとのことでした。
  • 写真1にeXo Imagingの入り口でのJanuszとの写真を示します。

写真1  JanuszとeXo Imagingの入り口で

2. Stanford Uiversity, Roger Howe研究室
(1)面談者:Charmaine Chai, PhD student
(2)訪問日:2018年11月7日(月)午前
(3)調査結果

  • MEMSの大御所のひとりのRoger Howe教授の研究室を訪問しました。生憎Howe教授は出張中で不在でしたが、PhDの学生であるCharmaineに実験室を案内してもらいました。
  • Howe教授はMEMSからバイオセンサの方に研究テーマをシフトしているとのことでした。
  • タンパク質の分析を行うバイオセンサの開発をしているとのことでしたが、分子識別能を使うのではなく、トンネル電流をローノイズで検出する方式のバイオセンサを開発しているとのことでした。
  • また、開発したバイオセンサのベンチャーも立ち上げているとのことでした。
  • 実験室を案内してくれましたCharmaineはアプリケーションよりはnAレベルの微小信号を検出するためのトンネル電流検出プローブやローノイズ回路等の要素技術を開発しているとのことでした。
  • 微小信号を検出するということで、ピコセンシングと通じるものがありました。現状はノイズ等により検出できる電流はnAレベルで、pAまでは検出は困難とのことでした。但し、現在考えているバイオセンサではnAで十分とのことでした。
  • 写真2にSanford大Howe研究室でのCharmaineとの写真を示します。

写真2  CharmaineとHowe研究室の実験室で


               

3. Stanford Nanofabrication Facility (SNF) & Stanford Nano Shared Facilities (SNSF)
(1)面談者:Dr. Mary X. Tang, Managing Director, SNF
       Dr. Shivakumar Bhaskaran, Coordinator, SNSF
       Clifford F Knollenberg, Cleanroom Science & Engineering Associate, SNSF
(2)訪問日:2018年11月7日(水)午後
(3)調査結果

  • MEMSプロセス施設のSNF及びSNSFをManaging Director のMaryとCoordinatorのShivakumarとに案内して頂きました。

【SNF】

  • SNFは10,000 sq ftのクリーンルームを有する施設で、建設当初はStanford大学でCMOSを製作するめに建設されましたが、最近は半導体からMEMSを中心とする種々デバイス製作の施設に移行しており、全米に16あるNanofabrication Facilityの一つと位置付けされているとのことでした。
  • 基本的には4インチのラインで、一部6インチウエハの処理が可能な装置があるとのことでした。年末年始のメンテナンス期間(20日程度週)を除くと1日24時間、週7日フル稼働しているとのことでした。日中は企業等の外部からの使用が多く、学生はむしろ深夜に使用しており、深夜の装置稼働率の方が高いとのことでした。
  • メインのCRはクラス100で写真3にレイアウトを示すように、一通りの装置が揃っていました。また、メインが大学の研究用なのでいろんな材料を使ったデバイスを製作できるように、写真4に示しますように、ExFabと呼ばれるグレイな領域も設けているとのことでした。
  • 外部使用は20~25%で、後は学内の使用とのことでした。
  • スタッフはSNSFと合わせて35名程度で、SNFは18.6人とのことでした。学生への装置トレーニングが主な仕事で、実際の装置操作は学生が実施するのが多いとのことでした。
  • また、学生が使用するので、写真5に示しますように、主要な場所は一括でモニタできるようにして、監視しているとのことでした。
  • 写真6にMaryとSNFのファブの前での写真を示します。

 写真3 SNFメインCRのレイアウト


写真4 ExFabのレイアウト


写真5 CR監視モニタ


写真6 MaryとSNFの前で

 

【SNSF】

  • SNSFはStanford大学のナノテク関連の高性能なプロセス装置及び評価装置を共同で利用するために作られたサービスセンターで、以下の4つのグループから構成されています。

① Nanofabrication
② Electron & Ion Microscopy
③ X-ray & Surface Analysis
④ Soft & Hybrid Materials

  • SNSFでは学内外合わせて年間約850件のサービスを実施しており、そのうち約750件がStanford大学内の25の学科からの使用とのことでした。
  • 装置は3つのビルに分かれて設置されています。そのうちメインのSpilkerビルの装置レイアウトを写真7に示します。主要な装置を見学させて頂きましたが、さすがスタンフォードで、高価なプロセス装置や分析装置がたくさんありました。
  • NaofabricationのマネジャーのClifford F Knollenbergとの写真を写真8に示します。

 


写真7 SNSF- Spilkerビルの装置レイアウト


写真8 CliffordとSNSF-CRの前で

 

4. MIT, Biomimetics Robotics Lab
(1)面談者:Dr. Quan Nguyen, Post-Doctoral Fellow
(2)訪問日:2018年11月9日(金)午前
(3)調査結果

  • MIT の4足歩行ロボット「Cheetah(チーター)III」を開発しているBiomimetics Robotics Labを見学し、ポスドクのQuanから説明を受けました。
  • CheetahIIIは視覚を使わず、接触検出アルゴリズムによりTV等でも話題のボストンダイナミクスのSpotMiniより外力に強くなっているとのことでした。
  • 但し、触覚センサは搭載しておらず(足に市販の触覚センサをつけたが、ジャンプ等の衝撃に耐えうるものはなかったそうです。)、各モータにつけたエンコーダと慣性ユニットで足の接地場所を計算しているとのことでした。
  • 各足に3軸のモータとエンコーダを搭載し、胴体部分に慣性ユニットを搭載していました。
  • 今年10月に開催されましたThe 2018 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS 2018)でお披露目となり、不整地や階段歩行、その場回転、ジャンプや棒でつついても倒れないデモ等をこなし、話題となっている4足歩行ロボットです。(http://news.mit.edu/2018/blind-cheetah-robot-climb-stairs-obstacles-disaster-zones-0705)
  • 写真9にCheeterIIIの外観を写真10に説明してくれているQuanの写真を示します。

 


写真9 MITの4足ロボットCheeterIII


写真10 説明しているQuan


               

5. ORIG3N
(1)面談者:Kate Blanchard, Founder & COO
(2)訪問日:2018年11月9日(金)午後
(3)調査結果

  • ORIG3Nは2014年に設立された遺伝子検査を行うベンチャーで、COOのKate Blanchardに会社概要を紹介頂いた後、会社見学(写真11、写真12:事務所の外観、写真11奥にPCR解析装置が写真12に幹細胞貯蔵用の冷凍タンクが置かれています)をさせて頂きました。
  • PCRによる遺伝子解析装置を使った人間のDNA検査(FDAの認可は不要)をサービスとしており、フィットネスDNA検査キット等20種類($24~$149)のDNA検査キットを現在ドラッグストア等で販売する一方で、幹細胞やiPS細胞を培養して、医療応用を目指した研究の2本柱で会社運営をしようとしていました。
  • DNA検査キットの方はドラッグストア等で販売するビジネスモデルである程度の成長はするとは感じましたが、現状は人をターゲットにした検査だけを考えているようで、リピータの確保が難しく、検査時間も2,3週間かかるとのことでしたので、成長には限界があるように感じました。
  • 製品としては、パッケージの中に口内の皮膚細胞を採取する検査綿棒が入っており、それでDNAを採取して、内蔵されているビニール袋と封筒に入れて送付するだけで、結果は専用のアプリをダウンロードすることでスマホから見れるというものでした。
  • 技術的には同じなので、食品やセキュリティ分野でMEMS技術を使ったリピータの確保が可能なポータブル検査の方向も考えた方が良いように思いました。
  • 幹細胞やiPS細胞の医療応用ビジネスに関しては、まだまだ製品には遠そうな印象を受けました。
  • DNA検査キットに関しては、現在は米国での販売ですが、1,2年後にはアジアを含めた海外展開を考えているとのことでした。
  • 試しに、フィットネスDNAテスト($149のもので6種類の検査を行う)をして頂いたので、結果楽しみですが、フィットネスDNAテストで$149は少し高いようにも感じました。
  • TVを見ているとORIG3N以外の会社から自分のルーツを探るDNA検査キットのコマーシャルが流れていましたので、米国では遺伝子検査ビジネスはかなりポピュラーになっているように見受けられました。
  • 写真13にORIG3Nの玄関の製品陳列棚の前でのCOOのKateとの写真を示します。

 


写真11 ORIG3Nの事務所外観(1)


写真12 ORIG3Nの事務所外観(2)


写真13 ORIG3N玄関の製品陳列棚の前でのCOOのKateと

  

6. Stanford University, Khuri-Yakub研究室
(1)面談者:Dr. Butrus (Pierre) T. Khuri-Yakub, Professor
       Dr. Kamyar Firouzi, Research Associate
       Dr. Quintin Stedman, Research Associate
       Dr. Minoo Kabir, Post-Doctoral Fellow
       Dr. Bo Ma, Post-Doctoral Fellow
       Farah Memon, PhD Candidate
(2)訪問日:2018年11月12日(月)午前
(3)調査結果

  • Khuri-Yakub先生はゼロックスでインクジェットプリンタの開発をされておられた方です。ゼロックスはプリンタの事業からは撤退し、その技術は製薬開発に使う液滴滴下装置に転用されLabcyte(
    https://www.labcyte.com/ )という会社に引き継がれているとのことでした。
  • また超音波のCMUT(Capacitive micromachined ultrasonic transducers)の考案者で基本特許を持っておられた方です。1.のeXo ImagingではピエゾMEMSが今後広がるとJanuszさんが言っていましたが、超音波診断子としてはCMUTの方が広帯域、高感度で優れているというのがKhuri-Yakub先生の主張でした。
  • また、超音波プローブだけでスマホに接続できるCMUTの製品はButterfly (https://www.butterflynetwork.com/)という会社から1年前に製品化されているとのことでした。ここでもeXo Imagingは出遅れているように感じました。
  • また、0.75agの重量を検知できるCMUTを使った化学量センサ(ガスセンサ)の開発をされており、まさにピコ(10-12)どころかアト(10-18)グラムの検出が可能とのことでした。但し、ガス吸着の高分子膜の開発が必要になりますが、それは専門外とのことでした。実際の化学量センサ(写真14)をDr. Quintin Stedmanに説明頂きました。
  • そのほかカプセル超音波センサ(カプセル内視鏡のように飲んで超音波診断を行うもの)や脳の活動量モニタリング等の研究をされておられました。
  • 写真15に教授室でのKhuri-Yakub教授と写真を示します。

 


写真14 agの検出可能な化学量センサ


写真15 Khuri-Yakub教授と教授室で

 

7. Graftworx
(1)面談者:David J. Kuraguntla, CEO
       Anthony F. Flannery Jr. Vice President
(2)訪問日:2018年11月12日(月)午後
(3)調査結果

  • CEOのDavid J. KuraguntlaとVPのAnthony F. Flannery Jr.に対応頂きました。Davidから会社概要、Anthonyから来年にFDAを取得して発売予定の透析患用のモニタリングシステムの技術的な説明をパワーポイント及び試作品を使って受けました。
  • モニタリングシステムは①スマートパッチ(写真16)、②携帯対応データハブ(写真17)、③データ蓄積クラウドと④診断用フロントエンドから構成されていました。
  • スマートパッチはマイクロフォン、3軸加速度センサ、高精度温度計と光学の脈波センサ(PPG)を12mm角の基板に実装し、特注のバッテリを搭載したパワーマネージメントユニットとマイコン、メモリー、通信(BLE4.2)ユニットを耐久性のあるフレキシブル基板で接続し、シャワーでも使えるIP64相当を有するコーティングで実装したものでした。
  • 脈波センサの詳細は分からなかったですが、ピコセンシングで考えている脈波センサのアプリの例として参考になると思いました。
  • また、システムとして製品化するためには、MEMSそのものよりは、耐久性、データのセキュリティ、診断技術等周辺の技術が大事とAnthonyは言っておりました。
  • 本システムではハブにセキュリティ機能を持たせ、スマートパッチからスマートフォンにデータを直接やり取りすることはやめ、ハブを介することでセキュリティを高めたと言っておりました。
  • AthonyはInvenSenseの創始者でしたが最近はMEMSそのものよりは医療用デバイスとして役にたつものを開発したいと言っておりました。その他有意義なディスカッションができました。
  • 写真18に会議室でのDavidとAnthonyとの写真を示します。

 


写真16 スマートパッチ


写真17 携帯対応データハブ


写真18 会議室でDavid(左)とAnthony(右)と

 

以上

 

(一財)マイクロマシンセター 武田宗久


               

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