国際会議APCOT2018出席(平成30年6月25~27日)
2018年6月25日~27日の3日間にわたり香港・香港科技大学で開催された、隔年開催のTransducer技術とマイクロナノ技術に関する国際会議である、Asia-Pacific
Conference of Transducers and Micro-Nano Technology(APCOT2018)に、IoT(Internet
of Things)センサ・デバイスの標準化のための技術調査の目的で参加しました。
開催会場である香港・香港科技大学のエントランスの写真
APCOT2018の開催会場横断幕の写真
・Theory, Design, Analysis, and Simulation
・Material, Fabrication, and Packaging
・Physical Sensors, Micro/Nano Fluidics
・Biological, Medical, Chemical Sensors
・Actuators, Force Sensors, Power MEMS
・RF MEMS/NEMS, Internet of Things(IoTs)
・Optical MEMS and Nano-Photonics
といったセッションにおける口頭発表ならびにポスター発表から構成され、各国から本技術分野に関する最先端の研究発表が繰り広げられ、非常に活況を呈していたことが印象に残りました。
6月26日の夜には、Crown Plaza Hong Kong Kowloon Eastホテルで開催された学会主催のバンケットに参加することができ、こちらも大盛況でありました。
Crown Plaza Hong Kong Kowloon Eastホテルでの学会主催バンケットの写真
マイクロマシンセンターでは、「国内外技術動向調査」という取り組みとして、技術進歩が著しい国内外のマイクロマシン/MEMS分野等の研究動向、技術動向を的確に把握するため、MEMS分野の著名な国際会議等をターゲットにした定点観測的な調査を例年行っております。 APCOT2018もこの調査の対象学会であり、本分野の有識者から構成される国内外技術動向調査委員会の委員の方々により、学会の発表内容の調査が行われ、報告書に纏めております。従って、今回のAPCOT2018で発表された技術の詳細・分析結果については、この「国内外技術動向調査」の報告書で改めて報告するため、本ブログ執筆者の今回の学会参加目的でありました、IoT関連技術に関する技術動向を紹介するに留めさせていただきます。
執筆者は、IoT向けのセンサ技術やエネルギーハーベスタ技術に関心があり、本学会に参加することでIoT向けのセンサ・デバイス・MEMS技術の動向が把握できたことは有意義でした。
まず、キーノートスピーチ発表では、北京大学のAlice H.X.Zhang教授からは、自立電源駆動のスマートデバイス・システム技術について研究内容が報告されました。エネルギーハーベスタ技術のメカニズムとして、摩擦帯電を用いたTENG(Triboelectric Nanogenerator)技術の紹介もありました。デルフト大学のPaddy French教授からのキーノートスピーチ発表では、シリコンスマートセンサの開発に取り組んできた技術・実績が報告され、シリコン半導体とMEMS技術を集積化する試みにより、アナログ・デジタル変換回路をも集積搭載し、デジタル化・スマート化を実現する等、様々な種類のセンサ・デバイスでの開発例が報告されました。
エネルギーハーベスタ技術の発表では、中国科学院のQisheng He氏からは、彼らのグループが提案済みの閾値トリガー振動発電エネルギーハーベスタにおいて、Sub-g領域の弱い振動に対しても高効率動作を実現する技術が報告されました。0.25gの振動で、従来比約4倍の発電量0.72μWを達成しました。閾値トリガー振動発電エネルギーハーベスタは、振動をモニターし、閾値以下の弱い振動の時は発電動作をアイドル状態とし電力消費を最小化し、閾値以上の強い振動がある場合にのみ発電を行うものです。エネルギーハーベスタ技術では、発電量から、ハーベスタ自身や後段回路の電力消費量を引き去った、「利用可能な正味の電力量」が重要であり、本手法のような発想となっています。このような考え方は、ハーベスタ自身や後段回路のみならず、ハーベスタで電力をまかなうシステム全体(センサやデバイス、データ無線伝送系)の電力消費量をも考え、計画的かつ効率的な発電ならびにシステム全体の動作を行うことが重要であり、その時・その場における環境発電のAvailability状況(またはハーベスタの発電状況)や蓄電デバイスを有する場合は蓄電量を把握し、その情報をシステム全体で活用できるようにする手立て・設計が今後重要となってくることをあらためて確認できました。
続いて、兵庫県立大学の内田氏からは、両側電極構造による静電式振動発電エネルギーハーベスタ技術の報告がありました。従来の片側電極構造に対し、両側電極構造を新たに採用することにより、静電引力を低減可能となり、発電量を倍増させることができるとしました。シミュレーション結果を示すとともに、試作結果の速報報告があり、動作波形を実際に確認するところまで到達済みでした。
また、Industry Sessionでは、鷺宮製作所の三屋氏から、同社における静電式振動発電エネルギーハーベスタの開発状況が報告されました。
他に、パッシブLC型圧力センサを搭載した、創傷管理できるスマート絆創膏に関する報告や、人体の関節運動により発電するウエアラブルなエネルギーハーベスタの報告等、多岐に渡る取り組みに触れることができ、有意義でありました。
IoTセンサの自立発電動作化を実現し、センサ動作・センサ制御・そのセンサ出力の無線伝送をも、自立電源動作させるためには、各部分の低消費電力化の取り組みとともに、エネルギーハーベスタ技術研究開発の一層の進展が不可欠です。引き続き、注視していきたいと思います。
今回、本ブログでは一部の分野のみ紹介しましたが、前述のように、当センターでは、「国内外技術動向調査」の取り組みの中で、本分野の有識者から構成される委員の方々により、本学会APCOT2018での全発表内容の詳細な調査・分析を今後進めていきます。
開催会場である香港・香港科技大学のエントランスの写真
APCOT2018の開催会場横断幕の写真
・Theory, Design, Analysis, and Simulation
・Material, Fabrication, and Packaging
・Physical Sensors, Micro/Nano Fluidics
・Biological, Medical, Chemical Sensors
・Actuators, Force Sensors, Power MEMS
・RF MEMS/NEMS, Internet of Things(IoTs)
・Optical MEMS and Nano-Photonics
といったセッションにおける口頭発表ならびにポスター発表から構成され、各国から本技術分野に関する最先端の研究発表が繰り広げられ、非常に活況を呈していたことが印象に残りました。
6月26日の夜には、Crown Plaza Hong Kong Kowloon Eastホテルで開催された学会主催のバンケットに参加することができ、こちらも大盛況でありました。
Crown Plaza Hong Kong Kowloon Eastホテルでの学会主催バンケットの写真
マイクロマシンセンターでは、「国内外技術動向調査」という取り組みとして、技術進歩が著しい国内外のマイクロマシン/MEMS分野等の研究動向、技術動向を的確に把握するため、MEMS分野の著名な国際会議等をターゲットにした定点観測的な調査を例年行っております。 APCOT2018もこの調査の対象学会であり、本分野の有識者から構成される国内外技術動向調査委員会の委員の方々により、学会の発表内容の調査が行われ、報告書に纏めております。従って、今回のAPCOT2018で発表された技術の詳細・分析結果については、この「国内外技術動向調査」の報告書で改めて報告するため、本ブログ執筆者の今回の学会参加目的でありました、IoT関連技術に関する技術動向を紹介するに留めさせていただきます。
執筆者は、IoT向けのセンサ技術やエネルギーハーベスタ技術に関心があり、本学会に参加することでIoT向けのセンサ・デバイス・MEMS技術の動向が把握できたことは有意義でした。
まず、キーノートスピーチ発表では、北京大学のAlice H.X.Zhang教授からは、自立電源駆動のスマートデバイス・システム技術について研究内容が報告されました。エネルギーハーベスタ技術のメカニズムとして、摩擦帯電を用いたTENG(Triboelectric Nanogenerator)技術の紹介もありました。デルフト大学のPaddy French教授からのキーノートスピーチ発表では、シリコンスマートセンサの開発に取り組んできた技術・実績が報告され、シリコン半導体とMEMS技術を集積化する試みにより、アナログ・デジタル変換回路をも集積搭載し、デジタル化・スマート化を実現する等、様々な種類のセンサ・デバイスでの開発例が報告されました。
エネルギーハーベスタ技術の発表では、中国科学院のQisheng He氏からは、彼らのグループが提案済みの閾値トリガー振動発電エネルギーハーベスタにおいて、Sub-g領域の弱い振動に対しても高効率動作を実現する技術が報告されました。0.25gの振動で、従来比約4倍の発電量0.72μWを達成しました。閾値トリガー振動発電エネルギーハーベスタは、振動をモニターし、閾値以下の弱い振動の時は発電動作をアイドル状態とし電力消費を最小化し、閾値以上の強い振動がある場合にのみ発電を行うものです。エネルギーハーベスタ技術では、発電量から、ハーベスタ自身や後段回路の電力消費量を引き去った、「利用可能な正味の電力量」が重要であり、本手法のような発想となっています。このような考え方は、ハーベスタ自身や後段回路のみならず、ハーベスタで電力をまかなうシステム全体(センサやデバイス、データ無線伝送系)の電力消費量をも考え、計画的かつ効率的な発電ならびにシステム全体の動作を行うことが重要であり、その時・その場における環境発電のAvailability状況(またはハーベスタの発電状況)や蓄電デバイスを有する場合は蓄電量を把握し、その情報をシステム全体で活用できるようにする手立て・設計が今後重要となってくることをあらためて確認できました。
続いて、兵庫県立大学の内田氏からは、両側電極構造による静電式振動発電エネルギーハーベスタ技術の報告がありました。従来の片側電極構造に対し、両側電極構造を新たに採用することにより、静電引力を低減可能となり、発電量を倍増させることができるとしました。シミュレーション結果を示すとともに、試作結果の速報報告があり、動作波形を実際に確認するところまで到達済みでした。
また、Industry Sessionでは、鷺宮製作所の三屋氏から、同社における静電式振動発電エネルギーハーベスタの開発状況が報告されました。
他に、パッシブLC型圧力センサを搭載した、創傷管理できるスマート絆創膏に関する報告や、人体の関節運動により発電するウエアラブルなエネルギーハーベスタの報告等、多岐に渡る取り組みに触れることができ、有意義でありました。
IoTセンサの自立発電動作化を実現し、センサ動作・センサ制御・そのセンサ出力の無線伝送をも、自立電源動作させるためには、各部分の低消費電力化の取り組みとともに、エネルギーハーベスタ技術研究開発の一層の進展が不可欠です。引き続き、注視していきたいと思います。
今回、本ブログでは一部の分野のみ紹介しましたが、前述のように、当センターでは、「国内外技術動向調査」の取り組みの中で、本分野の有識者から構成される委員の方々により、本学会APCOT2018での全発表内容の詳細な調査・分析を今後進めていきます。
平成30年7月3日
マイクロマシンセンター 調査研究・標準部長 大中道 崇浩
マイクロマシンセンター 調査研究・標準部長 大中道 崇浩
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