第6回MEMS協議会・海外調査報告会を盛況に開催
第6回MEMS協議会海外調査報告会を1月31日に新テクノサロンで開催し、約50名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の最新状況について国際交流事業の一環として報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学の報告を行ってきましたが、今回は前回に引き、欧州の橋梁モニタリングに関連する報告を、特別報告として企画致しました。
写真1 会場の様子
MEMS協議会事務局長・長谷川英一からの主催者挨拶のあと、最初の報告は特別報告として「海外における橋梁・大規模モニタリングの現状と動向」と題して技術研究組合NMEMS技術研究機構の武田宗久氏から、最初にオーストラリアのブリスベンコンベンションセンターにおいて開催されたアセットマネージメントの国際会議である12th World Congress on Engineering Asset Management (WCEAM2017)への参加報告、日本より先行していろいろな活動が行われている海外の橋梁・大規模インフラモニタリングの現状を把握するため、欧州各地の橋梁:van Brienenoord橋(オランダ)、Marchetti橋(イタリア)、Chillon高架橋(スイス)、Sydney Harbor橋(オーストラリア)等の長大橋、発電施設であるBéznar ダム(スペイン)、遺跡建造物であるVenaria宮殿(イタリア)やEl Giraldillo(スペイン)等の大規模インフラの現場等を訪問し、その管理、モニタリングの実態に関する報告がありました。報告者の感想では、欧州は橋梁等のインフラモニタリングは日本よりも進んでいるが、センサは既存の物であって有線接続を使っている。日本はセンサの開発や、無線応用、エネルギーハーベスタ等の技術を平行して進めており、技術的にはむしろ進んでいるとのことです。
写真2 武田氏から報告
続いて、「IoT社会に向けたセンサ動向調査と産業動向調査報告」と題して、技術研究組合NMEMS技術研究機構および一般財団法人マイクロマシンセンターの今本浩史から報告がありました。
米国MEMS & Sensors Industry Group主催で、2017年11月1日~11月2日の間、米国カリフォルニア州サンノゼにて開催されたMEMS
& Sensors Executive Congressに、IoT社会にむけたMEMS&センサの動向調査の一環として参加したものです。報告者の感想として、産業用IoTに関して様々な事例紹介があったようですが、今までの研究レベルの振動センサによって振動状態のみで故障予測を行うのは、その解釈が困難な場合が多く、他のセンサとのフュージョンが今後重要とのことです。更にバッテリを持たないセンサの発表も紹介されました。更に、産業動向調査委員会にて2025年までのMEMS産業の市場予測を行う取り組みの紹介もありました。
写真3 大中道氏から報告
次は「マイクロマシンサミット2017」と題してMEMS協議会・国際交流担当の三原が報告しました。2017年の第23回「国際マイクロマシンサミット」は5月15日(月)から17日(水)までスペインのバルセロナで開催されました。今回のトピックスは、”Micro and Nano Systems for Smart Cities applications”です。スペインは、センサやMEMS、無線、半導体や集積回路、ナノ材料と言った複数の専門分野の研究者が同居する研究所が多く、専門領域の融合が進んでいるのが特徴ですが、今回のオーガナイザーは、CNM-CSIC(National Microelectronics Center of Barcelona)の所長Carles Cane教授でした。今回は欧州での開催で参加者も多く、21の地域から73名のデレゲイト、更にスペインからの10名程度のオブザーバの参加もあり、比較的規模が大きいものでした。今まで何年か不参加の期間があった、イギリスやカナダ、オーストラリア等の復帰、更にアイルランドや東欧の新規の参加国もあったのが特徴です。今回はパネルディスカッションとして、バルセロナで実際に中小企業を中心に行われたスマートシティ構想、すなわちエネルギーや交通と言った様々なデータをセンサで取得して、都市の省エネや生活に有効に役立てるための試行の取り組みが印象に残りました。2018年のサミットはアルデンチンのブエノスアイレスで5月14日から16日に開催されます。
続いて「MEMS関連の国際会議報告」とのタイトルでMEMS協議会・標準部の大中道崇浩から報告がありました。2017 年 6月 18日~22日に台湾・高雄(Kaohsiung)で開催された、隔年開催の Transducer 技術に関する国際会議である、International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems(Transducers2017)の報告がありました。マイクロマシンセンターでは、「国内外技術動向調査」という取り組みとして、MEMS分野の著名な国際会議等をターゲットにした定点観測的な調査を例年行っており、本国際会議はその調査の対象学会です。国内外技術動向調査は、有識者から成る委員によって分析を行い例年報告書として発行しますが、今回は事務局として学会に参加し、今後の調査報告書の作成により具体的・現実的な側面で支援可能と思います。
最後は「MEMS国際標準化に関する活動状況」と題して、同じく大中道崇浩から報告がありました。MEMS国際標準化はIEC(国際電気標準会議)で進められており、日本はMEMS分野を担当する分科委員会SC47Fの幹事国として主導的に推進しています。IECの全体会議は毎年開催され、2017年は6月に東京で、10月にロシア・ウラジオストクで開催されました。今回、これらの国際会議を通して、特性計測方法、信頼性評価、エネルギーハーベスティング、スマートセンサ等でのMEMS関連の技術分野における国際標準化の状況についての報告がありました。更に現在、一般財団法人マイクロマシンセンターを中心に取り組んでいるスマートセンサのインターフェースの関わる標準化を日本が主導する取り組みの紹介がありました。
MEMS協議会の会員サービスとして始めた本海外調査報告会も6回を数えるほど、長期間継続しています。本会へのご参加はリピータが多いことも特徴で、会員交流の側面も有しています。海外の状況はインターネット等で公開されているとは言っても、中々生の情報や、専門化の印象&感想を聞ける機会は少ないのが現実です。今回もSPPテクノロジーの神永様に貴重なコメントや、報告会の後に行った会員交流会でのご挨拶を頂く等、IoTの最新状況や日本の課題を議論することが出来ました。 最後のこの場を借りて、今後のMEMS協議会への積極的なご参加をお願いしたいと思います。
(MEMS協議会 国際交流担当 三原 孝士)
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