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2017年2月20日 (月)

第5回海外調査報告会を盛況に開催

   第5回MEMS協議会海外調査報告会を1月30日に新テクノサロンで開催し、約50名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の最新状況について国際交流事業の一環として報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学の報告を行ってきましたが、今回は前回に引き続き、欧州の橋梁モニタリングに関連する報告を、特別報告として企画致しました。       

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写真1 会場の様子
                  

  MEMS協議会事務局長・長谷川英一からの主催者挨拶のあと、最初の報告は特別報告として「欧州における橋梁モニタリングの現状と動向」と題して技術研究組合NMEMS技術研究機構の中嶋正臣氏から、エジンバラ大学をはじめとした研究機関やConnect  Plus Serviceといったインフラ管理のコンソーシアムとの橋梁モニタリングに関するディスカッションや、Forth Bridge及びForth  Road Bridge等の橋梁での現地調査の報告がありました。最初にNMEMS技術研究機構が中心になって推進している国家プロジェクトであるRIMS:ROAD  Infrastructure Monitoring Systemの説明がありました。これは最先端MEMS技術を駆使して開発されたスーパーアコースティックセンサと言う高周波を発するアコースティックエミッションから低振動まで広い帯域を網羅するスーパセンサや、大面積センサ等の橋梁モニタに特化したセンサデバイスを使った社会インフラモニタリングを行う活動です。 今回の目的としては、日本より先行していろいろな活動が行われている欧州(イギリス、オランダ)の橋梁モニタリングの現状を把握するため、調査団を結成して現地橋梁モニタリング現場の調査を実施するとともにRIMSプロジェクトの広報を図るとのことでした。                   

 調査場所としては、イギリス、ロンドンのConnect Plus Service(CPS)とXEIAD Ltd.、道路保守点検会社であるCPSおよび土木コンサルタント(XEIAD)、M25およびQueen Elizabeth II Bridge(QE2)、光ファイバ等センシング技術、イギリスのモニタリング技術の産業化実態調査のためのEpsilon Optics Ltd調査、エジンバラ大学(イギリス、エジンバラ)にてコンクリート等のインフラ主要構造部材の非破壊検査技術の権威であるProf.  Mike Fordeとの意見交換、イギリス、エジンバラでの代表的な橋梁であるForth BridgeおよびForth Road Bridge調査、特にForth Bridgeのモニタリング実態調査、さらにオランダ、デルフト/ロッテルダムのAEセンサを用いたAE挙動の評価のためのTNOの調査、またVan-Brienenoord Bridgeのモニタリング計測橋梁調査と極めて大規模なものになっています。          

 イギリスにおける、橋梁モニタリングの手段は、光ファイバによる歪センサ計装を使ったものです。とくに英国Epsilon Optics社は、構造設計と光ファイバ計装技術を組み合わせることで、土木、海洋、航空宇宙等の様々な分野へモニタリング技術を提供しています。同社は、光ファイバセンサ自体の開発は行っていないが、光ファイバセンサに対するパッチのアセンブリ等を様々な分野に実装することで、モニタリングに関する幅広いノウハウを有していることを強みとしているようです。その実績は、イギリス国内にとどまらずグローバルなもので、対象も橋梁やトンネルにおけるクラックのモニタリング、ヨットのキールや飛行機の着陸装置への負荷のモニタリング等幅広いようです。          

 また訪問したエジンバラ大学のProf. Mike Fordeは、コンクリートなどのインフラ主要構造部材の非破壊検査技術の権威であるとともに、超音波トモグラフィ、アコースティックエミッションの世界的先駆者とのことです。Journal                   Construction and Building MaterialsのChief Editorを務めている他、RILEM(International Union of Laboratories and Experts in Construction Materials, Systems and Structures)、BINDT(British Institute of Non-Destructive Testing)とACI(American Concrete Institute)等の重要な機関で主査を務めています。                   

 視察した英国のForth Bridge(フォース鉄道橋)は、1890年に完成した全長2530mのカンチレバートラス橋であり、包括的な構造モニタリングシステムが2002年に実装され、リニア変位変換器、回転ポテンショメータ、傾斜計、温度センサとひび割れ検知を含む様々なセンサにより、支承可動部の動きに加え、中央タワーおよびスパン接続部の3軸方向(垂直・水平方向および回転)の動きを検知できるとのことです。               

 最後に中嶋氏のまとめとして、「イギリス、オランダでは幹線道路の長大橋を中心に複数のセンサを用いた常時モニタリングを実施して、メンテナンスの効率化を図っている。但し、使われているセンサは有線のセンサであり、膨大な配線が施設されていた。既存のセンサ生データをそのまま常時モニタリングしているため、データ量が膨大になる、信頼性のある無線システムがないことから確実な有線センサを用いているのが現状であり、無線化や自立電源化に関しては、現場では未だ適用されていない。日本視察団を代表して下山教授からRIMSの概要を説明したところ、RIMSプロジェクトで開発しているセンサに関しては訪問したすべての機関で非常に興味をもって頂けた。」と報告を終えました。

                   

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写真2 中嶋氏から報告
                            

 続いて、「米国のMEMS産業動向」と題してMEMS協議会 今本氏から10月31日~11月2日に米国・フロリダで開催されたIEEE Sensors 2016、また米国MEMS & Sensors Industry Group主催で、2016年11月9日(水)~11月11日(金)に米国カリフォルニア州スコッツデールにて開催されたMEMS & Sensors Executive Congressへの参加報告がありました。この会議は毎年開催され講演やパネルディスカッションといったフォーマルな行事と、休憩時間等の空き時間でのインフォーマルな会話を通して、情報交換や人的なネットワークを形成することにより、MEMS関連産業のネットワーク構築が可能であることが特徴です。研究開発そのものの発表は少なく、事業化をどう促進するかが主題の会議となっている真に産業化のために推進会議になっています。

 またこの2つの大きな会合の間に、フロリダ大学(Yoon教授)・ジョージア工科大学(Ayazi教授・Tentzeris教授)・BSAC(Pister教授)にも訪問し、専門的な領域に踏み込んだ報告になっています。                

 まずIEEE Sensors 2016 参加報告では、日本からの発表が急増し、日本からの参加人数も 2013年の8人程度から2016年では30人                   以上、特にEnergy Harvesterのセッション追加されたこと、また企業からの発表が非常に少ないと言う特徴を持っています、                   

 MEMS & Sensors Executive Congress では、Trillion Sensorを巻き込み、途中でパラレルセッションになったためか、大学や国の研究機関が増えた感じがするが、一方しか聞けないのが残念とのことです。2013年には日本から2名の参加であったが、IoTの影響か日本からの参加が年々増加しているようです。またIoT関連の話題は以前から多いが、今回自動車関連(自動運転・新興国での新たな安全性や排ガス規制)が増えたようです

                  

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写真3 今本氏から報告
     
        
 

次は「マイクロマシンサミット2016と題してMEMS協議会・国際交流担当の三原が報告しました。マイクロマシンサミットは毎年、各国のMEMS関連状況をそれぞれ報告し、意見交換する場として開催され、今回は3回目(初回:京都、第6回:広島)となる日本・東京での開催で、マイクロマシンセンターが事務局を務めました。今回のテーマは「高齢化社会におけるセンサ・MEMS」、オーガナイザーは東京大学・下山勲教授でした。参加者は16の地域,から51人のデレゲイトであり、今回のテーマである健康・医療やライフスタイル・バイオ関連に対応するマイクロシステムに関する話題が多く出されました。発表数は約47件、Delegatesの多い国は、日本14名、ドイツ 6名、イタリア 4名、スイス 4名の順でした。        

 最後は「MEMS国際標準化に関する活動状況]と題して調査研究・標準部長の坂井氏より報告がありました。最近は、センサに無線システムが搭載され、更にエネルギーハーベストに対しての取り組みも強化されており、マイクロマシンセンターでもSSN(スマートセンシング&ネットワーク)研究会を設立して、その活動を強化しています。この分野は、応用分野別にセンサ・無線・エネルギーハーベスト・電源管理、実装と言った要素デバイスや技術の評価を含む国際標準化が必要ですが、特に無線等ではデファクトスタンダードに頼っている側面もあります。このような背景からMEMSの国際標準化はIECを舞台に、更に進められるように「プロダクトアウト/プロセス重視型」のアプローチから「マーケットイン/結果重視型」へと転換が進められています。IECから発行済みのMEMS関連規格は27件で日本提案が12件、韓国提案が13件、中国1件、ドイツ1件となっており、現在審議中が7件あります。審議中の案件には日本・韓国が2件づつ、中国3件となっています。

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写真4 熱心な議論
                                 

 最後に懇親会での乾杯の挨拶 として、マイクロマシンセンター副理事長の青柳桂一氏から熱心にご参加、ご議論して頂いた方々へのお礼、また中締めのご挨拶として、毎回ご参加頂き、熱心に議論して頂いているSPPテクロノロジーズのエグゼクティブシニアアドバイザーの神永氏から国際的な視野でのコメントがありました。(MEMS協議会 国際交流担当 三原 孝士)

                  
 

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