マイクロマシンセンター平成28年の10大ニュース
新年あけましておめでとうございます。
昨年は国内では熊本震災をはじめとする災害や多くの悲惨な事故・事件などが、そして海外でも多くのテロや紛争、英国のEU離脱、米国や韓国の政治情勢など、いろいろなことがありました。尻上がりに経済は良くなりつつありますが、波乱の中での年明けには違いありません。そのような中においても、IoT/CPS技術はここ数年の進展がさらに加速され、それらの実装が急速に進むことで、産業・社会の姿を大きく変えていくものとされています。
それらIoT/CPSのフロントエンドを支えるのが、スマートセンシングの技術です。当マイクロマシンセンターは四半世紀にわたり、まさにこのスマートセンシングに必須のナノ・マイクロ技術分野における研究開発や普及促進等を担ってきています。その中核を成すMEMSデバイスについては、ヨール社(仏)によれば、スマホや自動車用途が世界市場をけん引し、2015年の120億ドルから2021年には200億ドルと、年率約9%で伸びるとされています。特にスマホなどに単独で入れられるセンサに加えて、医療用や産業用などのIoTシステムに連なるスマートセンシング分野や、それらを支えるエネジーハーベスタなどが大きく伸びると見られています。
当センターでは、6年前に着手したグリーンセンサ・ネットワークのプロジェクトを皮切りに、道路やライフラインのインフラモニタリングシステムなど、MEMSによるスマートセンシングシステムの研究開発を行っています。さらに、このIoT時代に対応するために一昨年に発足したスマートセンシング&ネットワーク研究会において、様々なIoT関連のプロジェクト立案などを行ってきました。その結果を受けて、昨年からは、経産省/NEDOによるIoT横断技術開発の一環として、エナジーハーベスタも含む学習型スマートセンシングシステム(LbSS)の開発をスタートさせ、広くIoTシステムに応用されるようなスマートセンシングのデファクト的な技術開発を目指しています。
また、最先端のMEMSデバイスの試作開発を担う拠点として発足した、マイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)の運営も6年目に入り、センター自らが行う研究開発のみならず、MEMSデバイスユーザーによる試作開発ファンドリとしての利用が大きく伸びつつあります。
当センターとしましては、本年もMEMS/スマートセンシング技術の開発や普及に真摯に取り組み、我が国のIoT/CPS推進に微力ながらも貢献してまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。
皆様方には以下の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。
< 10大ニュース>
(1) NEDO公募事業「IoT推進のための横断技術開発プロジェクトに提案の「学習型スマートセンシング(LbSS)の研究開発」が採用され、プロジェクトを開始して精力的に推進」
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」において、技術研究組合NMEMS技術研究機構が提案した「超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステム(LbSS:Learning based Smart Sensing System)の研究開発」が採択されました。
本研究開発では、工場等の設備の稼働状況等の把握を目的とするスマートセンサモジュール、高効率MEH(Micro Energy Harvester)などの自立電源、及びスマートセンシングフロントエンド回路を開発し、動的センシング制御可能な無給電のスマートセンサ端末を実現します。さらに、同時に開発する学習型スマートコンセントレータとの連携により、従来の環境発電で収集可能な有価情報量を100倍化することを可能とする学習型スマートセンシングシステムの基盤開発と実証を行います。
その概要及びキックオフの様子は以下を参照ください。 http://www.nanomicro.biz/mems/2016/07/index.html
(2) ナノ・マイクロビジネス展をIoT時代の到来に合わせてリニューアルし、9月にパシフィコ横浜でMEMSセンシング&ネットワークシステム展として成功裡に開催(2017年は10月に幕張メッセでCEATECと同時開催)
MEMSセンシング&ネットワークシステム展として名称と開催時期を変更しリニューアルした本展示会には多数の皆様のご来場を頂きました。同時開催の報告会、シンポジウムも盛況のうちに実施することができました。2016年9月14日(水)から16日(金)までパシフィコ横浜で開催された「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2016」は、3日間の開催期間を終え、盛況の内に閉幕しました。
今回も各ブースには多くの来場者が訪れておりましたが、セミナー会場にも多くの聴講者にお出で頂き、立ち見が出るなど関心の高さが見て取れました。
最終日には、第22回国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムが13:30から16:30まで開催され、ここでも満員の聴衆が熱心に聞き入っておりました。
次回は2017年10月4-6日に幕張メッセでCEATEC JAPAN 2017と同時開催を予定しております。
会期中の様子は以下を参照ください。
(初日) http://www.nanomicro.biz/mems/2016/09/mems-2016-e738.htm
(2日目)
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/09/mems-2016-abd6.html
(3日目)
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/09/mems-20163-e26e.html
第22回国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムの概要は以下を参照してください。
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/09/mems-2016-5c96.html
(3) スマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会を本格的に開始し、3つのWGでの検討がそれぞれULPAC、LbSS、SSIの各研究の開始に繋がる
2015年10月にMEMS協議会の下に発足したSSN研究会では、新たなプロジェクトの立案を目指して、3つのWGを立ち上げて精力的に検討を行ってきました。そのうちのLbSSとSSIはそれぞれ(1)と(4)に記載しています。
「センサ端末同期用原子時計(ULPAC:Ultra-Low Power Atomic Clock)の研究開発」については、道路インフラモニタリングシステム(RIMS:ROAD Infrastructure Monitoring System)の2015年度加速テーマとして採択され、2016年度以降もプロジェクト内で継続していくことが決まりました。
RIMSで用いられるようなセンサ端末群は、ネットワークを介して時刻同期をすることで、データ取得の正確な時間を把握し、かつ、データ転送の効率化を図っています。もし、その時刻同期を不要とすることが出来れば、ネットワークの構築や運用にかかる負担を大幅に低減することができます。そこで、正確な時を刻む原子時計をセンサ端末に搭載可能なサイズや消費電力、価格にすることが出来るかを解析や試作を通して、技術的に検討しています。
(4) 経済産業省のエネルギー使用合理化国際標準化委託事業の公募に採択され、「スマートセンシング・インターフェース(SSI)国際標準化プロジェクト」を本格的に開始
SSN研究会の中で、新たなセンサネットワークの市場創出を目指し、センサ端末における共通プラットフォームの標準化についてWGにて検討を行ってきました。その検討を受けて、スマートセンサと端末モジュール又は自立電源と端末モジュールをつなぐインタフェースに関する国際標準化をテーマに、経済産業省の平成28年度エネルギー使用合理化国際標準化委託事業の公募に提案を行い、3月末に採択が決定しました。今後、国際標準化規格作成に向け実証作業を含めて検討を進めています。
(5) 日本開催が3回目となる第22回国際マイクロマシンサミットが5月、新宿において「高齢化社会におけるセンサ・MEMS」をテーマに成功裡に開催
国際マイクロマシンサミットは21年前の1995年にマイクロマシンセンターが提唱して始まり、その後は毎年同程度の規模で継続されている国際会議です。通常の学会と異なり、各国の代表が、産業政策や科学技術政策、教育まで含めて議論するのが特徴になっています。日本での開催は、第1回の京都、第8回の広島、今回の第22回が3回目になります。今回のサミットのテーマは、「高齢化社会におけるセンサ・MEMS」であり、健康・医療やライフスタイルに対応するマイクロシステムに関する話題が多く出されました。
次回(2017)の開催場所は26日の各国代表者会議で、スペインのバルセロナに決定されました。(2017年5月15-17日)
マイクロマシンサミットの会期終了後の技術ツアーとして筑波地区の最先端技術を巡るイベントを企画しました。最初にフジキン先端事業所で、半導体装置用制御機器の紹介があり、高度の流体制御技術を用いたチョウザメの飼育の見学でした。フジキンはニードルバルブの世界的企業ですが、この技術を応用した様々な事業に挑戦されています。午後の最初の見学はKEKのフォトンファクトリーです。特にSOR光を使った計測や分析は世界中の研究者が利用しています。また普段は見ることが難しい見学として筑波大学・バイオマス研究施設を見学しました。これは淡水の藻を育成してバイオマス材料として利用する試みです。再生エネルギー研究施設に多くの研究者が興味深々でした。最後は産総研・サイエンススクエアを見学しました。
サミットの報告については以下を参考してください。
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/06/mms2016-ebba.html
(6) MNOIC(マイクロナノオープンイノベーションセンター)の工程受託コースの需要が増大し、人的な体制も強化し産業界のニーズに対応
当センターの研究支援サービスMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター、つくば産総研内)は、事業開始後5年を経て、本格稼動ステージに進み、着実にユーザが増加し、我が国有数のMEMSファンドリーになりつつあります。工程受託の充実、研究施設の拡充、技術ノウハウの蓄積、人材育成を活動の柱として、産官学連携を通じたTIAのオープンイノベーション活動を強化しています。
また、人材育成に力を入れており、8月には2016MNOIC実習講座「インフラおよび産業機器モニタに利用可能な、MEMSセンサの回路・システム実習」を実施しました。
これらの状況は以下を参照ください。
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/08/2016mnoicmems-a.html
(7) RIMS/UCoMSが3年目のNEDOステージゲート・中間評価で高い評価を得て通過し、来年度より本格実証の段階に
2016.11.1に開催されたNEDO研究評価委員会「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」(中間評価)分科会において、「道路インフラ状態モニタリング用センサシステム開発(RIMS)」及び「ライフラインコアモニタリングシステムの研究開発(UCoMS)」の説明を行った。現在これらの評価が行われており、2017年1月末ころには結果が決まる予定です。
(8) MEMS関連の標準化について、IEC/TC47に振動発電関係の新提案を出すなど、引き続き日本がリード、また、東大の鈴木先生がTC47/WG7のコンビナに推挙され、さらに神戸大の磯野先生がIEC1906賞を受賞
IEC/TC47技術委員会傘下の、今後発展が期待される半導体デバイス分野であるWG6および、エナジーハーベスティング、エネルギー変換・伝送分野であるWG7のアドホック会議が、2016年4月6日から8日まで、中国・北京にて開催されました。議題としては、2015年10月の、ベラルーシ・ミンスクでの全体会議の審議状況の報告、および現在審議中の規格案について、コンビナから報告の後、意見交換が行われました。
IEC/TC47技術委員会傘下の、MEMS関連の分科会であるSC47Fのアドホック会議が、2016年6月9日から10日まで、中国・成都にて開催されました。議題は、WGと同じく、ベラルーシ・ミンスクでの全体会議の審議状況の報告、および現在審議中の規格案について、コンビナから報告の後、意見交換が行われました。この中で日本からの提案である「MEMSエレクトレット振動発電デバイス(PL:東京大学 鈴木雄二教授)」が現在CDV回付中である旨の報告がなされました。また、Future workとして、神戸大学 神野伊策教授からMEMS圧電薄膜の信頼性評価についてのプレゼンテーションが行われました。
IEC/TC47技術委員会の国際会議が、2016年10月3日から7日まで、ドイツ・フランクフルトにて開催されました。ここでの議案は、2015年10月の、ベラルーシ・ミンスクでの全体会議の審議状況の報告、および現在審議中の規格案について、コンビナから報告の後、意見交換が行われました。Future workとして、東京大学 鈴木雄二教授から「低消費電力電子機器向けの力学的環境発電デバイスの試験方法」についてのプレゼンテーションと、今後の日本からの環境発電に関する提案予定が示しました。
また、神戸大学の磯野教授は長年にわたり、IEC/TC47/SC47Fにおける国際標準化開発のプロジェクトリーダー及びエキスパートを務めてこられ、規格案作成・提案から標準化審議のフォローまで一貫して関われた功績が認められ、IEC1906賞を受賞されました。
東京大学の鈴木教授も長年のIEC/TC47での貢献が認められ、WG7のコンビナーに推挙されています。
IEC/TC47/WG6,7アドホック会議(4月6-8日)の概要は以下を参照してください
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/04/iectc47wg6768-0.html
IEC/TC47/SC47Fアドホック会議(6月9-10日)の概要は以下を参照してください
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/06/iectc47sc47f691.html
IEC/TC47/技術委員会の国際会議が(10月3-7日)の概要は以下を参照してください
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/10/iec-tc47104-7-a.html
(9) エネルギー・環境先導研究で実施中のMEHとIRiSが、2年間で良好な成果を出しつつあり、最終段階を迎える、共にイノベーションジャパン2016への出展が好評
イノベーションジャパンは2016年で13回目となる国内最大規模の産学マッチングイベントであり、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催し、8月25-26日に東京ビッグサイト西1ホールで開催されました。
このイノベーションジャパン2016に「高効率MEMS振動発電デバイス先導研究(MEH)」と「革新認識システムの先導研究(IRiS)」が出展しました。それぞれ、パネル展示、デモンストレーション、プレゼンテーションを行い、来場者からは好評を得ました。
プロジェクトの概要は以下を参照ください。
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/07/2016mehiris825-.html
(10) 先端技術交流会、MEMS講習会、海外調査報告会等各種イベントを好評裡に開催し、普及啓発活動が順調に推移
第4回MEMS協議会海外調査報告会を2016年1月21日に新テクノサロンで開催し、約40名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の状況について報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学を行ってきましたが、今回は特に特別報告として世界の家畜に関連する報告を企画致しました。
第31回マイクロナノ先端技術交流会を2016年3月2日に新テクノサロンで開催しました。今回は「嗅覚センシングの新たな可能性について」と題しまして、生産ラインなどの整った環境から屋外へと活躍の場を広げている匂いセンシング技術につきまして、東京工業大学精密工学研究所の中本教授から「ロバストにおいセンシングシステム」、九州大学味覚臭覚センサ研究開発センターの小野寺准教授より「においを図るバイオセンサシステムの開発」と題しましてご講演いただきました。
第32回マイクロナノ先端技術交流会を2016年9g津20日に新テクノサロンで開催しました。今回は「バイオとエレクトロニクスの融合の新展開、サブタイトルとして、「生体とデバイスのしなやかで細やかな出会い」と題して、人とデバイスをつなぐ最新の取組みを、東京大学生産技術研究所教授の藤田博之先生から「MEMSとバイオの融合ナノシステムの取組み」、東京大学工学研究科教授の染谷先生からは「人と機械を調和する伸縮性エレクトロニクスの最善性」と題してご講演をいただきました。
2016年10月21日に一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)の新テクノサロンにおいて、第26回MEMS講習会「IoTを支えるセンシング技術、”見える化“ に取り組むIoT活用事例」を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画され、都内と地方都市で年に1回ずつ開催しています。
第4回MEMS協議会海外調査報告会の概要は以下を参照してください。
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/02/4121-4e83.html
第26回MEMS講習会の概要は以下を参照してください。
http://www.nanomicro.biz/mems/2016/10/26mems-3687.html
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