欧州橋梁モニタリング実態調査報告
日本より先行して様々な活動が行われている欧州(イギリス、オランダ)における橋梁モニタリングの現状を把握するため、2016年11月15日(火)~ 11月23日(水)に下山リーダを団長とする8名の調査団(写真1、五十音順:芦塚憲一郎、伊藤寿浩、茅野茂、塩谷智基、下山勲、武田宗久、中嶋正臣、渡部一雄)を組んで、欧州橋梁モニタリングの実態調査を行った。

- CPS及びXEIAD社(イギリス、ロンドン)
- Queen Elizabeth II Bridge(イギリス、ロンドン)
- Epsilon Optics社(イギリス、ロンドン)
- Edinburgh大学(イギリス、エディンバラ)
- Forth Bridge及びForth Road Bridge(イギリス、エディンバラ)
- TNO(オランダ、デルフト)
- Van-Brienenoord Bridge(オランダ、ロッテルダム)
(1)CPS及びXEIAD社訪問とQueen Elizabeth II Bridge調査
イギリスでは遠望目視による一般点検の頻度は1回/2年、近接目視による主要点検の頻度は1回/6年が義務付けられ、地方は英国道路庁の基準を準用することとされている。英国道路庁は点検を管理エージェントに委託し、地方はインハウスエンジニアが実施する。
CPS(Connect Plus Service)は、ゼネコン、コンサル会社等の4社からなるコンソーシアムであり、M25(イギリス国内の全交通量の15%を占める主要幹線道路)に関連する路線の維持管理・保守点検業務に関する30年間の契約を2009年に英国道路庁と結んでいる。
XEIAD社は、CPSの下、ロープによるアクセス、水中ダイビング等の特殊な技能を要する点検に特化した土木コンサルタントである。
今回の訪問では、CPSのSteve Pattrickアセットマネージャー及びXEIAD社のOlivier Garrigue CEOをはじめとするメンバーにご対応いただき、RIMSの取り組み等のご紹介やモニタリングシステムのご提案とともに、CPSの管理下にあるQueen Elizabeth II Bridgeの実態を調査した。
Queen Elizabeth II Bridgeは、ロンドン東部においてテムズ川を渡る全長450mの斜張橋である(写真2の左)。振動、変位、温度の計測のためのセンサが2014年から一部に設置されているが、高さ30mのコンクリートの橋脚(写真2の中央)やジョイント部(写真2の右)裏側の点検は、高所でのロープアクセスによる点検が必要となっており、我々のコンセプトである設置が容易なセンサによる常時モニタリングに対して高い関心が示された。

(左:全景、中央:橋脚、右:ジョイント部)
Epsilon Optics社は、構造設計と光ファイバセンサによる計測技術を組み合わせることで、土木、海洋、航空宇宙等の様々な分野へモニタリング技術を提供していることから、同社とのミーティングをセットし、イギリスにおけるモニタリング技術の適用実態に関する情報収集と意見交換を行った。
Epsilon Optics社は、光ファイバセンサ自体の開発は行っていないが、光ファイバセンサに対するパッチのアセンブリ(写真3)等を通して様々な分野に実装し、モニタリングに関する幅広いノウハウを有していることを強みとしている。その実績は、イギリス国内にとどまらずグローバルなもので、対象も橋梁やトンネルにおけるクラックのモニタリング、ヨットのキールや飛行機の着陸装置への負荷のモニタリング等幅広く、RIMSプロジェクトの将来のビジネスモデルとして参考となるものであった。

Edinburgh大学では、コンクリートなどのインフラ主要構造部材を対象とした非破壊検査技術の世界的権威であるMike Forde教授の元を訪問し、RIMSの取り組み等をご紹介するとともに、Mike Forde教授に企画いただいたラボツアーに参加した。
Mike Forde教授には、我々の取り組みに関心を持っていただき、団長の下山教授に訪問に対する感謝状が渡された(写真4)。ラボにおいては、コンクリートの崩壊を模擬するための圧縮装置にAE(Acoustic Emission)センサを取り付け、崩壊過程を解析する取り組みや(写真5)、更に医療のCTを組み込み、X線を加えた4D化を試みるといった最先端の研究紹介がなされ、橋梁モニタリングへの応用が示唆されるなど、有意義なものであった。

写真5 ラボツアーの様子(右)
(4)Forth Bridge及びForth Road Bridge調査
2015年に世界遺産リストに登録されたForth Bridge(写真6)は、エディンバラ近郊のフォース湾に架かる鉄道橋である。全長2530mのカンチレバートラス橋で1890年に完成している。


これら3橋梁にはいずれもモニタリング用のセンサが取り付けられている。例えば、Forth Bridgeにおいては、包括的な構造モニタリングシステムが2002年に実装されており、リニア変位変換器、回転ポテンショメータ、傾斜計、温度センサとひび割れ検知を含む様々なセンサが備えられ、支承可動部の動きに加え、中央タワーおよびスパン接続部の3軸方向(垂直・水平方向および回転)の変位を検知することができる。しかしながら、いずれの橋梁においても信頼性のある無線センサがないことから確実な有線センサを用いているのが現状であり、我々がターゲットとしている無線化や自立電源化に関しては、現場では未だ適用されていない状況が確認できた。
(5)TNO訪問
TNO (オランダ応用科学研究機構(the Netherlands Organization for Applied Scientific Research) )は、オランダ議会によって1932年に設立された 欧州では最大規模を誇る中立の総合受託試験研究機関である(写真8)。今回の訪問では、インフラ関連のプログラムディレクタであるPeter-Paul van't Veen氏をはじめとする7名でご対応いただき、双方の道路インフラモニタリングの取り組みを紹介しあうとともに意見交換を行った。また、デルフト大学の一角に開設されたTNOのOptics Labも見学させていただき、光ファイバセンサのデモ等、産学連携での取り組みの一端もご紹介いただいた。
双方の課題認識が共通していたためか、帰国後すぐにTNOから共同での継続検討についての申し入れがあるなど、RIMSの国際展開に向けての足掛かりとなる成果を残すことができた。

ロッテルダムのvan Brienenoord Bridge(写真9)はオランダ国内で最も交通量が多いA16高速道路の一部である。


(左:ひずみゲージの施工、右:ロガーに集まるケーブル)
今回の調査で、欧州(イギリス、オランダ)の橋梁モニタリングの実態を把握することができた。また、下山団長から各所でRIMSの紹介をしていただき、RIMSの活動を関係者に理解いただいて広報が図れた。我々の開発している技術にも興味を持って頂き、今後欧州での実証実験、その後のビジネスにおける協業を視野にいれて、今回の訪問先とは引き続き連携を図る予定である。
(NMEMS欧州橋梁モニタリング実態調査団:芦塚憲一郎、伊藤寿浩、茅野茂、塩谷智基、下山勲、武田宗久、中嶋正臣、渡部一雄)
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