北米出張報告
2016年10月30日~11月11日の間、国際交流、および産業・技術動向調査を目的に北米(オーランド、アトランタ、サンフランシスコ、スコッツデール)を訪問したので報告する。
【IEEE Sensors(10月30日~11月2日)】
今年のIEEE Sensorsは、米国フロリダ州オーランドで10月30日〜11月2日に開催された。本学会には3年ぶりの参加だったが、図1にポスター展示の様子を示すが、以前に比べてますます盛況になっていた。特に驚いたのは日本からの参加者が2倍近く増えていたこと、エネジーハーベスタのセッションが新たに新設されていたことである。IoT社会・トリリオンセンサ社会に向けて、自立型センサネットワークへの関心が高まってきていることのあらわれだろうか?
一方で、上記IoT社会に向けて企業からの発表が増加していることを期待していたものの、ほとんど大学や研究機関からの発表であり、ビジネス展開については正直なところ期待外れであった。本学会の参加は技術研究組合MEMS技術研究機構として出席したので、発表内容は省略し、以下に大学訪問、およびMEMS & Sensors Executive Congressの参加報告を記載する。

図1 IEEE MEMSのポスターセッションの様子
【研究室訪問】
① フロリダ大学
IEEE Sensors最終日に東京大学教授の鈴木雄二先生とフロリダ大学に訪問した。MISTセンター(Multi-functional Integrated System Technology)の主にRF-MEMS、および低消費電力MEMSセンサを担当されているProf. Yoon氏、およびProf. Nishida氏にMISTの紹介をいただき、クリーンルームを見学させていただいた。クリーンルームの見学では、専任の方(Dr.)に案内をしていただき(図2)、装置管理や教育体制が行き届いている印象を受け、まるで企業のクリーンルームのように感じた。見学後には、Prof. Yoon氏、鈴木先生と近くのステーキハウスで晩ご飯を食べながら楽しい一時を過ごした。(図3)


② ジョージア工科大学
・Prof. Ayazi
ジョージア工科大学では、BAW(Bulk acoustic wave)を用いたジャイロスコープやMEMS振動発電の研究を行っているProf. Ayazi氏の研究室を訪問した。Ayazi氏とは後述するMEMS & Sensors Executive Congress の会場でもお会いし、振動発電、自立型センサ端末に向けた低消費電力のMEMSセンサ等、自立型スマートセンサに向けて多くの議論ができた(図4)。技術研究組合NMEMS技術研究機構での振動発電の取り組みを紹介したところ、エレクトレットの形成手法であるアルカリ熱酸化+高温電圧印加(BT処理)に強い関心を示された。Prof. Ayazi氏のところでは、X-Yの平面で多軸MEMSアクチュエータによる圧電方式の振動発電を研究されており、発電量は少ないものの静電誘導型でも参考となる構造であると感じた。
・Prof. Tentzeris
また、環境RFから給電するアンビエント・エナジーハーベスタの研究をされているProf. Tentzeris氏の研究室を訪問した。無線等のRF環境がある領域において、エネルギーを取り込み、LEDを発光させるデモを見せていただいた。この発電方式は、RF環境によるところが大きいが、10μW程度までの発電が可能である。課題としては特に周波数が高い場合、電圧出力がとれないとのことである。電圧出力のとれる太陽電池や振動発電等の別のエナジーハーベスタと融合し、ハイブリッドの発電構造とするのが良いだろうとのことであった。 NMEMS技術研究機構で取り組んでいる静電エレクトレット方式の発電とのコラボレーションの話があったが、NEDOテーマであり、すぐに対応できない状況である。まずは、個別企業への技術紹介までとする。図5に実験室でのメンバと一緒に撮影した写真を示す。


図4 Prof. Ayazi氏と会議室にて 図5 Prof. Tentzens氏と実験室にて
・見学
両研究室の訪問の間に、Prof. Ayazi氏の研究室の研究員に約1時間ジョージア工科大学のキャンパス&クリーンルームを案内していただいた。ジョージア工科大学のクリーンルームの一部を図6に示すが、とても広く、また装置も新しい設備が多く、大学保有の研究室とは思えない規模であった。読者のみなさまも機会があれば訪問されることをお勧めする。


③ BSAC
スマートダストの生みの親である、カリフォルニア大学バークレー校BSACのProf. Kristofer Pister氏の研究室を訪問した。 Pister氏は短パン姿でフランクに迎えてくれた(図7)。まず、最初に当センターでの活動紹介、現在の開発テーマの紹介を行った。振動発電について、ホワイトボードを前にセンサの消費電力低減、低リークキャパシタ等今後の進展を考慮し、リチウムイオン電池2400mAhであれば、センサ端末の寿命が20年以上もつことを式で示された。振動発電をウェアラブル端末等の市場に使うにはまだまだ時間がかかるだろうが、一方で、センサ等の消費電力の大きいアプリケーション、無線頻度が高いアプリケーション、そして、インフラモニタリング等の長寿命のセンサ端末が必要なアプリケーションには、まだまだ振動発電デバイスの必要性があるだとうということであった。
また、Pister氏から、今後の取り組みとして、1cm□程度のマイクロロボットのポンチ絵を紹介してくれた。CCDとマイクロフォンを内蔵して動く昆虫形であり、6足の昆虫型やドローン構造のマイクロロボットを紹介していただいた。有害な昆虫の撃退やミツバチの代わり等、様々なアプリケーションが考えられるが、軍事用途を考えると恐ろしさを感じた次第である。

図7 Prof. Pister氏と研究室にて
【MEMS & Sensors Executive Congress】
本出張のメインイベントとして、MEMS & Sensors Executive Congressに国際交流およびMEMS産業動向調査の一環として参加した。この会議はMEMS & Sensors Industry Group(MSIG)が主催する会議であり、2016年は11月9日~11日にアリゾナ州スコッツデールで開催された。
筆者は2年前にも参加したがその時には、日本からはオムロンの関口氏と筆者のみの参加であり、日本のMEMSへの関心の低さを感じていたが、今回はSPPテクノロジーズの神永氏、東北大学の田中秀治先生はじめ10人近くの出席者があった。これは、IoT社会に向けた関心の向上と、昨年度からトリリオンセンササミットをMSIGが巻き込んだことによるものではないかと考える。
会議自体は、11月10日・11日と2日間の開催であり、講演会はMEMSやセンサ、センサ応用に関する講演が続いた。講演者はMEMS企業のトップが登壇することもあり、技術的な講演から、事業的な内容まで多岐にわたる。今回、約200名の人が参加していたが、企業トップや、投資家、研究機関などが主要な参加者であった。この会議の一番の特徴は、休憩時間や昼食では、懇親の時間がたっぷりととられており、このような場でコミュニケーションを通じて、人的ネットワークの構築を高めて、ビジネスや研究に活かしていくきっかけをつくることであることであろう。図8、9に休憩時間の様子やBanquetの様子を示す。 この会議の期間中に、InvenSense社が日本の企業に買収されるかもしれないという噂が聞こえてきたが、企業間の動きはこのような場が一つのきっかけなのかもしれないと感じた次第である。
今年の会議の内容について、IoT(Internet of Things)への期待はこれまで同様であるが、さらに、今回は自動車関連の話題が多かった。車載用途での高性能ジャイロスコープについて、先に報告したジョージア工科大学のProf. Ayazi氏(ジョージア工科大発ベンチャーの米Qualtré社)から、バイアス不安定性の原因を取り除く独自の技術を報告されていた。また、IHSからもクリーンカー、コネクテッドカ―等の自動車動向、MEMS&センサーの動向、市場予測の報告があった。


図8 休憩時間の様子 図9 Banquetの様子
【所 感】
今回、大学訪問やMEMS & Sensors Executive Congressに参加して多くの方々と会話をした。 一方で、会話する相手の方々も何らかの価値を期待しており、特に、日本の企業・大学とのコラボレーションの機会を探っていることが多かった。 事前に訪問先を国内企業に紹介して、関心のあるメンバと同行して参加する等の活動も今後必要ではないかと思う。なお、詳細は2017年1月30日に当センターで開催する海外出張報告会にて報告する予定である。
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