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2016年2月 3日 (水)

PowerMEMS2015参加報告

 PowerMEMS2015 – the 15th International Conference on Micro and Nanotechnology for Power Generation and Energy Conversion Applicationsが2015年12月1日(火)から4日(金)に,米国マサチューセッツ州ボストンにおいて開催(共催:the Transducers Research Foundation, the Massachusetts Institute of Technology, Northeastern University)され(写真1),NEDO委託事業である高効率MEH振動発電先導研究から2件(芦澤研究員,三屋)の研究成果を口頭発表して参りました.また,その後米国カリフォルニア州クパチーノにあるApple本社を訪れ,振動発電に関してプレゼン,情報収集・意見交換をして参りました.

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写真1  PowerMEMS2015の会場 

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写真2  オープニングセッションの様子 

 まず,PowerMEMSに関してですが,第1回が2000年に仙台で行なわれてから,年々規模,評判,そして研究範囲を大きくしています.15回目となる今回は参加者216名,6件のプレナリートークと,全169の応募の中から,60件の口頭発表(パラレルセッション),75件のポスター発表により行なわれ,マイクロ,ナノのエネルギー関連の国際学会としては最大級の規模でした.
 初日のオープニングセッション(写真2)に続き,プレナリートークではトップバッターとして神戸大学の神野伊策教授が,「Piezoelectric MEMS for energy harvesting」と題してご講演され,機能性マイクロデバイスである圧電MEMSエナジーハーベスタなどについての貴重なご経験や研究成果などをご発表されました.ピエゾタイプは確かに低周波では不利な技術なのですが,高い電気機械変換効率を有しており,エナジーハーベスタだけではなく,高感度なマイクロセンサとしても期待される技術であり,非常に勉強になりました.
 その後,パラレルセッションにて口頭発表がスタートしました.今回,私達の口頭発表はプレナリートーク直後の,最初のエレクトレットセッションにおいて,1番目に芦澤研究員(写真3)の「Impulse-excited energy harvester based on potassium-ion-electret」,3番目に三屋(写真4)の「Soft electret gel for low energy harvesters」の発表であったため非常に注目もされました.

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写真3 口頭発表(芦澤研究員)の様子

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写真4 口頭発表(三屋)の様子

 まず芦澤研究員は,カリウムイオンエレクトレットを使ったインパルス振動型のエナジーハーベスタについての研究結果を発表しました.カリウムイオンエレクトレットとは,熱酸化中にアルカリイオンを取り込み作られるエレクトレットで,高アスペクト比のギャップ側壁,またどんな微細な狭ギャップ構造の側壁でも一様に成膜できる技術で,もともとは静岡大学の橋口原教授が考案されました.今回は,この技術を使い環境振動の中でもインパルス振動に特化したエナジーハーベスタを,東京大学の年吉洋教授のグループと共に開発し,LEDを直に接続し,蓄電なしで点灯できる150µW級発電に成功しました.そのデモンストレーションの動画は,多くの方に非常に興味深かったようです.今後はさらに高電荷密度に形成したり,狭ギャップ化することで更なる発電効率のアップを目指しています.
 また,次に三屋が発表したソフトエレクトレットゲルは,他にはないイオン液体を使ったゲル状のエレクトレットで,東京大学の藤田博之教授のグループ,電力中央研究所,及び鷺宮製作所で開発した技術です.このエレクトレットゲルは直に電極と接触しても帯電劣化がなく発電できるため,従来のように大きな重りを細いバネでつるような構造は不要であり,人の動きなどの非常に低い周波数でも堅牢なエネジハーベスタが作ることができる技術です.似た技術として,摩擦発電もありますが,それとは異なり大きな外力を必要としないのが大きな利点です.こちらも今後さらに大きな発電量をめざしています.
 全体を通して,やはりほとんどの研究がまだまだ発電量が低く,現状で使える用途・範囲は限定的な印象でした.いずれにしても,mW級のエネジーハーベスタを安価に実現しなければ,トリリオンセンサユニバースのような爆発的な普及は難しいように感じました.

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写真5 Apple本社の外観

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写真6 Apple本社前

 PowerMEMSの終了後,西海岸のカリフォルニア州クパチーノを訪れ,Apple本社にて情報収集,および意見交換をして参りました(写真5,6).Apple本社は,クパチーノの閑静な住宅街の中にあり,本社内部は非常にきれいで,多くの国籍の方が働いているという印象でした.また,同じクパチーノの少し離れたところに「Apple Campus 2」を現在建設中で,訪れたときもまさに建設を行っているところでした(写真7).東京ディズニーランドの1.4倍とも言われる規模は,まさに圧巻でした.残念ながら情報管理が非常に厳しいため,情報収集・意見交換の内容を詳しく書くことができず,また,内部の撮影も一切禁止のため内部の写真などもありませんが,我々の研究成果に非常に興味を持たれておりました.これまでにもiPhone,iPadなどを普及させてきた発信力の非常に高い企業です.ウェアラブルデバイスであるApple watchの動向も注目しつつ,今後私たちの技術によって,Apple製品にも新たな流れを作り出せればよいと思いました.

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写真7 建設中のApple Campus 2の様子

(技術研究組合 NMEMS技術研究機構 芦澤久幸,三屋裕幸)

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