第4回海外調査報告会を盛況に開催(1月21日)
第4回MEMS協議会海外調査報告会を1月21日に新テクノサロンで開催し、約40名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の状況について報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学を行ってきましたが、今回は特に特別報告として世界の家畜に関連する報告を企画致しました。
写真1 会場の様子
MEMS協議会事務局長・長谷川英一からの主催者挨拶のあと、最初の報告は特別報告として「欧州と豪州の畜産用センサの現状と動向」と題して技術研究組合NMEMS技術研究機構およびマイクロマシンセンターのMEMSシステム開発センター
武田宗久から、イギリス、エクスターのeCow社、オーストリア、グラーツのsmaXtec社、オーストラリア、ガトンのQueensland大学、および
Sydney大学の報告がありました。最初に畜産業の産業内の位置付けとして、国内の畜産は農業生産額の31%を占める最大(2.5兆円産業)であること、世界のスマートフォンの台数が2012年に約7億台に対して、牛の数は15億頭と極めて大きな数字であるとの報告でした。また子牛の誕生、生育、乳牛、健康管理や販売に至る産業形態も説明がありました。牛用のセンサとして各種体温計(深部、耳、膣等)、発情検知(モーションセンサ)、ルーメン(胃)のPHセンサの説明と、何故センサによる牛の管理が必要であるかの説明、受胎率の向上や、生産病(肺炎やストレス)等の課題の説明もありました。また現在取組を行っている、SIP次世代農林水産産業創造技術の研究内容の紹介によって、現在の最先端の状況も判りました。
海外の状況として、最初に英国のeCOW社は、2007年に設立、Royal Agricultural 大学のToby Mittram教授がCEOです。PHセンサに無線モジュールを付けたセンサで、既に1000台以上が出荷されているようですが、実際に稼働しているのは250台とのことです。
またオーストリア、smaXtec社は2009年設立、製品のラインナップは広く、Phセンサに加え、気象センサ、センサステーションも含み、出荷台数は2015年に2万台とのことです。このルーメンセンサPHセンサと温度センサを搭載し、センサ内メモリに蓄積したデータを纏めて送る仕組みです。
豪州の調査では、クイーンズランド大学とシドニー大学の調査報告がありました。この大学ではルーメンセンサや温度センサ、ストレスセンサを活用している(特に運搬時のストレス評価のため)とのことです。
写真2 武田から報告
続いて、「米国のMEMS産業動向」についてMEMS協議会 松本 一哉からMEMS Industry Group(MIG)国際ビジネス会議 (MEMS
Executive Congress US in 2015)、Stanford大学工学部・大学院Ginzton Laboratory訪問の報告がありました。
最初にMEMS Industry Group(MIG)のKaren代表から、IoTの到来を見据え、同団体の名称をMEMS
& Sensors Industry Groupに改名することを宣言、更にトリリオンセンサビジョンを2015年5月に傘下に納めた事の報告があったとのことです。またSteve Nasiri氏からベンチャー発の企業であるInvenSenseが何故ここまで成功したかを、要因分析し、実装技術を中心に常に技術で先駆的に進めていたことの報告がありました。
市場動向として特に市場が拡大するセンサは、BAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタで、iPhone6sで20個搭載され、今後更に搭載個数は伸びる見込み、同センサ市場は、Avago社(60%)、Qorvo社(40%)の寡占市場となるとのことです。高周波共振器のRF-MEMSは日本が従来強かったので、最近の状況は残念です。
またMEMSマイクロフォンの性能向上も素晴らしく、マイクロフォンは、概ねスマートフォンに4つ搭載され、ノイズキャンセラとして音質向上に貢献しています。マイクロフォンの感度向上(機能改善)によって価格下落を阻止できている稀なケースです。現在マイクロフォンの感度は約60dBですが、次世代技術では75dB以上になるものと考えられるほか、Optical MEMSマイクロフォンといった新しいセンサも出てくると推測されます。この場合、82dBに性能向上が可能との事です。
前回は日本からの参加者は2名と少なかったのですが、今年は8名とのことです。MIGに詳しいSPPの神永アドバイザーによりますと、日本からの参加や講演寄与が増えたことに、主催者が驚いていたとのことです。
写真3 松本から報告
次は「マイクロマシンサミット2015と題してMEMS協議会・国際交流担当の三原孝士が報告しました。マイクロマシンサミットは毎年、各国のMEMS関連状況をそれぞれ報告し、意見交換する場として開催され、今回は第21回となります。今回は久しぶりに欧州のドイツでの開催であり、またテーマも「SMART
SYSTEMS FOR MANUFACTURING AND FACTORY AUTOMATION」とドイツ発のインダストリ4.0の話題が共鳴し、欧州からの参加者が例年以上に多く、参加人数は70名、発表数は約60件、Delegatesの多い国は、ドイツ 12名、イタリア 11名、オーストラリア 5名、中国 5名、イベリア半島 5名、スイス 4名またUSA 4名の順でした。
また研究所の訪問では、ベルリン近郊にあるFraunhofer研究所のIZM(マイクロエレクトロニクス信頼性研究所)でした。Fraunhofer研究所は最先端でなくても、企業にとって必要な研究開発を行う研究所として世界的に有名ですが、IZMは半導体やセンサ、電子基板モジュールの研究開発を行っています。MEMSの研究は勿論ですが、例えばフレキシブルプリント基板の研究等です。日本では論文が書けないと研究テーマは成り立たないことが多いのですが、Fraunhofer研究所では産業界が望めは継続する歴史があります。
今年のマイクロマシンサミット2016(第22回)は久しぶりに日本で開催されます(第1回が京都、第6回が広島でした。)、場所は新宿のハイアットリージェンシー東京(新宿)で、日程は5月25日、26日です。全世界のMEMSやナノテクの産業推進状況が判ります。御参加を希望される場合は事務局までお問い合わせください。
写真 三原から報告
写真 坂井から報告
最後は「MEMS国際標準化に関する活動状況」と題して調査研究・標準部長の坂井裕一より報告がありました。最近は、センサに無線システムが搭載され、更にエネルギーハーベストに対しての取組みも強化されており、マイクロマシンセンターでもSSN(スマートセンシング&ネットワーク)研究会を設立して、その活動を強化しています。この分野は、応用分野別にセンサ・無線・エネルギーハーベスト・電源管理・実装と言った要素デバイスや技術の評価を含む国際標準化が必要ですが、特に無線等ではデファクトスタンダードに頼っている側面もあります。このような背景からMEMSの国際標準化はIECを舞台に、更に進められるように「プロダクトアウト/プロセス重視型」のアプローチから「マーケットイン/結果重視型」へと転換が進められています。IECから発行済みのMEMS関連規格は24件で日本提案が11件、韓国提案が13件となっており、現在審議中が5件あります。審議中の案件には日本・韓国が2件づつ、中国とドイツがそれぞれ1件あります。
最後に閉会の挨拶 として、専務理事 青柳桂一から熱心にご参加、ご議論して頂いた方々へのお礼がありました。
写真 熱心な議論
写真 懇親会の様子
報告会には住友精密工業・神永様、次世代センサ協議会・大和田専務も参加いただき、コメントを頂きました。さらに報告会の終了後には懇親会に場所を移し、情報交換を行いました。(MEMS協議会 国際交流担当 三原 孝士)
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