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2015年3月20日 (金)

第29回先端技術交流会を盛況に開催

 「BEANSプロジェクト研究者達の新たな研究の取組み」というタイトルで、先端技術交流会を3月19日に開催しました。BEANSプロジェクトは、MEMS技術とナノ・バイオ技術が融合し、自律的に機能する異分野融合型デバイスの開発を目指し、平成20年度から24年度の5年間にわたり、経済産業省の主導のもと、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から技術研究組合BEANS研究所が委託を受け、企業、大学、独立行政法人産業技術総合研究所の研究者を結集し、産学連携体制のもとで実施しました。今回の先端技術交流会はプロジェクト終了から2年を経て、研究開発を推進した研究リーダーのうち3名の方をお招きし、現在の研究内容につき伺いました。

 最初のスピーカーは東京大学生産技術研究所機械・生態系部門の竹内昌治教授です。「高感度ハイブリッドセンサ」というタイトルで、バイオデバイス技術を使った創薬・医療・環境センシングの研究内容について紹介がありました。第1は分子デバイスにとして、膜タンパク質による高感度センサーです。バイオセンサの仕組みは、膜タンパクレセプターが被検出分子を取り込んだ時に出す何らかのシグナル(電子、光、質量等)を検知しますが、出力は非常に微量なのでその高感度検出手段が課題です。膜タンパク質は究極のバイオセンサで、人体は60トリリオンのセルで構成されています。膜タンパク質によるバイオセンサとして研究を進めているのが匂いを検知する犬の鼻センサーで、チップ化を進めています。脂質二重膜は細胞膜と同じ構造で、これに比較的簡単な昆虫のレセプターを使った化学物質の環境センサーを作成し、その脂質二重膜で分離されたイオン濃度の変化を計測することでの富士山頂でも検知できました。第2は細胞デバイスとして三次元細胞組織モデルについて紹介がありました。BEANSプロジェクトの時には点の細胞からのビルディングブロックを行いましたが、線型組織によるビルディングブロックに取り組んでいます。これはファイバー型に組織を構築するものです。トリリオンセンサー時代を迎えようとしている今日、バイオセンサーへの期待が高まる講演でした。

 二番目のスピーカーは東京大学大学院工学系研究科総合研究機構ナノ工学研究センターの杉山正和准教授です。「スマートエネルギーの実現に向けた3次元ナノ構造の開発」というタイトルで研究内容の紹介がありました。最初は太陽電池です。我が国のエネルギー構成はLNG・石炭・石油の化石燃料が大半を占めており、その輸入額が貿易収支を圧迫しています。その有力な対応策の一つが太陽電池です。太陽電池のコストは下落し続け、わが国の競争力は低下しています。しかし、Concentrator Solar Cellという集光型太陽電池がオーストラリアやアメリカで設置され、従来型の2倍の効率を実現しています。このタイプはレンズを使用して集光させ、太陽を追いかけるという機構を持ち、太陽光の強度が比較的多い地域、わが国にも適したものです。これに用いる太陽電池素子は小面積で高効率な太陽電池が必須ですが、これには積層構造必要であり、3次元構造が有効です。また、東北大学寒川教授が提唱する半導体量子ドットの形成による太陽電池にはBEANSプロジェクトで開発した中性粒子ビームエッチングが有効です。次の話題はLEDで3次元ナノ構造により広域発光LEDが実現され、商品化を進めているそうです。最後の話題はエレクトレットによる新たなデバイスで、会場にお見えになっていた静岡大学の橋口原教授が急遽プレゼンターとなりました。エレクトレットMEMSは従来型の100倍の効率が期待され振動発電素子に加えて静電トランス、双安定アクチュエータという機能デバイスの実現の可能性があります。今後の実用デバイスの開発が楽しみです。

 最後のスピーカーは産業技術総合研究所集積マイクロシステム研究センター伊藤寿浩副研究センター長です。「トリリオンセンサ社会に向けてのセンサネットワークの取組み」というタイトルでBEANSプロジェクトのMacro BEANSのその後の成果について講演頂きました。大面積デバイスやフレキシブルシートデバイスの製織集積化技術は素子をファイバー状にして、機織り機のように編み込むことで実現できます。LEDリボンを製作しスキーウエアや天幕シートの製作を行いました。ファイバーへのリソグラフィー技術はマイクロインダクターやマイクロ温度センサの試作へつなげています。BEANSプロジェクトの後につながるグリーンMEMSセンサ端末の開発では、電力使用量見える化のためのフレキシブル電流センサ、キャパシタ機能内蔵の集積化技術、超低消費電力無線通信技術の開発、コンビニ2000店舗の実証実験と評価等の報告がありました。トリリオンセンサの実現のための突破口となる研究開発の紹介でした。

 3名の先生方によるプレゼンテーションを終え、会場をMMC会議室に移した懇親会では、「やあ、久しぶり」と話しが続きました。
<普及促進部> 内田和義

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