EWGAE2014参加報告
概要:
EWGAE(Conference of the European Working Group on Acoustic Emission)は、1972年に設立され、AEに関する技術的な情報交換の場として2年に一度開催されている代表的な国際会議である。AE法に関係する技術者、実務者、サービスプロバイダ等が一同に会し、AE技術の進展に関する議論が行われている。今回はドイツ非破壊検査協会(DGZfP)と、ドイツ連邦材料試験研究所(BAM)との共催で開催され、AEシステムの代表的なメーカーであるVallen社のH.Vallen氏が議長を務めた。 本会議において、AEセンサシステムに関するアプリケーションと、デジタル信号処理のAE応用についての情報収集を行った。
参加者は計119名、国別ではドイツ38名、ロシア10名、日本9名他、ヨーロッパを中心として22か国、業種別では大学43%、計測装置含むメーカー18%、研究機関16%、検査会社10%、第三者認証機関等含むその他12%という構成であり、幅広い分野からの参加が見られた。
セッション:
以下に本学会のセッションと各発表件数を紹介する。
- Modeling and Theory (4)
- Localisation and Tomography (4)
- Metal Alloys (4)
- Concrete I (4)
- Signal Detection and Processing I (4)
- Application I (5)
- Fatigue (5)
- Various (4)
- Metal Alloys and Coatings (4)
- Geosciences (4)
- Signal Detection and Processing II (4)
- Concrete II (4)
- Equipment (4)
- Standardisation and Basics (4)
- Civil Engineering (4)
- Applications II (4)
- Corrosion (4)
- Biological Applications (4)
- Localisation of Defects (4)
- Posters (19)
内容、所感:
本学会においてAEのデジタル信号処理技術と、アプリケーション、装置に関するセッションを中心に聴講を行った。そのうち、いくつかについて以下に紹介する。
注目講演①(Session: SIGNAL DETECTION AND PROCESSING I):
Real-time Algorithm to Classify AE Events of Lamb Waves in CFRP
(University of Granada, Spain)
CFRPなどの複合材において、現象を分類する信号処理アルゴリズムの提案である。CFRPは通常クラック→剥離→繊維破断で劣化が進行する。そこで周波数帯域ごとのRMS値による分類により、AE発生の要因が剥離であるか、クラックであるか、繊維破断であるかに分類する。周波数フィルタによって低域側(剥離)、中高域側に大別し、さらに中高域の中で、スペクトル比によって中帯域(クラッキング)と高帯域(繊維破断)に弁別することができるとのこと。
注目講演②(Session: LOCALISATION AND TOMOGRAPHY):
Wavelet Based Approach to Acoustic Emission Phase Picking
(Togliatti State University, Russia)
ウェーブレット変換をベースにした波形抽出処理の提案である。従来AEヒットの判定に閾値を用いているが、低SN条件下では正しくヒットをカウントできない場合がある。ヒットの判定にウェーブレット変換を用いることで、振幅ではノイズに埋もれる条件下でも正確にヒットをカウントできるという手法。センサの共振周波数によって、AE波形の持つドミナントな周波数成分が概ね決まってくるため、特定のウェーブレットパターンを持つ信号を取り出すことができるとのこと。
注目講演③(Session: STANDARDISATION AND BASICS):
Localization of Acoustic Emission Sources in Geometrically Sparse Structures
Institute of Thermomechanics (Czech)
構造物ヘルスモニタリングにAEを適用する場合の位置標定技術に関する発表である。パイプで構成されたトラス構造の屋根をモチーフとしている。スパースな構造物に対してAE手法を適用するという点において、ユニークである。信号処理にはニューラルネットワークと、セグメント毎に分割して位置標定する独自のアルゴリズムを用い、負荷の上昇に伴いAEの活性が高いセグメントが変化する様子を捉えられるとのことであった。
AEにおけるデジタル信号処理技術に関しては、①AE信号とノイズを弁別するノイズ処理、②発生源の位置を特定する位置標定、③AE信号の特徴を分類するクラスタリング、の3分野が主要である。大学や研究機関を中心に、ウェーブレット変換や、ニューラルネットワークを活用し、耐ノイズ性能や位置標定精度を向上した事例が多くみられた。一方で、実フィールドでの適用にはリアルタイム性や簡便性が求められる傾向があり、単純な閾値による信号判別が適用されているのが現実であるとの報告もあった。また質疑を中心に、センサ感度や環境変化に対するロバスト性に関する議論が多くなされていたのも印象的であった。AEにおける信号処理技術の中心となる理論に関しての理解を深め、現状のAE分野における最先端技術レベルと、AEを用いた劣化診断において重視すべき課題を確認することができた。
次回開催:
次回は2016年9月にチェコ・プラハもしくはブルノにおける開催が予定されている。
<NMEMS組合 碓井 隆>
<NMEMS組合 碓井 隆>
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