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2014年6月11日 (水)

「ナノ・マイクロビジネス展2014」国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム開催(2014年4月23日)

 既にこの「MEMSの波」で速報としてご紹介していますが、マイクロマシン/MEMSの総合イベントである「ナノ・マイクロビジネス展2014」は、今年は場所をパシフィコ横浜に移して好評のうちに終了しました。また幾つかの併設イベントをMEMS協議会が中心になって実施しました。この中でも、20回と言う長い歴史を持つ「国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム」は、(同時通訳もついて)世界のマイクロマシン/MEMSの産業および技術動向を得ることが出来る絶好の場となっています。今回もシンポジウムの方向をMEMS協議会・国際交流委員会の委員長である、東京大学・下山勲教授(本シンポジウムのチェアマン)を中心に議論を重ね、「新しい応用を目指すスマートモニタリングデバイスとしてのMEMS」と題したテーマで、近い将来に何兆個のMEMS/センサーが全ての工業製品や生体・動物に搭載されると言われているスマートモニタリングデバイスとしてのMEMSセンサーに関し、その新規な応用分野として「社会インフラ、自動車、医療・健康」を取り上げてプログラムを組みました。

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写真1 会場の様子


 本シンポジウムでは技術研究組合NMEMS技術研究機構・今仲理事長の挨拶に続いて、経産省・須藤産業機械課長のご来賓のご挨拶のあと、特別講演と2つのセッションを行いました。 最初の講演は、特別講演としてMEMS Industry Group(MIG)のExecutive Director, Karen Lightman氏によるMEMS and Sensor Trends – Paving the Way for a True Internet of Thingsと題しての講演です。 ご存知のようにMEMSセンサーはかなり長期にわたって2桁成長が続いている産業分野ですが、スマートホンに搭載されるようになって飛躍的に生産量が増え、かつ一般に認知されるようになってきました。そして「スマートホンの次にくる大きな市場は何か」はMEMS関係者が注目しているテーマです。ご存知のようにMIGは米国を中心としたMEMS企業の工業会です。Karen Lightman氏の講演はMEMSの市場特性や最近の状況、製品や使用センサーの推移に関する傾向を鳥瞰的な視点にたった紹介でした。例えば、スマホ用のモーションセンサは複合化が進んでおり、数量や金額では飽和に近づいています。また大きな市場トレンドではセンサー(MEMS)と無線によって、全てがスマートになりつつあると言う点です。これはInternet of Thingsと同意であって、全ての物体がインターネットで繋がる時代が到来するが、その場合はセンサーと無線が必ず搭載されると言う条件があって、それに合わせて情報トラフィックと、MEMS(センサ)が飛躍的に必要になると言う考えです。米国が発端となった1兆個のセンサーの概念も、その考えの延長と考えることが出来ます。

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写真2 MIG  Karen Lightman氏による特別講演


 特別講演の後の最初のセッションは、IVAM特別セッションであって、セッションチェアはIVAMの所長である、Prof. Thomas R. Dietrichでした。皆さんは既にお気づきとは思いますが、昨年までは日独セミナーとして単独で実施していたIVAMの講演会を、今年は国際シンポジウムの1セッションとして取り込みました。このセッションの最初の講演はFraunhofer ENAS, Chemnitz のProf. Dr. Thomas GeßnerによるSmart Monitoring Systemsでした。ドイツのMEMSはLIGAから始まる大変古い歴史があって、特に産業界の為の研究開発を行っている多数のFraunhofer研究所が関与しています。Prof. Thomas GeßnerはFraunhofer ENASの教授ですが、この研究所はバルクMEMSの研究をリードしてきた研究所で、世界標準と言われるMEMSプロセス技術を多数所有しています。トピックスとしてはドイツのボッシュがイタリアのSTマイクロを売上高で抜いたと言うことの紹介や、環境計測やインフラモニタリングを目的とした様々な取り組みも紹介して頂きました。

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写真3 Thomas Geßner教授による講演


 本セッションの2番目の講演は「新規な低価格MEMS製造技術:ポリマーMEMS」と題して独立法人・産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センターの栗原一真氏からドイツ、日本の双方に高い関心がもてる講演がありました。現在の製造業にとって殆どの(コンシューマ)製品のケース等に使用されているモールド技術を、MEMSの製造に取り入れる取り組みで近い将来の量産品にどんどん使われ、更にMEMSの利用範囲が拡大するものと思われます。この技術を使うと、電極配線を完了したシリコン基板やポリイミド基板をモールド型に入れて他のポリマーと一括形成することで、大量に三次元形状を安価に作成できます。また本セッションの最後の講演は「Recent developments regarding optical MEMS and their applications」の題目で、Fraunhofer IPMS, Dresden のDr. Michael Schollesによって行われました。Fraunhofer IPMSは特に光学関連MEMSでは長い歴史と高い技術を持つ研究所です。今回は光スキャナーを駆動回路と一緒に集積化、加工して精密な1次元スキャニングモジュールを作成し、光通信や産業用の機構に利用する取り組みを中心にご紹介がありました。

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写真4 栗原一真氏による講演

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写真5 Dr. Michael Schollesによる講演


 休憩のあと、セッション2として「スマートモニタリングを用いた様々な応用展開とMEMSへの期待」を行いました。その講演1として、「社会インフラ構造物におけるヘルスモニタリングの実際とセンサシステムへの期待」として横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授の西尾 真由子氏から具体的な橋梁センシングに関する講演がありました。コンクリート製の大型橋梁に歪センサーや振動センサー等を設置し、実際にデータを取得して解析された結果を報告されました。何ヵ月にもわたって長期的に計測することで、季節による違いや気温による影響等も議論されていました。構造体モニタリングには最適なセンサー群と辛抱強いデータ解析が必要であると実感しました。 また橋梁は大型で固有振動数も大変小さいのでセンサーの高感度や最適化も必須になります。

 講演2は「Emerging sensor opportunities in mobile consumer electronics」と題してVTT (Finland) のProf. Aarne Oja氏からスマートホン用のMEMS関連のご紹介がありました。 VTTに関してですが、同日(23日)の午前中にフィンランドVTTセミナー「マイクロシステムによるイノベーションを目指して」と言うテーマで、VTTから4件、日本から2件のセミナーがあり、多数の方々にご参加頂きました。そのVTTのOja氏の講演は、今後のスマートホンに搭載される多数のMEMSのうち、VTTが開発中、或いは実用化中のMEMSの紹介でした。例えば10cmの分解能を有するMEMS圧力・高度センサー、CO2を含むガスセンサー、デェスチャーを認識する手段としてcMUTを利用した40kHzの超音波センサー、近接画像を認識するための超小型MEMS光学モジュール、等に関する講演がありました。

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写真6 横浜国立大学 西尾 真由子氏による講演

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写真7 Prof. Aarne Oja氏による講演

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写真8 デンソー・菅原 良一氏による講演


 その後、講演3として「自動車用半導体/MEMSの動向と今後の期待」と題目して株式会社デンソー・半導体先行開発部の菅原 良一氏から自動車用のセンサーやMEMSの動向や開発状況に関する講演がりました。自動車の機能毎に、どのようなマイクロシステムやセンサーが使われているかの判りやすい説明で、自動車は限定されたスペースで極めて使用温度範囲の広いデバイスが、機構部品とハイブリッド的に構成されて使われるとのことです。また最新の運転支援に関しても話題があり、アクティブセイフティに関するセンサーへの期待もありました。特に三次元の距離画像を高速で取得する技術や、ヘッドマウント表示で視認性を改良する取り組みでした。

 講演4として「Multi-layer Silicon MEMS Processes and Devices」との題目で、Micralyne Inc.のVP Engineering, Acting VP SalesのCollin Twanow, P.氏から複雑なMEMS構造を作成する技術に関する講演がありました。紹介のあったバルクMEMS形成方法はMicraGEM-Si(TM)と言われる方法で、2枚のSOIウェハーを別々に加工し、ウェハー接合装置を用いて加工面同士を位置合わせしながら貼り合わせる方式です。この方法によって段差の異なる構造や、より効率的な動作をする櫛歯アクチュエータ・電極等を成型できます。 更にcMUTを使った超音波アクチュエータの紹介等もありました。 このシンポジウムの最後は「超高齢化社会を支える健康機器と求められるセンサー技術」との題目で株式会社タニタ・開発部部長の新藤幹雄氏からセンサーやMEMSに関係の深い健康管理機器に関する講演がありました。新藤氏によると、国家予算の30%を占める国民医療費の高齢者医療にかかる部分が極めて多く、しかもそれは年齢とともに指数関数的に増加しています。これは高齢の方の疾患が複数で、長期間の治療を有するためです。特に寝たきりにさせないことが重要であるが、新藤氏は寝たきりになる原因の第3位の転倒による骨折を防止するために、下肢機能のモニタが可能なシステムに注目しているとのことです。その手法の一つとして金属探知器と同様な手法で、電磁場中での筋の高周波インピーダンス(導電率)の差による渦電流を計測することでモニタする手法を紹介されました。

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写真9 Micralyne Inc.のCollin Twanow, P.氏の講演

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写真10  株式会社タニタの新藤幹雄氏の講演


 この国際シンポジウムは終始大勢の聴講者にご参加頂きました。講演によっては立ち見の方も多く、参加者数は約220名でした。下山委員長を始め、スタッフ一同、このテーマの重要性を改めて実感したとともに、多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。また来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。
 (MEMS協議会事務局 三原 孝士)

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