第2回海外調査報告会開催される
第2回海外調査報告会を1月15日に新テクノサロンで開催し、約40名の方にご参加いただきました。このイベントは昨年度から始まったもので、マイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の状況について報告するものです。
最初は「米国・欧州におけるMEMS最先端技術と産業動向」と題して産業交流部長・国際交流部長の今本浩史より報告がありました。
内容はIEEE SensorsとMEMS Executive Congressに関するものです。
IEEE Sensorsは11月4~5日にアメリカ・ボルチモアで開催されました。投稿論文は約1000件、採択は半分、アメリカ/ヨーロッパ/アジア・オセアニアの割合は4/3/3でした。国別ではアメリカがダントツの200件、中国46件、ドイツ41件に次ぎ、日本は39件の4位でした。会議は6つのセッションが並行して開催され、ガスセンサーは独立したセッションで盛んな発表でしたが、日本企業からの発表が少なかったのが気になりました。
MEMS Executive Congressは世界のMEMS主要企業・機関が参加する会議で、大半はアメリカですが、わが国からの参加が少なく心配です。マーケットセッションではYoleとHISの発表がありました。モバイル用途では赤外線センサー、ガスセンサと人感センサーの搭載が進み、ガスセンサーはAir
Quality sensorとしてCO2センサーが期待される。MEMSの新しいキラーアプリは圧力センサーと湿度センサーで、圧力センサーはGPSに組み込まれ位置情報サービスに使われるが、湿度センサーの用途はまだ限られる。中国が新しい戦場となってきている。
さらに産業動向調査について報告がありました。この調査は平成24年度に行われ、今後注目すべきマイクロナノ革新デバイスを抽出しています。今年度は現在取り組んでいるグリーンセンサネットワークプロジェクトにかかわる、MEMS環境センサ、集積化等の動向調査を進めています。平成26年度は社会インフラを中心として今後国プロが加速していく中で必要となるMEMSセンサ及びセンサネットワークの動向を調査していく予定です。
二番目の報告は「マイクロマシンサミットと中国・ロシア、北欧MEMS動向」と題してMIF次長の三原孝士より報告がありました。
第19回国際マイクロマシンサミットは昨年4月下旬に中国・上海で開催されました。このイベントはMMCが事務局で毎年各国持ち回りで開催されています。今回の全体テーマはスマートシティで、17の地域から49人のデレゲイトが参加し、カントリーレビュー、セッション、パネルディスカッションが行われました。カントリーレビューでは、オランダ、イタリア、ドイツ、ブラジル(次回のサミット開催地)、ロシア、EC、シンガポール、スイス、米国、中国、日本からそれぞれ報告がありました。MEMS関連セッションでは、中国のパッケージ企業、ミシガン大学のワイヤレスMEMS、ロシアの老巧社会インフラ保全、ドイツの都市エネルギー効率化、北欧の印刷電子技術応用、ブラジルの環境・水質モニター、YoleのMEMS市場予測が報告されました。サミットの開催地である上海の見学があり、蘇州工業パーク、蘇州ナノポリス、国家重点科学技術研究所を訪問しました。
昨年10月に欧州産業技術調査としてフィンランド、ロシアの研究機関を訪問し、セミコンヨーロッパ2013及び国際MEMS/MST産業フォーラムに参加しました。フィンランドで訪れたVTT
Technical Research CenterはセンサーとMEMSに特化した研究開発を行っており、3100名の職員を有する北欧最大の研究施設です。日本を含め各国企業との共同研究を行っており、3つの6インチラインが稼働しています。エタロンを使ったCO2センサ、高度なTSV技術を有しています。ロシアではクルスフにある国立南西大学とロシアMEMS協会を訪問しました。ロシアはMEMSの発展性に注目しており、人材育成について我が国への協力を期待していました。
セミコンヨーロッパ2013は10月にドイツ・ドレスデンで開催されました。STマイクロエレクトロニクスの講演ではスマートフォンからウェラブル、さらにはIOT(Internet Of Things)と進展するなかで全ての工業製品にMEMSが搭載されると報告がありました。InfinionからはMEMSマイクで高品質を武器にシェアを拡大しつつあると報告がありました。Heptagonの半導体技術を駆使して積層のレンズアレイを一気に作成する技術、Si-WAREのマイクロ・オプティカル・ベンチをシリコンチップに形成する技術が興味深いものでした。InvenSenseのモーションセンサー、高額投資のため半導体工場建設可能な企業減少への対応策も面白い報告でした。リソグラフィではEUVの発表ではASMLから研究開発の状況報告、IMSやIBMからEUVの代替手段の報告があり、シリコン・ホトニクスではSTマイクロエレクトロニクスから研究段階から生産段階に移行しつつあること、3D TSVについても各社から実用化の報告が相次ぎました。3D TSVについては検査が難しいのではと感じました。
三番目の報告は「MEMS国際標準化に関する活動状況」と題して調査研究・標準部長の出井敏夫より報告がありました。国際標準化は光と影があり、局面に応じた戦術で最終勝利を目指す「柔軟だが強気」の構えが重要です。MEMS国際標準化はIEC(国際電気標準会議)で進められており、日本はMEMS分野を担当するSC47Fの幹事国として主導的に推進しています。しかし、参加10カ国のうち、規格提案などの活動を行っているのは日・韓・中・独の4か国のみというのが現状です。IECの全体会議は毎年開催され、2014年11月に日本で開催されます。MEMS関連の国際標準は用語の定義から始まり、基礎的な特性計測方法、デバイスの特性表示・計測法と進展し、エネルギーハーベスティング等新たな技術分野に着手しています。今後は新規提案の発掘・具体化、発行済み規格の見直しが当面の課題であり、長中期的にはSC内のリーダーシップの維持強化と規格品質の底上げによるSC全体の価値向上が課題です。
以上、2時間半たっぷり、休憩なしの報告会を終え、参加者の交流会が行われ、それぞれのMEMS談義が行われました。
<普及促進部 内田>
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