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2013年8月 9日 (金)

「ナノマイクロビジネス展2013」 TIA N-MEMSシンポジウムMEMS協議会フォーラム開催(2013年7月5日)」

世界最大規模のマイクロマシン/MEMSの総合イベントである「ナノマイクロビジネス展2013」(東京ビッグサイト)の中で、MEMS協議会が主催する同時開催プログラムとして国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムとMEMS協議会フォーラムがあります。2010年からMEMS協議会がTIA(つくばイノベーションアリーナ)のTIA N-MEMS WGの事務局となってから、MEMS協議会フォーラムをTIA N-MEMSシンポジウム(TIAつくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点運営最高会議の後援)として開催しています。本シンポジウムは、MEMS産業の発展を目的にMEMS協議会が主催する関連諸活動をご紹介し、会場参加者へのPR、意見交換の場を提供するものです。今回は2つのセッションで構成され、セッション1「TIA N-MEMS 最新状況と、オープンイノベーション」セッション2「MEMS産業動向・技術動向」と致しました。最初にTIA N-MEMS WGの委員長で、MEMS協議会・推進委員会副委員長の唐木幸一から開会の挨拶をさせて頂いたあと、本セッションに入りました。

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写真1 フォーラム会場の様子

セッション1は、一般財団法人マイクロマシンセンター・MEMS協議会が提供する研究支援サービスであるMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター)を中心としたオープンイノベーションの現状と紹介です。最初に基調講演として東京大学生産技術研究所 藤田博之教授から「皆で拓くナノテクMEMSの新産業:オープンイノベーションとTIAへの期待」という題目で、MEMS分野の第一人者としてオープンイノベーションの重要性とTIAへの期待を講演して頂きました。講演の内容としては、最初にMEMSの市場動向としてMEMS産業が約13%の年率成長が続いており、2017年には2兆円に達する成長産業であること、最新のTransducers2013の国際会議の報告として、研究の傾向がバイオとセンサーネットワークに移っていることの紹介がありました。今回の論点であるオープンイノベーションでは、海外の例、例えば企業パートナー350社を持つ米国Albany、250社のフランスMINATEC、600社以上のベルギーIMECを例にあげ、海外での成功例のポイントとして、必要な技術を外部に求め、また大学の技術を重視する姿勢が重要であることを強調されました。また特にTIAでは世界的に戦える施設を有効に使って、研究開発から初期生産まで視野にいれるべきとのコメントがありました。

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写真2 基調講演 東京大学生産技術研究所 藤田博之教授

続いて、産総研・集積マイクロシステム研究センター 前田龍太郎研究センター長から、TIA N-MEMSの研究拠点である集積マイクロシステム研究センターで開発中の世界最先端MEMS技術の紹介がありました。産総研(つくば)にあるTIA N-MEMS研究拠点は、わが国でも最先端のMEMS研究施設や研究者が集積している場所です。MNOICはその研究センターとの共同研究契約を交わして、技術開発を行いながら産業界ユーザへの研究支援を行っています。この大きな利点として産総研・集積マイクロシステム研究センターで研究開発された設備やノウハウが毎年のように完成し、成熟しています。その最新の研究テーマを、「MNOICが産業界の皆様のために研究支援を行う」という大変良い好循環ができています。事実2012年度は常温接合技術とナノインプリント技術と言う2つの技術が新たにMNOIC研究支援の対象になりました。これらを踏まえて今回は、その研究センターで行われている最先端の技術をご紹介頂き、今後MNOICで支援可能となる技術を予測して貰いました。特に大口径8インチウェハーに良質なゾルゲルPZT薄膜を自動的に重ね塗りが出来る装置が注目されます。成膜された薄膜はウェハー内の均質性も大変良く、既に多くの試作デバイスができています。またナノインプリント装置では、装置が大掛かりになる真空を使わず、ガスの凝縮を用いて微細パターン転写時に起こりがちなバブルを抑える方法の紹介がありました。

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写真3 世界最先端MEMS技術の紹介 前田龍太郎研究センター長

このセッションの最後に、MEMS領域における日本で始めてのオープンイノベーションセンターMNOICの紹介を「TIA N-MEMSの最先端設備を活用したMNOIC(オープンイノベーションセンター)の紹介」としてMNOIC開発センター・センター長、荒川 雅夫から行いました。MNOICも3年目を迎え、安定した確実なサービスが出来るようになって、有る程度の固定客も増えてきました。年間を通じて常時使っていただけることで経営の安定化と技術やスキルが確実に伸びて行きます。また昨年は殆どなかった仕様書ベースで研究委託を行う案件も増えています。今までは研究支援のできる研究施設のご紹介が主でしたが、最近では「MNOICでどのような加工が可能か」と言った具体的な事例をご紹介出来るようになってきました。


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写真4 オープンイノベーションセンターMNOICの紹介 センター長 荒川雅夫

2つ目のセッションはTIAやMNOIC以外のMEMS協議会の活動の中で、調査研究事業と、標準化事業を中心に皆様に報告する「MEMS産業動向・技術動向」です。最初にマイクロマシンセンターの特別研究員、阪井淳から、「MEMS産業動向:今後のMEMS産業!これで決まり-マイクロ/ナノ革新デバイスの産業動向調査」です。産業動向調査委員会の報告で、これまでMEMSの市場動向の調査を行っていますが、2013年度は社会や産業界にとってインパクトの高い革新デバイスを取り上げ、これを題材にして産業界の取り組みを調査し、その将来性を予測しようとするものです。最初に最近の世界の企業動向と、その中での日本の位置づけがあり、日本はゲームやスマホ向けのセンサでは出遅れ感があるが、旧来から行って来た物理・磁気センサやMEMS等では高い市場を持っているとのこと。また新規に現れている革新デバイスでは、スマホに搭載される高性能で安価なコンボセンサ(集積化センサ)、MEMSマイクロフォン、MEMSアクチュエータを使ったMEMSオートフォーカス付画像センサーモジュール、更に海外で研究の盛んなガスセンサ、マイクロTASやバイオ流路の紹介でした。

 

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写真5 マイクロマシンセンター特別研究員 阪井淳

 

続いて、国内外技術動向調査委員会の委員長である、早稲田大学 庄子習一教授から「MEMS技術動向:MEMS関連学会より最新技術動向を見る」との報告がありました。特に最新動向として台湾・台北で開催されたMEMS2013で発表された論文(口頭、ポスター)の傾向に関する発表がありました。アジアでの開催のため、日本を含むアジアからの発表が多かったのですが、米州、日本、アジア、欧州の順に発表件数が多く、研究件数や発表の品質に関しては、まだまだ日本のステイタスは高いものです。また発表の機関別にみると東大・台湾の国立清華大、東北大、シンガポールのナンヤン大、米国のミシガン大の順です。東大や東北大は世界的に見ても有数の研究センターになっています。また地域別にみると、RFは米国、材料を駆使したセンサや細胞を扱うMEMSは日本、材料はアジア、光学は欧州が強いと思われます。

 

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写真6 国内外技術動向調査委員会・委員長 早稲田大学 庄子習一教授

 

続いて、標準化関連委員会・委員長で、帝京大学の大和田邦樹教授から「MEMS国際標準化最新動向、高まる重要性とビジネス活用」という題目でMEMSの国際標準化が進められているIECの動向について報告がありました。標準化に関するITCやSC47Fの紹介のあと、国内の標準化の組織と、MEMSにおけるわが国の規格開発の戦略が、用語集から試験評価法、デバイスや機器に広がりを見せているとのことです。薄膜材料の引っ張り試験、薄膜材料疲労試験の紹介があって、最後にMEMS国際規格のビジネス活用の方法や、今後の取り組みがありました。

 

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写真7 標準化関連委員会・委員長 帝京大学 大和田邦樹教授

 

本セッションの最後として、(株)数理システムの望月俊輔様から「MEMS設計解析ソフト「MemsONE」を用いた、機構と回路の混在解析」がありました。このMEMS協議会フォーラムでは毎回MemsONEのご紹介をしていますが、回路解析やその混在解析をご紹介するのは初めてです。MemsONEはMEMSの設計、機構解析、プロセス解析と全く同じグラフィカルインターフェースのもとで統一的に処理可能なMEMS統合化システムですが、特に回路解析や、MEMSの要素部品をあたかも抵抗やコンデンサーのように結線・組み合わせて解析できる構造解析-回路解析エンジンを持っています。今回の発表ではMEMS部品の構造パラメータを自由に振りながら最適化設計が可能な連成解析ツールMEMSpiceと、三次元MEMS構造を回路シミュレータに繋げるマクロモデル抽出ツールの紹介がありました。構造解析になれた方には最初は違和感がありますが、慣れてくればかなりの規模のMEMS構造体を瞬時に機構解析でき、しかも回路シミュレータと連携できる点で画期的です。

 

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写真8 (株)数理システム 望月俊輔様

 

 このTIA N-MEMS MEMS協議会フォーラムは終始大勢の聴講者にご参加頂きました。立ち見、或いは会場の隣接したラウンジで聴講された方を含めると参加者数は約250名でした。唐木WG委員長を始め、スタッフ一同、このMEMSの産業推進に関し皆様の関心の高さを改めて実感したとともに、多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。来年は時期、場所ともに変更になりますが、来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。(MEMS協議会事務局 三原 孝士)

 

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