ハノーバメッセ2013参加報告(その2)
4月8日~12日にドイツ・ハノーバで開催されたハノーバメッセ2013に参加しました。ここでは展示会場、併設シンポジウムの中からマイクロテクノロジー関連で注目された展示をピックアップして報告します。
◆ Fraunhofer ENAS : MEMS可変フィルタ付赤外スペクトルセンサ
Fraunhoferは幅広い分野に渡り多くの研究所で構成されています。ハノーバメッセでは機械、光学機器、マイクロデバイスを中心に10近い研究所が展示をしていました。その中でMEMSデバイスを主な開発テーマとするのがFraunhofer ENAS(Electro Nano System)です。本年度は昨年に引き続いてMEMS可変フィルタ付赤外スペクトルセンサを中心に展示されていました。
MEMS可変フィルタ付赤外スペクトルセンサ
下図に可変フィルタの動作原理を示します。光透過性を持つ2枚の反射板を備え、間隔に対応した共振波長を持つ光だけが強められて外へ取り出されます。静電駆動により間隔を制御して透過光の波長を連続的に変えることができます。図中反射板のところ(Reflector)には反射、透過特性の向上のためにメタマテリアルが採用されました。受光素子にはボロメータ型の赤外線検出素子が用いられています。
本素子は既に、InfraTec社(独)より販売されており、ガス分析、赤外光を用いた医療用成分分析など、スペクトル分析を必要とされる分野で実用化されています。
◆ Fraunhofer IZM : 自己発電搭載振動センサ
Fraunhofer IZM(Reliability and Microintegration)は集積型電子デバイスの開発を中心とする研究機関です。ここではワイヤレスセンサネットワークシステム端末用としてセンサ、電子回路、無線、エネルギーハーベスタが集積化された自己発電搭載振動センサのPRがありました。

自己発電搭載振動センサ
振動検出は圧電素子が用いられています。従来の振動センサは素子構造で決まる共振周波数付近の振動のみを検出していまして、広帯域の振動を検出するのが困難でしたが、ここでは共振周波数の異なる素子を多段に集積化することによって、広帯域な振動センサを実現しました。試作品では7段積層により300Hzから700Hzまでの振動を検出できる素子をPRしていました。
◆ CiS (独): マイクロデバイスで開発から少量量産までサポート
Fraunhoferはマイクロデバイスの開発から量産までサポートできる体制整備されていますが、ドイツではFraunhofer以外にも同様な狙いで活動している機関があり、CiSはその一つです。
CiSは1990年設立の非営利団体で6インチのMEMS試作ラインを保有し、共同開発から少量量産までをサポートします。特徴として「小回りの利く対応」「少量だが特徴ある性能を保有する」デバイスを指向し、中小企業でもフレキシブルに対応するとのことでした。
開発例:圧力、温度、流量集積型センサ
開発例として圧力、温度、流量集積型センサ、カンチレバー型触覚センサ、光スペクトルセンサ、放射線センサ、光スキャナー、血中酸素濃度センサ等があり、大型加速器で著名な欧州の研究機関CERNから受注して納入した実績もPRしていました。
◆ Institute of Micro & Information Technologies (HSG-IMIT) (独)
HSG-IMITもマイクロデバイスの開発から量産までサポートする機関で1988年に設立されました。やはりパッケージングまで含めたMEMS試作ラインを有し、MEMS全分野に対応します。特徴として車載、医療、産業機器等、高付加価値型MEMSを志向していること、ある特定の分野、例えば慣性センサであれば、センサ素子、信号処理から応用システムまでサポートすることがあげられます。
血液分析用マイクロフルイディクスシステム
◆ Hekiatek (独):有機薄膜太陽電池
有機薄膜太陽電池は、低コスト太陽電池として期待され、現在は特に変換効率の向上で目覚ましい進展が見られます。使用する材料、プロセスによって大きく塗布型と蒸着型の二つに分類され、Heliatek社は蒸着型を開発しています。この度Heliatekは変換効率12.0%(第3者機関評価)と世界最高効率を達成しました。
Heliateckでは有機太陽電池の基本構造として、吸収波長域の異なる太陽電池を積層して成るタンデム型を開発しています。高効率化に成功した要因として光吸収性とキャリア輸送性に優れる有機半導体材料をUlm大学と共同で開発できたこと、生成したキャリアを効率良く取り出すためのブロッキング層等を含む多層構造を開発できたことがあげられます。
蒸着方式有機薄膜太陽電池
有機系太陽電池の課題としては耐久性に劣るため実用化の道が拓けないということがあげられます。Heliatekの担当者によると耐久性も目途が立っているとのことでしたが、具体的にどの用途から発売していくかは未定でした。
◆ Advanced Display Technologies (スイス・独):ドロップレット型ディスプレイ
ADT社はエレクトロウェッティング(電圧印可による疎水性、親水性制御)を応用したディスプレイを開発しました。マイクロキャビティ内で着色された液滴を高速に移動させることで画素として作用させます。
電圧印可により3種の液滴を移動
特徴として低消費電力、白(電圧印可無し)が鮮明、フレキシブル/光透過型可能、屋外での視認性が良い等の特徴があります。ピクセルサイズは0.3~10mmで屋外の大型サインのような用途に適していると考えられます。
◆ i Light (スイス):街灯省エネ制御ワイヤレスセンサネットワークシステム
最近ワイヤレスセンサネットワークシステムを用いた工場のメンテナンスシステムやビルの省エネシステムの開発が盛んに行われています。iLightは街灯の省エネ及び通行の安全性向上のためのシステムを開発しました。一つ一つの街灯にワイヤレスセンサ端末が設置され、自動車や歩行者の通行状況、周辺の明るさから、安全かつ省エネのための最適な照明を行おうとするものです。
センサとして超高感度画像センサ(CCD)、人体検知センサ、明るさセンサが搭載され、特に画像センサは、NASAが宇宙観測用に開発したCCDを用いており、わずか1ルクスの明るさでも対象物を捉えることができます。また街灯同士が通信して、自動車又は歩行者の進行に合わせて照明をコントロールすることができます。
阪井 淳
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