海外調査報告会を盛況に開催
マイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)では毎年数回の海外調査を行っていますが、今年度実施した調査内容の報告会が1月24日に開催されました。当日は、国際標準化活動についても報告があり、最新のMEMS海外事情にご関心の方々、約30名にご参加いただきました。
今回は国際交流事業担当から2件、国際標準化担当から1件、計3件の報告がありました。それぞれの報告をご紹介します。
「米国・欧州におけるMEMS最先端技術と産業動向」と題したMIF(MEMS協議会)阪井からの報告は、MIG Executive Congress(2012.11.7-9)、ミシガン大学WIMS、カリフォルニア大学BSAC、デルフト大学ナノネクストNLプロジェクト(オランダ)、LETIセンサネットワーク研究所EPosSS(フランス)に関するものでした。
MIG(MEMS Industry Group)は米国を中心とするMEMS関連の150機関が参加し、MEMS産業活性化を狙いに情報サービスや各種シンポジウム等の活動を展開しています。MIG Executive Congressは参加者のビジネスマッチングに重点を置き、パネル討論やゲスト講演を行っており、2012年はMEMS産業/市場動向、医療/健康MEMS、民生用MEMS、有望MEMSがテーマとして取り上げられ、220名の参加規模でした。TI社Amerasekera氏は「Ultra Low Power Electronics in the Next Decade」としてSensory Swarm(蜂の群のように安価なセンサーを大量にばらまく)がビジネスチャンスであり、このための低消費電力デバイス、エネルギーハーベスティング、ワイヤレス、システム設計が技術開発の方向と講演がありました。Yole Developmentからは市場動向につき、圧力、加速度、ジャイロ、マイクロフォンと次々と大型市場を形成してきたMEMSの次のターゲットはオートフォーカスや環境センシングと報告がありました。iSuppli社からはMEMSマイクロフォンの市場形成につき報告がありました。この他の訪問機関についても研究開発内容の紹介がされました。
「マイクロマシンサミットと台湾・欧州におけるMEMS動向」と題したMIF三原の報告は、昨年4月に台湾で開催されたマイクロマシンサミットや訪問した台湾の公的研究所とファンドリーの様子、そして昨年10月に訪問したセミコン・ユーロ及びオランダとドイツの研究機関に関するものでした。
「国際マイクロマシンサミット」はMEMS関連の各国機関が毎年一堂に会するイベントで、2012年は第18回を数え、台湾・新竹で開催されました。20の地域、75人のデレゲートが参加し、18のカントリーレビュー、マイクロ技術におけるエコシステム、実用化の現状と将来に関するセッションが行われました。カントリーレビューでは着実な投資と衰える事が無い研究開発が米国、カナダ、ドイツ、フランス、スイス、台湾、中国、韓国で行われている、スマートフォンに代表されるMEMS市場の広がり、一方で民生用は価格破壊の危惧があり、研究ターゲットは医療やバイオへ向いていくと報告がありました。
台湾の研究機関・企業訪問での実感したのはサプライチェーンと研究設備の充実ぶりでした。研究者に最先端の実験施設・評価装置を提供するNDL(Nano Devices Lab)、世界の半導体ファンドリであるTSMCを生み出したITRI(Industrial Technology Research Institute)、設計・実装・システム評価を提供するCIC(Chip Implementation Center)、TSMCのMEMS版であるAPM(Asiapacific Microsystem Inc)、世界トップの半導体ファンドリTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)等が密接なネットワークを形成しています。
セミコンユーロMEMS産業化フォーラムに参加し、欧州のマイクロエレクトロニクス産業の盛況ぶりについて調査しました。欧州の中でもドイツが強く、欧州の製造設備の1/3はドイツが占有しています。市場としてスマートフォン等の民生MEMSはあと2年で飽和するとみており、自動車、産業、医療等に期待しています。アジアとの直接競合は避け、特徴のある分野での発展持続を目指しています。この他、オランダのHolst Center、MESA+ Twente大学、ドイツのフライブルグ大学IMTEKを訪問した報告がありました。
「MEMS国際標準化に関する活動状況」は調査研究・標準部の出井より報告がありました。MEMS関連の国際標準化はIEC(International Electrotechnical Commission)の半導体デバイスに係わる分科会が担当し、2008年からMEMSに特化したSC47Fで審議(参加10カ国)が行われています。これまでに様々な試験法を主とした国際規格13件が発行されており、12件が審議中です。提案国は日本と韓国に限られていましたが、中国の提案があり、ドイツからも提案の意向表明があります。この他に韓国・中国とはMEMS標準化ワークショップを毎年開催しており、情報交換を行っています。今後は、発行済み規格の見直し、製品規格の提案強化、新分野(エネルギーハーベスティング等)の提案、海外提案を含めた規格の品質向上等が課題です。
当日の講演資料はMMC/MIF会員専用ページよりダウンロードできます。
マイクロマシンセンターでは今後も、様々なシンポジウム、講習会、報告会を開催する事としています。どうぞご期待ください。
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