MNOIC実習セミナー X-CTを用いたマイクロナノデバイスの3次元構造の計測・評価、および三次元データ再構成の実習」の実施
一般財団法人マイクロマシンセンター・MEMS協議会では、MEMS・マイクロナノ領域における産業推進の一環として独立行政法人・産業技術総合研究所・集積マイクロシステム研究センターの研究施設を用いた研究支援を行うMNOIC事業を実施しています。その中で特に人材育成には力をいれ、これまでにUMEMSME・MNOICセミナーや装置セミナー、国際ワークショップ等を実施してまいりました。MNOIC事業も支援サービスを開始して2年目を迎え、多数の装置を用いた研究支援が可能になって来ましたので、今年度からMNOICで利用可能な最先端装置を用いた「実習形式のセミナー」を開催することに致しました。今回はその第一弾として、1月22日-23日に1.5日のコースでMNOIC開発センターにて、MEMSの微細3次元内部構造を観察して三次元データを取得可能なX線CT(コンピュータトモグラフィー)装置を用いた実習を実施致しました。
【学習・実習内容】
X-CT(米国Xradia社産業用X線CT “MicroXCT-400”)の原理・利用方法を販売元であるキヤノンマーケティングジャパン㈱からご紹介
世界最先端の評価および三次元再構成による解析事例を東京大学・大竹准教授からご講演
X-CTの操作方法の実習(クリーンルームにて実施)
X-CTを用いたTSV(シリコン貫通配線基板)サンプルの計測実習
測定データの解析、三次元データの再構成の実習(予め取得したデータを使った解析)
【装置の概要】(最初にブログでご案内した装置名は記載ミスでした。実際に使用した装置は以下になります。)
製造元:米国Xradia社産業用X線CT“MicroXCT-400”
販売元:キヤノンマーケティングジャパン株式会社
MicroXCT-400の主な仕様
ウェハ寸法:8、12インチウェハ、チップ観察用ホルダ付属、
機能:X線CTスキャン顕微鏡観察、取込立体画像/CAD図形変換、
最高分解能:1µm、観察可能エリア:直径8インチ以内
写真 1 装置外観(参考)
【実習に使用したサンプル】
貫通配線基板(TSV: Through Silicon Via)ウェハー
Viaの穴径 約50マイクロメータ
貫通穴の長さ(ウェハーの厚さ) 400マイクロメータ
配線材料 銅
【実施結果】以下実施内容の概略をご紹介します。
(1) 一般財団法人マイクロマシンセンターの人材育成事業の一環であるため、人材育成委員会・前田龍太郎委員長(産総研・集積マイクロシステム研究センター長)から開会の挨拶を頂きました。
写真2 前田委員長挨拶
(2) 装置、および計測原理の説明:X-CT(米国Xradia社産業用X線CT “MicroXCT-400”)の原理・活用方法を販売元であるキヤノンマーケティングジャパン㈱の青木様に、質問を含めて1時間の講演をお願いしました。製造元である米国Xradia社の沿線や保有技術の紹介のあと、具体的な計測原理に入りました。この装置の特徴ですが、ご存知のようにX線は屈折レンズが作成できないために、反射光学系を使う必要があって倍率変更が容易に出来ない等の課題があります。このためにXradia社産業用X線CT装置は、サンプルを透過したX線を一旦シンチレータ膜によってX線を可視光に変換し、その後光学顕微鏡の接眼レンズで拡大して観察します。このため、最小分解能は波長と接眼レンズのNAで決定されるので波長レベルになりますが、シンプルな構成で接眼レンズの変更で倍率も自由に変更できます。このX-CTの最大の特徴は、樹脂、セラミックスや金属等の内部を、ミクロンオーダで観察、しかも角度を変えた多数の撮影データから3次元・直感的な詳細情報を得られる点です。
写真3 装置・計測原理の説明(キヤノンマーケティングジャパン㈱の青木様)
(3) 評価、解析事例:X-CT装置の特徴を最大限に引き出せる評価・解析事例を東京大学・大竹准教授からご講演頂きました。MNOICの研究支援を受けて試作した光MEMS(マイクロMEMSスキャナー)をX-CTにて角度を変えて多数の撮影データをとり、これを3次元的なモデルに再構成し、設計データとの比較を行う一連の研究を紹介して頂きました。特にX-CTの光学的な特徴を使って、少ないメモリや計算能力で如何に行うか?またX-CTで問題になる幾つかのデータ補正に関して説明がありました。
写真 3 大竹先生から三次元再構成の講演
(4) 計測実習:2日目の午前中にサンプル構造に関する詳細説明があったあと、MNOICが研究支援する研究施設(産総研・集積マイクロシステム研究センター 8/12インチライン後工程TKB812B)に入って、当該装置の構造、光学系、サンプルの設置の仕方、各種パラメータの設定、計測とデータ取得に関する説明がありました。実習ですので、実際に何人かの参加者に操作をして貰いました。X-CTと言うと長時間かけてデータを撮る印象ですが、断面を1枚のみ撮る場合は、SEMのようにスキャンして僅か1分から数分で観察できます。即ち、サンプルを非破壊でその場で内部が観察できる画期的な装置です。
(5) 3次元再構成の実習:午後は事前に事務局にて計測、角度を変えた多数のデータから、立体データを再構成する実習を行いました。X-CTで課題となっている幾つかの補正も、組み込み標準ツールで補正が行うことができ、実用上十分な精度を持つ3次元再構成像が得られます。例えばシリコン中の金属埋め込み構造の形状や表面等も有る程度の精度で観察できますし、バンプ内のボイドの位置も様々な角度から見ることができます。
(6) 纏め:今回の実習の最後に、実習は今回が始めてであったこともあって、皆様にアンケートと実習の感想をお聞きしました。全体的には大変好評で、世界最先端装置の有効性や課題が良くわかった、また是非MNOICの利用を検討したい等のご意見、更にこのような実習講座を今後も実施して欲しい等のご意見がでました。
写真 4 実習の風景
最後に、今回は始めてのMNOIC実習講座の提案と実施で、正直言って参加者が集まるか不安でしたが、参加枠一杯の8名の参加者に来て頂きました。参加枠を超えた後にお申し込み頂いてお断りした方には申し訳なく思いますが、このような企画を今後も進めたいと思います。またMNOICの年間利用法人は1法人1名まで無料で御参加頂けます。年に3から4回の実習講座を予定していますので、皆様も是非ご検討ください。(MEMS協議会 三原 孝士)
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