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2012年8月 3日 (金)

「マイクロナノ2012」国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム開催(2012年7月11日)

既にこの「MEMSの波」でご紹介していますが、世界最大規模のマイクロマシン/MEMSの総合イベント「マイクロナノ2012」(東京ビッグサイト)が好評のうちに終了しました。また各種セミナーを含む、多数の併設イベントを実施しました。この中でも、18回と言う長い歴史を持つ「国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム」は、(同時通訳もついて)世界のマイクロマシン/MEMSの産業、技術動向を得ることが出来る絶好の場となっています。今回は、「マイクロナノ2012」の全体テーマである「オープンイノベーション」に沿ったプログラム設定を行いました。このオープンイノベーションの背景には、大規模なMEMS研究拠点であるMNOICが昨年度に設置され、順調に整備されて来ていること、また同時期に東北大学のMEMSコインランドリーや京都大学のナノハブ研究拠点が開設され、いよいよ日本でも高価な研究施設を持たなくても研究開発や産業化が可能な「オープンイノベーション」の環境が揃いつつあることがあります。このような背景から、国際交流委員会の委員長である、東大・下山勲教授チェアマンを中心に「オープンイノベーションによるMEMS産業の新しい波、世界最先端オープン研究拠点からの報告」と題したテーマでプログラムを作成しました。
 シンポジウムでは作田理事長の主催者挨拶に続いて、経産省・藤木産業機械課長のからご来賓のご挨拶のあと、以下のキーノート講演と3つのセッションを行いました。
キーノート講演:クウォルコム社 MEMS表示デバイス
 MEMSは多くのゲームやスマートフォンに搭載され、その有用性が認知されるとともに市場も拡大してきました。更に表示デバイスにMEMSディスプレイが搭載されようとしています。その最前線がクウォルコム社の超低消費電力のmirasolTM表示デバイスです。この技術詳細と、デバイスの特徴、今後の実用化展開を Dr. Evgeni Gousevからご紹介頂きました。mirasolTM表示デバイスの原理はOn/Off制御付きエタロンで、その光学フィルターの光路差で波長を自由に変化出来、またOn/Off制御の高速駆動によって変調が自由にできます。更にフィルターや偏光板が不要で消費電力が激減します。また光学変調素子と表面との距離があるので反射率が表示量によらず、電子ペーパのように自然の視認性を持つとのことです。クウォルコム社は無線用IC等のデバイス・コンポーネントを販売する事業も強く、ディスプレイデバイスのコンポーネント販売ビジネスを目指し、既に台湾のファンドリ企業にて大面積表示装置の生産の準備もされています。現在は台湾、韓国、中国のスマートフォンに搭載されているようで、日本でも直に見られるようになるかも知れません。
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写真 1 キーノート講演  Evgeni Gousev氏の講演

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写真 2 会場の様子

セッション1:「最先端技術」
最初の講演は米国アプライドマテリアルのDr. Mike Rosa氏から微細加工が可能なシリコン深堀技術の紹介でした。プラズマ処理中でのエッチングガスの供給や、ポリマー形成のメカニズムを制御することで、非常に滑らかなエッチング側面を得つつ、高速で高いアスペクト比を実現可能なシリコン深堀技術(装置)の開発を紹介されました。
二番目のご講演は米国MIG(MEMS Industrial Group)を代表してオムロンの関口様からでした。MIGは米国の企業を中心とした工業会で、広報活動や会員向けサービス等を行っていますが、最近では米国以外の企業も積極的に呼び込んでいます。今年は欧州(ドイツ)、来年はアジアでイベントを希望されています。マイクロマシンセンターとMIGは国際アフィリエイトの関係にあります。MEMSの産業化には、研究開発から産業化まで国際的な取り組みが欠かせないものです。今後の益々の協調を進めたいと思います。

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写真 3 米国アプライドマテリアルのDr. Mike Rosa氏

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写真 4 米国MIG(MEMS Industrial Group)を代表してオムロンの関口様

セッション2:「世界の研究拠点から」日本、欧州、北米の代表的なオープンイノベーション研究拠点の紹介です。最初に今仲MNOIC所長からMNOICの紹介があったあと、ドイツFraunhofer 研究所の集積化MEMS研究拠点であるISIT、およびISITから派生した研究開発型ファンドリーのMFI(MEMS Foundry Itzehoe)を、Prof. Ralf Duddeおよび、CEOのDr. Peter Merzからの報告でした。ドイツ研究拠点の特徴はdual-use conceptと言う考え方で、CMOS・MEMSの研究・製造設備をISITの研究用と、企業の製造ライン用およびMFIのファンドリー用と二つの目的で利用するものです。最後に北米・カナダのアルバータ州のACAMP (Alberta Centre for Advanced MNT Products)の紹介をCEOのMr. Ken Brizelからご紹介頂きました。アルバータ州は石油輸出の潤沢な資金をMEMS分野に先行投資を行い、最近ではMiQro Innovation Collaborative Center (C2MI) と言うIBMやアルバータ州政府が出資する最先端で大型の研究施設が稼働を開始し、またそこから年間数十のベンチャー企業が排出されています。
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写真 5 ドイツFraunhofer 研究所 ISITのProf. Ralf Dudde氏

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写真 6 ドイツ ファンドリーMFIのCEO Dr. Peter Merz氏

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写真 7 ・カナダ アルバータ州 ACAMPのCEO Mr. Ken Brizel

セッション3:「MEMSの新しい波」と話題で、米国Hillcrest Labsから、Dr. Chad Lucienが多機能で複雑なセンサーを活用するには複雑なセンサー融合ソフトウェアが必要であり、その出来によって使い勝手が決まるとの講演がありました。今後の高度なセンサーネットワークにおいては、アーキテクチャやソフトウェアは益々重要になってきます。最後にナノバイオ分野で世界的な成果を出しておられる東大・竹内昌治先生から膜蛋白を用いたナノバイオ化学センサー、およびナノ蛍光粒子を用いた非接触グルコースセンサーの紹介がありました。
この国際シンポジウムの参加者数は132名でした。多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。(MEMS協議会事務局 三原 孝士)
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写真 8 米国Hillcrest Labs Dr. Chad Lucien氏

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写真 9 東大 竹内昌治先生

 

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